中村有希のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレどこをどう受け取るかで、物語の見え方が変わってくる奥深い作品だった。
上巻のレビューで「これはホラーなのか?それともサスペンスなのか?」と書いたけど、下巻を読んで、その答えは読む人によって違ってくると思った。
他の方のレビューを読んでみると、自分とはまったく違う視点から物語を捉えている人もいて面白い。
そうした受け取り方の幅こそが、この作品の魅力だと思う。
私は、幽霊よりも人間の内面に強く恐怖を感じるので、上巻からうっすらと違和感を感じていた“ある人物”が鍵を握るサスペンスだと感じた。
下巻に入ってからのあの人物の内面からじわじわ滲み出ていたものは、自分にとっては1番恐ろしかった。
読 -
Posted by ブクログ
〈海外サスペンス〉で検索して見つけた一冊。
「〇〇家」と名のつく“館もの”が大好きなので、好きな要素が全部詰まってる気がして、手に取らずにはいられなかった。
その予感は大当たりで、期待通りの世界観にのめり込んでしまった。
かつては栄華を極めたエアーズ家。しかし、時代の波には抗えず、今では見る影もないほどに荒れてしまっている。
医師ファラデーは、診察のため久々に館を訪れるが、その変わり果てた姿に驚愕する。
その館では次々と不可解な出来事が起こり始める…
これは果たしてホラーなのか、それともサスペンスなのか?今のところはまだわからない。
私はホラーには興味がないので、できればサスペンスの方向 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昔、少しだけ読んで読むのを
やめていた本。
田舎の泥棒一家が金持ちを夢見て
その夢をスウに託して…
モードの夢見る脳内お花畑っぷりに
スウは可哀そうにと憐れみを浮かべる
そして私も笑
それは次第に同情に変わり
モードを見る目も変わってくる。
男女、女女、とにかく
人と人の絡みが、文章によって
こんなに濃密なエロスになるとは…
サラ・ウォーターズもだが
中村有希さんの翻訳力にも脱帽である。
上巻最後の天地がひっくりかえる
どんでん返しは見もので
下巻にすぐさま手が飛びます。
下巻も渦巻く陰謀に
早くその答えを知りたくて
ページを捲る手がとにかく止まらない。
最後に明かされた答えは
登 -
Posted by ブクログ
これはなかなか読み応えがあってね。
いや文字多いわーってことでへこたれそうになるかと思いきやなんか上手いこと読ませてきて。そんなドラマチックな展開があるわけでもないようにも思うんだけど。。アレだ、言葉の魔術師。てきな。
で、何が読ませるって老嬢と呼ばれてしまう30女の悲哀というかもう男も女もこの年までモニャモニャしてるとろくな事にならないというか厨二病的な情けなさを持って同じく厨二病を患う読者の心にグイグイくる。
最後もまぁ酷いというか切なくなるわけで、こういう暗いというかパーティーピーポーには分からないぜこの気持ちみたいなのは小説の醍醐味ではないか。 -
Posted by ブクログ
最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふとした事から一家と知り合いになり……
中年医師と不器量な令嬢の初々しくもじれったい恋愛模様などロマンス要素もあるのですが、最大の見所はやはりこれでもか!と詳細な館の描写。
時代がかった洋館の外観・内装・調度の様子が作者の美質である流麗な筆致で綴られ読者を陶酔に誘う。
洋館で連続する怪奇現象、徐徐に精神 -
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サラ・ウォーターズの新作ときては、読まないわけにいかない(感想書くのは遅くなりましたが)
翻訳されないわけではなく、寡作なんですね。
第一次大戦後の1922年。
戦争で父親と兄たちを喪い、老いた母と二人で暮らすフランシス。
屋敷を維持するのも難しく、下働きも雇えないので自ら労働する日々でした。
やむなく下宿人を置くことにして、若夫婦がやってきます。
レナードとリリーの夫妻。
ちょっと嫌味だけど明るいまあ普通の夫。
綺麗で繊細なところのあるリリー。
初めて家に他人を入れてギクシャクする描写も綿密で、これがいつしか思いがけない恋へと転化していきます。
フランシスの母親が生活のためにも娘の結婚