有吉佐和子のレビュー一覧
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世界で初めて全身麻酔下での手術を成功さてた華岡青洲の妻加恵と青洲の母御継の物語。青洲じゃなくてこの二人にスポットライトを当てているのが面白い。封建社会であった江戸時代において嫁姑問題は今よりも激しかったのか。嫁いだ加恵は華岡家に馴染んだかのように思っていたが青洲が留学から帰ってきてから御継の態度が変わりあくまでも加恵は他所の人という態度を取られる。そこから二人は見えないところでバチバチの関係になるも青洲の妹の小陸以外それに気づかない。青洲が麻酔薬の通仙散を開発し研究するに至り二人は自身を実験台として差し出す。ここでもどちらが先に実験するか、どちらがより貢献できたかで張り合っていて女って怖いなと思う一方でそれに気づかない青洲と周りの鈍感さに驚く。1回目の実験で視力を失っているにも関わらず夫への気遣い及び姑への勝ち誇る気持ちで加恵はそれを隠していたのはすごいなと思った。
実際のところ二人の関係はわからないがそういう歴史の見方もあるんだなと。 -
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「和宮様は私の家の蔵で縊死なすったのです。お身代わりになったのは私の大伯母でした。増上寺のお墓に納っているのは和宮様ではありません」そんなことを言う女が現れ半信半疑でなんとなく気をつけていると、身代わりを裏付けるような情報に目が止まるようになる。どうやら和宮様は、跋(びっこ)→健康体→左手首なし、と姿を変えているようだ。そんなことからこの小説は生まれた。
身代わりが真実なのかどうかは闇の中だが、話としてはめちゃくちゃ面白い。それもこれも全ては有吉佐和子の文章力。御所言葉を自由自在に使いこなし、高貴なお公家様の世界をリアルに再現。最初の身代わりフキが経験した堅苦しい作法の数々は、貧しくても一般ピープルの方が遥かに幸せ!と思えるほど異様だ。走れない、喋れない、笑えない、排泄もお付きの人に手伝ってもらい拭くことすら自分でやってはならない。言葉にしても行動にしても、とにかくまわりくどく、もったいつけてるのだ。
公武合体の象徴として徳川家に嫁入りする和宮東下をめぐり、右往左往する周辺の人たちの思惑も些細に描かれていて興味深い。 -
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和歌山の素封家を舞台に、明治・大正・小話を生きた3代の女たちの年代記。
祖母の豊乃に手をひかれて九度山の石段を上る花の描写から始まるこの物語は、花が嫁いでからのことがいちばん長く、きっちりと嫁として、妻としての務めを果たし長男を産みその後に長女の文緒を産んだと同時期に豊乃を亡くす。
母の花とは違う文緒は、ひたすら我が道を進み一風変わった強情な女子であった。
母の思いを全く与することなく結婚後も自分の思うままである。
その文緒の子である華子は未熟児で生まれてから身体も弱く、和歌山の花と過ごす時期もあった。
花の子どもにしても男もいたが、いずれも家を離れてしまっていて、戦局苛烈においては彼女の周りに集まったものは、娘たちや外孫ばかり。
母系というか女の実家に集う女、子どもというのは、いつの時代も変わらないのではないかと思えてくる。
祖母から伝えられた紀ノ川のことを九度山へ上ったことを我が子へそして孫へと語りたかったのかもしれない。
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単行本未収録作品集ということだが、バラエティの豊かさに驚いた。有吉佐和子さんを元々よく知らなかったとはいえ、前作と同じノリで展開しないというか、毎回良い意味で期待を裏切られるドキドキ感があった。
ただどの作品でも一貫して感じたのは、不自由を被る弱者を見逃さない目配り。それが前景に出るか背景に収まるかは色々だが、ユーモア満載の作品でもそこは外さない。
■挿絵の女
出版業界で生きる男二人と女一人の(おそらく書かれた当時の)現代劇。主人公格の男性の、「無駄な喧嘩はしないが自分の大事な人に害を為すものははっきりしっかり遠ざける」という、最後の態度が私はとても好きだった。これを良しとする作家の作品なら楽しめそうだとワクワクした一作目。
■指輪
作者自身が登場。自虐を交えた面白顛末記でも始まりそうな楽しげな冒頭から一転、悲痛な事件、捜査。なんという暴力。
■死んだ家
舞台は都会から一気に田舎へ。祖母の危篤に、亡き祖父から勘当された母の代わりに二十四才の孫娘紀美子が見舞いに行く。解説によると代表作『紀ノ川』との類似点が多いとのこと。
■崔敏殻
今度は閻魔大王が出てきたぞ。主人公は中国人のようだ。これは有吉作品にいくつかあるという中国古典を題材にしたもののひとつだとのこと。しかしこの溢れるユーモアはなんだ。こういうのも書けちゃうのかと、短編集の多彩さに目眩を感じつつ、ブク友さんたちのレビューにあった中島敦、浮遊霊ブラジルとの言に深く頷く。
■秋扇抄
ある芸者の注文を受けて究極の一着を用意する呉服屋。呉服屋は職人ではないが、コーディネーターでありプロデューサーでありこのプロジェクトの成否は彼の手に懸かっているといっても過言ではない。情熱迸らせ仕事に打ち込むシーンは木内昇っぽい(誰かっぽいと言いたい説もある)。昂れば昂るほど結末に向けてハラハラした。一番好きでした。
■鬼の腕
妖艶な女舞踊家と、息子ほど歳の離れた青年(後に中年)の只ならぬ関係。なにということはないのだが濃厚。
本書はロッキーさん、111108さんのレビューでとても面白そうと思い、読みました(ありがとうございます)。恥ずかしながら、有吉佐和子…はて、阿川佐和子さんとは違うよな…というくらい何も知らなかったのだが、調べてみたら映画(『華岡青洲の妻』)やドラマ(『不信のとき』)や演劇(『ふるあめりかに袖はぬらさじ』)では知っている作品もあった。 -
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選挙の話に始まり、環境汚染、食物の安全性の話に入っていく本書。
恥ずかしながら日頃興味を持っていない分野の話にも関わらず、この読みやすさ、面白さよ。有吉佐和子さん、流石の筆力。
きっとご本人が、しっかり腹落ちするまで問題を理解して、自分の言葉に直して書いてくれているから、こんなにすっと内容が入ってくるんだろうな。
今の日本の農業はどうなっているのだろうと興味を持った。
堆肥の話が多くあり、やはり農業のような生命に関わる分野は綺麗事じゃなく、汚れ仕事も多くあると実感。
結局シンプルな、昔ながらの自然のシステムでやっていくのが、無理なくナチュラルでいいのだろうけど、わざわざ汚いことをやりたがる人がどれだけいるかとも思う。やはり何か農家が儲かる仕組みがないといけないのかもしれない。
いろいろなコンパニオン・プランツの話も初めて読み(バラとニンニクを一緒に植えると、バラの花の匂いが良くなって虫がつかないとか、コナギさえ生えれば、田んぼに他の雑草が生えないとか)、とても興味深くて面白かった。 -
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ネタバレ上梓は1975年。世間では環境汚染、公害問題が深刻になっていた。
あれから約50年、環境汚染という問題は、さすがに今の日本ではない(表面化してないだけかもしれないが)。しかし、異常気象、環境破壊がそれに代わっているような気がしてならない。
「文明開化した人類は、壊れない物、腐らない物、燃えない物を追い求めた結果…」と、語る。本書では、PCBに繋がるのだが、現在では農薬に限らず、プラスチックや化石燃料かもしれない。ひょっとしたらSDGsも将来的には未知数? 開発・利用された当初は、持て囃され、夢の××だったのが、実は…、というものは少なくない。
しかし、私たちにどんな選択肢が残されているのだろうか。きっと、「現状は安全といわれている」農薬を使い、車を使い、プラスチックで包装され、水道水を飲むしかない。今さら、電気もガスもネットも車もない社会に戻ることはできない。それが、環境破壊だとしても、…。
「どうして日本に原料を輸出し、化学製品を買い、なぜ日本を儲けさせるのか?」の問いに「わが国に公害をもたらしたくないから」と答えた首相の話がある。誰もが、実験台なのかもしれない、と、空を睨む。 -
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今年は有吉佐和子(1931-1984)さんの生誕90年であります。若くしての病死でしたが、「笑っていいとも」での奇行から僅か二か月後の訃報に、当時は死因が色色取沙汰されたものです。
ここで登場する『不信のとき』は、1967(昭和42)年に日本経済新聞にて連載されたもの。主人公の浅井義雄くんは、大手商社の宣伝部に勤めるサラリーマン。結婚して15年が経つが、妻の道子との間には子供はゐません。過去に二度、浮気をして大騒ぎになつた事はありますが、近年は落ち着いてをり、女と遊ぶにも慎重に慎重を重ねてゐるため、発覚はしてゐません。
ところが、ある時知り合つた銀座のホステス・マチ子に惚れてしまひ、関係を持ちます。彼女は浅井くんの子供が欲しいと云ひ出し、身籠ります。浅井には迷惑をかけない約束で出産するのですが、何とその直後に、妻の道子が妊娠したとの連絡が......
云つてみれば、順調に出世コースを歩んでゐた男が、女で失敗して転落の詩集を綴る物語であります。簡単に言へば自業自得なのですが、作中での、ほとんどの男は結婚したことを後悔してゐる、との指摘には困りますな。かかる事を言はれて、既婚男性はどのやうに反応して良いのか、途方に暮れるではありませんか。
ただ、読み進むうちに、男としては浅井くんに感情移入して、いつ妻にバレるかヒヤヒヤするのであります。そして遂にその時はやつて来た! 道子とマチ子の対決! 月並みですが、女性の怖さをまざまざと見せつける会話です。本当に男つてのは、陰でどんなことを言はれてゐるか分つたもんぢやない。
世の女性たちから、男社会に対する復讐とも云へる小説でせう。ところで、道子が生んだ子供は、本当に人工授精なのか、弟が勝手に代理に同意書にサインできるのか、疑問が色色疑問で終つてしまひました。まあ探偵小説ではないから、それは本質ぢやないのでせうが、気になるところでした。
尚、この小説は大映で映画化されてゐます。田宮二郎がポスタアの序列を巡つて異議を唱へ、結果的に映画界を去るきつかけとなつた作品でした。でも、どうみても田宮が主演だよねえ。全く永田つて奴は......