有吉佐和子のレビュー一覧
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『非色』に同じくして、社会的な問題を取り扱いながらちっとも色褪せない内容であるのは、日本の皮肉かもしれない。
「老い」の実態をテーマにしながらも、重苦しさが強すぎないのは、やはり主人公の昭子の強さや軽やかさ、ひいては有吉佐和子という人の社会を捉えるしなやかさにあるのではと感じ入る。
そうは言っても、自分にも「老い」が訪れることを恐怖せずにはいられない。女性がおばさんになることの呪いは、『逃げ恥』以後解かれつつある(と期待している)が、さらなる老いとなると、社会的にも安全安心に老いる仕組みが整わなければ、なかなかこの呪いは解けないのではと危惧してしまう。 -
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読んでいて、自分の夫が死んだらどこに連絡すればよいのだろうと考えて、やはり優先すべき連絡先はアナログで残して置いてもらおうなどと事務的なことを思った。
それにしてもボケた老人の恐ろしいこと。生々しくて少し心をドロっとさせられた。
内容はドロドロしているのに、文体はさっぱりしていて、とても読みやすい。
藤野千夜さんの『じい散歩』を読んでる時も思ったけど、昭和の時代って、隣近所との関係が今とは到底違っていて、家の事で困った時に近所の奥さんに相談したり、頼んだりするのは珍しいことじゃなかったんだなって改めて思う。
主人公昭子が、義父が一命を取り留めたところで、「生かせるだけ生かさしてやろう。誰でもない、これは私がやれることだ。」と決意を固める様は、頼もしく応援したくなった。
死よりも老いる方が怖い といったセリフが印象的。
どうしても今の私にとって介護は他人事に思ってしまう。会社の先輩に介護してる人がいたり、今はもう亡くなってしまった義父や義理の叔父が癌でそれぞれ介護が必要で、ヘルパーさんにお世話になっているのは聞いてはいたけど、自分が直接何かしたっていうのは全くなくて、本当に介護とは無縁の世界にいたけど、今回この本読んで実情知れて良かった。
本作は昭和47年に書かれて、54年も前だけど、介護の問題ってそんなに変わってないのかなって思った。誰が見る(犠牲になる)のか、どこに相談すれば良いのか、どんな条件で預かってもらえるのかとか。この当時は老人会館って言ってるけど、今でいう福祉センターていうのが あるって言うのも知ったし、そういうちょっとしたことを知れただけでも読んで良かったのかなって思う。
それとお年寄りってとても知恵があるし、教わること多いなって、敬っていきたいなって改めて思ったし、地域に根付いたお仕事もちょっと興味が出た。今仕事辞めて 4ヶ月くらいになるけど、今年小一になった子どもの下校や給食のボランティアとかするようになって、お手伝いできることがあれば手伝いたいなと思うようになったし、社会貢献というか地域貢献したいなって思いも強まった気がする。
そして、自分の親の介護とか、自分の夫の介護とか、あとは自分が介護される側になるとか、まだピンと来ないんだけど、ちょっと立ち止まるいい機会になったと思う。 -
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有吉佐和子さんの本は「悪女について」「青い壺」に続いて3冊目。
ページをめくると、いきなりの奥さま言葉。ちょっと戸惑いながら読み進める。
男は外で仕事をし家の事は妻に任せ仕事最優先、女性はよい妻でよい母親であるべき…なバリバリ昭和な価値観 社宅の中で奥さま同士の心理戦。
良い妻たるもの、に縛られ
社宅の中での 奥様たちの目や口に翻弄され
目立たぬように 陰口を言われないように 細心の注意をはらいながら
でも 時にあらま〜な、展開に巻き込まれたり
日常のひとコマの中での心理戦 人間描写が巧み。
最初は戸惑ったが、奥さま言葉だったからこそ読み進められたのかも。と思う。
子育ても一段落して価値観も変わりつつある令和の今だからこそ、読んでて面白いと思えたのかもしれない、母親は少し忙しいくらいがいいのかもしれないなって思った。 -
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ぐんぐん惹き込まれて最後まで走りきった。
同じ有吉作品の「青い壺」はハマらなかったけれど、本作は夢中になって読んだ。
主人公・笑子は戦後の日本が復興していく勢いに乗って、何がなんでも生きていく!というやる気に満ち溢れている。
思えば笑子は終始、勢いとパワフルさがとにかくすごい。後々、笑子も圧倒されるようなもっとパワフルな日本人女性たちが登場するが、笑子もなかなかガッツがある。
彼女のそのガッツが本作を貫く芯の部分にある。だからこそ、希望の見えない状況になっても1ミリの希望を抱いて読み進められた気がする。
中盤、竹子が登場したところから読み進めるのが楽しくなった。それまで笑子に降りかかる災難や環境の恵まれなさに気持ちが重くなることも多かったが、そこに関西弁でどストレートにものを言う竹子が表れ、気持ちがパッと明るくなった。
笑子も自身と似た境遇の竹子に救われている部分が大きかっただろう。
後半の麗子の話は、ネタバレしない範囲で言うと、あゝ麗子……と言葉を失った。渡米前に抱いていた、理想の自分像からどうしても抜け出せなかったのかもしれない。
一方の笑子は最後まで止まることなく、さらなる災難に見舞われながらもパワフルに歩み続ける。産後、家計のためとはいえ悪露が止まってすぐに全力で働き出す気力と体力は並大抵ではない。
笑子は、現代でいうアフリカ系アメリカ人の男性と結婚したことをきっかけに、人種差別について深く考えるようになる。
人種差別というと、真っ先に白人による黒人への不当な扱いが繰り返された歴史が思い浮かぶが、笑子が目の当たりにする差別はそれだけではない。
黄色人種、プエルトリコ人、イタリア人、ユダヤ人…黒人のなかでも、アメリカ出身の黒人とアフリカ出身の黒人で階級を付けたがる人もいる。戦後の日本では、しばらくハーフの子どもも差別の対象になりやすかった。
不当な扱いもさまざまで、「あの人は◯◯人だから」と個人の性質と出身を結びつけて語られたり、出身や肌の色で働き口が見つけにくかったりする。いい働き口が見つけられないとなると、貧困層から抜け出すことが難しく、身なりを整えたり、子どもが白人と同等の教育を受けたりすることが叶わない。よって、より不当な扱いを受けるという負の循環が起こる。
60年以上前に刊行された作品だが、本当に今読んでも全く色褪せない。
それは私が日本で同じようなルーツをもつ人々に囲まれ、世界を知らずに安穏と生きているからか。もしくは何百年も続く人種差別問題が、いまだ解決されたとは到底言えない世の中だからか(近年でもジョージ・フロイドの死のようなショッキングな事件が起きてしまうのもそう)。
笑子を通して触れてこなかった世界を知り、人種差別とは、階級とはを考え、忘れられない作品になった。 -
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ネタバレ完全に忘れてしまう前に感想を…。
バッチバチの嫁姑バトルって感じではないのに、ドロドロしてる感じがすごいです。帯に「嫁姑バトル」みたいなことが書かれてて面白そうだったから買いましたが、それだけではなく、壮大な女二人の人生の物語。
加恵さんは、さすが武家の娘というべきでしょうか。
私なら途中で絶対「やっだー、私と同じもの飲んだと思ってたんですか?おかさんの麻酔には危ないもの入ってないのし!ご老体には無理よし!(方言はてきとー)」とか煽っちゃうかなー?笑
加恵さんを応援してしまうのは、やはり自分も嫁の立場だからでしょうか…笑
前、和歌山に旅行したときに道の駅に寄ったら、そこが華岡青洲の記念館みたいな場所で(しかも無料)それが結構面白かったんのし。
元々華岡青洲は好きだったけど、この小説で華岡愛が増したので今度はもっとじっくり見てみたいなーと思います。 -
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姑の突然の死をきっかけに舅である茂造のボケが発覚、夫と高校生の息子、法律事務所での仕事との間で揉まれながら、昭子は介護に明け暮れることになる。
有吉佐和子作品にはいつものことだが、よく調査され組み上げられているのか、破綻や不自然さがなく、終始圧倒的な筆力でもってストーリーが描き出されている。この作品が書かれた頃に比べ、アルツハイマーを発症した老人(とそれを介護する家族)を取り巻く環境は大きく変化しているが、老いに伴い身体や脳の機能が低下し自分のことを自分でできなくなるという恐怖は時代を下っても変わらず存在するであろうと思われ、解説にも書かれた通り時代を超えた名作である。 -
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ネタバレ和歌山弁を聞いたことがないから会話の響きをイメージしにくかった。
花、文緒、華子の三代にわたる女の話。古い家に反発して飛び出して行ったつもりの文緒が結局は豊かな実家のおかげで不自由なく暮らして、孫の代は生活が苦しくなっていくのは皮肉だ。
祖母と孫の交流の場面が出て来て自分の思い出を思い返して心がぽっと暖かくなる。
フィクションだし小説なんて読んでも読まなくてもいいものだけど、つい全部読んでしまう。面白かった。
女の人生の話になるとついつい引き込まれる。
地主は働かず暮らしていたというがどんな毎日を送っていたのだろうと思いを馳せる。 -
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一流商社の社宅を舞台に繰り広げられる、奥様方の嫉妬、マウント、見栄、妄想‥といった悲喜こもごも物語。
1970年に書かれたとは思えない、軽快で色褪せない面白さ!
戦中に子供時代を送り、戦後に親となった商社マンと奥様が主人公で、親子関係、夫婦関係、家族関係の価値観が大きく変わりゆく中戸惑ったり受け入れていく様子もリアル。
なんだかまた価値観が変わりゆく現代にも通じるおかしさがありました。
それにしても、客観的にみたらばかばかしいのだけど、本人の必死さはなんだかよくわかるし、多かれ少なかれ誰にでも起こり得そう。
途中、社宅の恐ろしさとあまりの妄想と思い込みぶりにイライラしてきたけれど、ラストが良くて、なんだか私もいろいろな試練を乗り越えて成長した気分。 -
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女犯を犯した僧、それを匿う嫗、炊事を担う娘の3人を描いた「ほむら」、かつて求婚された嫗が帝に会いに来る「赤猪子物語」、とある夜に行われる歌舞伎を軸に2組の男女を描く「千姫桜」、絵に非凡な才を表した男の荒んだ家庭生活を描く「紫絵」、年増の女と顔に大きな痣のある男の馴れ初めと顛末を描く「『薬湯便覧』由来」、とある妓楼で切支丹となろうとした遊女と女郎を描く「第八戒」、王昭君の似顔絵を描くことになったものの思うように行かず苦悩する絵師の「落陽」、庭師として名を残したいと思う弟と諌める兄、それを取り巻く人々を描いた「石の庭」を収録。「『薬湯便覧』由来」だけは少し異質なように感じられるが、いずれも人の業と意思の深さ重さを感じる作品だった。あとがきに曰く、著者は生前「(自分の作品を)面白いと思ってもらえたらいい」と言っていたとのことだが、今までも『非色』『断弦』など読んできた身としては著者の作品は、interestであれfunであれ「面白い」という気軽な形容はあまり似つかわしくなく、むしろ文学的な価値の高さを感じる、考えさせられるものがほとんどのように思う。いつかこれらの作品の中に面白さを感じられる日が来るのだろうか。
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終戦直後に黒人兵と結婚した、いわゆる「戦争花嫁」の笑子が、生まれた子供を連れニューヨークに渡り、貧民街で暮らし、「差別とは何か?」を問い続け生き方を模索する姿を描く物語。
今から60年以上も前に書かれたとは思えないほど、今でも通用する差別への問題意識に圧倒される。
人種差別の根源は何か。それは肌の色ではないのではないか。貧困、階層、生き方、さまざまな要素、そして何より差別しなくては生きていけない人間の性にあるのではとの考えに納得。
黒人、プエルトリコ人、イタリア系白人、ユダヤ人、そして日本人。同じ黒人でもアメリカの黒人とアフリカの黒人の違いなどさまざまな人種が登場し、それぞれが誰かを蔑み、自らの立ち位置の安定を図る。その構図は今も全く変わっていないのではないか。
人はまさしく差別する生き物なのだと思う。知性をもってそれを表に出さないようにすることは覚えても、胸の内で何らかのマウントをすることで安心を得る弱い生き物なのだということをしみじみ思った。
全体的に鬱々とした内容だったけれど、「私もニグロだ!」というラストの笑子の覚醒は爽快。読後は爽やかでした。