【感想・ネタバレ】魔の山(下)のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月19日

主人公ハンス・カストルプの高地国際療養所での周囲との交流と成長を描いた小説、
とあらすじはシンプルだが登場人物たちの議論や言動の濃密さとその影響を受けてハンスが精神的に変化していく様は圧倒的な描写で流石にビルドゥングス・ロマンの大傑作。忘れられない読書体験。人間関係のさまざまな側面、自然、病、科学、...続きを読む政治・経済、宗教、哲学、心霊、文化、遊び…とありとあらゆるテーマが飛び交い、延々と言葉が積み重ねられていく描写は人によっては「退屈」と感じられるのだろうし、長い『魔の山』登山を楽しんでいた私自身でも「一体何を読んでるんだ?」と混乱してくる場面もあったが、多感な青年の成長とは理路整然や首尾一貫よりは混沌としながら進んでいくものだと思うので、そうしたことを読書体験全体としても感じられた。読んでよかった!

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Posted by ブクログ 2023年07月09日

最後に至るまで思弁的で、冗長で、密度が高く、読むのが辛かった。

しかし、読み終わって思索してみると、ハンス・カストルプの凡俗さに人間存在の危うさが垣間見れる力作であった。

女性の描かれ方が考えさせられる。観念、理性が男性に割り振られ、情緒、感情が女性に割り振られている。

ショーシャが連れ戻って...続きを読むきたピーター・ベーペルコンの存在感が印象的だった。

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Posted by ブクログ 2018年11月06日

くっそムカつくしイライラする展開ばっかりなんだけど文学作品として最高峰のレベルに位置しているのはわかる。不条理をありありと描いた小説。

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Posted by ブクログ 2016年12月03日

若い頃でないと読み切ることが難しい。
それほど本書は読者に背景を理解するためのハードルを上げる。
宗教家と教師との長い論争は最たるもの。読者もまたその理解を求められる。

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Posted by ブクログ 2014年10月22日

堪能しました。

人文学者で合理主義者、ハンス・カストルプの師であるところのセテムブリーニの長々しい語りだけでも充分興味深かったのに、彼に強烈なライバルが現れる。
イエズス会の会員であり、宗教のためならテロやむなしとするナフタ。

この二人がそれぞれハンスを自分の陣営に引き込もうと語る語る。
ふたり...続きを読むに挟まれた形のハンスは、お互いに極論ばかり言わないで、何とか妥協点を見つけることはできないのだろうかとこっそり思うくらい。

現在の日本に生きる私は、やはりセテムブリーニの言い分の方が近しいと思える。
人間の尊厳であるとか、文学が持つ力であるとか、注意深く政治を見つめることとか、経済の重要性とか。

神の前にはすべてが等しいというナフタの理論は一見素晴らしく思えるけれども、神のためなら自分の命も他人の命もなんということはないという、テロリズムを容認するような考えは、宗派を問わずとても恐ろしい。
けれど、それが宗教の中心にあった時代は確かに存在し、それはキリスト教だけではなく、日本にだってあったのだから、まさに人間の問題なのかもしれないと思えてしまったり。

この二人のやり取りで格段に面白くなってきたぞと思ったら、もっと上を行く強烈な人物ペーペルコルン氏登場。
とにかく主語と述語がかみ合わないというか、文章を最後まで言わないで次の文脈に進んでしまうので、読んでも読んでも何を言っているのかわからない。
実際にそばにいたら、絶対イライラすると思うけれど、よくわからないことを自信たっぷりに語る大金持ちでやりたい放題のペーペルコルンは、なかなかに憎めなかったりする。

それが、唐突に療養所に持ち込まれた蓄音機によって、音楽について語られる章があり、心霊術の章があり、終焉に向けて一気に物語が動き出す。

ドイツ人であるトーマス・マンにとって、民主主義は最初単なる政治形態にすぎなかったのだが、第一次世界大戦後に民主主義と人間性の尊厳が結びついたとき、ナチスに抵抗する者としてアメリカに亡命するに至るのだということを解説で読み、改めてセテムブリーニとナフタのやり取りが重みをもって迫ってくる。

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Posted by ブクログ 2012年12月09日

読んだ。面白かった。長かったなあ。執筆に12年の歳月を要したとのこと。
心身にこたえたタイプの面白さです。
難解な哲学的思索・論争を展開するのみならず、そこかしこにユーモア・諧謔精神までもが散りばめられているのです。このウィットに富んだところがにくい。富野作品のザブングル(古い)を思い出したりしまし...続きを読むた。

「ファウスト」(未読)、「ツァラトストラ」(既読)、と並ぶ20世紀文学の名作と言われているらしいけれど、“三枚目”で好感が持てました。サンバルカン(古い)で言うところのバルパンサー(イエロー)感があったような無いような。

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Posted by ブクログ 2011年07月21日

1924年に出版された小説にこんなに共感出来るなんて意外でした。「精神と肉体」だとか「生と死」だとか「愛」だとか「時間」だとか、そういったかたちのないもの、理屈で解明出来ないものとはやはりいつの時代にも不変のテーマなんですね。そしていつの時代の人々も、同じようなことを感じ同じようなことに苦しみ同じよ...続きを読むうな結論を出す。面白い。本当に面白い。

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Posted by ブクログ 2010年07月31日

ナフタがとても好きだ。
現実的なのは病であとは精神的世界と教養的世界で語られていたように思う。

ナフタの最期とハンス・カストルプを目覚めさせた戦争がそれまでの世界とのギャップでくらくらした。

ナフタが出て来てから物語は飛躍的に面白くなったけど、上滑りしたら意味ないのでじっくり読んだ。

...続きを読む作中語られるように確かに錬金術的物語だけど、重要なテーマの一つとなっている「時間」についてをあの魔の山の上で描くのなら理想的な長さの作品だと感じた。

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Posted by ブクログ 2024年02月21日

いわゆる教養小説の代表作に位置し,明治の日本文学にも多大な影響を与えていることから,研究目的で読む分にはやりやすいだろう。

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Posted by ブクログ 2023年01月27日

ゲーテのヴィルヘルムマイスターと並ぶドイツ教養小説の名著。1924年作。
主人公ハンス・カストルプはスイス山奥のサナトリウムでの療養という非日常の世界で、出会い啓蒙喪失葛藤を通して成長していく。
思想、政治、イデオロギー、宗教、哲学、文学、オペラ、自然科学、神秘体験等とにかく広範なリベラルアーツや当...続きを読む時の西洋アカデミズムに触れることができて面白い。西洋でいう批評精神批判精神がどういうものかもよく分かる。が、上下巻1400ページにわたる大著、博覧強記の教養、読み終えるのに苦労しました…
さて、下巻。
いとこで親友のヨーアヒムの臨終の場面はとりわけ迫真で胸に迫る。大人物ペーペルコルンとの出会い対決別れ、憧れの女性ショーシャ夫人との別れを経て、霊感の強い少女ブラントを霊媒に死んだヨーアヒムと再会するが、非業の死を遂げた親友を無理やり呼び出したところでかける言葉などあるはずもない。二人の師の決闘によりナフタは自ら命を絶ち、庇護者である大叔父も死ぬ。失意と諦念の中、主人公は第一次大戦の戦火の中に飛び込んでいく。
この作品は無垢な青年が病い戦争個人的な不幸に翻弄されていく悲劇の物語ではあるが、彼もまた第一次大戦やその他多くの戦争で死んだいった多くの若者たちの一人に過ぎない。主人公ハンスが、自分も他者をも正当化しない潔さというようなものを獲得したということを一つの希望にしたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月24日

 ついに読み終わりましたよ、上下巻1400ページの大作!

 若い時なんで読まなかった、いえ、読めなかったのでしょうね。大作ということならもっと長大編を読みましたものね。でも、とにかく夏の暑い盛りに(豪雨もありましたが)汗かいてよくこの歳で読めたと自分で感心してます。

 作家倉橋由美子さんは病気に...続きを読むなるとベットに持ち込み読んで、読み終わると病気が治るのが理想だそう(『偏愛文学館』)10年ごとに読みたくなったそうですが、そんなに病気になるのはちょっとどうも、ですよね。

 主人公のハンス・カストルプがスイス高原のサナトリュウムへ、いとこの見舞いに行ったら自分も結核になっていたということがわかり、いっしょに入院、療養に長き時を過ごすその間に、いろいろな人たちがああでもないこうでもない。

 ストーリーは複雑ではありませんが、登場人物達のセリフというかおしゃべりが摩訶不思議なので、なかなか噛み応えがあります。

 考えさせられるような、しかしわけのわからないような登場人物たちの御託、まじめなんだかどうなんだかですけど、ちょっとユーモラスでもありかつ大変勉強になります。

 ハンスが不倫の恋に落ちるクラウディア・ショーシャ夫人は、竹久夢二が描く女性のように「くんにゃり」としているようにわたしは感じました。『トニオ・クレーゲル』に出てくる少年達のように、ハンスが少年の時に好きだったプシービスラフ・ピッペ少年にその夫人がそっくりなところもちょっとドキッとします。思わず『トニオ・クレーゲル』も再読してしまいました。

 これはほんのさわり、内容は思索的、精神的なことに色濃い作品です。当然ですよね、ノーベル文学賞作家ですもの。しかし、純真無垢なハンス青年がスイスの恵まれた療養所でゆっくりと(7年も!)思索的人生勉強なんて、やっぱり物語だからです。

 トーマス・マンはこの物語で「時の流れ」ということを、とてもうまく表現していると思います。あれもこれも時の過ぎ行くまま、読み終わってほっとしております。

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Posted by ブクログ 2020年10月12日

 上下巻の大長編なので読み通すのに精一杯、というのが正直な所だが教養小説を志向しただけに、様々な、そして趣の異なった魅力がふんだんに詰まった小説だった。
 第一としてはセテムブリーニ、そしてナフタとの議論、この部分が通読して一等面白かった。第二はシャーシャ夫人との恋の行方だろうか。第三にはマンの本作...続きを読むにおける時間感覚。小説内の時間の問題についてはジュネットの『物語論』を適用させられるのだがそれだけでは済まない〈魔の山〉独特の時間の流れ方を考えてみるのもよいかもしれない。
 
 続けようと思えば何処までも続けられる類の小説なのだろうが、一応の筋はあるので、それに関して思った事と言えば、これは獲得と喪失の話なのだろうな、という事。なるほどハンス・カストルプなる青年は教化されて上巻に比べれば一端の論客になれそうなくらい、知恵はついたし深く物事を考える態度を得た。その一方で、親しい人々が次々と死んでいく。この経験は果たして青年ハンスに何をもたらしたか、そこに内面の成長を喚起させるものがあったか、まああったのだろう、敬虔さを身に着けたのかもしれない。それにしても親しい人の相次ぐ〈死〉という喪失による精神的ダメージを次々と経験していくさまが痛ましいとは思えないか。わたしならこれは堪らない。後追いというわけではないが、ハンス青年は切実な心持ちで〈死〉に接近していたはずだ。
 しかしながらマンもあこぎな事をする書き手で、ハンス青年は病が癒えてしまう。結核療養所である〈魔の山〉においては、死神がすぐ横に侍している病人ばかりである。その中でハンス青年は〈魔の山〉においてはストレンジャーになりうざるを得ない。快癒したのならば下山すればよいのだが、彼は幼い時に両親を失っていて、七年間も過ぎたら彼の帰りを待つ人や場所(勤め先)もなくなった。死神に去られたハンス青年は〈魔の山〉の居住資格を失って、かつ帰る場所もない。喪失したアイデンティティーである〈死〉を求めて、あるいはヨーアヒムの果たせなかった軍務を代理して成就させるためを以て、いずれか、それとも両方の理由から第一次世界大戦に出征したのではなかろうか。
 
 この幕引きのための最後の十ページほどの中に戦場に臨むハンス青年の心理や思考は詳しくは描かれない。解釈に正解も間違いもない、マンが答えを示さなかったのだから読んだ人間の数だけ解釈があってよいはずで、なので幾つか『魔の山』論を読んでみたい気にさせた。読み終えてもまだまだ考えたい事柄が残るというのが名作の条件だと個人的に思っていて、その点からすれば本作は紛うことなき名作である。

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Posted by ブクログ 2020年03月07日

まさかの結末に、とにかく衝撃。あんな終わり方するなんて、これまで連綿とただただ綴られた物語の幕が、一瞬にしてスパンとシャットアウトされたような、とにかく嘘でしょって言いたくなる終わり。物語自体は面白いとか、つまらないとか、そんな感情なくただただ日常を歩むように紡がれている。今まで読んだことのないタイ...続きを読むプ。
強いて言うなら、下巻よりは上巻の方が好きかも。

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Posted by ブクログ 2019年04月22日

なるほど、詰め詰めに詰め込まれている。
科学と自然、病と健康、人文主義と虚無主義。西欧と東洋。富。隷属。音楽。恋愛。戦争。

これだけてんこ盛りにされていれば、この本を脳内に分類始末をつけるに際して、気圧されたように「これは教養文学である」と言って逃げたくなる気は分かる。

逃げずに、ここに書いてあ...続きを読むったことを整理してみようとすると、時間をくださいと言いたくなるのが正直なところ。しばらくかけて(下手したらこの後の人生をかけて)考えてみる。

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Posted by ブクログ 2013年09月17日

はっきり言って、よく分からなかった。

・文章が分かりづらく、頭に入って来ない
・宗教や共産主義あたりに関する知識がついていけない
・やり取りというか論争が形式的で何処まで真面目に取り合うべきなのか分からない
・童貞臭い

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

ドイツ文学の三大名作の一つ。とにかく大変でした。自分にはめずらしく読破するのに1ヶ月かかりました。内容は面白かったのですが、一つの作品に盛り込むには内容の種類が多すぎると思いますね

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