有吉佐和子のレビュー一覧
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以前に読んだ「乱舞(みだれまい)」以前のお話。ちなみに「れんぶ」ではなく「つれまい」と読む。
やっぱり有吉佐和子の描く女達には粟肌が立つ。いわゆる「女の争い」だとか「女は化物」とかそういう陳腐な概念から想像してもらっては困るのだが、とにかく彼女の描く女は美しく、また怖ろしい。
橋本治が、「昔の女にはすごい抑圧があって、それに耐えてて、時々ふうってなるから美しいんだよ〜ん」みたいなことを言ってたのを思い出した。懐古趣味に走って現代の女がどうこう言うつもりはないが、抑圧がないところに美しさがないというのは分からんでもない。
乱舞を読み返したくなったが、家に見当たらない。残念。 -
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祖母、母、子、孫の脈々と受け継がれていく、女としての運命。
『芝桜』と違って、花柳界よりも宿屋の方が分量的に多かったかな??
芸者から女将になっていくのは『芝桜』と同じ展開。
でも、正子&蔦代の親友って関係と違うのは、郁代&朋子が親子って関係であるところ。
郁代がいつまでたっても若々しく、ずっと女であり続けるのは、恐ろしいくらいでした。。
「おかあさん、あなたが何度も結婚をし子供を何度も生んだりするから、
私は結婚も子供もできないんですよ……!」
とまで、実の娘に言わしめる母親は、強かで計算高くけれど信心深い蔦代をはるかにしのぐ、
強烈な女でした。。
この作品を読んで、人の死があまりにもあっ -
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大正・昭和に生きた芸者の奇縁な友情の物語、とまとめると乱暴なのだが。
主人公正子はときに(というよりは常に?)蔦代をうとましく感じ、逃れようとするが、結局は助けてもらったり、腑に落ちないながらも許したり。
最初から最後までとらえどころのない「蔦代」には、読み手としても気味悪さを覚えるが嫌いにはなれない。したたかという言葉の枠に収まりきらない蔦代。
大きく時代が変わりゆく中での、花街の様子、男女の心模様、戦争前夜の動きなどがまるで目の前で見てるかのようないきいきとした文章で、読み応えたっぷり。
売れっ子芸者の話のタイトルが『芝桜』?と最初は違和感を感じたが、冒頭で芝桜の話があるものの、なんとなく -
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「悪女について」がおもしろかったので、同じ作者の花柳界を題材にしたこの作品も読んでみた。これもまたとてもおもしろかった。上下巻のボリュームだけど、一気に読んでしまった。 ジャーナリスティックな視点と、エンターテイメントとしての完成度の高さが有吉作品の魅力かな。
この同じストーリーを䔍代目線で書いたものも読んでみたい。
嘘をつくのがうまい人は、きっとソレ(嘘)を、本当だと思っているんだろうな。自分で本当だと信じているから他人に対しても説得力があり、信じさせてしまうんだろう。䔍代の嘘は、本人の中ではすでに「本当」にねつ造されていたんだと思う。しかし、こ -
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こういう女って、確かにいるな…
読んでいるうちに、蔦代のことがオゾましく、どんどん不気味に思えてくる。
この話の主人公は、むしろ正子よりも蔦代なのかもしれない。
蔦代は、「正子には常に劣っている」という劣等感が、おそらく自分でも気付かぬうちに、正子への足手まといを、自分に演じさせている。
しかし、蔦代の腹黒い感情など、作品には全く登場しない。
むしろ、限りなく純粋で、情に厚そうなのである。
しかしこの蔦代という女、自分の欲望に限りなく純粋がゆえ、そのためには手段を選ばない。
それが悪であることにすら、気付かない。
女の純粋こそ最も始末が悪く、残酷なのだ。
…と