有吉佐和子のレビュー一覧

  • 紀ノ川
    静かな和歌山の雰囲気と大きく変化する時代のうねりを対照的に感じさせる作品であった。そのうねりを紀ノ川になぞらえ、女性のもつしなかやかな強さを想像させられた。時代の変化とともに、女性としての役割や価値観の変化を個々の人物によって表現している。今の時代をうつすとしたら、どのような人物として描かれるのかを...続きを読む
  • 恍惚の人
    1972年に新潮社から「純文学書き下ろし特別作品」として出版され,1973年には森繁久彌主演で映画化された作品。

    とあるが,とてもそんな枠には収まらないような気性の荒い,純文学から離れた作風だと思う。当時の文壇がどう評価したかが気になるところだが,難儀であったことは想像にかたくない。しかし人々の共...続きを読む
  • 華岡青洲の妻
    名医である華岡青洲の元に自ら実験台(?)になる人は,当時は大勢いたことだろう。通仙散の開発にも多大な手間をかけたことだろう。

    著者である有吉佐和子は,その内でも華岡青洲に嫁ぎ妻となる「加恵」に焦点を当てて,自ら実験台として身を捧げることを切り取ることで,女の壮絶な人生を描写したのである。これはかな...続きを読む
  • 華岡青洲の妻
    こっわ。
    和歌山のことばだからまだマシな感じが…。
    日本で初めて、いや世界で初めて全身麻酔での外科手術を行った医師の話、という知識しかなかった。が、嫁と姑の美しく壮絶な物語であった。
  • 恍惚の人
    高校生くらいの頃から、自分が年老いたらどうなるんだろうと考え続けてきた自分にとってはとても読み甲斐のある作品だった。あまり表立って語られることのない介護の問題は、現代の日本においては年齢問わず必ず皆が知っておくべき事で、この本にはそうした学ぶべき事が多く書かれていた。それは単なる事実に依らず人間とし...続きを読む
  • 香華
    初作家読み。
    血縁に縛られた主人公が母親と妹の勝手さに振り回されそれでも切ることができずあらゆる手助けをする。
    小さな頃から勝ち気な性格だからか倒れることなく旅館を築き、終戦後は誰の力も借りずに食堂から大きくしていく才覚を発揮する。

    妹の子を養子にするが地元の旅館経営者が腹を痛めた子が1番だと養子...続きを読む
  • 香華
    まだ女のドロドロ系
    最初からほぼ後半まではイライラしっぱなし。
    郁代も嫌な女だけど、朋子に終始イライラ。
    そんなに憎いなら、見放せばいいものを、やはり血縁というものは切っても切れないもんかね。
    ただただ面倒臭いね、親子のやりとり。
    でもついつい読み進めちゃう。
    有吉佐和子マジック。
  • 華岡青洲の妻
    嫁姑の確執が、派手に言い合う訳でなく、お互い出方を伺うようなやり方が、ドロっとしてて怖い。
    そして、息子・夫を挟んでのやり合いがなんとも虚しい。
    結局、名医となり成功したのは青洲。
    この嫁姑のバトルを見てみぬふりしていたのは、何ともしたたかな。
  • 有田川
    有田の正月は顔が黄色い

    星月夜に川あかりの中歩く

    舌の賢い京都、見てくれ大事の東京市場

    ストーリーの面白さに加えて、方言が心地よかったし、ちょっとした表現に心をつかまれた。
  • 連舞
    コンプレックスの塊のような主人公の立身出世物語に目が離せませんでした。劣等感と苦労と孤独の連続でしたが。面白かった。
  • 連舞
    芸事の世界に生まれて自分がその才能が無いと知るというのはどんだけ苦しいことやろうと思った。
    それでも秋子は優しくて折れずに生きてて普通に応援しながら読んだ。
    秋子の、母親の愛情を受けたい気持ちを大人になってもずっとコンプレックスとして持ち続けてるのしんどかった。その一点のために生きてるんちゃうかって...続きを読む
  • 紀ノ川
    さまざまな「女」を知る作者の原点を見た気がした。
    求められる女性らしさを演じきり、家庭を動かす女。求められる女性らしさに反発し、道を切り開こうとする女…。相反する女性を描いているのに、そのどちらの心理も描き出すところが、この作品の魅力だ。時代の移り変わり、世代による価値観の違いも、物語にうまく取り込...続きを読む
  • 不信のとき(上)
    何か読みたいけど思いつかない。困ったときの有吉佐和子。

    昭和40年頃の東京。
    赤線が廃止され、婦人誌にも性についての記事が掲載されるようになった時代。妻は家で夫の帰りを待つのが当たり前の時代。

    大手商社の宣伝部に勤めるデザイナーの浅井は、印刷会社社長である小柳老人とよく飲み歩いていた。ある時は新...続きを読む
  • 華岡青洲の妻
    どろどろした嫁姑関係、無関心を装う夫。もやもやいらいらしながら読み進める。
    実験に身を投じる女性達の動機が、お互いの因縁と青州への執着に終始しているのが滑稽に思えてならない。
    女達の見えている世界が狭いのは仕方のないこと。けれども哀れだなと思う。
    ラスト近く、小陸が死ぬ間際の言葉に、カタルシスを感じ...続きを読む
  • 恍惚の人
    「ひとごとが自分になったとき」
    と思いながら再読した

    才女といわれた作家の文章はやはりすばらしい
    てだれている
    読みやすいとはこういう文章をいうのだ

    大ベストセラーになった
    あの時、 読んだわたしは30代だった

    それから40年あまり
    「恍惚の人」は「認知症」と言う病気なり
    と世間で認知さ...続きを読む
  • 華岡青洲の妻
    於継を加恵の「推し」として読むと最高にオタクでグロテスクな前半なので好き。

    序盤はもやもやから始まった。冒頭から地の文においても於継の美しさを煩いほどに強調する。そんなに美しい美しいってそう美しい人が出てこないと物語始まらないの?確かに美しい人って人の噂話を膨らませるには重要なツールかもしれないど...続きを読む
  • 一の糸
    こういう女性の一代記もの、とくに明治〜昭和初期の激動の時代の話は好み。夫婦の姿が理解しがたいけど最終的にはうらやましい。
  • 断弦
    面白かった。戦後の地唄の世界。盲目の人が、色を音で捉える表現とか、踊りを着物が畳に擦れる音で評価するシーンとか、へえーと思うこともあったし。でも何より、24歳くらいで書いた編があるってことに驚いた。さすがだわ…。
  • 複合汚染
    食品添加物など、個別ではそこまでの被害がないとして使われる物質が複合的に恐ろしい汚染を引き起こすということを伝えている本。ミレニアム世代以降はたしかに恵まれた環境で育ったかもしれないが、こういう食べ物で育ったため長生きしないかもなとすら思う…
  • 新装版 和宮様御留
    歌川広重の東海道六十九次に惹かれて、中山道の宿を訪ねる機会が増えた。すると随所随所で和宮が降嫁の折に立ち寄った形跡を見るようになり、「この険しく長い中山道を宮さんが駕籠か何かに乗ったにしろ延々と江戸まで続く道を行かれたのか」と、驚くとともに知りたいと思った。
    そして、手に取った本書であるが、のっけか...続きを読む