あらすじ
昭和初期の東京・上根岸。日本舞踊の名門梶川流の師匠を母とする異父姉妹。家元の血を享け、踊りに天賦の才を見せる妹の千春の陰で、姉の秋子は身を慎んで生きてきた。しかし戦後の混乱期、梶川流の存亡を賭け、秋子が進駐軍の前で挑んだ驚くべき舞台が彼女の人生を予想もつかぬ方向へ導いていく――。伝統と因襲の世界で生きる女たちの苦悩と希望を描く、波瀾万丈の人間ドラマ。傑作大河長編。
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Posted by ブクログ
有吉佐和子さんの作品は、文字を追うだけで楽しいような硬質な美文で、本当にハズレがない。
今回も、題材の日本舞踊のことなんて全く知らないのに、ぐいぐい読まされてしまった。
それほど長い作品ではないのに、大河ドラマを観たかのような満足感。
あと、青春期までの瑞々しい繊細さを描ける作家は数あれど、酸いも甘いも経験して成熟した大人の女を、こんな見事に描ける作家はそうはいないと思う。
全員単純にいい人でも悪い人でもなく、年を経て変わっていく人格として描かれているのも、人間ってそうだよねと思わされて、凄くいい。
有吉佐和子さん、手当たり次第に読んでいこうかなあ。
続編も楽しみ。
Posted by ブクログ
50年近くまえの小説。
日本舞踊という伝統芸能の世界を描いた作品。
「血」の世界、「家」の世界は今の我々の表の世界からはどんどん消えてしまっているようにおもう。
あるにはあるのだろうけど。
読みごたえありました。
最後にあのように受け入れた秋子はやはり月の器があったのだろう。
あと処女を失った女はかくもかわるのですかね。
男の自分には少しわからないというかちょっとイメージがわきません…
Posted by ブクログ
連舞(つれまい)・乱舞(みだれまい)の前編。
絶版になったと思っていたら、こんな表紙になっているのにびっくり。(でも本屋でみかけない)
踊りという特殊な世界で生きる女の話。有吉さんの文章は踊り物、芸者ものでも読みやすいし、ぐっと読ませるし、とても好きです。
踊りの師匠を母にもつ才能のない姉と、家元との間に生まれた天才少女の妹。姉はどうやって生きていくのか。
保存版です。
Posted by ブクログ
秋子の母 寿々は日本舞踊梶川流の門弟で若い頃から名の通った踊り手だった。 自ら稽古場と内弟子をもつ彼女は娘である秋子を顧みることはなかった。
秋子が六つの時 寿々は還暦を過ぎた七世家元 梶川猿寿郎の子を産む。
家元が自ら千春と名付けた娘を踊り手として育てあげようと寿々は躍起になった。
必要なのは血筋なのか 天賦の才なのか精進なのか …
終盤 八世猿寿郎の「─踊りの間というのは魔物の魔だ。誰も逃げ出せない。みんな死ぬまで踊り続けるんだ。僕は魔物に首の根っこを押さえられている。だから家元の僕は、門弟の首の根っこを押さえていなきゃならないのさ。─考えてみると、日本舞踊は近頃の新興宗教と似たことを何百年の昔からやっているんだね。家元というのは教祖のことさ。だから面白いよ、やめられないんだよ」という言葉が印象に残った。
戦争を経て不本意ながら確固たる地位を得て 遅まきながら才能を開花させた秋子と 母の反対を押し切ってした結婚が破綻してアメリカから娘を連れて帰ってくる千春のその後は『乱舞』に続く。
Posted by ブクログ
最初は母や姉妹など、他者と比較して一喜一憂していた主人公が、やがて自分自身を深く理解することで、独自の世界を獲得するまでの物語。
改めて読むと、結局自分を救うのは自分自身、あるいは自分の努力の時間ということなのかな、と思う。
Posted by ブクログ
芸事の世界に生まれて自分がその才能が無いと知るというのはどんだけ苦しいことやろうと思った。
それでも秋子は優しくて折れずに生きてて普通に応援しながら読んだ。
秋子の、母親の愛情を受けたい気持ちを大人になってもずっとコンプレックスとして持ち続けてるのしんどかった。その一点のために生きてるんちゃうかっていう執着ぶり。
Posted by ブクログ
以前に読んだ「乱舞(みだれまい)」以前のお話。ちなみに「れんぶ」ではなく「つれまい」と読む。
やっぱり有吉佐和子の描く女達には粟肌が立つ。いわゆる「女の争い」だとか「女は化物」とかそういう陳腐な概念から想像してもらっては困るのだが、とにかく彼女の描く女は美しく、また怖ろしい。
橋本治が、「昔の女にはすごい抑圧があって、それに耐えてて、時々ふうってなるから美しいんだよ〜ん」みたいなことを言ってたのを思い出した。懐古趣味に走って現代の女がどうこう言うつもりはないが、抑圧がないところに美しさがないというのは分からんでもない。
乱舞を読み返したくなったが、家に見当たらない。残念。
Posted by ブクログ
日本舞踊名取りの家に生まれ育った女性の生涯が描き出されている。
戦前、戦中、戦後の激動が少女の人生観に永久する。
有吉佐和子の描く「心の襞」に感心させられる。