高橋義孝のレビュー一覧

  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    ネタバレ

    コロナ騒動でカミュ「ペスト」を読み、さて次はと本棚から取り出した。
    「ペスト」よりもどちらかというと「ヴェニスに死す」や「ゾンビ」や「ノスフェラトゥ」など頽廃に惹かれるタチなのだ。
    そもそもヴィスコンティ「ヴェニスに死す」は生涯ベストに入る。
    (ちなみにヴィスコンティはカミュ「異邦人」も監督している。最近の読書をこっそり架橋していたのだ。さらにドストエフスキー「白夜」も入れて文豪映画化シリーズに入れておきたい)
    それで読んでみて。

    「ヴェニスに死す」
    びっくりするくらい原作に忠実な映像化だったのだ。
    というか小説を読むと映像が鮮烈に甦る。
    違うのはアシェンバハの職業くらいか。
    思うだに奇蹟の

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    2020年05月14日
  • ファウスト(一)

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    古さを感じない傑作。
    セリフの端々に、現代も変わらず営まれている
    人の世のリアルがにじみ出ている。

    何度読み返しても発見がある。

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    2019年01月27日
  • 魔の山(下)

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    くっそムカつくしイライラする展開ばっかりなんだけど文学作品として最高峰のレベルに位置しているのはわかる。不条理をありありと描いた小説。

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    2018年11月06日
  • ファウスト(一)

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    私生児を産んだ女への懲罰をゲーテが廃止したのは、この時代にパラダイムシフトがあったのでしょうか。優れた物語はいつも、転換点前夜のまどろみを描きます。だからグレートヒェンは我が子を殺して破滅するのですが、それに比べて、ファウストの苦悩や悔恨は口先ばかり。まるで、生き延びてしまった老人はこうやって世間を眺めているんだよと言わんばかりの冷たい表情で、死んだ友人たちを呼び起こして追憶を始める。

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    2017年07月11日
  • 魔の山(上)

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    ドイツの偉大な教養文学というだけあって教養になる物事が山程詰め込まれた本。人間を科学的な面での身体から、精神やら思想やら芸術について突き詰めてあってとても面白い…そして難しい。「文学とは常に“苦悩”について描かれている」という言葉が腑に落ちたし好き

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    2017年02月17日
  • 魔の山(下)

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    若い頃でないと読み切ることが難しい。
    それほど本書は読者に背景を理解するためのハードルを上げる。
    宗教家と教師との長い論争は最たるもの。読者もまたその理解を求められる。

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    2016年12月03日
  • ファウスト(二)

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    ネタバレ

    「人間というものは望んで得たものをしっかりと握ってはいないで、愚かにももっといいものが欲しいと憧れ、一番すばらしい幸福にもすぐに慣れっこになってしまうのです。」

    世界で一番面白い本だと言われている。
    話し言葉だけでストーリーが展開されるので、物語の進行は速い。

    一番好きなシーンは、
    ヘレネーとファウストの間に子供ができた9695からである。

    メフィストフェーレスも俗っぽく面白かった。

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    2016年06月19日
  • ファウスト(一)

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    「善い人間は、暗い衝動に駆われても、正道を忘れるということはないものなのだ、と。」

    世界で一番面白い本と聞いていたので、いつ読もうかずっと迷っていた本。戯曲なので、セリフだけで話が進む。なので、時間の流れを掴むのが難しかった。

    この本は確かに面白い。とても面白い。ゲーテが60年かけて作っているのだから、そこに凝縮された何かがある。

    マルガレーテの兄のセリフは、真に迫るものがある。

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    2016年04月29日
  • 魔の山(下)

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    堪能しました。

    人文学者で合理主義者、ハンス・カストルプの師であるところのセテムブリーニの長々しい語りだけでも充分興味深かったのに、彼に強烈なライバルが現れる。
    イエズス会の会員であり、宗教のためならテロやむなしとするナフタ。

    この二人がそれぞれハンスを自分の陣営に引き込もうと語る語る。
    ふたりに挟まれた形のハンスは、お互いに極論ばかり言わないで、何とか妥協点を見つけることはできないのだろうかとこっそり思うくらい。

    現在の日本に生きる私は、やはりセテムブリーニの言い分の方が近しいと思える。
    人間の尊厳であるとか、文学が持つ力であるとか、注意深く政治を見つめることとか、経済の重要性とか。

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    2014年10月22日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    まだトニオの方しか読んでいない。
    芸術家を目指す俗人の話。小説って何でも小説になるんだなぁと思った。トニオがたまたま芸術家を目指していただけて、社会との接点を持つようになる若者の多くは、彼に似たような思いを抱くだろうと思うと、この話にはやはり普遍性がある。リザヴェータの迷える俗人宣告は痛快で、その前までのトニオがいとおしい。

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    2014年03月27日
  • ファウスト(一)

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    ネタバレ

    綺羅星のような戯曲。構成も素晴らしい。メフィストフェレスになりたくなってしまった。高校生の時には挫折した作品。ドイツ文学の最高峰では。

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    2014年03月02日
  • 精神分析入門(上)

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     やっと手を出した。そんで、疲れる読書を少しでも力にできるよう、読みながらメモったものを書く。


    第一部錯誤行為
     序論だけに、科学的思考と精神分析を説明し、自己の体や意識の反応を『偶然』と切り捨てない精神分析の説明も兼ねる。この時代に今まで生きてきて「無意識が存在する」という知識があるためか、少しくどい。っつーことで内容は略。
    しかしそれだけに、ここまでの反復が必要な時代であったことも感じられる。科学(と当時から認められていたもの)の道を通って得た科学的手法とその経歴を以て、曖昧なものを平易に、しかし数字を用いられずに十分な説得力を持った言葉で語る。この繊細なものを手に取ることができた天才

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    2013年09月05日
  • ファウスト(二)

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    1巻執筆からかなり時間が空いてしまったせいか、なんかテイストが違うような・・・老齢に差し掛かったゲーテの思想的・教養的深みの大きさを感じさせます。劇作的な面白さは1巻のほうがよかったかな…これ、いちおう戯曲ですから。演劇ですから。
    古代の美女ヘレネーに懸想したファウストが、はるか神話の世界まで飛んで行って~とかどんだけ荒唐無稽なの
    てかグレートヒェンに対して悪びれもせずそういうことしちゃうんだ・・・まあ悪魔に取りつかれてる男ですから、さもありなん といったところでしょうが
    古代時代はちょっとおもしろかったですね
    ゼウス、セイレーン、ポセイドン、ヘラクレス、ホムンクルス、ケイローン、トリトン e

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    2013年05月20日
  • ファウスト(一)

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    ネタバレ

    詩聖ゲーテの名作『ファウスト』。
    戯曲向けに書かれたので韻文でつづられている(最初ふつうの小説と思って読むとびっくりするかも)。
    第一部は1808年に発表され、第二部はその約30年後の1833年=ゲーテの死の翌年に発表されたという・・・ゲーテの生涯を通して書かれた作品、なんですね~(30年推敲を重ねられたっていうか暫く放置されてた感があるけど…)。

    新潮文庫の1巻では“天上の序曲”~天使たち(ラファエル、ミカエル、ガブリエル)の合唱から始まり誘惑の悪魔・メフィストーフェレス登場。神とひとつの賭けをする。即ち、善き人間であるファウストを悪の道へと引きずりこむことができるのか。
    ここから悲劇的本

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    2013年04月30日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    何度読んだか忘れたが、読むたびに読み方が変わる。デカダンス、美のイデア、イタリア喜劇、国際観光都市に集う国ごとの面々の癖…また、細部に注目してもいい。マンの残酷なまでのユーモアは、読み手を常に試してくる。勝てなければ、出直して再挑戦する、それだけの価値のある作家、作品である。

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    2013年03月05日
  • 魔の山(下)

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    読んだ。面白かった。長かったなあ。執筆に12年の歳月を要したとのこと。
    心身にこたえたタイプの面白さです。
    難解な哲学的思索・論争を展開するのみならず、そこかしこにユーモア・諧謔精神までもが散りばめられているのです。このウィットに富んだところがにくい。富野作品のザブングル(古い)を思い出したりしました。

    「ファウスト」(未読)、「ツァラトストラ」(既読)、と並ぶ20世紀文学の名作と言われているらしいけれど、“三枚目”で好感が持てました。サンバルカン(古い)で言うところのバルパンサー(イエロー)感があったような無いような。

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    2012年12月09日
  • ファウスト(一)

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    ドイツ文学が好きで、その中でもファウスト第一部が一番好き。

    メフィストフェレスの様な人に出会いたい。というよりもメフィストフェレスのようになりたいと常に思ってしまう。

    ファウスト先生がどう考えても俗っぽく思えてしまうのは、私の読み方が甘いせい??ま、そこが良いんだけど★

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    2012年08月18日
  • ファウスト(一)

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    2015年98冊目。(再読)

    ゲーテが着想から60年かけて完成させた大作。
    場面展開のテンポが良く、多彩な人物(あるいは人ならざるもの)が次々と現れ、想像した光景のカオスがすごい。
    心に残る名言もあまりにも多い。
    また、日本語訳のリズムが非常に良く、特に歌の部分は日本的になじみのある語数できれいにまとまっている。
    注の数は多くないので、一つひとつの意味合いを深く知ろうと思うと物足りない感はあるが、
    一読目に勢いで読み切るにはちょうど良かった。
    ====================
    2012年43冊目。(初読:2012年7月1日)

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    2015年11月25日
  • 精神分析入門(上)

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    ネタバレ

    なんとなく難しいイメージがあったのだけれど、
    タイトルに「入門」と書いてある通り、
    大学での講義をもとにしてあるのでわりかし読みやすい。

    「錯誤行為」
    まず気付くことは、
    フロイトは非常に科学的な人間であるということ。

    反証例をことあるごとに提示し、
    それをひとつひとつ検証していくのは、
    ある側面においてはくどくもあるのだけれど、
    科学者としては正しい姿勢なのだろうと思う。

    有名な「無意識」「欲動」というワードは、
    本書の冒頭ですでに登場している。

    精神分析には一般解はない、
    ということを肝に命じておかなければなぁ。


    「夢」
    夢は眠りを妨げる、
    潜在思想

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    2012年05月03日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    サークルの後輩が卒論の題材にしてる(トニオクレーゲルの方)ということで読んでみました。
    ただ外国の純文学は初めてだったので、特にヴェニスに死すの方はかなり読むのに苦労が。
    ただ、これは…面白い!
    正直作品全体の命題とかは全然把握しきれないんですが、示唆に富んだ言葉や表現の密度が桁違いで、凄まじく刺激的な時間を貰えました。
    こういう本は何回も読み返すことが理解する上で前提な造りだと思うので、じっくり読み込んでいこうと思います!
    この詩は完成せず、十分に仕上げられず、また、悠々として何か纏まったものに刻み上げられることがなかった。彼の心は生きていたからである。
    後輩の卒論考察が楽しみだ。

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    2011年12月25日