【感想・ネタバレ】地唄・三婆 有吉佐和子作品集のレビュー

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Posted by ブクログ

 1950年代後半から1960年代に文芸誌に発表された短編の集成。当時としては超ベストセラー作家でありました。

 小説って、これだよな。と、思うのです。収録の「孟養女考」にみえる(当時の)新しい中国の形、とか、「三婆」に見える封建的社会の終焉、だとか、「美っつい庵主さん」にみえる(当時の)新しい若い男女の関係、とか、そらぁ含まれるテーマ性というのは、ある。そういう社会情勢に即した作品読解、というのも必要な側面はあるでしょう。だが、そうではなくて。

 「本妻と、妾と、実の妹が一人の男が急に亡くなった後どうやって生きていったか」(三婆)とか、「姪の子が尼寺に訪ねてくるんだけど、女友達かと思ったら男じゃないか―!」(美っつい庵主さん)などなど、そういう「読ませる」文藝として、今現在のシーンでもまったく引けを取るものではなかったのです。

 妙なリアリズムにこだわるよりも、「これは小説なんだぜ!」と明確に打ち出しているところが、とても小説で、小説家としてのプロ意識だと思いました。

 今読んでみて、ハッとするところがあると思います。

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2013年06月20日

Posted by ブクログ

「エメラルドって高いもんやろが」
「でもダイヤモンドより安いわ」
「同じ買うんやったらダイヤにし、女子の財産や、買うたるがな」
「だけど、エメラルドの色が好きなのよ、私は」
「何色や」
「グリーン」
「何やて」
「緑よ。ほら、この音」
巾(第十三絃)を弾いて左手で軽く押えた。片方の耳を乗り出すように聴いて、寿久は云った。
「緑か。ふん、そやな、お前に似合うやろ」
―『地唄』p.15

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2012年09月01日

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