有吉佐和子のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
レビューというより感想です
まず時代性なんかが今と違うのが面白い。主人公が普通に戦争経験者で、主人公の夫も戦地帰り。息子は学生運動の世代。うちの祖父母が主人公世代って考えると、すごく不思議な気持ちだった。
でも、文体なんかは別に古くさくもない。いうて現代だもんね。
認知症ってのは今は普通に知られてて、それ用の受け入れ施設もあるけど、当時は大変だったろうな。働く主婦の主人公が、仕事と介護の間で悩むあたりは、現代でもそんなに代わらない問題だなって思ったし。今どきは嫁が義父母の介護をする・・・なんて価値観も古くなってるけど、全く無くなってるってわけでもない。その価値観転換のスタート地点を読んだんだなって思った。
通底して書 -
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美貌の未亡人、紀代。
隠居した大実業家で、紀代をお気に入りの舅、玄助。
かつては紀代に思いを寄せていた、亡き夫貞一郎の親友で実業家の、岩永。
世間知らずの紀代に遠慮会釈ない意見を述べる、新聞記者の青年、丸尾。
紀代はしなしなとこの三人それぞれを頼りにしつつ、趣味で始めた更紗の着物作りを自分の仕事にしていけるのか、そして最後は誰と結ばれるのか……。そういう話であると紹介しても間違いではないが、「とにかくすごいもの読んだ…」という読後感に圧倒された。
出来事の説明や風景の描写と地続きに、静謐ながら感情が匂い立つような文章。激しさはないのに、読んでいると人物たちの想いがこちらの心にまで流 -
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「悪女について」や、「紀の川」などを著した舞台裏みたいなものがちょこっと明かされたり、
生い立ちと読んできた書物のことがよくわかったり、
岡本かの子さんへの深い想いが綴られていたりしました。
中でも、和歌山のおばあさまが体現していた古き日本文化に反発した有吉佐和子さんのお母様、そして古さと距離があったゆえに、自然にそれを吸収し、危篤状態にあったおばあさまの枕元で「増鏡」を何度も音読するほど、おばあさんと仲が良かったというエピソードには、親しみを感じました。
鋭い視点と行動力に憧れる。
そして、歴史を、女性の視点から見る徹底した姿勢にも痺れます。
次は出雲の阿国を入手して読みたい。
島根県 -
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文庫本にしては長編で疲れました。
高度経済成長時代の上場会社の社員寮の話しです。
昭和の私達の母親の時代背景、うるさいくらい騒々しい井戸端会議、差別的で見栄の張り合いの主婦連中とモーレツ社員の夫達
差別用語も頻繁に出てくる。
孟母三遷の教えとか教育ママゴンとか懐かしいけれど時代遅れのところもあり、今のようにSNSなど無かった時代なので人の噂話や新聞広告や情報に振り回されていた大変な時代だったと思う。今なら主婦、夫の気持ちがよく分かる。主婦である主人公が夫→息子に期待をかけて依存するのは昭和そのものだと思う。
表面協調して心の中では相手を見下す社宅には住めない。
息子の進学の為に社宅を出た株が趣 -
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華岡青洲自体は知らなかった。
それでもやっぱり有吉佐和子は間違えなくおもしろかった。
華岡青洲の妻と母の嫁姑問題の話。
今回も女性の気持ちが細かく描かれている。
まず、美しい母に請われて青洲が勉強中で家にいない中、結婚する。
青洲が帰ってくるまでは本物の親子のように仲睦まじく暮らしてきたのに、青洲が帰ってきた途端、勢力図が変わり憎しみ合いが始まるところが見事。
また、青洲が研究している麻酔薬の実験台に自分を使ってくれと嫁姑で争うのがすごい。
苦しんだほうが青洲の役立ち、相手より優位に立てると思う女の強さ、醜さよ…。
そして姑が亡くなった後、青洲の妹がずっと当人だけしか気づいていないと思っていた -
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■評価
★★★★☆
■感想
◯50年前の本なのに、書かれている内容は今でも通用する
◯前半から中盤にかけて終わりが見えない感覚は、どんなディストピア小説よりも怖かった。
◯情報が歯抜けになり、会話がうまく噛み合わなくなる状態は、痴呆では顕著。一方でいわゆる健常者の大人でもありうるんだろうなと思った。世代をまたいだ人から見ると、上の世代の人は健常者であっても要介護という見方もできる。この構造はすぐに自分も下の世代からされるものだと思う。
◯有吉佐和子の作品は内容もだが風景の表現、色の表現など、リアリティが本当にすごい。
◯最後の昭子の涙は、非常に複雑で人間的なものだったと思う。それが浄化される -
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裏表紙のあらすじに、「至高の恋愛小説」とあり、有吉佐和子さんのまっすぐな恋愛小説読んだことないな、と思って手に取ってみた。
描かれる心の機微は、夏目漱石の「月がきれいですね」の世界で、ものすごく遠回しでさりげなく、昔は勘がいい人しか恋愛できなかったんじゃないかと思うほど。非常に奥ゆかしく、ときめきなんてないに等しいので、そういう期待はしない方がいい。
ラストには、物語はすっかり仕事による女性の自立小説に姿を変える。意外と予想外の動きをする男たちなんて、添え物でしかなかった!
有吉さんが描きたいのはいつでも、1人の人間として背筋を伸ばして立つ女性なんだ。しっかり芯もアクもある、かっこいい女になり -
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かなりシビアな戦後の人種問題の現実 戦後の黒人の人種問題にフォーカスした作品。これは著者がたぶん30代前半にアメリカ留学を経験した後に書かれた。今読んでも一部は決して古くない内容として捉えられるのは、未だ同様の問題が消えたわけではないだろうからだと思うし、実際に今はもうほぼ解決されていたとしても、人々の心の中には同様の差別意識は無意識にでもあるものだと思われる。これを戦後間もない頃に書き上げ、出版したのはさすがとしか言いようがない。実際にこのような生活をしていたら、貧乏や貧困を目の当たりにしすぎて、生きていくこと自体に意味を見つけるのは難しいと思うかもしれないだろうな、と思う。
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江戸時代末期、外国から開国を迫られ、開国派の幕府と攘夷派の天皇と意見が分かれていた。
幕府と天皇との仲立ち(公武合体)のために徳川幕府14代将軍家茂に嫁ぐ天皇の子・和宮様の話。
最初は公家の言葉に慣れずなかなかページが進まなかったが、途中からおもしろくてどんどん読んでいってしまった。
和宮様が替え玉という発想がすごい!
あとがきを読むとあながち突拍子もないとはいえないのかもしれないと思ってしまった。
確かにゴタゴタしていた時代だし、身分が高い女性だとたくさんの人に会わないから可能かもしれないなと。
最初の替え玉、フキはただただ不憫。
元気が取り柄で、下女見習いのような身分のフキには宮様の代 -
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世界で初めて全身麻酔下での手術を成功さてた華岡青洲の妻加恵と青洲の母御継の物語。青洲じゃなくてこの二人にスポットライトを当てているのが面白い。封建社会であった江戸時代において嫁姑問題は今よりも激しかったのか。嫁いだ加恵は華岡家に馴染んだかのように思っていたが青洲が留学から帰ってきてから御継の態度が変わりあくまでも加恵は他所の人という態度を取られる。そこから二人は見えないところでバチバチの関係になるも青洲の妹の小陸以外それに気づかない。青洲が麻酔薬の通仙散を開発し研究するに至り二人は自身を実験台として差し出す。ここでもどちらが先に実験するか、どちらがより貢献できたかで張り合っていて女って怖いなと