村田喜代子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは結構変わった作品。明晰夢という夢に関するお話。キャラクターはかなり地味。ごく普通の感覚をもった専業主婦と瓦工事業を営む男やもめのふたり。主婦の家に雨漏りが発生したことによりふたりは出会う。
両者ともそれほどコミュニケーションを積極的にとるタイプではないが、いろんな建物の屋根の形状についての話から少しずつ仲良くなる。で、男は京都のある寺院の見事な屋根を見に行かないかと主婦を誘う。しかしそれは新幹線にのっていく普通の旅行ではなく、なんと夢の中でその寺院を訪れよう、というの。夢の中の旅行。男は明晰夢とも言われる「意識的に観たい夢を見る技術」を持っており、そのやり方を指導もできるという。そして、ひとつの夢の中で別の人間が同じ体験をすることも可能だそう。興味を持った主婦は教わったとおりに眠り、夢の中で京都で男に出会いガイドしてもらう。その後、夢の中の旅はエスカレートしていき、ついに海を超えてパリにまで行くようになる。そしていつの間にかふたりの間には、別の感情が芽生えていく・・・・。
というような話なんですね。まぁこれだけ書いちゃうとなんかファンタジックな不倫モノっぽいですが、あんまりロマンチックなところはないですね、問題は最初に書いたとおり、価値観を疑っている部分、ぶっちゃけ書いちゃうと、それだけ精密で好きなことが出来る明晰夢という技術を持っている人が、汗水たらして現実世界でがんばる必要はあるのか???という問題にいきついちゃうんですね。小説の中でそんな言葉は出てきませんが、どうしてもそのあたり考えてしまいますね。もちろんその「夢」というのは、今後間違いなく広がっていくだろうヴァーチャルリアリティの世界のメタファーともとれますね。 -
Posted by ブクログ
『屋根屋』と違って、幻想的なところはなく、非常に読みやすいので、そういうものの苦手な、宮尾登美子的な小説が好きな人には良いと思う。私は『屋根屋』の空を飛ぶシーンや、『ゆうじょこう』の不器用に綴られる言葉が大好きだったので、ちょっと物足りない気がした。
しかし、寂れてしまった北九州しか見たことのない者にも、一番活気のあった頃の北九州や、今よりずっと自由に、また迷信深く生きていた人々が目に見えるようで、十分面白かった。
80年代にしょっちゆう作られていた一族ものの映画を思い出し、克美は緒方拳で決まりだな、などとキャスティングしながら読んだ。
最後に控えめに第一部完とあるし、作者の自伝にもなっているので、今後の展開も期待したい。
堀越千秋の絵も、物語に合っていた。
なんだかんだ言って、結構楽しんだのだった。 -
Posted by ブクログ
表紙のシャガールの絵がイメージぴったりの、不思議な物語だった。
雨漏り屋根の修理に来た職人の永瀬は夢を自在にコントロールできるという。
話を聞くうちに夢の世界と、そこで見る屋根の上に興味を持ち始める施主宅の「奥さん」。
夢に同行したがる「奥さん」と渋る永瀬。押し切られるように夢旅行を重ねてゆくうちに、二人の積極性が逆転し、だんだん雲行きが怪しくなりはじめる。
ファンタジー?
妄想?(なら、誰の?)
夢か現か?(どこからが?)
着地点が気になりページを繰ったが、中盤以降、冗長な気がした。
もっと短くしたほうが、二人の積極性が逆転する辺りからの不穏な空気感、夢に囚われてしまいそうな怖さ、なのに振り払いきれない未練、などが生きてくる気がする。
結末に向けての数十ページも少し描きすぎに感じた。
国宝級のお寺の屋根瓦に残る「落書き」についての話がおもしろかった。
瓦師の味わい深い日常、若い坊主の想い人への賛辞と名前、庶民の大工の手習いの歌、などユーモアやロマンたっぷりのそんな話を聞いたら、私が「奥さん」でも、きっと夢行きに同行したくなると思う。