中村有希のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
謎の紳士タラント氏が怪奇な事件を解決する連作短編集。以前に新樹社から出た本には収録されていなかった四編も加えた完全版である。
以前読んだときは不可能犯罪を快刀乱麻を断つごとく解決するかっこいい話という印象だったが、いま読むと「第四の拷問」とかけっこう笑える話も多かった。そして「最後の取引」で「はあっ?」と驚く結末を迎えたかと思うと、何事もなかったかのように戻って来る不思議。
しかし語り手のジェリーのちょっとお間抜けなところや、怪しげな日本人執事カトーなどレギュラーの登場人物に好感が持てるし、論理と神秘の奇妙な混ざり具合も面白い。地味に各短編冒頭の登場人物紹介も凝っている。やはりキングはいい。 -
Posted by ブクログ
いやいやもう、これは堪能しました。心理描写の精緻なこと、時代背景の巧みな取り入れ方、人間性への深い洞察、どんどん引き込まれていく語り方、どれをとっても一級品。すばらしい。
…なのに☆四つなのは、上巻がちょっと長いかなあと思うから。もちろん、この上巻があってこその下巻の展開なわけで、それはわかるのだけど…。せっかちな読者(わたし)はいつまでたっても「ミステリ」にならないので、これって高級な百合もので、紹介文の「傑作ミステリ」って看板に偽りありじゃないの?などと思ってしまった。
「事件」が起きるのは下巻に入ってからで、そこからはもう怒濤の展開。息を詰めて一気読みすることになる。解説の大矢博子さんが実に的を射た表現で指摘されているとおり、「こんなはずではなかった」という悲痛な声が行間から立ちのぼってくる。これはヒロインだけでなく、ほとんどの登場人物が抱く思いだということがひしひしと伝わってくる。英国小説では、階級の問題が大なり小なり展開に関わってくるが、ここではその描き方が皮肉で、かつ哀切で、複雑な思いを呼び起こす。
ウォーターズは、何と言っても「半身」「荊の城」のあっと驚く仕掛けがピカイチだが、「夜愁」や「エアーズ家の没落」も含めて、どの作品にも底に「怒り」があると思う。世の中のありように翻弄され、ままならぬ生をもがいている人たちが描かれていて、そこが胸を打つ。 -
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。とても残念。ふたりの掛け合い&活躍、カムデンの面々のとっ散らかった日常が本当に楽しかったのに。もっとこの世界で遊びたかったなぁ。
今巻は主役面目躍如、アンジェラが大活躍。かなりハードボイルドな解決が何段階もあっておもしろかった。
このシリーズを読み始めた頃には思いもしなかったが、最近の現実社会を考えると、アンジェラとキャレドニアのような老後生活を送りたいなあとしみじみ思うようになってしまった。健康面にも金銭面にも恵まれていて、衣食住かつ医療完備、深く分かり合っている友達と同じ場所で暮らしている。そういう意味でもこのシリーズはcozyだったし、現代のfantasyとしてもステキな本だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ背徳感とミステリーは相性がよいのかな。
良心の呵責にとらわれて騙したつまりが、嵌められていたスウ。いっぽう、紳士に泥棒ファミリーへと連れてこられたモードはとんでもない真実を知る。
途中の経過がかなり退屈なので、飛ばし読みしたが、筋は拾えた。
諸悪の根源たちは最後に成敗されるのだが、ひょっとすると、リチャードもサクスビー夫人ですらもさほど悪人ではないのでは、と思える部分もある。金欲にとられた人間はみずからを滅ぼす、というのが本作の教訓なのだろうか。二人の誤解が解けるラスト。
しかし、個人的にこういう騙し愛みたいなのは好きじゃない。物語としては面白いのだけど。