中村有希のレビュー一覧

  • 荊の城 上

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    上下巻を一気に読み終えて、溜め息が出た。すごい。
    重いけれど読後は爽快。
    酷いことをする人も、冷酷なモンスターじゃない。(だから怖いのだけど)
    筋も人物も魅力的。こんな解放もあるんだ!

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    2011年06月08日
  • 荊の城 下

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    下町娘のスウと令嬢モードはそれぞれに追いつめられ、自分の智慧を使って難局をきりぬけていこうとしますが、その先には再会と、とんでもない真実が。スリがでてきたり、出生の秘密がからんだり、本書は「オリバー・ツイスト」との比較がよくなされますが、それよりなんといっても似ているのは令嬢かどわかしがテーマになっているウィルキー・コリンズ「白衣の女」の影響が大。ただ、こうした先行作品よりやたらと面白いのは、これまでタブー視されてきた19世紀末の裏社会・裏文化についての要素をたっぷりもりこんでいること。これが謎をとく鍵にもなっています。サラ・ウォーターズは「半身」も面白いのですが、こちらを読んだ人にはラストが

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    2009年10月04日
  • 荊の城 上

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    2004年の「このミス」「週刊文春ミステリベストテン」で堂々第一位となった人気作。本国ではCWAのヒストリカル・ダガーを受賞。一読おくあたわずとはこの本のことでありましょう。こんなに面白い本は暫く出ないかな、というくらいの傑作。原題は「fingersmith」、スリのことです。下町娘でスリのスウは歳かっこうが似ている令嬢をだましてその財産をだましとるたくらみにひきずりこまれます。箱入り娘でおとなしいけれど知的で冷静な令嬢モードはスウの知らないタイプの人間で、スウは初恋にも似た感情を抱くのですが、計画はどんどん進行します。さてさて。途中で物語の語り手がスウから令嬢モードに変わるのですが、ここから

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    2009年10月04日
  • 荊の城 下

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    女の子同士の恋愛、いわゆる「百合」が苦手でない方でミステリ好きでパズラーな方がいらしたら是非ともお勧めしたい小説です。

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    2009年10月04日
  • 荊の城 上

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    立場も外見も性格も全く正反対である二人の女の子が主人公のミステリです。いわゆる百合小説ではあるんですが……違和感なく読めます。同性である彼女を好きになる過程も、その心理描写も、ミステリとしてのパズルも、見事としか言いようがありません。久しぶりに出会った面白いミステリ小説でした。

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    2009年10月04日
  • 本好きに捧げる英国ミステリ傑作選

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    本好きに惹かれるて読むと肩透かしを食うが、英国クラシックミステリ好きなら非常に楽しめる本だろう。
    この錚々たるメンバーだけでも買う価値は十分あるが、その一つ一つがクオリティの高いこと。
    個人的にはフィリップ・マクドナルドの「殺意の家」が好みだった。これを読めただけでも満足である。

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    2025年10月22日
  • 本好きに捧げる英国ミステリ傑作選

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    本に関わる人に絞った英国ミステリのアンソロジー。短編や中編など16の章から成る。
    作者は既に亡くなっている昔の作品だが、英国人が好みそうな懐古的な作品が多い。古き良きイギリスって素敵でしょみたいに感じた。

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    2025年10月14日
  • エアーズ家の没落 上

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    昔ヨーロッパでの医者の地位は高くなかった.人間の絆でもそうだけど、働かなくてはならない身分であり、客である患者がお金がなければ、たいして稼げない。
    主人公はそんな稼げない風采の上がらない医者で、田舎に暮らしている.

    その田舎にはかつては名家だったものの戦争を経て暴落した一家が住んでいる.
    元々は同僚の担当だったが、偶然治療を行なって訪問するようになる.

    子供の時は憧れていたその家族は落ちぶれている.生活のために土地を手放しさらに貧しくなる.屋敷を維持できず、使用人もわずか.
    それでも女夫人はかつての優雅さを失っていないように見えるが、医師は不思議な事件や、違和感を感じ始める.屋敷は呪われて

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    2025年09月24日
  • 半身

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    19世紀イギリスで女囚刑務所へ慰問に訪れた令嬢マーガレットが、詐欺罪・暴行罪で服役中の霊媒師シライナと出会って心惹かれていき、やがては狂おしいほどに恋焦がれていく…という話。
    霊媒師が主役で「心霊現象は実在する」という立場で書かれたゴシックホラー小説のようであるが、地に足の付いたミステリ小説的な種明かし・どんでん返しで幕を閉じる。

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    2025年04月01日
  • 半身

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    マーガレットがシライナに惹かれていく様子や看守に見つからないようにこっそりと触れ合う様子の描写が本当に綺麗だったので普通に辛かったです

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    2024年10月29日
  • 騙し絵の檻

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    ネタバレ

    無実の殺人罪で投獄された主人公が十六年後の仮釈放後に、自分を罠にはめた真犯人を突き止めようとするサスペンスみのあるミステリ。

    十六年の苦渋を思うと序盤の胸中はまじでやるせない。途中やや情緒不安定になるので、ページをめくりながらオイオイ大丈夫かと心配になるが、でも真犯人への恨みと信じてくれる人がいない絶望と…と思ったら仕方がない部分はある……のかな。

    ほぼ親族会議に近い、役員会議に乗り込むシーンはドラマチックで最高だった。いいぞ、もっとやれ、と思うくらいには。(読み進めるうちにじわじわ、まぁ主人公よりの心理にはなっていく)

    ラストシーンも気持ちがいい。人によっては「もやっとする」と言う人も

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    2024年10月26日
  • 黄昏の彼女たち 下

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    ☆4.0

    第一次世界大戦が終わって数年、戦争で父と兄弟を失ったフランシスは、母と二人、男手もなく広い屋敷を抱え苦しい生活をしていた。生計のため断腸の思いで下宿人を募集し、若い夫婦に間貸しすることに。
    そこで"運命の人"との出会いがあるとも知らず。

    この運命はフランシスを眩しいほどの刺激的な幸福と、この幸福の裏側にある罪悪感を共にもたらし、そして悲劇の夜へと導いてゆく。

    上巻は二人の思いが芽生え深まり、形作る様子がたくさんの描写の積み重ねによって記される。
    フランシスからリリアンへの思いがどんな感情なのかは、リリアンの仕草や姿態から知らず識らず艶めかしさを受け取るフラン

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    2023年02月13日
  • 黄昏の彼女たち 上

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    ☆3.7

    小さな描写・何気ない表現がいくつも降り積もり、いつの間にか少しずつフランシスに自分が寄っていて、ふとした時に彼女が私になる。
    そんな経験をさせるのがとても上手な作家だと思う。

    フランシスとリリアンの間には幻想味のあるエロティックさが感じられて、少し陶酔してしまう。そして杭を抜くシーンの鮮烈さよ。

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    2023年02月13日
  • 荊の城 上

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    19世紀半ばのロンドン、17歳になる少女スウは、下町でスリを生業として暮らしていた。そんな彼女に知り合いの詐欺師がある計画を持ち掛ける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産を奪い取るために協力してほしい、というもの。スウの役割は令嬢の侍女。(表紙裏のあらすじより)
    というわけで、恐る恐る令嬢のいるお城に入り込み、着々と計画を進めていく。
    この本は私のお気に入りに入っていた本で、約10年も前から入っていたもの。
    当時どういうわけで、リストアップしたのやらすっかり忘れていたのですが、整理をする前に読んでみようと思ったのです。
    あまり期待もせずに読んだのですが、登場人物も少なく大変読みやすく、古

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    2023年01月22日
  • 半身

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    前半はめちゃくちゃ退屈、中盤で結末はハッキリと予想出来る(実際に何から何まで予想通りでした)
    こんなんもう駄作確定じゃないですか

    でも面白かったんだよなぁ

    なんていうか凄い高級車な感じなんですよね
    お、なんか上手い例えかもしれん

    サラ・ウォーターズの文章は高級車を思わせる
    洗練されていて美しくゆとりがある空間
    スピードを上げる場面では力強く加速するけどスムーズでバタつかない
    サスペンションも高性能でどんなデコボコ道でもそれを感じさせない
    そんな文章

    あれ、伝わる?

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    2022年07月05日
  • 半身

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    後半4分の1の面白さとそれまでの退屈さと極端な作品。以前読んだ『荊の城』が面白くて読んだのですが。1800年代半ばのヨーロッパの監獄に収監されている女囚の慰問を行う、平たく言えば、愚痴を聞く高貴な女性の話。愚痴を聞いているうちに、霊媒師の女囚を好きになって、二人で逃亡を企てる。ここまでが4分の3で、ここに至るまでが無駄に長くて退屈でした。でも残りは目が離せない展開でしたので、まあまあというところです。監獄内の表現が不気味でリアリティがありました。

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    2022年02月11日
  • エアーズ家の没落 下

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    ホラーとしてもミステリとしても読める作品で解釈は読者に委ねられる。
    視点を変えて読み返したら違う楽しみ方が出来そう。
    謎解きを期待すると不完全燃焼。
    段々と「語り手」である主人公がおかしくなっていく様が不気味。
    ゴシック・ホラー作品をもっと読んでみたくなった。

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    2021年11月23日
  • エアーズ家の没落 上

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    上巻は正統派ゴシック・ホラーの雰囲気。
    没落していく地方の名家、怪しげな洋館、訳アリの登場人物、歯車が狂っていく感じ。
    丁寧な情景描写がなされていて、廃墟と化していくハンドレッズ領主館のさまが美しく描かれている。滅びの美学的なものを感じる。

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    2021年11月23日
  • 半身

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    ダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」に勝るとも劣らないミステリアスな物語を読んだ。

    19世紀の霧渦巻くロンドンのテムズ川河畔の監獄に収監されているうら若き女性の霊媒。そこを慰問に訪れる貴婦人は老嬢(といっても20代だろうが、今なら普通)、美しくないがゆえに、個性がありすぎるゆえに愛に飢えている。

    美しい霊媒の女囚「シラナイ」に傾斜していく。いや、ゆがんだ愛ゆえに嫉妬に狂い、正気を失うヒロイン「マーガレット・ブライア」。

    ミルバンク監獄の不気味さに(史実という)ぞっとし、霊媒というまがまがしさに迷わされ、ヒロインと女囚の交互に書かれる日記形式の構成の巧みさに、いよいよ謎が濃くなってくる。

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    2021年09月06日
  • 荊の城 下

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    文学にもその国の特徴が色濃く出る。イギリス文学の特徴も魅力的だ。

    私が思う魅力キーワードとは「女性作家」「18・19世紀」「城」「保守的」「古」「頑固」「暗色」そして「ミステリ」。

    これがその物語に複合的に備わっていると、私はイギリス的だなと好きになる。おもしろくなる。

    ミステリの発祥地だけど、ミステリっぽさが単なる謎解きではなく、謎が「どうなんだろう、なぜなんだろう」とゾクゾクさせられ、引っ張っていかれるのは伝統を感じる。

    『嵐が丘』や『ジェーン・エア』に始まり『レベッカ』の系統にこの小説は属すると思う。現代の「ブロンテ姉妹」「モーリア」派だと勝手に名づけた。

    前作『半身』は思いも

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    2021年08月29日