村田喜代子のレビュー一覧
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お姑(ばば)よい
ヌイよい
二人の語らいに
恍惚となりながら
読み進めたる
物語でありつつも
我にとって二人は
確かに存在した人生だと
感じつろう
押伏(おしぶせ)に生きた者らと比べ
我が人生がいかに
恵まれておったことか
であるのにひ弱なものと
なった我の半生を
恥ずかしく思うて今後は
二人のよに強く生きんと
考えたるよい
親兄妹、家族の為に
命燃やしたいと
願うばかりなり
そして
絶望と希望と感動に
満たされながら
読み終えたこの物語を
この神々しい文学を
いつまでも愛しく感じ
生きて行きたいと思うなりよ
(※文体は正確さを保証されていません
素人の書くブログです
ご了承くださ -
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煙が炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡。複雑な家庭事情のなかで、祖父母や親戚たちの見守りを受け、焼跡に土筆のように逞しく育ったヒナ子は中学生に。やがて映画と本に夢中になり、脚本家を夢見て上京をもくろむが……。愛欲の煩悩やみがたく制裁で街を追われた仕立て屋の叔父、炭坑で地獄をみてきた堅固な人生観をもつ祖母ら、名もなき人たちが煩悶しながら戦後の激動を火のように生きる。
『八幡炎炎記』の完結編だが、たぶん著者の自伝だろう。
ヒナ子が尊敬する新藤兼人監督の映画「裸の島」で「嘘っぱちだ、あんなに水不足で作物ができるはずがない。脂の多い人間の遺体は生木で時間をかけて焼かなくては燃やせない」とサトが一 -
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三冊続けて少女を主人公にした女性作家の作品を読む。
原田マハ「永遠をさがしに」、高田郁「あきない世傳 金と銀 源流編」、そして村田喜代子さんの本作。
前の二冊は一気読みでしたが、この作品はじっくりと。少女漫画的な設定やストーリーの前二作とは密度が全く違います。
明治初年、薩摩の先の硫黄島から熊本の廓に売られた15歳のイチ。辛い運命の中でも靭さ逞しさを感じさせます。取り巻く脇役たちもズッシリとした存在感を感じます。そしてなんといっても、イチが毎日通う女紅所(廓の中の学校)で書き残して行く、仮名ばかり、訛りだらけの日記が秀逸です。
村田さん、初読みです。浅学にして全く知らなかったのですが、芥川賞、 -
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村田喜代子とか、多和田陽子とか金井美恵子とか、ゆるぎない独自の世界のある作家は本当に素晴らしい。
読んでいてこの小説世界から抜け出したくない気持ちになる。冷静に考えれば、ちょっと無理のある物語でも、一旦入り込んでしまうと全く気にならない。
安易に屋根屋が男前だったり、二人の関係が発展してしまわないのが良い。あくまで二人で屋根を上から眺め、空を飛ぶうちに漂ってくる官能の雰囲気で十分背徳的な気分になる。(特に黒鳥になってしまうくだりは秀逸)
多分、屋根を修理したり、ヨーロッパや日本の寺院を見て回ったりした著者の経験がこういう小説になったのだろうと考えると、一般人が同じ経験をするよりずっとたくさんの -
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ある主婦が、雨漏りを修理に来た屋根屋の職人と雑談をするうちに、
夢の中で好きな所に連れて行ってやると言われ、
半信半疑ながらも教えられた通りに。
夢の中で待ち合わせ、彼女の希望通りの場所へ行く二人。
夢行きの旅はしだいに遠く、しまいにはフランスまでの長旅へ。
それは幾晩も連続した夢を見るという、難しい技術が必要だった。
リアルな夢に耽溺した主婦はどうなるのか....?
誰かの夢と自分の夢がドッキングするという発想が、とても面白い。
しかも相手はゆきずりの(?)屋根屋だ。
旅する場所は、大きな寺院や大聖堂の屋根ばかり。
地上から離れた、足場の安定しない屋根の上という状況が、
吊り橋を渡る時のよ -
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上手いタイトルをつけたものだ。上から読んでも下から読んでも、右から書いても左から書いても同じ漢字を使った最短の回文「屋根屋」である。もっとも、作者が名うてのストーリー・テラーとして知られる村田喜代子。この人の書くものならタイトルが何であっても手にとるだろう。空を飛ぶ恋人たちやロバの絵で知られるシャガールの絵を表紙に使って、シャレた本が出来上がった。
「私」は、北九州市に住む専業主婦。夫はサラリーマンで、休日はゴルフ三昧。息子は受験勉強とテニスの部活に忙しい。新しく東京に建てる電波塔の名が「東京スカイツリー」と決まった梅雨に入ったばかりの頃、築十八年の木造二階建てのわが家に雨漏りが始まった。素 -
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口減らしのための姥捨てなどの老人を切り捨てる方法。自然と向き合い、さらにその自然の懐に一生をゆだねると決めた社会の掟は、日本中どこでも見られた光景だったのかもしれない。嫁からお姑よい、と声がけ、姑からは嫁をヌイよい、と呼びかけ語り始める。その語りの中にが、互いを気遣う気持ちが伝わってくる。
60歳、死を覚悟の蕨野入り。垢だらけ、髪は抜け、皮と骨だらけ、そんな最期は本当に仏のよう。末期目は見えなくても、老人が老女たちをイチイやエノキなどの木の実に例えて、思い描くシーンに慈しみを思う。老い支度、まさに死への恐怖を死への覚悟と変えてくれる本だと思う。還暦巡って零歳になるように、新たの命へと姑と嫁 -
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夫を亡くしたばかりの倉田美土里が主人公。その辛さのなか、同じ未亡人達(時実美子、十鳥辰子)と、パソコン仲間の山城教子と過ごす時間が書かれていました。
大切な人を亡くしたときには、同じ思いを知っている人と過ごすことと、日にち薬が一番なのかもしれません。
美土里が孤独地獄から抜け出していく過程での様々なことが、気持ちを落ち着かせていくように思えました。
まずは、パソコン仲間の教子さんの幼稚園での出来事。団子虫に聞かせるお経を作りたいという園児のために作られた団子虫経文。とても良くできていました。自然も成仏するんですね。
美子さんの夫への思いを知ることも美土里の思いを整理するのに役に立ったの -
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「未亡人倶楽部」のメンバーは主人公の倉田美土里、時実美子、十鳥辰子。ほとんど同時期に夫を亡くした未亡人たちです。
作中で美土里が「未亡人」という言葉をWebで調べる場面が出てきました。
語源は古代中国で、夫が死んだ後、そのあとを追うこともせず、生き残っている妻のことを指す、と。
なんとも屈辱的な意味合いの言葉だったのだなと、読みながら思います。
私の夫は幸いにもまだ健在ですので、夫を失くすということは、実母が父を亡くした時の状況しか経験がありません。
けれどこの作品を読みながら、夫を失くすと言っても残された妻の各々が置かれた立場で随分と違うものだと感じました。
もちろん寂しさを感じ -
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美土里は、亡き夫の忘れ物を取りに行った病院で美子と出会う。美子の営む喫茶店『時知らず』にはパソコン仲間の教子、高齢の辰子も集うようになり…。
女性の横顔がいくつも描かれている装画に目を惹かれた。門司を舞台にして、突然の夫の死にとまどう女性たちの一年が描かれていく。「遺された妻たちのためにこれを書かなければ」著者の祈りにも似た思いが込められた一冊だと思う。
コロナ禍での葬儀、元旦の夜を一人で過ごし、桜の蕾が膨らみ始めた頃には、影の気配が遠ざかって行くように感じられた・・美土里は、仲間と時間を共有しながら少しずつ前を向くようになる。
村田さんの書く女性は逞しい人が多い。美子や辰子の方がそのイ -
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町田そのこさんが少し前に、村田喜代子さんの新聞連載コラムを激賞、先日は同氏の講演会に参加しサインもいただいたと、少女のように嬉々とSNSで投稿していました。これが村田喜代子さんに興味をもった単純な理由です。
本作は8編の短編集で、いずれも25〜40年前に発表され、5編が芥川賞を始め様々な文学賞受賞、1編が芥川賞候補と傑作揃いのようです。
何気ない日常を描きながら妙に刺さる読後感でした。大きな出来事も心情描写も少なく、掴みどころのない展開だと思っていると、徐々に心の底の澱が掻き回される感覚です。人生の奥深いところを平易な言葉で書き表す凄みからでしょうか…。
村田さんは一部を除き、中心 -
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村田さんの新作です。
70代の女性の美土里が主人公。彼女の夫が亡くなるところから、一周忌を過ぎるまでを描いた作品です。どうも、村田さん自身の経験に基づく物語のようです。
タイトルの美土里倶楽部という名前は本文中には出て来ませんが、夫の死後に美土里が頻繁に交流することになった二人の未亡人と一人の若い(と言っても40歳ほど)女性の集まりです。
三人三様で夫の不在、お墓のこと、供養のことに立ち向かう女性達。色んな考え方があって、それを淡々と読める物語なのですが、雑誌連載の所為かぶつ切れ感あります。関係あるのかないのか良く分からないエピソードが次々に出て来て、すこし混乱。珍しく全体を2度読みをしたので