高橋義孝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ朝、目を覚ますと、自分が巨大な虫になっていた――。有名なこの冒頭から始まる本作は、主人公グレゴール・ザムザの肉体的な「変身」を通して、彼を取り巻く社会、とりわけ家族という最も親密な共同体の冷酷な変容を、圧倒的な筆致で描き出した文学作品です。
物語の主人公は、変わり果てた姿になってもなお、人間としての意識を保ち続けます。しかし、言葉は通じず、家族との意思疎通も叶わず、彼は徐々に「家族の一員」から「異物」へと扱いが変わっていきます。とりわけ悲痛なのは、家族が彼を“すでに死んだ者”として受け入れ、そして前を向いて生きようと決意していくその過程です。
彼を切り捨てた事で、精神的に自立していく家族達 -
Posted by ブクログ
夏休み読書として、今更ながら古典を読んだ。
変身の面白さは、人間の存在の不条理さ、孤独、そして不可解さを描くことで、読み手に対し様々な解釈の余地を与えることだと思った。
特に、現代人が感じる疎外感や孤独を象徴していると解釈できるシーンや、外見の変化によって自己認識が揺らぐ経験は、現代人にも共感される部分があると感じた。
この作品は、単なる物理的な変身だけでなく、自己の変容や社会の変化をメタファーとして描いていると解釈もしましたがどうなんでしょう。合理性の限界や訳の分からない状況などは今も感じる部分はあり、令和になっても変身は考えさせられる作品だと勝手に感じた。