有吉佐和子のレビュー一覧
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華岡青洲自体は知らなかった。
それでもやっぱり有吉佐和子は間違えなくおもしろかった。
華岡青洲の妻と母の嫁姑問題の話。
今回も女性の気持ちが細かく描かれている。
まず、美しい母に請われて青洲が勉強中で家にいない中、結婚する。
青洲が帰ってくるまでは本物の親子のように仲睦まじく暮らしてきたのに、青洲が帰ってきた途端、勢力図が変わり憎しみ合いが始まるところが見事。
また、青洲が研究している麻酔薬の実験台に自分を使ってくれと嫁姑で争うのがすごい。
苦しんだほうが青洲の役立ち、相手より優位に立てると思う女の強さ、醜さよ…。
そして姑が亡くなった後、青洲の妹がずっと当人だけしか気づいていないと思っていた -
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■評価
★★★★☆
■感想
◯50年前の本なのに、書かれている内容は今でも通用する
◯前半から中盤にかけて終わりが見えない感覚は、どんなディストピア小説よりも怖かった。
◯情報が歯抜けになり、会話がうまく噛み合わなくなる状態は、痴呆では顕著。一方でいわゆる健常者の大人でもありうるんだろうなと思った。世代をまたいだ人から見ると、上の世代の人は健常者であっても要介護という見方もできる。この構造はすぐに自分も下の世代からされるものだと思う。
◯有吉佐和子の作品は内容もだが風景の表現、色の表現など、リアリティが本当にすごい。
◯最後の昭子の涙は、非常に複雑で人間的なものだったと思う。それが浄化される -
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太平洋戦争に関する本を読む中で、ニューギニア戦線に興味が湧くも立て続けに戦争ものを読む気力が続かず、息抜きに。有吉佐和子ブームのあおりか重版がかかっていたらしく手に入れるのに少し時間がかかった。ひょんなことから作家有吉氏は、旧友でありニューギニアでフィールドワークを行う人類学者の畑中さんに会いに行くことに。軽い気持ちでいたものの、待ち受けていたのは険しいジャングルを数日間歩き続ける強行軍で…。慣れない環境にヘロヘロになり、碌に口もきけない筆者に鞭打ち続けるマシンガントークの畑中さんのコンビに終始笑いが止まらなかった。電車で読むのは危険。
彼女らが「ネイティブ」と呼び、水木しげるが「土の人」の -
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裏表紙のあらすじに、「至高の恋愛小説」とあり、有吉佐和子さんのまっすぐな恋愛小説読んだことないな、と思って手に取ってみた。
描かれる心の機微は、夏目漱石の「月がきれいですね」の世界で、ものすごく遠回しでさりげなく、昔は勘がいい人しか恋愛できなかったんじゃないかと思うほど。非常に奥ゆかしく、ときめきなんてないに等しいので、そういう期待はしない方がいい。
ラストには、物語はすっかり仕事による女性の自立小説に姿を変える。意外と予想外の動きをする男たちなんて、添え物でしかなかった!
有吉さんが描きたいのはいつでも、1人の人間として背筋を伸ばして立つ女性なんだ。しっかり芯もアクもある、かっこいい女になり -
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江戸時代末期、外国から開国を迫られ、開国派の幕府と攘夷派の天皇と意見が分かれていた。
幕府と天皇との仲立ち(公武合体)のために徳川幕府14代将軍家茂に嫁ぐ天皇の子・和宮様の話。
最初は公家の言葉に慣れずなかなかページが進まなかったが、途中からおもしろくてどんどん読んでいってしまった。
和宮様が替え玉という発想がすごい!
あとがきを読むとあながち突拍子もないとはいえないのかもしれないと思ってしまった。
確かにゴタゴタしていた時代だし、身分が高い女性だとたくさんの人に会わないから可能かもしれないなと。
最初の替え玉、フキはただただ不憫。
元気が取り柄で、下女見習いのような身分のフキには宮様の代 -
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世界で初めて全身麻酔下での手術を成功さてた華岡青洲の妻加恵と青洲の母御継の物語。青洲じゃなくてこの二人にスポットライトを当てているのが面白い。封建社会であった江戸時代において嫁姑問題は今よりも激しかったのか。嫁いだ加恵は華岡家に馴染んだかのように思っていたが青洲が留学から帰ってきてから御継の態度が変わりあくまでも加恵は他所の人という態度を取られる。そこから二人は見えないところでバチバチの関係になるも青洲の妹の小陸以外それに気づかない。青洲が麻酔薬の通仙散を開発し研究するに至り二人は自身を実験台として差し出す。ここでもどちらが先に実験するか、どちらがより貢献できたかで張り合っていて女って怖いなと