村田喜代子のレビュー一覧
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『八幡炎炎記』の続編。時間は昭和二十七年から昭和三十五年にかけて、さらさらと流れて行く。時代は戦後の復興期から高度成長期へと活況を呈していく筈なのに、物語は何処か儚げで淋しい。『八幡炎炎記』ではわさわさと賑やかだった人達が段々と影を潜めていく。主人公の一人、ヒナ子も本書で話が進むに連れ、何処か印象が薄くなってしまう。もう一方の主人公である克美は最後に小さな光を見つけることが出来たのだろうか?
とは言え、楽しめるエピソードは随所にある。運動会の仮説便所の場面とか、スクリーンのゴジラとヒナ子の目が合うとことか、就職もしてないのに勘違いして工場に働きに通いだすとことか(子どもにありがちな勝手な思い込 -
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これは結構変わった作品。明晰夢という夢に関するお話。キャラクターはかなり地味。ごく普通の感覚をもった専業主婦と瓦工事業を営む男やもめのふたり。主婦の家に雨漏りが発生したことによりふたりは出会う。
両者ともそれほどコミュニケーションを積極的にとるタイプではないが、いろんな建物の屋根の形状についての話から少しずつ仲良くなる。で、男は京都のある寺院の見事な屋根を見に行かないかと主婦を誘う。しかしそれは新幹線にのっていく普通の旅行ではなく、なんと夢の中でその寺院を訪れよう、というの。夢の中の旅行。男は明晰夢とも言われる「意識的に観たい夢を見る技術」を持っており、そのやり方を指導もできるという。そして、 -
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『屋根屋』と違って、幻想的なところはなく、非常に読みやすいので、そういうものの苦手な、宮尾登美子的な小説が好きな人には良いと思う。私は『屋根屋』の空を飛ぶシーンや、『ゆうじょこう』の不器用に綴られる言葉が大好きだったので、ちょっと物足りない気がした。
しかし、寂れてしまった北九州しか見たことのない者にも、一番活気のあった頃の北九州や、今よりずっと自由に、また迷信深く生きていた人々が目に見えるようで、十分面白かった。
80年代にしょっちゆう作られていた一族ものの映画を思い出し、克美は緒方拳で決まりだな、などとキャスティングしながら読んだ。
最後に控えめに第一部完とあるし、作者の自伝にもなっている -
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表紙のシャガールの絵がイメージぴったりの、不思議な物語だった。
雨漏り屋根の修理に来た職人の永瀬は夢を自在にコントロールできるという。
話を聞くうちに夢の世界と、そこで見る屋根の上に興味を持ち始める施主宅の「奥さん」。
夢に同行したがる「奥さん」と渋る永瀬。押し切られるように夢旅行を重ねてゆくうちに、二人の積極性が逆転し、だんだん雲行きが怪しくなりはじめる。
ファンタジー?
妄想?(なら、誰の?)
夢か現か?(どこからが?)
着地点が気になりページを繰ったが、中盤以降、冗長な気がした。
もっと短くしたほうが、二人の積極性が逆転する辺りからの不穏な空気感、夢に囚われてしまいそうな怖さ、なのに