感情タグBEST3
Posted by ブクログ
1950年代後半から1960年代に文芸誌に発表された短編の集成。当時としては超ベストセラー作家でありました。
小説って、これだよな。と、思うのです。収録の「孟養女考」にみえる(当時の)新しい中国の形、とか、「三婆」に見える封建的社会の終焉、だとか、「美っつい庵主さん」にみえる(当時の)新しい若い男女の関係、とか、そらぁ含まれるテーマ性というのは、ある。そういう社会情勢に即した作品読解、というのも必要な側面はあるでしょう。だが、そうではなくて。
「本妻と、妾と、実の妹が一人の男が急に亡くなった後どうやって生きていったか」(三婆)とか、「姪の子が尼寺に訪ねてくるんだけど、女友達かと思ったら男じゃないか―!」(美っつい庵主さん)などなど、そういう「読ませる」文藝として、今現在のシーンでもまったく引けを取るものではなかったのです。
妙なリアリズムにこだわるよりも、「これは小説なんだぜ!」と明確に打ち出しているところが、とても小説で、小説家としてのプロ意識だと思いました。
今読んでみて、ハッとするところがあると思います。