【感想・ネタバレ】非色のレビュー

あらすじ

待望の名著復刊!戦後黒人兵と結婚し、幼い子を連れNYに渡った笑子。人種差別と偏見にあいながらも、逞しく生き方を模索する。アメリカの人種問題と人権を描き切った渾身の感動傑作!

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Posted by ブクログ

1967年、角川文庫から出版されていた作品で、
2020年、河出文庫から再文庫化された作品。

人種のサラダボウルと比喩されるアメリカ社会。
かつては人種のるつぼと言われていた。

性別・宗教・階級・出身。

人種/民族のほかにも
数々の差別が渦巻く世界。

色に非ず。

どんな見た目をしていても思想は様々。

確かにある「傾向」を、
しかし、万人に当てはめてはいけない。

熱意をもって再出版にあたってくださった
河出書房新社には、最上の感謝を。

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2026年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後、進駐軍として日本に来た黒人軍人と結婚し、ニューヨークに移り住んだ笑子の物語。
黒人の子どもを日本で産み、疎まれ、アメリカでも貧困層として生きることを強いられる。
この小説で印象的だったのは、笑子が感情的ではない女性として描かれていることだ。
妬みや怒りがあってもおかしくない状況なのに、有吉佐和子はそれを内面描写として強調しない。
怒りは行動として表れることはあっても、心情としては淡々としている。
その距離感があるからこそ、この物語は
「差別される女性の悲劇」ではなく、
差別の構造そのものを描いているように感じた。
笑子は、黒人差別の本質は色ではなく「階級」だという考えに行き着く。
白人の中にも差別される階級があり、黒人もまた別の人種を見下す。
人種が多様でない日本にも、確かに階級は存在する。
彼女は日本人である自分を意識し続けるが、
あるとき「日本の淡い色」を残さない濃い桜を見て、
ニグロとして生きていくことを決意する。
印象的だった一文に、こんな言葉がある。
「私は、ニグロだ! ハアレムの中で、どうして私だけが日本人であり得るだろう。
私もニグロの一人になって、トムを力づけ、メアリイを育て、
そしてサムたちの成長を見守るのでなければ、
優越意識と劣等感が犇いている人間の世間を切拓いて生きることなど出来るわけがない」
差別は環境だけで生まれるのではなく、
その環境が人に植え付ける意識が負のループをつくり、
そこから立ち上がろうとする力を奪ってしまう。
ニグロの妻として生き、ニグロの子どもを育てることを引き受ける決断は、
笑子なりの差別への向き合い方であり、
次の世代にはその構造に抗う力を持ってほしいという願いだったのではないかと思った。
感情を最小限に描いたからこそ、
笑子が差別を観察し、考え、選び取っていく過程を読者は冷静に追うことができる。
この本を通して、差別を「感情」ではなく構造として見る視点を得られた気がした。

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2026年01月03日

Posted by ブクログ

 タイトル「非色(ひしょく)」=「色に非ず」とは、どういう意味なのかなあ・・・と疑問を抱きながら読み進めて、最後のところで笑子の気づきとともに、ようやく分かりました。アメリカの人種差別は、肌の色ではなく「階級闘争」なのだということでした。
 笑子は、戦後、黒人の米兵・トムと結婚し幼子を連れてニューヨークに渡りました。アメリカには、様々な人種が存在し、笑子のような「戦争花嫁(ワーブライド)」は、結婚相手の人種によって社会的な差別や圧力を受けていました。初対面の人に「夫はニグロだ」と告白した瞬間から蔑みの対象にされてしまいます。
 しかしながら、ニグロとして社会から差別の対象とされているトムは、プエルトリコ人に対して自分より劣っていると言い放ち蔑視しています。そして、同じ黒い肌であっても、アフリカ人はアメリカのニグロを蔑視し・・・そんな差別の連鎖が存在しています。
 読み進めながら、人間って自分より劣る者の存在を確認することで、自らの立ち位置を守っていこうとする生き物なのだろうか…と、悲しい気持ちになりました。
 それでも、最後に笑子が辿り着いた心の境地に、私は思わずエールを送りたい気持ちになりました。
 「非色」は、戦後まもない時代のお話だけど、現代にも通じる社会の課題を実感しました。

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2025年12月29日

Posted by ブクログ

とあるYouTubeでおすすめされていた本。予想を上回るほど面白くて、ページを捲る手が止まらない。とても悲惨な状況なのに、どことなくカラッとした明るさも感じるのは笑子の逞しさ故か。1964年に書かれたとは思えないほど読みやすいし、現代にもつながるテーマである。作者の他の本も読んでみたくなった。

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2025年12月18日

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高校生の課題図書にするべき作品。
笑子の葛藤に共感を覚えながら、差別とは何か、を考えさせられる。あっという間に読み終えた。

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2025年12月06日

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終戦後アメリカの黒人兵と結婚した女性主人公。出産後日本で差別に遭い、希望を持ってアメリカに行くも、もっとひどい人種差別が待っていて‥。
差別への反骨精神。

当時のアメリカの人種差別と生活がリアルでとても引き込まれました。
人種差別、同じ人種間の階級差別。
差別は本当に人の心を傷つけ、自尊心を失わせたり憎しみを生むということを深く思い知らされました。

ラストの主人公が清々しい。

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2025年11月30日

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引き込まれる話の展開と考えさせられる深いテーマが盛り込まれていて一気読み。

人種問題や差別はなくなることはない。この世に黒人しかいなくても、生まれや見た目などで差別するだろう。実際、この本の中でも黒人の肌の色が濃いか薄いかの会話が何度も出てくる。

人間は、階級や違いを見つけては差別する生き物だ。「人種差別はしない、するべきではない」という素晴らしい信条を持っていても、「あの人は〇人だから」といった、偏見を少なからず持っている。

黒人のトムが日本に駐在中、「ここには平和がある。そして何より素晴らしいものがあります。それは平等です。平等があるから、だから私は日本が大好きです。」と、笑子や笑子家族に放った言葉。

なんて大袈裟なことを言ってるのかと、この時笑子は思っていたが、トムと結婚してNYに住み始めて、なぜトムがあんなことを言ったのか身に染みて理解できるようになる。

トムにとっては、日本は日本人だけで構成されていて、みな平等な夢のような国に思えたことだろう。

そんなトムでさえ、ニューヨークに戻れば、黒人より下であるプエルトリコ人を下に見て差別する。

ニューヨークに住む日本人同士では、パンパン上がりか、そうじゃないか、留学生か、旦那はどの人種かで差別し合う。

トムのいう「平等」は残念ながらどこにも存在することはない、人間である以上。

そういうどうしょうもない出来損ないの人間であることを認めつつ、与えられた場所で、できるだけ平和な世の中作っていこうと努力するしかないのか?

この本は1964年に書かれたものだが、古さは全く感じない。ということは、この人種差別などの差別問題は全く解決していないから。

格差が拡大して、中産階級が貧困層へ堕ちていってる今、むしろこのテーマのもつ問題が表面化してるといえよう。

日本も人種のるつぼになりつつあるからこそ、読むべき本だと思いました。

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2025年11月29日

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終戦直後、黒人のアメリカ兵と結婚し、ニューヨーク、マンハッタンのハアレムで逞しく暮らす日本人女性、笑子の物語。

初版は1964年。少し古いので身構えたが、めちゃくちゃ面白い!美しく流れるように綴られる文章に引き込まれて一気読み。ところどころ、さくらももこのエッセイを読んでいるような、クスリと笑える皮肉もきいている。

人は自分より下を見つけて優位に立ちたがるものなのだと、その無意識の傲慢さを見事に描いた作品だと思う。

笑子の夫のトムがそれをわかりやすく具現化している。

日本に兵士としている時は堂々としていて気前のいい男だったのに、ハアレムでは「愚鈍」で「無気力」な甲斐性なし亭主であった。そしてプエルトリコ人をバカにする時だけは生き生きとしている・・・

正義感や反骨精神の塊のような笑子の方はもう少しわかりにくい。

「そうやないか。プエルトリコをかばうのはええ気持やろ?黒より下の亭主持ってる女やと思えば、単純な私なら嗤いものにするけど、あんたはもう一つ手ェこんでいるだけや。(後略)(p.223)」

友人に、正義感からの傲慢さを指摘され、血の気が引く笑子。

笑子はやがて「差別とは何なのか」を考えるようになる。果たして色の問題だけなのだろうか。

ワシントンの桜と自分を重ね、自分が何者なのかを悟る笑子が眩しかった。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

島国、日本。
それを思い知らされる一冊だった。

偏見をできる限り手放して皆を平等に映す目を持ちたいという思いは常々持ってきたけれど、この本と、初めての長期海外生活で差別とは、を人生で1番考えているかもしれない。
それは、自分が差別を受けているとかでは全くなくて(移民国家オーストラリアにおいて、過去の旅行からの予想通り住み始めてもやはり明らかな差別は今のところ受けていない)、自分の中にある差別意識に向き合うこと。

世界のニュース、時事に日本人が疎い傾向にあるのはやはり物理的に世界と切り離されている島国だからというのは大きな原因だと思う。
日常に支障のある他国との衝突も実質的な影響が少なくて、なかなか考える機会も知る必要もなく生きている"超平和"な国。
メルボルンに住んでいると、口々に日本は"super safe"だと言われ、日本は別世界のように言われるけれどそれは単純に喜べるものでもないと感じ始めている。

イタリア、プエルトリコ、インド、ニグロ
自分の中の無意識差別
知らないということ
見分けがつかない理由

見た目の事実ではなく歴史の事実に基づく差別、目に見えない原因による差別が1番根深い。
人間が人間であるが故の差別。

ボルネオで感じたこと。
知らないという幸せ、知らないからこそ生まれない差別意識の重要性はあるのではないか。
正直、こっちにきてオーストラリアでコロンビアは差別されていて、その理由は移民としての数が多いことと現地人が仕事を奪われるからだという意見を耳にしてビックリした。その理由もばかばかしいと私は思うが、それ以降コロンビアの人を差別されている人なのだという意識を持っているのは事実。
でも、知らない上で平等だと正義感振りかざして近づくことが傷付けるのも現実。

色や歴史が差別を産むのではない。
教養こそが差別と戦う剣となり盾となる。
少しでも多くの教養を身に付けること。
教養のある人間は皮がどんなものであってもその目といい纏うオーラといい、真に見下されることはない。例え見下されたとしても、見下す人間自身の教養のなさゆえ。
それが今私の考える差別との闘い方。

日本の中でさえ、同程度の教育を受けてきたかどうかが関係性に多大な影響力を持つ。
生まれながらに施された教育の差があり、そこに派生して成人後に教養の差のある人間同士の場合何がその関係を救うのか?
本や映画といった文化教養材こそが救いとなる。
だからこそ、近しい人の中である部分の欠落を認めた場合にそれを補う力のある本を勧めてしまうのかもしれない。
かなり偉そうな物言いになっているけれど、私も知識不足の分野が多々あってそれらを読むには根気がいり、中々手を出せていない。
変わることには根気がいる、、

皮膚の色などといった外見的差別の次に生まれてくるのが階級差別であると著者は伝えてくる。この人とは違うから分かり合えない、断絶する、ではなく同じものを探して共有することが心の豊かさに繋がる。

世界は少しずつ変わっているし、5年の歳月があれば大きく変わる。
これまでもこれからも、人々は差別の問題に個々で向き合いながら時に悩み時に闘って生きている。そんな個々の存在の素晴らしさを体感できた一冊。

また、異国に住んで初めて間違った日本文化を好む人々に本物の日本文化を訴えるようになった。私は日本文化の持つ静寂な儚さが一番の魅力だと思う。

何であれ、一度染まってみることの大切さ。
芯だけを持って付属品は手放して、真っ白な状態になって染まっては手放して、染まった中から芯としたいものだけを手元に残す。
その作業の繰り返しで人は出来上がるし、その芯が太くなるほどに手元に残せるものは少なくなっていく。
笑子は最後には大事なもののためにそこに染まりきり家族全員が仲間、ニグロとなることを選んだ。

何より驚いたのはこの作品が1964年に書き下ろされていたこと。この事実の凄みについてはあとがきで綴られていることがすべてだった。

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2025年11月16日

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だらりとした空気で進んでいく物語。
でも目が離せない。登場人物の心の動きをすごくリアルに感じ取ることができる。そして一人ひとりに共感できる。
「非色」の意味を最後に噛みしめ、寂しいような余韻を感じた。良書。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

残酷な人種差別の現実が容赦なく描かれている。
日本に駐留していた米軍兵も、米国に帰国すると元の立場に戻ってしまい、笑子(主人公)の夫はニグロとしての生活に。笑子のみならず、戦争花嫁のほとんどは現状を何も知らずに渡米したのであろう。読んでいて最も辛かったのは、麗子のこと。ニグロにも蔑まされるプエルトリコ人の妻となり、笑子に比べても相当ひどい生活ぶりを送ることとなったが、日本にいる家族や親戚には高価な毛皮や装飾品で飾った自分の写真を送り取り繕う。最後は自死。
笑子は、途中、夫らと同様に自分を保つためにプエルトリコ人を蔑んだりもするが、最後はニグロとしての自分を受け入れる。そこから初めて前向きな生き方がスタートし、最後は明るく結ばれているのが救いだ。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後の女性が異国の地で精一杯生きる中で、人種差別について考える物語。

主人公・笑子が「色ではなく、使う側と使われる側だ」ということに気がつき、最後は「自分はニグロだ」というセリフでこれからの未来に進んでいく様子で終わる。

この差別的な考えは今もあると感じたし、笑子は差別してないと思いながらも、心のどこかではしていて、それで自尊心を保っていたりと、とても人間的であると感じた。

今とは違う時代背景なのが新鮮であっという間に読み進められたし、笑子の力強く生きる姿がかっこよく見えた。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても面白かった! 戦後の混乱期に黒人兵と結婚した女性が日本でも渡米後も体験し見聞した様々な差別。次々に困難に出会っては戦うように泳いでいく主人公の人生が面白く、読むスピードがどんどん上がってしまった。
戦争花嫁である女性の人生を軸にしているが、本作のテーマはタイトルにあるように、差別だ。主人公は差別は肌の色のせいなのか、何なのかを常に考えてしまう。
しかし、観念的な話にならず、常に具体的な事件と行動によってスピード感ある展開をするので飽きずに読んだ。

本作の初の出版は1967年で、アメリカでは公民権運動たけなわの頃だ。また、戦争花嫁を取り上げた本も他に見当たらず、いろんな意味で先進的な作品だそうだ。

時代のせいでNGワード満載なのだが、差別の意図がないことははっきりと読み取れ、現在読んでも古さを感じない良い作品だと思う。

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2025年06月10日

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1964年の作を2020年に復刊したもの。かなりの衝撃的な作品だった。
戦後の日本で黒人米兵と結婚した主人公笑子が子連れでアメリカに渡り、ニューヨークでの生活を描いている。日本での差別以上に、移民のるつぼのアメリカには差別が当然の如く蔓延している。
日本人も恐らくイエローとかジャップと差別されただろうにこの中には描かれてない。が、この中で笑子の娘の、明るい未来を象徴する作文が胸を打つ。笑子自身のポジティブさや負けん気も、内容に比べて救いの空気を出している。最後の場面が凄く印象的で、笑子だからこそのセリフだと思った。
この本を勧めてくれたスキボンさんありがとう。

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2025年05月07日

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すごい作品だった。この作品の衝撃といったらなかった。黒人兵士と結婚してアメリカに行った女性の波乱に満ちた人生の中で問い続けた肌の色による差別について、どこに帰着するのかハラハラしながら読んだ。肌の色の人種差別だけでなく、この世は差別だらけだと実感させられる。異国で、差別の中で日本人女性が子を産み育てながら働き、必死に生きながらの様々な葛藤を読むほどに、有吉ワールドに引き込まれていった。最後は彼女なりに自分は何者かという答えに辿り着く。最後の『私は二グロだ』という言葉に、確かに人間は「肌の色ではなく」、どこでどう生きるのかを選び取っていく主人公の人生に清々しさ、頼もしさを感じた。

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2025年04月21日

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この時代にすごすぎる。
移動中に、感情が追いつかなくて一目もはばからず泣いてしまった。素晴らしかった。

1964年初版、現在は不適切といわれる差別的表現が多いが、出版社や遺族による尽力により、当時のままでの再出版という注がある。

 戦争で黒人米兵と結婚し、肌の黒い幼い娘の手を引き日本を出た女性の一代記。しかし、米国において働き始めて階層を行き来することで世の中の差別は単に日本で受けた黒人への糾弾のみならず、さまざまな人種同士がお互いについての考えがあることを知り、そんな世の中でもどんどん混血児は生まれてくる。

黒人も白人も黄色人種も、肌の色に関係なくそのなかでさまざまな階層意識がある。だから「非色」。今日もアンダーグラウンド、もしくは公で交わされている、誰しもにつきまとう差別意識や思想について、上流階級の使用人をつとめる主人公のまなざしはとても正直である。そして、仕事を終えると、彼女とは違う肌や髪を持つ、家族が住むハーレムの貧民街に帰るのだ。

主人公より四半世紀ほど後であり、黄色人種同士であるので単純化はできないが、わたしの親は片方が日本人であり、結婚後米国NYCに住みわたしが生まれ、夢やぶれ日本に家族で越して来たと聞いたことがある。わたしは、日本人の方の親とは言葉が分かっても気持ちが通じないなと何度か思ったことがある。そして、言葉が通じない従兄弟がひしめき合い、賑やかだが寄る辺なく過ごしていた片方の実家の雰囲気をふと思い出した。 いまに至るまで、どちらのアイデンティティに対してもそれらを代表する気にはなれないから、ずっとふわふわとした気持ちでいる。日本で過ごす場合、特にそれで困ったこともないし、そうした「スタンス」が邪魔になることすらあるように思う。
しかし、半世紀以上前のNYにおける肌の色・国籍・訛りがある人種の坩堝において、自分の思想が輪郭を帯びてくる様子がまざまざと描かれる。それが、例えば自分が産み落とし成長した子女とすら違った場合、何を思うだろうか。

生い立ちにまつわるアイデンティティについて、誇りに思うことは大事だと思う。しかし、自分が選ぶ、選ばないにかかわらず、主人公、そして自分の両親、国を越えてパートナーになった人たちを見ていると、その後の人生で「そうなるしかなかった」としか言いようがないことが多い。そして、そんな出自を生まれながらにして生抱えていても、いやどんな出自を持ってしても、決して何かを成し遂げる必要はないのだと思う。そしてそれは決して厭世的な意図ではない。

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2025年03月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。それでなければ落着かない。それでなければ生きて行けないのではないか。

本書の中の一節。私もきっと無意識のうちに何かを差別し、何かから差別されている、ということを忘れずに生きていこうと思った

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2025年02月14日

Posted by ブクログ

時々考えることなのだけど「人が人を差別する意識はどこから生まれるのだろう」ということを、この本を読み終えてまた考えた。
歴史や時代に刷り込まれる場合もあるだろうし、生まれ育った環境(親や友人など)を通して意識に根付く場合もあると思う。
自分自身「差別なんてしたことありません」なんて到底言えないのだけど、果たしてその意識はいつ根付いたのだろう。

初版は1964年。2021年に復刊を果たした本作。
第二次世界大戦後、日本で生まれ育った笑子は、仕事の関係で知り合ったアメリカ系黒人のトムと結婚することになる。
作中では今は差別用語として使われなくなった「ニグロ」という言葉が多用されているが、変更はされず復刊されている。
数年後笑子は娘のメアリィを出産する。
トムはアメリカに戻り、離れた生活をしている間に笑子は一度離婚を考えるが、日本にいてはメアリィを育てるのにも支障があると実感して渡米することを決意する。

ここまでが序盤。
序盤から差別の描写は山のように出てくる。
今は日本と黒人のハーフも珍しくないけれど、当時はそれだけで周りから忌避されることもあったということ。

笑子が渡米してからが物語の本筋なのだけど、さまざまな人種差別が渦巻きまくっていて、だけどその理由を語れる人はいない。
なぜ黒人が差別されるのか。白人の中でも、プエルトリコやイタリアの人間はなぜ差別されていたのか。

ハーレムにある半地下の穴倉のような住まいで、それでも笑子はたくましく生きる。
渡米してからも子どもが生まれ(当時のアメリカの多くの州では堕胎は罪になるという背景もあり)笑子と似たような境遇にある日本人の女たちの奮闘ぶりも描かれる。
読んでいて、思案する時間、理不尽さ、痛快さなど、色んな要素を味わえる。
そして笑子は、とある金持ちの家の家政婦として働いている期間に、ひとつの答えを出す。

「非色」とは「色に非ず」ということ。
それは分かっているのに、今も差別が完全に無くならないのはなぜなのか。
今でも時々話題になる事件を見ていて、1964年に有吉佐和子さんが表現したものは、今も変わっていないのだと痛感する。
日本人に限定しても、色での差別は無いにしても、差別自体はたくさんある。
意識に根付くもので無意識に行動する人の恐ろしさを描いている小説なので、復刊したことはきっと大正解なのだと思う。

社会派をエンタメに落とし込むという意味でもすごい小説だと思った。考えてしまうけど、とても面白かったので。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

差別に対する自分の認識をひっくり返されたような気がします。戦後の日本にやって来たアメリカ兵は白人ばかりではなく、実際には有色人種のアメリカ兵もいたということは今まで想像したことがありませんでした。様々な人種が存在する地域においては単純に肌の色だけではなく、それぞれの人種内で人種による差別意識があるということは、日本人ばかりの中で育って来た自分にとって全く新しい視点でした。その人の背景や置かれた立場によって、同じ人種内であってもそれぞれに差別意識が生まれる残酷さを目の当たりにした気がします。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

一昔前の文体だったが、それが逆に柔らかく読みやすかった(ひと昔前の作品だから当たり前だが)
現代にはない人間の生命力が感じられ生きる実感を味わせてくれる作品だった

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

人種差別の根深さについて考えさせられた本。
どんな血が流れているかで人生が決まる、そしてその人生をほとんどの人が当たり前として受け入れていることが苦しかった。
差別されている側であってその辛さをわかっているのに、自分より下とされている種族のことは見下したり、見下すことで自分の誇りを守っていた。
いじめの理由も親の職業や貧乏が理由であったり、自分よりいじめられている人に安心したり、似たような構図になっていると感じて、人間ってそういう風にできているのかと苦しくなった。

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2025年10月31日

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終戦直後、アメリカ社会にひそむ人種問題。
何系のアメリカ人なのか?がここまで強く意識され環境を変えるのだと知った。
当時ニグロと呼ばれた人種もアフリカ系とアメリカ系がお互いにお互いを蔑んでいる。
自分より低い階級が存在することでアイデンティティを感じるというなんとも悲しい人間の性。
問題は肌の色にとどまらず、規律を立てるためには支配するものとされるものに分かれることが必然になっていることにある。
たとえ家の中でさえも力関係は存在する。
決して昔の話ではなく、いまも人種差別は残っているし、人間の性質は変わっていない。
差別、というこの感情は、解決するのだろうか。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

なぜ差別されるのかについて、とことん考え追求していくのは初めてで、ハッとさせられ、なぜ今まで疑問に思わなかったのかと、読後の今思う。

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2025年09月06日

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差別そのものに真正面からも向き合った物語。反骨精神の塊のような女性佐和子が、戦争の最中で出会った黒人と結婚してあらゆる差別と葛藤しながら生き抜いていく。自分の中にもある差別の意識をためつすがめつ眺める。それがあることを認めることの苦しみ。
自分が差別を受けているしている対象の一人でもあると認識するラストはなんとも言えぬ読後感。読んでよかった。

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

古書購入

これは深く考えさせられた本。
肌の色が違うことの差別、
差別の中でまた細分化された差別。
戦後の話だが、今読んでなんの遜色もなし。

勝手に、有吉佐和子祭りを開催してます。

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2025年08月08日

Posted by ブクログ

最初は贅沢な暮らしだったが後半は貧困生活
子供の世話を充分にできず、贅沢なマダムの暮らしを知り涙してしまう
子供は親を選べない、自分は差別される立場ではないと思っていたが実は自分も差別される側
みんな誰かしらマウントを取り馬鹿にしているのは一緒
知識があれば貧困は回避できたのだろうか
知識があっても人種によってレールがすでにひかれている
みんな平等で労わりあえる社会だと貧困による犯罪や差別も減るのではないか

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2025年05月12日

Posted by ブクログ

 本書は、1959年にニューヨークに留学した有吉佐和子さんが、アメリカの人種問題を内面から描いた作品(1964年)ではあるものの、それをアメリカ黒人と結婚し子どもを産み、アメリカで暮らすことを決めた日本人女性の視点で描いている点に、本書ならではの捉え方があるのではないかと感じられたことから、2003年を最後に重版未定となっていた本書が、2020年に河出書房新社から復刊された意義も充分にあったのだろうと思われた。

 人種問題といっても捉え方は様々で、戦後の時代背景に於いて、使う者と使われる者との間に生まれる格差に加え、アメリカ黒人だけに限らない差別を知ることによって、無意識下ではあるのかもしれないが、人間本来の嫌な一面を浮き彫りにしたようでもあり、それは『最下層』というものを設定することによって、自分はまだその階層ではないという安心感を抱くことが、自己のアイデンティティを確立させることに繋がっているような描写に、やるせない辛さを感じられたからなのだが、それはあくまでも人種としての見られ方しかされない、『個人』としてではなく『あなたたち』として括られてしまうことの辛さによるものなのだとしたら、おそらく誰も責めることはできないのではないかと思ってしまうような、個の自由の無い閉鎖的な社会の息苦しさを垣間見た気持ちであった。

 ただ、そうした中でも有吉さんが問い掛けているのは、人種問題とは身体の色だけに基づくものなのであろうかということであり、それは黒人であっても、考え方や行動は人それぞれで異なるのではないかという不確定要素だけではなく、アメリカ黒人であっても、その人が生まれてくるまでの間に積み重ねられてきた家族の歴史や血の存在如何によっては、確率の高低差こそあるものの、それらが確実に証明してくれるのは日本人と黒人の間に生まれてくる子どもは、決してその二種類の人種だけに限られない場合もあるということであり、この事実がどれだけ大切なことであるのかを考えるにつれて、「見た目だけで人間のいったい何が分かるというのだろうか?」という思いに、もし至るのであれば、それこそが『非色』というタイトルに込められた、当時の有吉さんの切実な思いなのかもしれないと私は思うのだが、どうだろう。

 また、以前読んだ「花ならば赤く」同様、本書に於いても、つい感情的になってしまいそうな問題に対して冷静沈着に考えて答えを導き出そうとする姿勢に、有吉さんの真面目な人柄が窺えながら、そうした理性的なものとは真逆な行動を登場人物にさせる描写もあることによって、人間とは色々な一面が複雑に折り重なることで、その存在を成しているのだということを知っていることに、とても好感を持つことができた、そんな対照的なもの同士が当たり前のように共存する人間を描いたという意味では、主人公「笑子」の、反発心旺盛な様で自らの人生を突き進む一方で、お節介とも思われる程に他人への思いやりに溢れた、人物描写からも充分に感じられたのであった。

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2025年05月02日

Posted by ブクログ

色に非ず。肌の色での人種差別、肌の色ではない人種差別、それによって人生が変わってしまうこと、交わらないこと、置かれた環境の厳しさ難しさ、自分の知らなかった世界を知れた。終戦直後から数年間の日本とNYの実情は厳しかった。果たして今に至っては、なにかよくなっているのであろうか?アメリカで何が起きているのか自分からはぜんぜん知れていないだろう。観光でしか行ったことがないので...。日本でも、偏見などによる差別とまではいかなくても差別意識はなかなか消えないと思う。世界中がかわっていくこと変えていくことはとっても難しいと思うが、差別で苦しむ人が少なくなっている、いくことを願う。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

1964年、筆者がニューヨークに留学した頃のアメリカを描いた作品。
令和の今読んでも、まったく古臭くなく時にユーモアを感じさせる描写もあり飽きずに読み進めることが出来た。
差別は肌の色ではない、階級によるもの。時代が変わっても尚、人間の本質は変わらない。

p325
金持ちは貧乏人を軽んじ、頭のいいものは悪い人間を馬鹿にし、逼塞して暮らす人は昔の系図を展げて世間の成り上がりを罵倒する。要領の悪い男は才子を薄っぺらだと言い、美人は不器量ものを憐み、インテリは学歴のないものを軽蔑する。人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。そうでなければ落ち着かない、それでなければ生きて行けないのではないか。

p366
この世の中には使う人間と使われる人間という二つの人種しかないのではないか、と。それは皮膚の色により差別よりも大きく、強く、絶望的なものではないだろうか。

差別感情に支配されないようにするには?
他人を下げることで上がった気になる自尊心は不純。
自己肯定感を、自分の努力や成功体験で上げる為には、自分は自分というぶれない軸を持つこと、そういった強さを持つことが、本当の意味で自分の価値を上げることなのだと気付きを得られた。

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2026年01月02日

Posted by ブクログ

差別された側でも、平気で差別する側になるし、気づかぬうちに差別してることもあるし、優位性とか優越感はどうしようもない性なのかと、ぐるぐるした

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2025年08月27日

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