あらすじ
津川家の正子と蔦代は将来の看板芸者と目されていた。しかし、二人の性格は全く対照的だった。実直で健気、芸者の通信簿でも総牡丹(全甲)をもらうほど頭のいい正子。美しく信心深いところがありながら、水揚げ前に不見転(みずてん)で客をとり、嘘を本当と言いくるめて次々に男をかえていく蔦代。――二人の芸者の織りなす人生模様、女同士の哀歓を絢爛たる花柳界を舞台に描く。
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Posted by ブクログ
このところ有吉佐和子の小説にハマっている。本書も人物描写が秀逸で、大変面白く読み進めている。
自由奔放な一方で信心深く、花の世話などまめにする、ちょっと不思議な性格の蔦代、成績優秀で真面目(と思われているようだがそうでもないと私は感じている)、世間知らずなところがある正子。最初はうまくやっていた二人の関係が下巻ではどう変化していくのか、読むのが楽しみ。
上巻最後の、正子が、三延の浮気相手は一体誰かと思い悩む描写だけは繰り返しが多く少々くどく感じた。
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芝桜(上)芝桜(下)そして木瓜の花へと続く正子と蔦代2人の雛妓時代から初老といわれる年齢までの極めて微妙な関係がとても魅力的な筆致で描かれている。
特に上巻第一章の一。この始まりは秀逸だと思う。 ここで正子と蔦代それぞれの性格、立ち位置を実によく表している。これから始まる女2人の人生を物語るには最高の出だしだと思う。 本当に有吉佐和子さんの文章はうまいなぁと思う。
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正子と蔦代の2人の芸者の人生。とにかく蔦代のつかみどころのない無気味な性格が印象的。
上下巻たっすりおもしろかった。
その後の人生も知りたい。
そして着物の描写が素晴らしく、正子が鶴弥にもらった漆の黒い着物を見てみたい。
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対照的な2人の芸者を描いた物語。
蔦代の行動の意図が分からず、
先が気になって気になって、
ページをめくる手が止まらなかった。
舞台である花柳界の風習も知れば知るほどおもしろく、
とても魅力的で物語の題材にぴったりな設定だと思った。
有吉佐和子の書く文章はしなやかで、言葉遣いもとっても上品。
読んでいて本当にうっとりしてしまう。
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上下巻、立ち止まることのない、怒涛の読書。正子の気高さもなかなかだが、蔦代の不気味さは並々ならぬもの。得体の知れない生物を見ているような不安定な気持ち悪さがあった。<上下巻>
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女の子が、身近な人や環境の影響と、自分自身の成長の織り成しによって、女になり女性なり生きていく、そこで描かれる美しい主人公たちと、美しいところで終わらず、醜いところまで隠さず見つめる有吉佐和子の筆が好き。「芝桜」は華やかな花柳界の成り立ち、人間VS人間の心の綾を深く観察していてなんとも素晴らしいが、可愛い女の子が二人、綺麗な着物を着て歩いたりしゃべったり踊ったりしている姿が思い浮かび、それだけで可憐で華麗で楽しかった。「そろそろ春だから今年はもっと花を植えようね」という蔦代の言葉がなぜか耳に残る。
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有吉佐和子さん、2冊目。
面白かった。
女同士の関係の機微を描くのが上手な方だと思う。そして、花柳界のなんたるか、男のプライドなるものも垣間見せてくれる。
小さい頃に、家庭の事情で、芸妓の見習いとなった正子と蔦代。全く性格の違う二人。
如才がなさすぎて、どこかこすずるく、人から好感を持って受け入れられない蔦代に対して、同性からも信頼されて着実に芸の道を歩む正子。
一見、正子の方が好感を持って描かれるが、私は微妙。所詮は旦那に体を売る芸妓なのに、本妻として表通りを歩くことを目標としたりと中途半端な感じがしてしまう。
対して、確かに蔦代はそれこそ感じは悪い。。。というか猫のような性格。でも、生き抜くために必要な選択をしただけとも言える。
好き嫌いはあれ、二人とも一生懸命生きたと思う。恋に生きるのが幸せか、家族のために生きるのが幸せか、などなど女性が何を一番として生きるのが幸せな選択かなのかについてがテーマなのではないかと思う。
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冒頭から二人の少女の対比が鮮やか。ぐいぐいと引き込まれます。
時代が違っても、まるで息遣いや、頬の産毛とかを感じさせるかのような精密な人物描写。一気に下巻へ
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「悪女について」がおもしろかったので、同じ作者の花柳界を題材にしたこの作品も読んでみた。これもまたとてもおもしろかった。上下巻のボリュームだけど、一気に読んでしまった。 ジャーナリスティックな視点と、エンターテイメントとしての完成度の高さが有吉作品の魅力かな。
この同じストーリーを䔍代目線で書いたものも読んでみたい。
嘘をつくのがうまい人は、きっとソレ(嘘)を、本当だと思っているんだろうな。自分で本当だと信じているから他人に対しても説得力があり、信じさせてしまうんだろう。䔍代の嘘は、本人の中ではすでに「本当」にねつ造されていたんだと思う。しかし、こんな人が身近にいたら許せないだろうなぁ…。(2009 / Feb)
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上下巻。
いやいや。予想外におもしろかった。
「はいからさんが通る」あたりの時代ですね。もっと後までいくけど。
もうちょっとドロドロさを足すと、とっても昼ドラ向きだと思う。花柳界を生きた二人の女の話。
蔦代みたいな女いるわ〜!絶対どこかで出会った気がするもの。
蔦代が本当に正子のことを好きか、本当は嫌いか、読んだ人によって分かれそう。私は本当に好きではある、と思う。
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大正から昭和初期にかけて、激動の時代をかけめぐった芸者の葛藤が感じられられます。
花柳界の厳しさを知りました。
華やかな表。
金と自由に縛られる裏。
こんな世界を生き抜く女性の身のこなし方がとても勉強になりました。
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香華に続いて外見は華やかだが、苦界で懸命にいきる女が主役。一本気な正子の視点でかかれており、蔦代の女としてのずるさはちらちらとしかみえず、それが不気味。
Posted by ブクログ
こういう女って、確かにいるな…
読んでいるうちに、蔦代のことがオゾましく、どんどん不気味に思えてくる。
この話の主人公は、むしろ正子よりも蔦代なのかもしれない。
蔦代は、「正子には常に劣っている」という劣等感が、おそらく自分でも気付かぬうちに、正子への足手まといを、自分に演じさせている。
しかし、蔦代の腹黒い感情など、作品には全く登場しない。
むしろ、限りなく純粋で、情に厚そうなのである。
しかしこの蔦代という女、自分の欲望に限りなく純粋がゆえ、そのためには手段を選ばない。
それが悪であることにすら、気付かない。
女の純粋こそ最も始末が悪く、残酷なのだ。
…と、思った。
正子は最後、とうとう蔦代と絶交する。
正子にとって蔦代は、くされ縁の、古い恋人の様なモノだったのではないか。絶交して開放されたあとの正子は、実に清々しいものである。
女同士の関係の描き方が、とても秀逸な作品。
Posted by ブクログ
津川家の正子と蔦代は対照的な性格ながらも、看板芸者と目されていた。 絢爛たる花柳界を舞台に二人の芸者の生き様を描く。
途中までは正子の引き立て役である蔦代が不憫にも感じるのですが、中盤からはどんどん蔦代の存在感が増してきて、不気味に感じます。
正子視点なので、基本的には彼女に感情移入しているのですが、上巻の最後では蔦代に戦慄しながらも、ちょっと返り咲いた蔦代にあっぱれと言ってあげたい。