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リリアンがフランシスにした告白の衝撃は、ただでさえ緊張に満ちたふたりの仲をさらに大きく揺さぶった。リリアンの夫レナードに隠れての、先の見えない関係をいつまで続けられるのか。彼女たちをとりまくすべてがままならぬ状況で、ある夜、ついに悲劇は起きる。殺人という最悪の形で……。露見を恐れて嘘を重ねたことで、“犯人”は警察の捜査に怯えながら暮らすことに。ところが、事態は予想だにしなかった意外な展開を迎える……。1920年代を舞台に、時代に翻弄される女たちの姿を殺人事件の行方を通して描く、ウォーターズ文学の極み。『半身』『荊の城』の著者、瞠目の傑作ミステリ!/解説=大矢博子
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Posted by ブクログ
☆4.0
第一次世界大戦が終わって数年、戦争で父と兄弟を失ったフランシスは、母と二人、男手もなく広い屋敷を抱え苦しい生活をしていた。生計のため断腸の思いで下宿人を募集し、若い夫婦に間貸しすることに。
そこで"運命の人"との出会いがあるとも知らず。
この運命はフランシスを眩しいほどの刺激的な幸福と、この幸福の裏側にある罪悪感を共にもたらし、そして悲劇の夜へと導いてゆく。
上巻は二人の思いが芽生え深まり、形作る様子がたくさんの描写の積み重ねによって記される。
フランシスからリリアンへの思いがどんな感情なのかは、リリアンの仕草や姿態から知らず識らず艶めかしさを受け取るフランシスを見ているとすぐにわかってしまう。
おそらく彼女自身が気づく前に。
そういう書き方がとても巧みな作家なのだろうな。
上巻最後に爆弾が投げ込まれ、下巻から展開はノンストップ。下巻読んでいる間、息つく暇もない。
"緩急つける"というが、言うならば完全に上巻が"緩"で下巻が"急"。本当に最後の最後までどう決着がつくのかわからなかった。
そこに愛はあるのか。そこに幸せはあるのか。
相手の顔も見えないくらいの黄昏に、彼女たちはいる。
Posted by ブクログ
いやいやもう、これは堪能しました。心理描写の精緻なこと、時代背景の巧みな取り入れ方、人間性への深い洞察、どんどん引き込まれていく語り方、どれをとっても一級品。すばらしい。
…なのに☆四つなのは、上巻がちょっと長いかなあと思うから。もちろん、この上巻があってこその下巻の展開なわけで、それはわかるのだけど…。せっかちな読者(わたし)はいつまでたっても「ミステリ」にならないので、これって高級な百合もので、紹介文の「傑作ミステリ」って看板に偽りありじゃないの?などと思ってしまった。
「事件」が起きるのは下巻に入ってからで、そこからはもう怒濤の展開。息を詰めて一気読みすることになる。解説の大矢博子さんが実に的を射た表現で指摘されているとおり、「こんなはずではなかった」という悲痛な声が行間から立ちのぼってくる。これはヒロインだけでなく、ほとんどの登場人物が抱く思いだということがひしひしと伝わってくる。英国小説では、階級の問題が大なり小なり展開に関わってくるが、ここではその描き方が皮肉で、かつ哀切で、複雑な思いを呼び起こす。
ウォーターズは、何と言っても「半身」「荊の城」のあっと驚く仕掛けがピカイチだが、「夜愁」や「エアーズ家の没落」も含めて、どの作品にも底に「怒り」があると思う。世の中のありように翻弄され、ままならぬ生をもがいている人たちが描かれていて、そこが胸を打つ。
Posted by ブクログ
下巻。
上巻ではまったくミステリ要素はなく女同士のラブロマンスって感じだったけど、下巻で早速事件が起こる。フランシスとリリアンの関係を知り、激昂した夫のレナードがフランシスに掴みかかってきたのを、リリアンが咄嗟に灰皿スタンドで殴り殺してしまう。2人は事故に見せかけ死体を遺棄し、罪の意識に怯えながら暮らすようになる…
殺人を犯してしまった人間の心の動揺や葛藤が延々と描かれていて、ずっと重苦しい。ミステリというよりは心理サスペンスという感じでした。別の人間に容疑がかかり裁判にかけられ、良心の呵責に耐えかねて時にリリアンを憎むようになるフランシス。最後はその容疑者が裁判で無罪になったところで物語が終わる。このあと彼女たちはどうなるんだろう。また罪の発覚に怯える日々を送るのか、それとも自首するのか、それとも…。愛以上に殺人という罪で縛られた2人はずっと離れられないんだろうなと思う。
ツイッター(X)で二度と読み返したくない本みたいなハッシュタグで見つけた本だけど、何とも嫌な余韻の残る本で、確かにもう一度読もうとは思わないけど、そういう本を読みたかったので満足です。
この作者の別の本も読んでみたいと思いました。
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小説・文芸
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