有吉佐和子のレビュー一覧

  • 非色

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     大学生の頃に、紀ノ川という作品を読みそれ以来の有吉佐和子さんです。はじめは、なんという差別的なことばで差別的な内容の…と思いながらの読書でした。それが主人公笑子の心の変化につれて差別の本質についての考察に至ります。
     わたしも笑子の考え方の振れと共に差別とは?肌の色とは?について考える機会を持つことができました。階級闘争という言葉が頭に残りました。
     差別的なことばや内容はその時代のライブな感覚です。その先にある深い考察には本当にビックリしました。有吉佐和子さん、もっともっと読みたいです。

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    2025年01月10日
  • 恍惚の人

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    ネタバレ

    100分de名著(2024年12月)に取り上げられた1冊。
    この本を読んで今年亡くなった祖父のことを思い出した。認知症ではなかったが、最期は寝たきりになり、祖母や父、叔母が介護していた。祖父がこれ以上苦しまないように積極的な延命治療は行わなかった。最終的には老衰であったが、それでも「もっと長生きさせてあげたかった」と皆が言っていた。
    最後のシーンの敏の台詞はドキッとしたし、鳥籠を抱いて涙する昭子の気持ちも痛いほど伝わってきた。

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    2024年12月31日
  • 断弦

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    ネタバレ

    これが有吉佐和子さんのデビュー作。しかも有吉さんが22〜24歳の若さで描かれたものとは驚いた。完成度が高い。

    "地唄"自体あまり聞き慣れない言葉で読み始めは戸惑ったけれど、女子大生・瑠璃子が菊沢寿久に弟子入りしてから俄然面白くなった。周囲を遮断するかのように頑なな寿久の心をあっさりと溶かしてしまう、とても魅力的な女性だった。 

    日本古来から受け継がれる伝統を継承し続ける難しさは、令和の世でも変わらない。
    「過去と現代が握手する」
    「愛しつつ抵抗する。反逆しつつ愛する」
    確かに現代に残る伝統芸能の数々は進化を遂げながら、その時代の人に取り入れられて次の時代へ繋げられている

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    2024年12月29日
  • 華岡青洲の妻

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    嫁と姑が競って清州の実験台になろうとする姿は側から見れば美談に見えるがその実、清州を巡る二人の女の激しい葛藤があった。命を賭けてまで相手に勝とうとする女の戦いがすごい!

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    2024年12月27日
  • 恍惚の人

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    老いの先にある壮絶な人生を垣間見た気がした。認知症の介護というのはこれほどまでに大変なものなのかと圧倒された。主人公の昭子の「茂造を生かせるだけ生かしてやろう」という肝に据えたところは、圧巻だった。今、自分にできることに向き合うことの大切さを考えた。昭和のベストセラーで名著。読んでよかった。

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    2024年12月22日
  • 華岡青洲の妻

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    ネタバレ

    人間の本質に、殊におなごの本質に触れるような気がするのよし。永遠のライバル嫁姑。

    美談として流布しているのであろう華岡青洲の母と妻は、もしかしたらこういう内情であったのではないか、華岡青洲自身は、科学者ではなくて医学者だけども、わりとマッドサイエンティストという歴史小説。良いとか悪いとか論じるのはナンセンスだと思う。そう言う下地に成り立っているのが今の現実でございましょ?遡って糾弾するなら今の快適、適切は捨てなきゃね。

    私は、スルッと「そうかもな」と思えた。
    語尾が「〜のよし」「〜いただかして」なんて穏やかで牧歌的な印象なのだけど内容はドロドロの愛憎。綺麗事で人生乗り切れないし、学べること

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    2024年12月13日
  • 恍惚の人

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    ネタバレ

    老人問題を取り上げた小説は何冊か読んでいるのに、元祖であり大ベストセラーであるこの作品をまだ読んでいなかった。
    心の片隅で、もう古いのではないかと思っていたのかもしれない。
    読み終えてみれば、土下座して謝りたいほど、「現代の」老人問題が描かれていた。
    時代的には、私の親世代の家庭であるが、昭子(あきこ)がフルタイムで事務員として働いているという状況は、当時では比較的新しい家庭であったのかもしれない。

    優しかった姑が離れで急死した日、嫁の昭子は、舅の茂造の様子がおかしいと初めて気づいた。
    症状が出始めたことを息子夫婦には隠して、姑が一人で面倒を見ていたのだろう。
    姑は、狷介でわがままな茂造の看

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    2024年12月19日
  • 華岡青洲の妻

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    ネタバレ

     「夫の母親は、妻には敵であった」。
     敬愛していた於継(おつぎ)に請われて華岡家に嫁いだ加恵(かえ)。実の親子のように仲良く暮らしていた日々は、3年間の京都遊学を終えた夫 雲平(うんぺい)--後の青洲--の帰郷によって突如終焉する。表面的には普段どおりでも、何事においても嫁を蔑ろにするようになった於継を加恵は憎悪し始め、対抗する……。

     自分こそが“家”(=当主)に最も頼みとされる女でありたいという、嫁と姑の静かで激しい争い。雲平が麻酔薬を開発すれば、その実験台として2人して名乗り出、張り合う。母/妻の鑑として周囲には美談めいて伝わるが、その内実はエゴイスティックで醜い。
     結果的に加恵の

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    2024年12月06日
  • 新装版 和宮様御留

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    視点がコロコロ変わる系で、途中まで読むのに時間かかった。けど後半一気に読めてめちゃめちゃ面白かった。

    なぜ替え玉をしたのか。
    主謀者の思いは?

    なんてことは一切書かれず、想像するしかない面白さ。

    距離が近くなるとイライラしてくる人間関係。
    相手を軽んじているのが如実に伝わる感じ。
    誰々があなたの悪口をこんな風に言ってたよ、と伝えてくる人のいやらしさ。

    こういうものが、脇の下に嫌な汗をかいてしまうほど臨場感を伴って書かれている、名作でした。

    きわめつけは御所言葉、京都のプライドを堪能できるところ。しびれました。
    3周回って、京都好き!

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    2024年10月22日
  • 複合汚染

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    とてもつかみやすかった。頭の中がいくらか整った。やはり環境問題も、足元や手元からみていかないと、ここにはない話しになってしまうのだなと。
    ところでこの本だけでなく、「有吉佐和子」が残したものは、今の話しとしか思えないことが多くて驚く。さらに今では複雑にされて理解が困難にされてしまっているようなことが、余計な添加がされず、とてもつかみやすい。
    「有吉佐和子」からエントリーしていたらよかっただろうにと思い浮かぶ人が何人もいる。

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    2024年07月26日
  • 新装版 和宮様御留

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    有吉佐和子さんの時代もの大好き!
    若い頃に読んで、衝撃でした。そんな身代わりのさせ方ある?さらにその身代わり?
    和宮様に仕立てられる様子がかわいそうで、おかしくなってしまった時に悲しかったです。理由も教えてくれなかったらおかしくもなります。
    フィクションとはいえ、現実味を感じさせる話でした。

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    2024年05月01日
  • 紀ノ川

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    明治、大正、昭和へと続く、母から子、孫に至るまでの年代記。
    有吉版『細雪』のよう。細雪よりはだいぶコンパクトながら、明治のお家騒動にとどまらず、昭和までの時代の移り変わりが書かれているのがすごい。
    川の流れのように続いていく命と、変わっていく「家」のあり方を体感することができ、しっかり満足感。
    「〜のし」という独特の方言も癖になる。

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    2024年02月24日
  • 紀ノ川

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    めちゃくちゃ面白かった。
    第1章が終わり、第2章が文緒が女学生になったところから始まることに気づいた時点で「文緒が女学生になるまでに何があったかも教えてよ!!花の視点を共有してよ〜!」と駄々をこねたくなった。

    内孫、外孫、長男がどう、と家父長制的な視点を持つ花に対し、文緒が「実際に深い交流があるのは外孫ばかりではないか、母系家族は自然だったのではないか」と訴えるシーンは特に印象に残った。
    母と娘が反発し合いながらも、宥和できる部分は時間をかけて宥和し、その様子を見る孫娘は祖母に対して親近感を持つ、という描写は、そうやって昔から連綿と命が続いてきたのだなと思わされた。
    一方で、晩婚化や出産の高

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    2024年01月17日
  • 非色

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    時々考えることなのだけど「人が人を差別する意識はどこから生まれるのだろう」ということを、この本を読み終えてまた考えた。
    歴史や時代に刷り込まれる場合もあるだろうし、生まれ育った環境(親や友人など)を通して意識に根付く場合もあると思う。
    自分自身「差別なんてしたことありません」なんて到底言えないのだけど、果たしてその意識はいつ根付いたのだろう。

    初版は1964年。2021年に復刊を果たした本作。
    第二次世界大戦後、日本で生まれ育った笑子は、仕事の関係で知り合ったアメリカ系黒人のトムと結婚することになる。
    作中では今は差別用語として使われなくなった「ニグロ」という言葉が多用されているが、変更はさ

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    2025年08月16日
  • 新装版 和宮様御留

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    NHK「大奥2」の岸井ゆきの演じる和宮を観て興味が湧いた。幕末を舞台にした大河ドラマでちょくちょく見かけてはいたのだが、たいていはサブ的な位置づけで印象派薄い人物だった。
    一方でNHK大奥2の和宮はほぼ主役と言ってもよいインパクトを残した。男装の和宮と女将軍の家持。完全にフィクションなのだが、画面に映る二人は実在の人物としか思えないほど「生きて」いた。
    フィクションではあるが、細部のリアリティーは歴史に忠実で、和宮の左手が無いこともこのドラマで知った。あまりに実在感が強いので、機会があれば増上寺の菩提に手を合わせに行こうと思っている。
    間違いなくフィクションなのに、どうしても生きていた気がして

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    2023年12月20日
  • 華岡青洲の妻

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    恐らく中学時代…先輩が書いた読書感想文で本書を知った。
    1804年(文化元年)世界初の全身麻酔による乳ガン手術に成功した華岡青洲。その成功の裏には自ら実験台になることを願い出て失明した妻 加恵の内助の功があった。感想文にあったそんなあらすじを読んで、すぐさま「自己犠牲がテーマか…」と気が進まなくなった。

    理由は単純で、エゴ極まりない10代の頃は誰かのために尽くしたり何かを差し出したりすることに対して、激しい嫌悪感を抱いていたから。何がそのような行動を取らせるのか、まだ理解できていなかったのもある。
    そうして自分のエゴを優先していくあまり、本書の存在は記憶に埋もれていったのだった。

    そして1

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    2023年11月02日
  • 挿絵の女 単行本未収録作品集

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    どうやら今年出たらい単行本未収録作品集。最近なんとなく有吉佐和子さんが再評価されている空気があり、嬉しい!
    そして本当に一編一編ハズレがないのに脱帽。
    日本舞踏の世界を描いた短編『鬼の腕』なんかはさすがお家芸だけど、まさかフィクション風の推理小説『指輪』や、中国古典を題材にしたユーモラスな『崔敏殻』(中島敦風!)まで書いていて、しかも面白いとは!どれだけ才能があるんだ…。

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    2023年10月31日
  • 芝桜(上)

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    芝桜(上)芝桜(下)そして木瓜の花へと続く正子と蔦代2人の雛妓時代から初老といわれる年齢までの極めて微妙な関係がとても魅力的な筆致で描かれている。
    特に上巻第一章の一。この始まりは秀逸だと思う。 ここで正子と蔦代それぞれの性格、立ち位置を実によく表している。これから始まる女2人の人生を物語るには最高の出だしだと思う。 本当に有吉佐和子さんの文章はうまいなぁと思う。

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    2023年09月06日
  • 乱舞

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    有吉佐和子さんの小説、最近ものすごく惹かれている。たおやかだけどきびきびした緩急のある文体、豊富な語彙で選ばれた言葉たち、様々な登場人物の人間味(一瞬しか出てこない人物ですら目に浮かぶ!)、現実を映し出したような予定調和ではないストーリー…。
    今作も一気読み。

    前作から更に強くなった秋子、ラストの打ち合わせでの采配、大会での口上でのかっこよさは痺れた。
    したたかになったことを、「変わったのではない、育ったのだ」というのも素敵。こんな大人になりたい。

    そしてこのラスト、満足ではあるけど、風と共に去りぬのような置いてけぼり感!本当は続編もあったんだろうか。母親も妹も必要なものではなくなった壮年

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    2023年09月02日
  • 紀ノ川

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    朝日新聞の和歌山紀行での推薦本である。有吉佐和子は、恍惚の人や複合汚染で有名になっていたので、その本を読んだが、こうした昭和の初めの地方の和歌山の女性を描いたとは思わなかった。和歌山を昭和にかけて知るにはガイドブックとして最適であろう。

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    2023年07月23日