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Posted by ブクログ
主人公ハンス・カストルプの高地国際療養所での周囲との交流と成長を描いた小説、
とあらすじはシンプルだが登場人物たちの議論や言動の濃密さとその影響を受けてハンスが精神的に変化していく様は圧倒的な描写で流石にビルドゥングス・ロマンの大傑作。忘れられない読書体験。人間関係のさまざまな側面、自然、病、科学、政治・経済、宗教、哲学、心霊、文化、遊び…とありとあらゆるテーマが飛び交い、延々と言葉が積み重ねられていく描写は人によっては「退屈」と感じられるのだろうし、長い『魔の山』登山を楽しんでいた私自身でも「一体何を読んでるんだ?」と混乱してくる場面もあったが、多感な青年の成長とは理路整然や首尾一貫よりは混沌としながら進んでいくものだと思うので、そうしたことを読書体験全体としても感じられた。読んでよかった!
Posted by ブクログ
堪能しました。
人文学者で合理主義者、ハンス・カストルプの師であるところのセテムブリーニの長々しい語りだけでも充分興味深かったのに、彼に強烈なライバルが現れる。
イエズス会の会員であり、宗教のためならテロやむなしとするナフタ。
この二人がそれぞれハンスを自分の陣営に引き込もうと語る語る。
ふたりに挟まれた形のハンスは、お互いに極論ばかり言わないで、何とか妥協点を見つけることはできないのだろうかとこっそり思うくらい。
現在の日本に生きる私は、やはりセテムブリーニの言い分の方が近しいと思える。
人間の尊厳であるとか、文学が持つ力であるとか、注意深く政治を見つめることとか、経済の重要性とか。
神の前にはすべてが等しいというナフタの理論は一見素晴らしく思えるけれども、神のためなら自分の命も他人の命もなんということはないという、テロリズムを容認するような考えは、宗派を問わずとても恐ろしい。
けれど、それが宗教の中心にあった時代は確かに存在し、それはキリスト教だけではなく、日本にだってあったのだから、まさに人間の問題なのかもしれないと思えてしまったり。
この二人のやり取りで格段に面白くなってきたぞと思ったら、もっと上を行く強烈な人物ペーペルコルン氏登場。
とにかく主語と述語がかみ合わないというか、文章を最後まで言わないで次の文脈に進んでしまうので、読んでも読んでも何を言っているのかわからない。
実際にそばにいたら、絶対イライラすると思うけれど、よくわからないことを自信たっぷりに語る大金持ちでやりたい放題のペーペルコルンは、なかなかに憎めなかったりする。
それが、唐突に療養所に持ち込まれた蓄音機によって、音楽について語られる章があり、心霊術の章があり、終焉に向けて一気に物語が動き出す。
ドイツ人であるトーマス・マンにとって、民主主義は最初単なる政治形態にすぎなかったのだが、第一次世界大戦後に民主主義と人間性の尊厳が結びついたとき、ナチスに抵抗する者としてアメリカに亡命するに至るのだということを解説で読み、改めてセテムブリーニとナフタのやり取りが重みをもって迫ってくる。
Posted by ブクログ
正直に言いますが下巻前半のセテムブリーニvsナフタの議論はほぼほぼ読み飛ばしました。そのあとの雪の章でも乗れなくて1ヶ月くらい放置して、戻ってきてみたらペーペルコルンが登場して、そこからが本当に面白かった。圧倒的人格者と議論好きの口先おじさんたちの対比。これまでおじさんたちの長い長い議論を読みながらモヤモヤとしていた気持ちが一気に晴れる感じ。そこにいるだけで周りの人を魅了する人っているよね。話す内容より、誰がそれを話すか。でも悔しいので、口先おじさんより人格者の方が優れているとは思いたくない。
上巻でも思ったけど、語り手が主人公について意見を述べる形式が面白くて好き。あと、語り手がおもむろに語りだす人生の教訓が響く響く。乗れなかったら読むのをストップしてしばらく寝かせるのって大事ね。
山の上と下、西洋と東洋、モラトリアムと地に足のついた生活など、数えきれないほどの対比構造を見いだせる内容。本の内容もだが、そもそも「ブログやYouTubeで数々の批評や解説を聞きながら世の大名作を読む」という経験が楽しかった。
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