有吉佐和子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
こころ揺さぶられた。
主人公の笑子にとても好感もてた。差別主義者ではないけど、自分の中にある優越意識、劣等感を認識して、問いかけている。その姿が自分自身と重なった。
私も人はみな平等と頭では思っているが、実際笑子の様に、差別し自分の方が優位であることに安心を感じている自分がいる。
人間である以上、この感情を全て取り去ることは難しいのかなと実感した。
この本を進めてくれた母は、人間の業だと。かなしいけど腑に落ちる。
つい感情的になって、そういう思考に囚われてしまう時はずっとあると思うけど、笑子のように、その時はなぜそう感じるのか、思うのか、を無視せずに問いかけていきたい。例え答えが出なくても。
他の有吉佐和子さんの作品も読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
書かれてから40年以上経っているはずなのに、色褪せない。
老人の介護問題がリアルに描かれている。
自分が親の介護をする側にまわることも考えるが、自分自身が老いてどんな老後を送るのかも考え、怖くなってくる。
茂造のケースで良い方なのか...。
自分の祖母がボケてきたのを実感しており、時々遠くまで出歩いて帰って来られなくなり警察の世話になっているので、とても他人事とは思えない。
祖母の様子を見て、父の老後も似たようなものかもしれないと覚悟していたけど、自分の人生の延長としては考えたことなかったな...。でも当たり前に自分も老いる。
老人を抱えたら、誰かが犠牲にならなきゃいけないなんて、そんな...。
老いるって残酷だ。老いに抗いたい。 -
Posted by ブクログ
人間ってこんなにも差別と序列をつけたがる生き物なんだろうか。国籍、人種、使う人と使われる人、誇り、負い目…などなど、いろいろなことが人と人の関係に序列をつける。
自己認識とは?未来に向けて、主人公の目が急に開かれたような結末は爽快感があり、でもその先にまた、今現在のアメリカがあり、ヨーロッパも日本もあると思うと、人間は少しも進歩していない。
戦後間もない時期の日米の間が舞台と思えないほど、現代的で進歩的なストーリーだった。
気丈で、変わらない笑子に対して、帰国後トムの目の輝きがみるみる失われてしまったことの意味を考えると、希望を持てる社会に暮らすことの意味の大きさに気付かされる。一部のセレブだけでなく、誰もがそれなりの希望を持てる社会を。どの国でも私たちは創っていかなければならないのでは。
初有吉佐和子作品。他の作品も全部読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
女流文学賞
今さらながら有吉佐和子の不朽の名作というものを読むが、さすが素晴らしかった。
一文一文、練り上げられたであろう文章。
なのに!新潮文庫がそれを台無しに!
巻末に17ページにもわたって注解というものがついているのだが、それを無視すればいいのに、いちいち巻末を見てしまう私。
稽古事、刑死体、側室、仁術、写本、小姑、十八番、などなど、読者を馬鹿にしているのかっ!と思うような単語にまでいちいち解説しているのである。
そのたびに流麗な文章が中断してしまう。
途中で、数ページまとめて読む方法に切り替え、少しましになったが、これは国語の教科書なのか!
その割に、最後の方で出てくる、華岡青洲が書いた漢文や、杉田玄白の書いた候文の書状などは注釈が殆どなく、古文が苦手な私は、これこそ訳してほしかった。
さて、内容であるが、絶世の美女である、外科医華岡青洲の母と、幼少の頃からその人に憧れて嫁入りした妻との闘いを描く。
華岡青洲といえば、世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功した紀州の外科医。
愛する息子または夫の麻酔剤の完成のため、自分こそが麻酔剤の人体実験に挑むべき、というところまで行きつくのだった。
表面的には、相手を慮って、自分が犠牲になって麻酔剤を飲むと言い張っているように他人からは見える美しい光景なのだが、心の中はドロドロ。
救いは華岡青洲がそういったバトルに無関心で、優しかったことかな。
札幌に子孫が経営する華岡青洲記念病院があるのは意外だった。 -
Posted by ブクログ
戦後の日本で逞しく生きる笑子。
戦災で家を亡くし、貧乏生活の中自ら働き口を見つける。そこは黒人の進駐軍御用達のキャバレー。もっと稼げるようになるために、英会話を勉強したり、闇市に品物を流したりして稼ぎを増やし、母、妹を養う。
そしてそこで出会ったニグロのトムと結婚。
娘を産むが彼女はトム似のニグロ。日本でのニグロへの風当たりは強い。好奇の目で見られ、娘メアリーは虐められるばかりで友達が出来ない。
トムが指令でニューヨークに帰国し、笑子もメアリーに友達ができる環境を求めてニューヨークへ旅立つ。
ニューヨークでのトムは、日本にいた頃と違い、ニグロへの差別から碌な仕事に就けず、ハアレムの半地下で暮らしていた。
家族を養うため、笑子はまたすぐに自ら働き口を見つけ、逞しく生きていく。
幾度となく困難があり、差別を受けるが、それでも逞しく生きる笑子。アメリカ内の白人と黒人の差別は知っていたが、白人の中にも差別があること、プエルトリコ人が黒人より下に見られること、黒人の中でもアメリカに住む黒人とアフリカに住む黒人とでは、互いに見下しあっていることなど、知らないことも多くて面白かった。あゝ麗子...。
奴隷解放により肌の色での差別がなくなったはずでも、階級による差別が根強くある中で、結局当人達が声をあげて現状を少しずつ良い方に変えながら、強く生きていくしかない。
自分はニグロなのだと腹を括った笑子はカッコよかった。彼女はこの後どのように自分の人生を切り開いていくのか、この先も見てみたい。というくらい、笑子のファンになった。