村田喜代子のレビュー一覧

  • 屋根屋

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    明晰夢の話…といったらなんの感慨もないけれど、どこまで本当なのかが、本当にわからなくなる話。なんだか、明晰夢を極めたくなっちゃいます。

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    2017年10月30日
  • ゆうじょこう

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    粗にして野だが率直で利発、磨かれる前の原石そのもののイチがどう成長していくのか、廓の天国と地獄の狭間でハラハラしつつ興味が尽きない。
    「踏みしめる足場のない所」で垣間見える鐵子さんや東雲さんの優しさにホロッとくる。三人の心が交流する紅絹の休みの話が好きだなぁ。
    反面、娼妓を取り巻く世間や環境は怒りが湧くことばかり。
    火山の溶岩が海へ流れ出すような静かに燃える熱いラスト、彼女たちのあまりに険しい前途を思うと若干気持ちは暗くなる。それでもこの選択が報われることを祈らずにはいられなかった。

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    2017年01月31日
  • ゆうじょこう

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    先日花魁道中を見に行った。
    これがあの八文字かと胸を高鳴らせた。
    混み合っている中、そばにいた中年女性が連れに言った。
    「女なら憧れるわよねえ。綺麗な着物着てさ」

    確かに綺麗な着物には憧れるけれど、実際の花魁に憧れを持つかといえば、どうだろう?
    身体を売ることに抵抗がある(だからと言ってその職にいる人を貶めるつもりはない)だけではなく、病になっても医者に見せてもらえずそのまま命を落としたり、誇りを踏みにじられたり、親に借金をどんどん増やされたり......。
    苦界そのものだ。

    男たちの作った世界、彼らが思い描き、その思い通りの時間が流れる中で、女たちはどれほど犠牲を払い辛い目にあってきたの

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    2016年05月16日
  • 八幡炎炎記

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    充分面白いのですが、まだ続くみたいだから☆4つ。昭和の頃は誰かが子どもの世話をしていたのねえ。家で仕事していた人が多かったんだなあ。

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    2016年05月07日
  • ゆうじょこう

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    時代は明治初期、場所は熊本の遊郭。ちょっと変わった設定だが苦界に身を置かざるをえなくなった少女を中心に、社会の変化に戸惑いながらも新しい時代を逞しく生きる女性の姿が描かれる。方言で綴られた少女の日記が効果的にその真摯な思いを訴える。

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    2016年04月17日
  • ゆうじょこう

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    南の小さな島で、貧しい漁師の家に生まれたイチは、15歳で熊本の遊郭に売られる。
    広い海で大きな海亀と泳ぎ暮らしていた少女は、きらびやかな牢獄で囚われの日々を送ることになる。
    鄙で生まれ育ったイチは、訛りがきつい。「ください」は「けー」、「ここへ」は「こけー」、「これ」は「こー」、「食え」は「けー」、「来い」は「こー」。口数の少ない少女が必要最低限のことをしゃべると「こけー、こー、けー、こー」とまるでニワトリのようであった。
    体は真っ黒に日焼けし、行儀も何もなく、小柄で痩せてサルのよう。
    どたばたと歩き、訛りを隠すための遊郭独特の言葉もまったく身につかない。
    およそ人間らしくない野生児が、突然、

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    2016年03月31日
  • 光線

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    先日『ゆうじょこう』を読んで気に入った村田さん。今度は多分村田さんの本領らしい短編集です。
    恐らく村田さん本人の経験や見聞をもとに、主人公や舞台を少し変えて書かれたものと思われます。私小説ではないけれど、そんな匂いのする文学作品、さすが芥川賞作家というところです。とはいえ、独りよがりな雰囲気や晦渋さはなく、密度は濃いけど読みやすく。
    最後の「楽園」は地中湖の探検の、「山の人生」は山中の無人村での一夜を、「夕暮れの菜の花の真ん中」はタイトルの示す通り、そして「関門」は夜の海を、全体にタイトルこそ『光線』ですが、闇を主題にした短編集のようです。
    最近、お気楽、お手軽な作品ばかりに手を出す私で

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    2016年05月08日
  • 村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋

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    「熱愛」とあれど緩慢な「ぼく」による殺人に見えた

    1987年に97回芥川賞を受賞した「鍋の中」を含む短編集です。芥川賞に女流文学賞、平林たい子賞、紫式部文学賞、川端康成文学賞と諸々の賞を受けている大作家さんですが、お恥ずかしながら初めて知りました。

    最初の「熱愛」が短いのだけどもぐいっと惹きつけて離さない力量のある作品で。

    1980年代後半という30年近く前の世界が、私にとってはとても古い時代であるのですが、この文章の中にはその古さが無いなあ、なんて思いながら、相当バイク好きなのだろうか、と思わせる臨場感あふれるツーリングの描写。

    「熱愛」というタイトルではあるが緩慢な「ぼく」による殺

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    2015年12月17日
  • 村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋

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    「熱愛」「白い山」「蟹女」が圧巻だったんだけど、でも正直短編集でいうと『鯉浄土』のほうが数段好みだなあ。あの薄氷みたいな張りつめた雰囲気の短編がまた読みたい。
    「熱愛」のオートバイを運転している時の描写がすごすぎた。こういう作品は村田さんの中では珍しい作風なのではないだろうか。

    村田さんの作品は家族を取り扱っているものが多い。
    幼さと老いの醜さ、原初的な、欲望に名前がつく前の状態とか(幼)、逆に欲望の名前でしか表せないようなシンプルなこころとか(老)。その真ん中に閉じ込められてしまったのがきっと「蟹女」なんだろうな。

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    2015年10月07日
  • 屋根屋

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    こんな空想的な発想を、瓦職人の小説て表すなんて素晴らしいです。ホノボノして面白く、最後のオチもメルヘンチックです。

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    2014年12月29日
  • 屋根屋

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    ゴルフ三昧の夫と部活に熱中する息子との日常に退屈している平凡な主婦と、妻を亡くした孤独な屋根屋との、夢の中だけの屋根を巡る旅。
    大人の少女漫画という感じ、逆説的だけれど。主人公は、したたかで強い女だ。男性の方がロマンチストで、そして脆い。主人公が介入してこなければ、屋根屋は孤独だけれど、波のない夢の中での屋根を巡る旅を心穏やかに楽しめただろうに。
    最初の方の、主人公が料理を振る舞う中で2人の距離が縮まり、初めて主人公が屋根の瓦を踏む、そして夢で二人が屋根の上で会う、その流れが心地よかった。後半の展開は、永瀬だけが追い詰められて主人公は結局何も失わないのがはがゆく、もう少し、なにかえぐられるもの

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    2014年11月18日
  • 屋根屋

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    屋根の修理に来た永瀬という大男、すなわち『屋根屋』。彼の話から夢にただならぬ興味を持ち始める主人公の主婦。

    「奥さんが上手に夢を見ることが出来るごとなったら、私がそのうち素晴らしか所へ案内ばしましょう」
    その言葉通り、屋根に魅せられた二人が夢の中で様々な所を訪れる。

    夢の世界なのに、夢とは思えぬほど丁寧でこと細やかな描写。
    読んでいる自分自自身も夢の小旅行を体感しているかのよう。

    結末には衝撃と物悲しさが残った。
    一体どうなってしまったのだろう、と。
    でもこれでよかったのかもしれない。

    夢の続きがもう少し見たかったな、そんな気分になった。

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    2014年08月31日
  • 屋根屋

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    ネタバレ

    作品が読者を巻き込み、グイグイと中へ連れて行く。屋根屋の永瀬と屋根の修理をしてもらう家人の奥さんが中心の話。夢というのは起床時にはほぼ忘れている事もあり、深くは考えてないがこの作品を読むと夢ってコントロール出来るのかとちょっと興味を持った。しかし、夢日記に関してはいろいろと怖い話を聞くので実践はしたくない。すごく不思議な作品だがなぜか、それが心地いい。

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    2014年05月09日
  • 蕨野行

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    サバイバル姥捨小説。

    初めて読むような文体に戸惑った。何しろ物語は最初から最後まで、お姑と嫁・ヌイの方言のような古文の文体の会話で展開されるのだ。始めは読むのが苦痛なのだが、慣れて来ると面白くなる。

    押伏村に伝わる六十歳を迎えた老人は蕨野に棄てられるという哀しい掟。蕨野に棄てられた老人たちは、厳しい自然を相手にサバイバルを続ける…

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    2014年01月22日
  • 蕨野行

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    ネタバレ

    嫁と姑の関係に希望があるところがいい。
    年を取ってもコミュニティから排除されても、生きる意欲や恋をする気力があるところがいい。
    何より、厳しい土地厳しい状況の中でそれでも生きようとする人々の姿が美しい。

    余談だが、ワラビたちは「寒の夏」でさえなければ、秋になって収穫を迎えたときに再び村に帰ることができたんだろうか。できたんだろうな。できたと信じたい。

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    2013年10月07日
  • 蕨野行

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    ネタバレ

    姥捨山に捨てられた老人達のサバイバルの物語!…はちょっと違うけど。(と思ったら、解説の辺見庸さんも「老人たちが余儀なく突入していくサバイバルゲーム」と表現していてびっくり。)
    里の若い者達の食いぶちを減らすため、もう里には戻らない覚悟で自ら山にはいるが、それでも山で鳥やウサギを採ったり魚を捕まえたりしながら必死に生き延びようとする年寄りたちの姿が印象的だった。そのうえ里が飢饉にみまわれると、里に残した子や孫に山の肉をやろうと必死に罠を仕掛けるおじいちゃん…。生きるってこういうことだ!というものをどーんと見せつけられた気がする。そこには「姥捨」の伝説から受けるネガティブなイメージは、ない。
    みん

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    2013年07月23日
  • 蕨野行

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    しみじみとした情感に包まれる

    死に逝くものの話であり
    生まれ出でるものの話でもある

    私たちが生きている
    この地そのものが
    蕨野行になっているのかも
    知れない

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    2013年02月27日
  • 村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋

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    おばあちゃん文学。と言っても文体や目線は瑞々しくどこまでも温かい。8つの短編の中でも「望潮」は特にその傾向が強く、お年寄りに向けたまなざしと生活の細かな描写は秀逸。自分は「蟹女」の昔を振り返って語る老婆の心理描写が、妙に強く心に残っています。

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    2009年10月04日
  • 美土里倶楽部

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    未亡人倶楽部。経験した者でなければ書けない。何人も家族との別れは経験したけれど、また違うのだろう。でも登場する人たちはむしろいきいきしてて、羨ましくもある。

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    2025年09月21日
  • 美土里倶楽部

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    夫の死後一人で気分は沈むが、出かける場所があったり、集う仲間がいたりするとその間は忘れられる。美土里は夫の思い出と共にいい日々を過ごしていると思う。

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    2025年07月21日