中村有希のレビュー一覧
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下町娘のスウと令嬢モードはそれぞれに追いつめられ、自分の智慧を使って難局をきりぬけていこうとしますが、その先には再会と、とんでもない真実が。スリがでてきたり、出生の秘密がからんだり、本書は「オリバー・ツイスト」との比較がよくなされますが、それよりなんといっても似ているのは令嬢かどわかしがテーマになっているウィルキー・コリンズ「白衣の女」の影響が大。ただ、こうした先行作品よりやたらと面白いのは、これまでタブー視されてきた19世紀末の裏社会・裏文化についての要素をたっぷりもりこんでいること。これが謎をとく鍵にもなっています。サラ・ウォーターズは「半身」も面白いのですが、こちらを読んだ人にはラストが
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2004年の「このミス」「週刊文春ミステリベストテン」で堂々第一位となった人気作。本国ではCWAのヒストリカル・ダガーを受賞。一読おくあたわずとはこの本のことでありましょう。こんなに面白い本は暫く出ないかな、というくらいの傑作。原題は「fingersmith」、スリのことです。下町娘でスリのスウは歳かっこうが似ている令嬢をだましてその財産をだましとるたくらみにひきずりこまれます。箱入り娘でおとなしいけれど知的で冷静な令嬢モードはスウの知らないタイプの人間で、スウは初恋にも似た感情を抱くのですが、計画はどんどん進行します。さてさて。途中で物語の語り手がスウから令嬢モードに変わるのですが、ここから
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ジョージ・ダグラス・ハワード・コール / マーガレット・コール / E・C・ベントリー / ニコラス・ブレイク / S・C・ロバーツ / フィリップ・マクドナルド / A・A・ミルン / ジュリアン・シモンズ / グラディス・ミッチェル / ロイ・ヴィカーズ / マイケル・イネス / クリスチアナ・ブランド / マージョリー・ブレムナー / ヴィクター・カニング / ジョン・クリーシー / エドマンド・クリスピン / ナイオ・マーシュ / マーティンエドワーズ / 浅羽莢子 / 宇野利泰 / 鈴木美朋 / 中村有希 / 法村里絵 / 深町眞理子 / 宮脇孝雄 / 山田順子3.5 (4)
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ジョージ・ダグラス・ハワード・コール / マーガレット・コール / E・C・ベントリー / ニコラス・ブレイク / S・C・ロバーツ / フィリップ・マクドナルド / A・A・ミルン / ジュリアン・シモンズ / グラディス・ミッチェル / ロイ・ヴィカーズ / マイケル・イネス / クリスチアナ・ブランド / マージョリー・ブレムナー / ヴィクター・カニング / ジョン・クリーシー / エドマンド・クリスピン / ナイオ・マーシュ / マーティンエドワーズ / 浅羽莢子 / 宇野利泰 / 鈴木美朋 / 中村有希 / 法村里絵 / 深町眞理子 / 宮脇孝雄 / 山田順子3.5 (4)
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昔ヨーロッパでの医者の地位は高くなかった.人間の絆でもそうだけど、働かなくてはならない身分であり、客である患者がお金がなければ、たいして稼げない。
主人公はそんな稼げない風采の上がらない医者で、田舎に暮らしている.
その田舎にはかつては名家だったものの戦争を経て暴落した一家が住んでいる.
元々は同僚の担当だったが、偶然治療を行なって訪問するようになる.
子供の時は憧れていたその家族は落ちぶれている.生活のために土地を手放しさらに貧しくなる.屋敷を維持できず、使用人もわずか.
それでも女夫人はかつての優雅さを失っていないように見えるが、医師は不思議な事件や、違和感を感じ始める.屋敷は呪われて -
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ネタバレ無実の殺人罪で投獄された主人公が十六年後の仮釈放後に、自分を罠にはめた真犯人を突き止めようとするサスペンスみのあるミステリ。
十六年の苦渋を思うと序盤の胸中はまじでやるせない。途中やや情緒不安定になるので、ページをめくりながらオイオイ大丈夫かと心配になるが、でも真犯人への恨みと信じてくれる人がいない絶望と…と思ったら仕方がない部分はある……のかな。
ほぼ親族会議に近い、役員会議に乗り込むシーンはドラマチックで最高だった。いいぞ、もっとやれ、と思うくらいには。(読み進めるうちにじわじわ、まぁ主人公よりの心理にはなっていく)
ラストシーンも気持ちがいい。人によっては「もやっとする」と言う人も -
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☆4.0
第一次世界大戦が終わって数年、戦争で父と兄弟を失ったフランシスは、母と二人、男手もなく広い屋敷を抱え苦しい生活をしていた。生計のため断腸の思いで下宿人を募集し、若い夫婦に間貸しすることに。
そこで"運命の人"との出会いがあるとも知らず。
この運命はフランシスを眩しいほどの刺激的な幸福と、この幸福の裏側にある罪悪感を共にもたらし、そして悲劇の夜へと導いてゆく。
上巻は二人の思いが芽生え深まり、形作る様子がたくさんの描写の積み重ねによって記される。
フランシスからリリアンへの思いがどんな感情なのかは、リリアンの仕草や姿態から知らず識らず艶めかしさを受け取るフラン -
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19世紀半ばのロンドン、17歳になる少女スウは、下町でスリを生業として暮らしていた。そんな彼女に知り合いの詐欺師がある計画を持ち掛ける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産を奪い取るために協力してほしい、というもの。スウの役割は令嬢の侍女。(表紙裏のあらすじより)
というわけで、恐る恐る令嬢のいるお城に入り込み、着々と計画を進めていく。
この本は私のお気に入りに入っていた本で、約10年も前から入っていたもの。
当時どういうわけで、リストアップしたのやらすっかり忘れていたのですが、整理をする前に読んでみようと思ったのです。
あまり期待もせずに読んだのですが、登場人物も少なく大変読みやすく、古 -
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ダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」に勝るとも劣らないミステリアスな物語を読んだ。
19世紀の霧渦巻くロンドンのテムズ川河畔の監獄に収監されているうら若き女性の霊媒。そこを慰問に訪れる貴婦人は老嬢(といっても20代だろうが、今なら普通)、美しくないがゆえに、個性がありすぎるゆえに愛に飢えている。
美しい霊媒の女囚「シラナイ」に傾斜していく。いや、ゆがんだ愛ゆえに嫉妬に狂い、正気を失うヒロイン「マーガレット・ブライア」。
ミルバンク監獄の不気味さに(史実という)ぞっとし、霊媒というまがまがしさに迷わされ、ヒロインと女囚の交互に書かれる日記形式の構成の巧みさに、いよいよ謎が濃くなってくる。
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Posted by ブクログ
文学にもその国の特徴が色濃く出る。イギリス文学の特徴も魅力的だ。
私が思う魅力キーワードとは「女性作家」「18・19世紀」「城」「保守的」「古」「頑固」「暗色」そして「ミステリ」。
これがその物語に複合的に備わっていると、私はイギリス的だなと好きになる。おもしろくなる。
ミステリの発祥地だけど、ミステリっぽさが単なる謎解きではなく、謎が「どうなんだろう、なぜなんだろう」とゾクゾクさせられ、引っ張っていかれるのは伝統を感じる。
『嵐が丘』や『ジェーン・エア』に始まり『レベッカ』の系統にこの小説は属すると思う。現代の「ブロンテ姉妹」「モーリア」派だと勝手に名づけた。
前作『半身』は思いも