有吉佐和子のレビュー一覧
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ネタバレ8月中旬に買ってバスの中とか寝る前とかにゆっくり読み進めた。
戦後10年経った東京を舞台に「老い」を書いた作品。主人公の義理の母が死んでしまい残った義父が認知症になってしまう。認知症の義父の世話を1人で受け持っている主人公の昭子の視点から義父が亡くなるまでの日常(介護という非日常が日常になってしまう。)が細かい描写で記されている。
印象に残ったメッセージは、「人は誰しも必ず老いるということを皆忘れているのではないか」だった。自分も祖父祖母と接する時、時偶面倒くさいと感じてしまう。しかし、自分も必ずその立場になる。そう思うと高齢者を無下にしてはいけないと思う。
そして老いが生々しく描かれているか -
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「和宮様は私の家の蔵で縊死なすったのです。お身代わりになったのは私の大伯母でした。増上寺のお墓に納っているのは和宮様ではありません」そんなことを言う女が現れ半信半疑でなんとなく気をつけていると、身代わりを裏付けるような情報に目が止まるようになる。どうやら和宮様は、跋(びっこ)→健康体→左手首なし、と姿を変えているようだ。そんなことからこの小説は生まれた。
身代わりが真実なのかどうかは闇の中だが、話としてはめちゃくちゃ面白い。それもこれも全ては有吉佐和子の文章力。御所言葉を自由自在に使いこなし、高貴なお公家様の世界をリアルに再現。最初の身代わりフキが経験した堅苦しい作法の数々は、貧しくても一 -
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1985年に朝日文庫から刊行された『女二人のニューギニア』の再文庫化になります。
著者の有吉佐和子さん(1931-1984)が、
ご友人で文化人類学者の畑中幸子さん(1930-)(当時、東京大学院文化人類学在籍、現在は中部大学 名誉教授)のフィールドワークを訪れた際の、壮絶だけども笑えてしまう滞在記になっています。
「ニューギニアは、ほんまにええとこやで、有吉さん」という畑中さんのお誘いに「じぁあ、行くわ。案内してくれる?」と大層気楽な気持ちでスタートしてしまったこの旅は、大変なものになります。
悲惨な状況が続くんですが、文章が面白すぎて何度も何度も笑ってしまいます。
のっけから、ニューギ -
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和歌山の素封家を舞台に、明治・大正・小話を生きた3代の女たちの年代記。
祖母の豊乃に手をひかれて九度山の石段を上る花の描写から始まるこの物語は、花が嫁いでからのことがいちばん長く、きっちりと嫁として、妻としての務めを果たし長男を産みその後に長女の文緒を産んだと同時期に豊乃を亡くす。
母の花とは違う文緒は、ひたすら我が道を進み一風変わった強情な女子であった。
母の思いを全く与することなく結婚後も自分の思うままである。
その文緒の子である華子は未熟児で生まれてから身体も弱く、和歌山の花と過ごす時期もあった。
花の子どもにしても男もいたが、いずれも家を離れてしまっていて、戦局苛烈においては彼 -
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単行本未収録作品集ということだが、バラエティの豊かさに驚いた。有吉佐和子さんを元々よく知らなかったとはいえ、前作と同じノリで展開しないというか、毎回良い意味で期待を裏切られるドキドキ感があった。
ただどの作品でも一貫して感じたのは、不自由を被る弱者を見逃さない目配り。それが前景に出るか背景に収まるかは色々だが、ユーモア満載の作品でもそこは外さない。
■挿絵の女
出版業界で生きる男二人と女一人の(おそらく書かれた当時の)現代劇。主人公格の男性の、「無駄な喧嘩はしないが自分の大事な人に害を為すものははっきりしっかり遠ざける」という、最後の態度が私はとても好きだった。これを良しとする作家の作品 -
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今更ながらの同書ですが読む気になったきっかけは、ここ数年ずっと冬場に霜焼けが酷くて皮膚科に行ってもさして好転せずにこの冬たまたま出会った漢方軟膏が存外に効き目あり♪
しかもこれは遥か昔の江戸時代にかの華岡青洲が創案した軟膏であると!
この著書の名前は聞いたことがあるし大昔にずいぶん愛読され且つ映画もドラマも大ヒットした記憶があるんだけど、こんなきっかけで初めて読む気になったのであります笑
いやあ青洲の妻と姑との長くて物凄い葛藤の物語だったのですね!
医家の嫁に相応しいと早くから見込まれ請われて嫁いだ加恵と、非の打ち所がないと近辺で評判の姑 於継の二人だったけれど、世間で言うところの嫁姑の -
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選挙の話に始まり、環境汚染、食物の安全性の話に入っていく本書。
恥ずかしながら日頃興味を持っていない分野の話にも関わらず、この読みやすさ、面白さよ。有吉佐和子さん、流石の筆力。
きっとご本人が、しっかり腹落ちするまで問題を理解して、自分の言葉に直して書いてくれているから、こんなにすっと内容が入ってくるんだろうな。
今の日本の農業はどうなっているのだろうと興味を持った。
堆肥の話が多くあり、やはり農業のような生命に関わる分野は綺麗事じゃなく、汚れ仕事も多くあると実感。
結局シンプルな、昔ながらの自然のシステムでやっていくのが、無理なくナチュラルでいいのだろうけど、わざわざ汚いことをやりたがる人 -
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ネタバレ上梓は1975年。世間では環境汚染、公害問題が深刻になっていた。
あれから約50年、環境汚染という問題は、さすがに今の日本ではない(表面化してないだけかもしれないが)。しかし、異常気象、環境破壊がそれに代わっているような気がしてならない。
「文明開化した人類は、壊れない物、腐らない物、燃えない物を追い求めた結果…」と、語る。本書では、PCBに繋がるのだが、現在では農薬に限らず、プラスチックや化石燃料かもしれない。ひょっとしたらSDGsも将来的には未知数? 開発・利用された当初は、持て囃され、夢の××だったのが、実は…、というものは少なくない。
しかし、私たちにどんな選択肢が残されているのだろ -
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八月三十日 有吉忌
有吉佐和子さんの作品はほとんど読んでいませんが、華岡青洲の妻は、とても引き込まれた作品でした。
華岡青洲は、世界で初めて全身麻酔による乳癌手術に成功した外科医。庶民大衆への治療に従事しながら、麻酔剤を精力的に研究していた。
主人公は、この医師の妻となった加恵と、この医師の母である於継。母は、大成を期待する息子の為に、自ら嫁として加恵を選ぶ。選ばれた嫁は、美しい姑に畏敬の念さえ持ち、喜び嫁ぐ。
しかし、嫁姑は、一人の男性、青洲を巡り、優位性を保つ為、静かに激しく対立していく。
そして、麻酔剤の人体実験をも競い合うように申し出る。青洲は、母には軽度の麻酔剤を試し、妻には完成を