有吉佐和子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
世界で初めて全身麻酔による乳がん手術を成功させた華岡青洲。
青洲の母と妻が麻酔薬の人体実験に協力したという逸話だけは知っていたけど、それを広めたのが有吉佐和子さんのこの作品だったとは知らなかった。
普通なら美談として描かれそうだけど、青洲を支える女性たちにスポットを当てているところが面白い。
母と嫁が競い合うように自ら実験台になりたがるという、狂気すら漂う献身が描かれている。
どちらがより献身的かを競う嫁姑の意地の張り合いによる心理戦が続いていく。
口にする言葉と嫁の加恵が淡々と語る心の中の本音が全く違う。表向きは仲の良い嫁姑に見えるから尚更怖い。
ただの嫁姑の嫌味バトルだけではなく、嫁ぐ -
Posted by ブクログ
ネタバレいろいろ容赦なさすぎて、読んでいて辛い小説だった。
主人公清子が針を踏んでしまい足が不自由になる。時代性はあるが、足が不自由な人を貶める言葉が再三出てきて、身体の不自由なかたが読んだらどんな思いをするかと思うとつらい。
出征した幼馴染弘一を心の中で慕っていた清子、あるとき彼も自分を愛していたことを知る。その時の清子の思いも少女マンガ的な心境からは程遠い。終戦、弘一は無事戻ってくるが、それからの展開も少女マンガ的には行かない。
最後、清子が職業婦人として手に職を持って自立していく姿が暗示されて終わる。清子を陥れた針に最後には助けられるということか。
読んでいるときは容赦なさがつらかったが、現代人 -
Posted by ブクログ
凄い迫力ある内容だった
現在は昭和の時代より介護制度は整えられ、介護の考え方も変わってきたけれど、長生きになって認知症になる人も増え、しみじみ老いていくのは大変だと実感している
当時とはいえ、信利のような夫には腹立たしさしか感じないし、役所の指導も正論であっても介護する人の心には全く寄り添えていない
茂造の介護をやり遂げた昭子を、ただ褒めるとか労うとかいう気持ちにはなれない
家で看取ってあげられたのは、感慨もあるし達成感もあるだろうけど、だからといって解決にはならない
介護は綺麗事ではない
死に方や老い方は選べないけれど、頭を使い、体を鍛えて、何とか認知症や寝たきりにはならないようにしなけ -
Posted by ブクログ
一流商社に勤める夫の転勤に伴い、東京で社宅暮らしをスタートした音子が、社宅内の人間関係に振り回されていく姿を描いた物語。
一人息子の教育問題に振り回されるのは、いつの時代でもあることかもしれないが、同じ年頃の子どもがいる社宅となるといろんな情報に惑わされる。
新しく建った五号館には外国の支店から帰った人ばかりが入居するなかで、大阪にいた頃仲良くしていた山野夫人がいるのに驚き、そのあと一悶着があったり、子どもは伸び伸びと育てる方針で口出ししないと言っていた井本夫人が、離婚までして息子に東京の都立高を受験させ合格していたというのには、驚愕した。
社宅という箱の中で、主婦が一日中いると見栄と欺 -
Posted by ブクログ
ネタバレ内容を詳しく調べず、タイトルだけで読み始めたので、もっと楽しい旅行記かと思っていたがまさかこんな始まりとは…
ニューギニアでの良いことと、やはり日本は恵まれているというふたつを感じながらずっと読んでいた。
ニューギニアに住む彼らは1日1日を生きるのは大変だろうが、毎日のことに必死になって生きていく。それはそれで良いこともあるだろう。しかし、やはり日本に生きている身からすると、こうした不便な国がまだ世界にはあるのかと考えさせられた。濾過器を見せただけで驚く、音声を再生したら喜ぶ、そういった日本に生きている我々からしたら当たり前のようなことも彼らにとっては新鮮で、まだ新鮮に受け取る人々がいるんだ -
Posted by ブクログ
東京下町の大瀧三五郎の営む仕立て屋で、縫い子として働く矢津清子は、実の親はなく娘同然に三五郎とその妻のお幸と暮らしていた。
彼らの一人息子が出征をし、戦後に復員したが以前の真面目さは影もなく正体の崩れた男になっていた。
三五郎が亡くなり、お幸の清子に対する感情も障害を負った女に大事な息子を盗られてなるものかという狂気に近いものがあった。
戦争というものが、家族同然に暮らしていたものにこんなにも酷い仕打ちをするのか…
愕然とする思いと縫い子一筋にやっていこうとする清子の思いに胸を打つ。
縫い子として針を進める手先の描写や針を踏んでしまい、それが原因で跛となったことの大変さも訥々と書かれてい -
Posted by ブクログ
終戦直後、アメリカ社会にひそむ人種問題。
何系のアメリカ人なのか?がここまで強く意識され環境を変えるのだと知った。
当時ニグロと呼ばれた人種もアフリカ系とアメリカ系がお互いにお互いを蔑んでいる。
自分より低い階級が存在することでアイデンティティを感じるというなんとも悲しい人間の性。
問題は肌の色にとどまらず、規律を立てるためには支配するものとされるものに分かれることが必然になっていることにある。
たとえ家の中でさえも力関係は存在する。
決して昔の話ではなく、いまも人種差別は残っているし、人間の性質は変わっていない。
差別、というこの感情は、解決するのだろうか。 -
Posted by ブクログ
秋子の母 寿々は日本舞踊梶川流の門弟で若い頃から名の通った踊り手だった。 自ら稽古場と内弟子をもつ彼女は娘である秋子を顧みることはなかった。
秋子が六つの時 寿々は還暦を過ぎた七世家元 梶川猿寿郎の子を産む。
家元が自ら千春と名付けた娘を踊り手として育てあげようと寿々は躍起になった。
必要なのは血筋なのか 天賦の才なのか精進なのか …
終盤 八世猿寿郎の「─踊りの間というのは魔物の魔だ。誰も逃げ出せない。みんな死ぬまで踊り続けるんだ。僕は魔物に首の根っこを押さえられている。だから家元の僕は、門弟の首の根っこを押さえていなきゃならないのさ。─考えてみると、日本舞踊は近頃の新興宗教と似たことを -
Posted by ブクログ
初読だった有吉佐和子さん。
青い壺で知ったのですが、一言で面白かったとは
言って良いのかわかりません。ただ、
戦争がもたらした様々な人間の闇や人を変えてしまうほどの打撃をもたらした事は事実であり
単純に戦争が良いとか悪いとかのお話では
ありません。
主人公の清子、親代わりだったお幸、三五郎
息子の弘一
戦争がなかったらきっと、本物の家族に
慣れたのではないか。淡い恋心が成就していたのか
仄暗さもありつつ、時にハラハラしたが
筋の通った考えを貫いた清子が先に
幸せであって欲しいと、ただ願った。
それにしても、お幸も恐ろしい。
弘一は今の言葉で言うと「クズ」に思えた。
戦争で苦しんだのはアン