村田喜代子のレビュー一覧

  • 火環

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    『八幡炎炎記』の続編。時間は昭和二十七年から昭和三十五年にかけて、さらさらと流れて行く。時代は戦後の復興期から高度成長期へと活況を呈していく筈なのに、物語は何処か儚げで淋しい。『八幡炎炎記』ではわさわさと賑やかだった人達が段々と影を潜めていく。主人公の一人、ヒナ子も本書で話が進むに連れ、何処か印象が薄くなってしまう。もう一方の主人公である克美は最後に小さな光を見つけることが出来たのだろうか?
    とは言え、楽しめるエピソードは随所にある。運動会の仮説便所の場面とか、スクリーンのゴジラとヒナ子の目が合うとことか、就職もしてないのに勘違いして工場に働きに通いだすとことか(子どもにありがちな勝手な思い込

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    2018年11月08日
  • 八幡炎炎記

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    昭和二十六年、製鉄所の町・八幡を舞台に、再婚した母と離れて祖父母と共に暮らす小学生のヒナ子、内に鬱々とした昏い情念を抱く仕立屋の克美の二人を中心に物語は語られる。
    戦後の復興期、まだまだ貧しく粗野で猥雑な暮らしぶりが読んでいて面白い。
    ヒナ子を始め、親と離れて生活する子ども達の姿が健気。
    村田さんの曖昧模糊とした、何だか嘘か本当か分からないような語り口が好きで、こういった作品だとそれが制限されてしまわないかと、ちょっと心配しつつ読み始めたが、これはこれで面白い。するすると読まされてしまった。

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    2018年11月07日
  • 屋根屋

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    これは結構変わった作品。明晰夢という夢に関するお話。キャラクターはかなり地味。ごく普通の感覚をもった専業主婦と瓦工事業を営む男やもめのふたり。主婦の家に雨漏りが発生したことによりふたりは出会う。
    両者ともそれほどコミュニケーションを積極的にとるタイプではないが、いろんな建物の屋根の形状についての話から少しずつ仲良くなる。で、男は京都のある寺院の見事な屋根を見に行かないかと主婦を誘う。しかしそれは新幹線にのっていく普通の旅行ではなく、なんと夢の中でその寺院を訪れよう、というの。夢の中の旅行。男は明晰夢とも言われる「意識的に観たい夢を見る技術」を持っており、そのやり方を指導もできるという。そして、

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    2017年11月16日
  • ゆうじょこう

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    硫黄島を離れ、熊本の廓へと売られた主人公イチ。
    悲惨な話なのに何故か温かさを感じる作品。
    遊女らしくない天真爛漫なイチにとても惹かれました。
    途中、福沢諭吉の学問のすゝめが一部抜粋されており、かなり奇抜な事を書いているんだと無知な私はちょっと鳥肌モノでした。

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    2017年10月17日
  • 村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋

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    八つの短編が収められています。
    なんと、うち5編が何らかの文学賞を取っているというぜいたくな作品集です(「鍋の中」芥川賞、「白い山」女流文学賞、「真夜中の自転車」平林たい子賞、「蟹女」紫式部文学賞、「望潮」川端康成文学賞)
    とはいえ、実は絶版。中古をネットで購入しました。
    確かに文学賞、流石に読み応えがあります。何やら不思議で幻想的な雰囲気。とはいえ、あまり面白いとは言い難く。。。

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    2016年07月23日
  • ゆうじょこう

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    ネタバレ

    遊女もの、は好きで色々読んだけどなかなか新しい視点とヒロインで面白かった。
    村田喜代子、の時点でなんというか土着的な空気は予想していたけれど。
    願わくばもうちょっと、色めいていてもよかったかなぁ。好みとして。
    ヒロインがあまりにも女、として開いていかないのがちょっと不思議ではあった。

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    2016年05月30日
  • 八幡炎炎記

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    『屋根屋』と違って、幻想的なところはなく、非常に読みやすいので、そういうものの苦手な、宮尾登美子的な小説が好きな人には良いと思う。私は『屋根屋』の空を飛ぶシーンや、『ゆうじょこう』の不器用に綴られる言葉が大好きだったので、ちょっと物足りない気がした。
    しかし、寂れてしまった北九州しか見たことのない者にも、一番活気のあった頃の北九州や、今よりずっと自由に、また迷信深く生きていた人々が目に見えるようで、十分面白かった。
    80年代にしょっちゆう作られていた一族ものの映画を思い出し、克美は緒方拳で決まりだな、などとキャスティングしながら読んだ。
    最後に控えめに第一部完とあるし、作者の自伝にもなっている

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    2015年10月19日
  • 八幡炎炎記

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    終戦後、舞台は八幡となれば製鉄とは切り離せず、
    それに関連する記述が多いのだが、興味を持てなかった。
    女たらしの克美のその後は気になるが。

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    2015年04月01日
  • 屋根屋

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    ネタバレ

    まさに表紙のシャガールの絵のような不思議な話で、面白かった。
    ゴルフ好きな夫と高校生の息子と平凡に暮らす主婦が、屋根の修理にやってきた無骨な屋根屋と出会い、夢を舞台に旅するようになる。
    不倫、恋愛といったドロドロ感よりも、寺社やヨーロッパの城などの建築物の細かな描写と、常に付きまとう死のイメージが印象的だった。

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    2015年02月20日
  • 屋根屋

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    日本のお寺の屋根は、西方のほうに飛んで行けるように広がっているが、教会の屋根は高く高くそびえている。天は上にある。屋根の話はおもしろかった。大聖堂も1万人が入れて、そこで生活が行われていたなどという話はおもしろかった。
    夢で出会えて、行ったことのないところへ飛んで行ける。なんだか、屋根の話がつまらなくなってしまった。

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    2014年09月18日
  • 屋根屋

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    ネタバレ

    主婦の主人公と屋根屋が、話の感じから六十代位と思って読んでいたら、途中でもっと若いと分かり、どうしても違和感が…。夢話に引き込まれていっきに読んでしまったが、読み終わると、全部主婦の夢だったんじゃないの…まとめたくなってしまった。
    おもしろいんだけど、ケチをつけたくなる、ある意味不思議な小説。
    作者と同世代の母には面白かったらしい。

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    2014年09月14日
  • 屋根屋

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    ネタバレ

    どこからこの夢と言うか妄想が始まっているのかが分からない。でもいろんな屋根あるいは塔を眺める旅(夢)は素敵だった。屋根屋さんはさてどうなったのか?

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    2014年08月21日
  • 屋根屋

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    雨漏りのする屋根の修理にやってきた屋根屋。自在に夢を見られると語る彼の誘いに乗って、「私」は夢のなかの旅へ一緒に出かける。屋根職人と平凡な主婦の奇想天外な空の旅。

    思い通りの夢を、しかも他人と共有できたら…といった夢に関する夢を小説で実現。作者の想像力には脱帽するが、作者の年齢を伺わせる表現が何カ所かあったのは残念。私が肝心の建築物に無知なので作品の本当の魅力を理解できたかどうか…。
    (C)

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    2014年07月12日
  • 屋根屋

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    表紙のシャガールの絵がイメージぴったりの、不思議な物語だった。

    雨漏り屋根の修理に来た職人の永瀬は夢を自在にコントロールできるという。
    話を聞くうちに夢の世界と、そこで見る屋根の上に興味を持ち始める施主宅の「奥さん」。
    夢に同行したがる「奥さん」と渋る永瀬。押し切られるように夢旅行を重ねてゆくうちに、二人の積極性が逆転し、だんだん雲行きが怪しくなりはじめる。
    ファンタジー?
    妄想?(なら、誰の?)
    夢か現か?(どこからが?)

    着地点が気になりページを繰ったが、中盤以降、冗長な気がした。
    もっと短くしたほうが、二人の積極性が逆転する辺りからの不穏な空気感、夢に囚われてしまいそうな怖さ、なのに

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    2014年05月24日
  • 蕨野行

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    〜「さらばよ」と、おれも手をあげたなり。おれだちは昔、田植えの帰り道に手を振り合うたときのよに、いつまでも歩きながら振り返った。トセは林の道へしだいに消えて行った。〜
    『Dr.HOUSE』でオープニングに大きな川がでてくるが、それを見たときと同じ気持ちになる。

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    2009年10月04日