中村有希のレビュー一覧
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ネタバレお屋敷に怪奇現象とくれば、これはもう大好物。
どう読むかに関しては読者の手に委ねられているので、読後、「ねぇ、ねぇ、どう読んだ?」と聞いて回りたくなる。
私はといえば・・・・
おや、と気になる、突飛なというか異常ともいえるような行為があったので、上巻なかばからあたりをつけて読み進めていたため、ラストはああ、やっぱり・・・・・と納得。
超常現象をまじえたサイコ・スリラーとして読んだ感じ。
終盤で、登場人物のある決断に伴って件の人物の異常性が、これでもか、とあぶりだされてくるあたり、怖いのなんの。
そう見定めて読むと、原題の The Little Stranger の Little -
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サラ・ウォーターズの新作。
長篇4作目。
英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向く。
母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があった。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。
家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品があるが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していたが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具 -
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ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の -
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ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の -
Posted by ブクログ
過去へと遡る物語っていうのは、そんなに珍しいスタイルではないと思うけど
この物語はこの語り方によって素晴らしい味わいになってる。
素晴らしく切なくほろ苦い味に。
だけど決して読後感は悪くない。
それは物語が遡ることで現在閉塞してる彼等彼女等の関係の始まりがラストになっているから。
いまでこそぐずぐずになっちゃってるけど、始まりはこんなにも輝いていたんだって。
それは一つの救いであると同時に、切なさを加速させるものでもあるのだけれど。
今まで高度な技術でもって「物語」を書いていた著者がついに「人間」を書いた!
とかあおってみる。
良質なセピア色の名画を観る感覚で読んでいけます。
日本語タ -
Posted by ブクログ
ジェットコースターの醍醐味を味わおうと思ったら、まずは急勾配の坂を上っていかなければならない。
それはひどくゆっくりしたものだが、やがて頂上に達するとそこからは絶叫の連続だということが、予想できているからこそ、あのゆっくりゆっくしとした昇りの中で次第に精神は高揚していくのである。
しかし、それがいつまでもいつまでも続くと、実はこの上り坂は絶叫マシーンにつながっていないのではないかという懐疑的な気分になってしまう。
まさしくこの長編小説がそうだった。
いつまでもいつまでも長い上り坂が続くのだ。
約480ページの文庫本の3分の2までがこんな調子だったのだ。
「はてさて、この長編小説は一体何を描こう