有吉佐和子のレビュー一覧

  • 連舞

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    有吉佐和子さんの作品は、文字を追うだけで楽しいような硬質な美文で、本当にハズレがない。
    今回も、題材の日本舞踊のことなんて全く知らないのに、ぐいぐい読まされてしまった。
    それほど長い作品ではないのに、大河ドラマを観たかのような満足感。

    あと、青春期までの瑞々しい繊細さを描ける作家は数あれど、酸いも甘いも経験して成熟した大人の女を、こんな見事に描ける作家はそうはいないと思う。
    全員単純にいい人でも悪い人でもなく、年を経て変わっていく人格として描かれているのも、人間ってそうだよねと思わされて、凄くいい。

    有吉佐和子さん、手当たり次第に読んでいこうかなあ。
    続編も楽しみ。

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    2023年06月16日
  • 紀ノ川

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    23.1.21〜2.5

    有吉佐和子、面白すぎ❗️
    花と祖母の関係性、習慣。絆。嫁入りの様子は鈴木清順の映画を思い出した。
    カバンに大量のキューピーをぶらさげて田舎を闊歩してる文緒、可愛げありすぎ。
    華子を見つめる花の目線と、終盤に彼女が語る言葉で感極まった。

    武蔵美に友達の卒制を見に行った帰りに、近くにあった古本屋さんでこの本と『複合汚染』を買ったんだけど、複合汚染を見た老齢の店主さんが「うん……うん…‥いい本だよね、これ」って呟いてた。紀ノ川も良い本だったよ、店主さん❗️

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    2023年04月27日
  • 華岡青洲の妻

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    高校生のとき以来で読み直したら、とてつもなく面白かった!
    世界初、全身麻酔による乳癌手術を成功させた医師とその家族の物語…ときくと何やら高尚で敷居が高そうだが、「バッチバチな嫁姑もの」という普遍的でエンタメ性高いエッセンスをまぶして描くセンスの凄さ!
    有吉佐和子さんは「悪女について」も読み返したい!

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    2023年01月15日
  • 新装版 和宮様御留

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    40年くらい前に大竹しのぶさんが演じたドラマがありました。子供でしたがゾクゾクするほど面白く内容も鮮明に覚えていて、原作を読みたくなり読みました。有吉佐和子さんの取材力がすごく、和宮様は本当に偽物だったのではと思わせます。御所言葉など馴染みのない言葉が使われていますが全く飽きさせず一気に読めてしまう歴史小説です。

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    2022年10月09日
  • 紀ノ川

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    花(明治)・文緒(大正)・華子(昭和)の三代記と、少し前の朝ドラを彷彿とさせる構成。事前に著者の生い立ちを確認していると、自伝的小説だと言うことに途中気づく。

    開始早々泣きそうになった。
    嫁入り前の花が祖母の豊乃と寺の石段を上るシーンから入るのだが、孫へのはなむけの言葉がもう優しくて、優しくて…。
    明治初期に身内が嫁入り前の女子に説くことなんざせいぜい嫁の心得だろうに、「身体を大切にしなさい」等今と変わりないしどれも愛情深い。早逝した実母に代わってどれだけ彼女が手塩にかけてきたのかがよく分かる。

    作家の桂芳久氏は解説にて、著者は紀ノ川に「いのちの流れ」を象徴させたと書いている。出来た嫁の花

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    2022年08月03日
  • 一の糸

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    最高!文楽の三味線弾きに心を奪われた女性の話。乙女の恋心、文楽の芸の道の厳しさ、大正から戦後にかけての時代描写、などなど。一冊でたくさん楽しめる。

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    2022年02月03日
  • 紀ノ川

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    三代に渡る女の人生。
    描く人が違うとまた濃厚さが違う。
    風景の描写も流れる時間もまた違って方言まで美しく感じる。
    気丈な花が老いてワガママになるのも計算の内なのか、今まで抑えていた気持ちをボケたふりして孫に語っているような気がして、というよりそうあってほしいと思う。

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    2021年11月27日
  • 新装版 和宮様御留

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    ずいぶん久しぶりに読み返そうと思ったのだが、持っている文庫本はあまりにフォントが小さくて、とてもじゃないが読めない(トホホ…昔の文庫を見るたびに本当にこれ読んでたのかと思ってしまう)。ちょっとためらったけれど、とっても面白かった記憶に押されて新装版を購入。いやあ、これは大正解!もう夢中になって一気に読んだ。

    幕末、公武合体の掛け声のもと、徳川家に降嫁した皇女和宮は、実は替え玉だった。この設定だけでも興味深いが、そこに幾重にも肉付けされていく、小説としての厚みがすばらしい。思いつくままにあげていく。

    ・一人目の替え玉として、フキという少女をつくりあげたことが、この小説のキモだろう。何も知らさ

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    2021年08月04日
  • 複合汚染

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    1974~75年の『朝日新聞』連載小説。といっても、脚色があるとはいえ、ストーリー性はない。「小説」というよりもルポルタージュに近い内容。冒頭の選挙応援に始まり(本題ではないが、これはこれで面白い。菅直人も登場)、化学肥料、除草剤、合成洗剤、食品添加物、PCB、配合飼料、自動車排ガス、交通事故などあらゆる話題が提供されていて、著者の好奇心に脱帽した。

    50年後の今日、著者が挙げた問題には、緩和されたものや、逆により深刻化しているものもあるだろうが、「個々の物質からの影響をバラバラに見るのではなく、これらが積み重なると何が起こるか?」という発想は、有効性を失っていないだろう。

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    2021年07月08日
  • 紀ノ川

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    おそらく、本で読んだだけならここまで強烈に印象に残ることはなかったことだろう。
    毎朝のNHKの朗読で一回、それを録音で収録したものでもう一回。初夏のウォーキングのなかで聴いた。
     柔らかな紀州訛りと、もう失われた少し遠い時代の生活や言葉を背景に、“真谷のごっさん”花の見つめた世界に同化しながら浸った。

     そして、もう一回この手にしている本で三度目の『紀の川』を渡った。
     三度ともなれば、すべてがもう知り抜いた既知の世界。展開も、台詞も文字を目が追う前に既に知れている。
    ただ味わった。もう一度この心地よさを。

     何が心地よいかって?
    それは花の“美しさ”だ。小説のなかでも、その美貌を表現する

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    2021年07月04日
  • 紀ノ川

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    ラジオで朗読されていたので購入。題名からちょっと最近の人にはとっつきにくいのではないかと思う。女性4代の血脈が、紀ノ川の水脈のようにしっかりと、静かにゆるやかに流れる。女性の強さを感じる。女性の生命力、ミトコンドリアの力を感じさせられる良書。

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    2021年06月06日
  • 紀ノ川

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    有吉佐和子の代表作。読んだのではなく、NHKラジオ「朗読の時間」で聞いた。目からではなく耳から、という朗読の面白さを初めて実感。朗読50回シリーズ。
    朗読は、俳優の藤田美保子さん。藤田さんの朗読の上手さも、この作品の魅力を一層引き出していた。

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    2021年06月05日
  • 地唄

    購入済み

    昭和の時代、日本の伝統芸能が時代の波の中に失われていく中で、芸に身を捧げる人々を描いた短編集です。
    新しい時代の中で揺れる芸の世界を描いた「地唄」「人形浄瑠璃」。
    変わりゆく時代の中で、伝統芸能をひっそりとしかし一途に支える姿を描いた「墨」「黒衣」。
    厳しくも美しい世界に生きる人々の矜持が胸を打ちます。

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    2019年11月17日
  • 複合汚染

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    ネタバレ

    以前借りたけど頭に入らないか時間切れでつんどく…
    つん…ど…つんどくしてたもの

    再トライ

    各所で参考に出される大事な書か。

    長くかかりましたが読み終わり、
    私が産まれる9年前に書かれた本にすでに
    御用学者という言葉がかかれていたり
    企業の広告、国の機関の言うことを
    いちいちうのみにせず、疑ってみることの大切さ
    わからなくても、学者に「もっとわかりやすく言ってください」と聞いていいということ、またその勇気
    世の中をじっくりみている「ご隠居」とのやりとり
    文章が楽しく、時間かかったけど読んだかいあり。

    ふせんはったとこめも

    p161
    おそろしいものを食べて生きている為、染色体がめちゃめち

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    2019年11月01日
  • ほむら

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    味わい深い短編集。独特の言い回しはやや難しくもあり、そして情報密度が濃く、二度読み返してしまうが理解できないことはない。故に短編であってもとても読み応えを感じる。
    歴史上の史実や言い伝えをヒントにより深いフィクション要素を取り入れてあるらしく、歴史に照らし合わせて読んでも興味深い。どの作品も印象に残るが第八戒などは強烈ですね。戯曲石の庭は龍安寺の庭の見方が変わりそう。
    知らなかった歴史にも興味が持てた。

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    2019年09月14日
  • 紀ノ川

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    自分のひいひいおばあちゃんくらいが花の世代かな?そう思うと、女性がとんでもなく「家」に縛られて生きていたのは割と最近なんだなと、驚く。プラスチックを始めて触るシーンとかも、世代を逆算して考えると面白い。
    有吉佐和子の作品、もっと読んでみたい。たしかに努めて娯楽的にしている面も感じなくはないけど、女性の人権に対する意識とか今読んでも古びてないし、作家らしい作家だと思う。
    そして女性を、三代を通して描くのはすごく有効な描き方だと改めて思う。キム・ジヨンもだったけど、個人的な母娘の確執に見えることでも三代になると社会のうねりの中で起こってるってことが可視化されていいよね。

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    2019年09月13日
  • 夕陽ヵ丘三号館

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    ネタバレ

    評価は5.


    内容(BOOKデーターベース)
    一流会社勤務の夫の転勤に伴い、東京で憧れの社宅暮らしをスタートした音子。喜びも束の間、社宅内の人間関係に振り回されてゆく。一人息子・悟の教育問題、見栄と欺瞞に満ちた主婦同士の情報戦に追い詰められ、焦った音子は愚かな行動に出るが―痛烈な人間描写、現代のドラマが大迫力、傑作長編エンターテインメント。

    親は、子どもの地位=自分の地位と勘違いしてしまうし、子どもの勉強が出来れば、親の理想通りに進めば親のストレスはすごく減る。でも、本当は健康で元気ならOKなのだが・・そんな暇な母親の日常をつらつらと綴った話だったがやはり大作家!面白かった。

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    2019年08月07日
  • 断弦

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    【絶えて,続いて】日系二世の米国人と結婚したことを端緒として,地唄の名人であり師でもある父・菊沢寿久から勘当された邦枝。父への思いを断ち切れないまま,渡航の期日が迫ってくる中,寿久の側は,娘に対する嫉妬にも悲しみにも似る感情を抱いていた......。伝統の隔絶と継承を描いた長編小説です。著者は,『悪女について』,『恍惚の人』等で知られる有吉佐和子。


    戦後急速に広がった世代間の価値観の溝,そしてそれに伴う感情面のもつれやすれ違いを丹念に綴った作品だと感じました。ラストに近づくにつれてそのトーンが明るくなるところに,有吉女史の願い,さらに言ってしまえば意気込みのようなものを感じました。

    〜簡

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    2018年03月05日
  • 複合汚染

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    この本は 昭和40年代後半から50年代前半 朝日新聞に掲載された連続小説で当時社会問題となっていた環境汚染をうまく伝えている。当時話題の小説だったわけで  自分が育った時代 戦後の高度経済成長期の真っただ中 複合汚染の中だったことに検めて知って驚く。 自分がこんなに無知だったとは・・・。あらゆる分野の環境問題に気付いたとき真っ先に読むべきだった。



    出だしが選挙運動から始まって、バン!っと目に飛び込んできた 「 複合汚染 」といういろんな環境汚染が重なり合った言葉は衝撃だった。中身を読むまで複合汚染という重たくて暗いイメージがある言葉だけをみるのと、読み始めると有吉さんの軽快な文章とはギャ

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    2017年10月07日
  • 香華

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    ネタバレ

    私、たぶんこれを学生時代に読んだ。気がする。そしてたぶん当時は自分から遠い話だったので、あまり感慨を抱かなかったと思う。こういう、女であることを意識させられる女性主人公のものは苦手だったし。

    郁代は確かにどうしようもない母親だけど、突き放すこともできない朋子の気持ちがとても、分かる。
    朋子が再三言うように、朋子に子どもができていれば、郁代との関係も変わっていたように思う。郁代が子離れできないのと同様、朋子も親離れできていないのだ。親はいつまでたっても子を子ども扱いするし、家にいれば子はいつまでも親に縛られるものだ…。

    母親である美しい郁代に似ない自分を、朋子は恨みがましく思っていたようだけ

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    2017年09月04日