【感想・ネタバレ】村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋のレビュー

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Posted by ブクログ

8篇の村田喜代子傑作集。

このひとは「おばあさん」を描かせたら最高。
ほのぼのあり、しみじみありだ。

中でも「白い山」の中にたくさん出てくるおばあさんのなかで、腰がひらがなの「く」の字ではなく「つ」の字になっているおばあさんがあったという、卓越した表現にはまいってしまった。

いるいる。「つ」の字ねぇ!ご本人はつらくて大変だろうけれども笑えてしまう。

ほんと、うまい作家と思う。

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2020年08月19日

Posted by ブクログ

何が言いたかったのか全く分からない作品ばかりだったが、不思議と読んで損したなどとは感じず、最後まで読んでしまった。情景の描写が個性的ではありながら豊かで、空気の匂いまでも伝わってくるよう。これまで読書は主にストーリーを楽しむものと思っていたが、描写や表現そのものの味わいを楽しむという読み方もあるのだと知らされた。

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2020年02月17日

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「熱愛」とあれど緩慢な「ぼく」による殺人に見えた

1987年に97回芥川賞を受賞した「鍋の中」を含む短編集です。芥川賞に女流文学賞、平林たい子賞、紫式部文学賞、川端康成文学賞と諸々の賞を受けている大作家さんですが、お恥ずかしながら初めて知りました。

最初の「熱愛」が短いのだけどもぐいっと惹きつけて離さない力量のある作品で。

1980年代後半という30年近く前の世界が、私にとってはとても古い時代であるのですが、この文章の中にはその古さが無いなあ、なんて思いながら、相当バイク好きなのだろうか、と思わせる臨場感あふれるツーリングの描写。

「熱愛」というタイトルではあるが緩慢な「ぼく」による殺人に見えてしまうのは

「どれも新田の方が上だが引張るのはぼくだ。一種の精神的力関係。いいだしたらぼくはしつこい。新田は折れるしかない。」

「ぼくはしつこい、新田はやがて陥落する。いつものことだ。」

というような描写が何度も続くため。自分はスピードを上げるのに、新田がいざ前にたち、スピードを上げていくと「距離をあけた方が自由に走れる」と距離をあけてしまう「ぼく」に物凄い傲慢な気持ち、残酷さを感じびっくりしました。

全く語られないのですが行間から感じられる新田の行動にジェームスディーンのエデンの東の兄だったり、理由なき反抗のチキンレースを思い浮かべながら、ページを行きつ戻り反芻つしながらラストに行かないようにしていましたがいよいよラストに。

物語が終わった後の世界を想像して、ああ、と重たい気分になりましたが、夢中なひとときを与えてもらい残りの短編に期待が高まります。

「鍋の中」から「望潮」に至るまで全体的に夢うつつな気分にさせられることが多いです。何が真実でありほんとうなのか。これは記憶違い、これは本当、と思っていてもその地平が揺らぐような展開があり、大きい桟橋にいるような心持がしてきます。

そんな気持ちを最後「茸類」というこれまた短い、30ページにも満たない短編で夢うつつの意識はぱっちり。克明な描写により下手なホラーよりも激しく恐怖に叩き付けられてしまいました。

静かな田舎の宿に泊まる時に持って行って、この話に出てくるように「清冽な飲み物」である焼酎を喉に通してこの本を読みながら眠りたい、なんて思いました。

素敵な本と出合えて良かったです。

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2015年12月17日

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「熱愛」「白い山」「蟹女」が圧巻だったんだけど、でも正直短編集でいうと『鯉浄土』のほうが数段好みだなあ。あの薄氷みたいな張りつめた雰囲気の短編がまた読みたい。
「熱愛」のオートバイを運転している時の描写がすごすぎた。こういう作品は村田さんの中では珍しい作風なのではないだろうか。

村田さんの作品は家族を取り扱っているものが多い。
幼さと老いの醜さ、原初的な、欲望に名前がつく前の状態とか(幼)、逆に欲望の名前でしか表せないようなシンプルなこころとか(老)。その真ん中に閉じ込められてしまったのがきっと「蟹女」なんだろうな。

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2015年10月07日

Posted by ブクログ

おばあちゃん文学。と言っても文体や目線は瑞々しくどこまでも温かい。8つの短編の中でも「望潮」は特にその傾向が強く、お年寄りに向けたまなざしと生活の細かな描写は秀逸。自分は「蟹女」の昔を振り返って語る老婆の心理描写が、妙に強く心に残っています。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

八つの短編が収められています。
なんと、うち5編が何らかの文学賞を取っているというぜいたくな作品集です(「鍋の中」芥川賞、「白い山」女流文学賞、「真夜中の自転車」平林たい子賞、「蟹女」紫式部文学賞、「望潮」川端康成文学賞)
とはいえ、実は絶版。中古をネットで購入しました。
確かに文学賞、流石に読み応えがあります。何やら不思議で幻想的な雰囲気。とはいえ、あまり面白いとは言い難く。。。

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2016年07月23日

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