有吉佐和子のレビュー一覧
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50年前の小説がリバイバルヒット中ということで、有吉佐和子さんの『青い壺』を読みました。
ひとつの青磁の壺の10年にわたる数奇な巡り合わせを描いた連作小説。(私は映画『レッド・バイオリン』を思い出しました。他にも類似の構成の作品は複数あったかと思います)
壺を介して浮かびあがる登場人物たちの生きざま、老いざま、家族のありかた……どれもが生々しく、濃密で、圧倒された。むせかえるような昭和のにおいが心地よいと同時に、令和のいま読むからこそ深く共感できる普遍性も感じました。
すべてのエピソードが印象深く、登場人物ひとりひとりが愛おしいのですが、とりわけ心に残ったのはスペイン系ミッションスクール -
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なんとこのエッセイ
1968年にニューギニアに行った時のお話し
当時30代と思われるけれど
なんという壮絶な旅でしょう
気軽な気持ちで友人に誘われるまま
ニューギニアへ
有吉さんは幼少期インドネシアで過ごしていたのでその辺りは慣れたものと思いきや
トラブルだらけ、ケガだらけ
山をいくつも越えて
挙げ句の果て意識を失う
豚の丸焼きの如く担がれてようやく辿り着いたのは未開発地帯の村
困り果てたことが山のようにやってくる
早く帰りたくても、場所が場所だけにすぐは帰れない
足が痛くて歩けない
友人である文化人類学者の畑中さんは
何があってもマイペースで
そのうち
「一人になりたい」と愚痴る
いやあ -
Posted by ブクログ
とっても面白かったです。500ページ越えの長編だし、結構昔の作品なので、文体とかに癖があって読みづらいかなとか思っていましたが、全くそんなことはなく、あっという間にスラスラと読み進められました。
富小路公子はいかにして、お金、子供、家、地位、名誉を手に入れたのか…あまりにも計算がされ尽くしていて鳥肌が立ちました。
富小路公子への評判が、本当に人によって全く違っていて、それが面白かったし、なにより、本当の悪人というのは、この富小路公子のように人によって評価が180度変わってしまうような人物なのかもしれないなと思わされました。
周りにいるわたしがとっても良い人だと思っている人が実は極悪人…なんてこ -
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ネタバレとても面白かった! 戦後の混乱期に黒人兵と結婚した女性が日本でも渡米後も体験し見聞した様々な差別。次々に困難に出会っては戦うように泳いでいく主人公の人生が面白く、読むスピードがどんどん上がってしまった。
戦争花嫁である女性の人生を軸にしているが、本作のテーマはタイトルにあるように、差別だ。主人公は差別は肌の色のせいなのか、何なのかを常に考えてしまう。
しかし、観念的な話にならず、常に具体的な事件と行動によってスピード感ある展開をするので飽きずに読んだ。
本作の初の出版は1967年で、アメリカでは公民権運動たけなわの頃だ。また、戦争花嫁を取り上げた本も他に見当たらず、いろんな意味で先進的な作品 -
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この本『恍惚の人』は、1972年に刊行された作品である。実に50年余前の作品。発表当時、「恍惚」という言葉が流行し、この時代はまだ認知症という言葉が広く普及していなかった。日本では、「痴呆」と呼ばれており、2004年に厚生労働省の用語検討会により、「認知症」への言い換えが求められる報告がまとめられた。本書は、有吉佐和子が社会問題に鋭く警鐘を鳴らすために書き、多くの人々の注目を集めた作品である。彼女は、社会に影響を与える書籍の力を示した。『複合汚染』を生み出し、そして続いて本書を生み出した。実に巧みでセンセーショナルな編集能力を持っている。
本書の時代背景において、平均寿命は男性69歳、女 -
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1964年の作を2020年に復刊したもの。かなりの衝撃的な作品だった。
戦後の日本で黒人米兵と結婚した主人公笑子が子連れでアメリカに渡り、ニューヨークでの生活を描いている。日本での差別以上に、移民のるつぼのアメリカには差別が当然の如く蔓延している。
日本人も恐らくイエローとかジャップと差別されただろうにこの中には描かれてない。が、この中で笑子の娘の、明るい未来を象徴する作文が胸を打つ。笑子自身のポジティブさや負けん気も、内容に比べて救いの空気を出している。最後の場面が凄く印象的で、笑子だからこそのセリフだと思った。
この本を勧めてくれたスキボンさんありがとう。 -
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すごい作品だった。この作品の衝撃といったらなかった。黒人兵士と結婚してアメリカに行った女性の波乱に満ちた人生の中で問い続けた肌の色による差別について、どこに帰着するのかハラハラしながら読んだ。肌の色の人種差別だけでなく、この世は差別だらけだと実感させられる。異国で、差別の中で日本人女性が子を産み育てながら働き、必死に生きながらの様々な葛藤を読むほどに、有吉ワールドに引き込まれていった。最後は彼女なりに自分は何者かという答えに辿り着く。最後の『私は二グロだ』という言葉に、確かに人間は「肌の色ではなく」、どこでどう生きるのかを選び取っていく主人公の人生に清々しさ、頼もしさを感じた。