伊与原新のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
伊与原新さんの科学エンターテイメントストーリーですね。
抜群に面白いです。
科学ファンタジーとも言えます。
映画化して欲しい作品ですね。
東日本大震災から三年立った。
行田準平は、海洋地球総合研究所(MEIメイ)の岸壁に佇んでいた。すると、四十歳位の男に声を掛けられる。準平が落ち込んでいるように見えたようだ。
実は、MEIに勤務するプログラムディレクターの武智要介から、面接に来るように誘いを受けていたのだが、迷っていたのだ。
男は、瀬島と名乗って名刺をくれた。瀬島も自分の会社の人員を募集中との事だったが。(後に、この瀬島がとんでもない経歴の持ち主で、この作品の重要人物になる。)
準平は、東日本大震災の時に、スポークスマンの位置にあり、テレビにも出演していたが、地震研究所を批判する発言をして、研究所を辞めていたのだ。
先輩の武智が、そんな準平に声を掛けたのは、津波警報システムを構築したい為だった。MEIでは、誰も武智のプロジェクトに賛同するものがいなくて、孤立していたようだ。
準平は、武智の話を聞いて次第に引き込まれていく!
そして、仲間探しが始まった。武智や準平のようなはみ出し者が、次第に集まっていく。
七人の“はみ出し者”が集まるのだが、その経歴がすこぶる面白く、ユーモアを交えた人間模様が描かれていく。
この物語の津波警報システムは、夢物語では無く、あとがきで、モデルが存在しているのが、明かされています。解説の神戸大学海洋底深査センター教授・センター長さんも絶賛とエールを送られています。
ダイナミックな構成で、伊与原新さんの持てる知識を駆使して(実際に伊与原新さんの大学時代の研究の成果も作品に盛り込まれています。)、物語を読む者を夢と希望に導いてくれるのが素晴らしいですね♪ -
購入済み
ふぁぁぁ、なんて綺麗なお話なんだろう。いつも読んでる本よりは専門性がちょっと深くて、素人にはいまいちピンとこない部分もあったりしたけど、専門家やその道のプロやそれを愛する人たちの真っすぐな気持ち、熱意がよく伝わってきて胸が震える。たとえ利益などにならなくても、ずっと心の中にあって夢中になれて、時に自分を支えてくれたり突き動かしてくれる原動力になったり、そんなものがあるってすごく幸せだなあ。
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Posted by ブクログ
単行本『プチ・プロフェスール』の文庫版になります。(文庫化にあたり、『リケジョ!』に改題されました。)
伊与原新さんの8冊目に『ブルーネス』を先に手に取りましたが、疲れと眠気に勝てず(涙)、後から入手した連作短編集になっているこちらを先に読むことにしました。
貧乏学生の律と小学生の理緒が事件を解決していくんですが、周囲のキャラクターも面白くて、テンポも良く、ユーモもあって、そこに伊予原さんの理系の知識と謎掛けも盛り込まれていて、切なさもありながら、最後まで楽しく読み終えました。またまた好きな作品が増えました〜(*´︶`*)
裏書きより、
「貧乏大学生で人見知りの律は、留学費用を稼ぐため、不本意ながら成金令嬢・理緒の家庭教師をすることに。だがこの生徒、いまどき珍しい理科大好き小学生。律を「教授」と呼び、慕ってくる。そこへ降りかかる奇妙な事件の数々……「教授、科学の力で解決しましょう!」
引き気味の律と、あくまで前向きな理緒。いつしか2人に、不思議なコンビネーションが生まれて…
無類に楽しい、理科乙女ミステリシリーズ誕生!」
本書に何度も登場するジョージ・ガモフの『不思議の国のトムキンス』(本筋のキーにもなっています。ネタバレ内緒ですね)も気になってしまいますね〜(*´ω`*)
(ひだまりトマトさん、とても面白かったです♪既にひだまりトマトさんが読まれているガモフの本も気になります。まだまだ先になるかもしれませんが、読んでみたいです(*´ω`*)。愉しい一冊をありがとうございました。) -
Posted by ブクログ
個人的に今まで読んだ本で最高の一冊。
宮沢賢治の作品に出る“イーハトーブ”がどこか。
それを高校生達が旅で辿る話。「銀河鉄道の夜」の内容が頻出するので、銀河鉄道の夜を読んだばかりだったのが、作品を理解するのにはかなりのアドバンテージでした。
そして、地元岩手が作品の舞台のため、出てくる地名も分かるし、後半のクライマックスシーンの登山の場面も登ったことのある山だし。
土地勘は無くてもいいだろうけど、「銀河鉄道の夜」は読んでからが一番いいですね。
銀河鉄道の夜を読み、その中で「あれってどういうこと?」と言う疑問を感じていた人には、その解釈の一つが書かれていて、最高に楽しめた一冊でした。
伊与原新さん、最高!と思えた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
無さそうだけど有りそうな、有りそうだけど無さそうな博物館の裏庭を散策したような気分になれる不思議な物語。数々の事件を通して、環が箕作の有能なパートナーに成長を遂げるどころが面白かった。
個々の事件の中では、藍を継ぐ海の中でも取り上げていた、ニホンオオカミについての話と、異人類たちの子守唄が特に好きです。前者は、ニホンオオカミの特徴としての送りオオカミと狼犬の話題が再び(あくまでも読んだ順です。)取り上げられています。もしかしたら伊与原さんの、箕作先生たちに任せるなんてもったいない、自身のライフワークにしようなんて考えているのかな。また異人類たちの子守唄は、デニソワ人という初めて聞く人類の先祖が出てくる話。面白かったので、人類の進化に関する本を読み始めました。 -
購入済み
幻想的な表紙に惹かれて購入。どのお話も科学チックで面白かった。きっとその専門か少し詳しい人じゃないと完全に理解できないような深いところまで描写されてて、作者の頭の良さというか、探求心というか、そういうものをすごく感じた。1話目のダメコンビニ店員だと思われていたベトナムの留学生が実は大学院で地震の研究をしてたというギャップと、そして第一話の主人公がちゃんと自分の進むべき道を再確認できたような結末が一番お気に入り。地球の中心に降る雪、なんてロマンチックな表現なんだろう。
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Posted by ブクログ
太陽の黒点フレアが強まり、電波を使う機器が時々使用できなくなる日が多くなった世界。新宿でふと見上げると、空にはオーロラがかかっていた。地磁気が弱まってきていたのである。地球の地磁気がゼロになっていく世界で、宇宙天気を専門とするサイエンスライター浅田柊の周りでは、妊婦達が姿を消していった…。
背表紙タイトル買い。これは絶対にSF読みはスルーできないタイトルである。そして、中身もなかなかに濃い。
地球物理学を専門としていたという作者の専門をいかんなく発揮した一冊である。地磁気が無くなっていくという、普段当たり前のものがなくなり、それに伴うパニックとパニックに乗じた混乱。ちょうど2011年の福島第一原発事故で起こった、世間の不安と、過剰な反応などをうまく取り入れ、思い込みの怖さを描いている。
あのときの日々の放射線量への異常な反応は、日本人(とくに東北関東の人)でないとわからなかったし、あれを経験しなければ、こういう作品も生まれなかった。いい思考シミュレーションの題材となったということだ。
そういう意味でも、御大小松左京の作品を思わせる作風で、こういうものが書ける作家はもっとがんばってほしい。梅原克文なんかもそうだよね。日本の作家には少ないんだよな。
本作の中でおもわず唸らされたのは、秘密の医療施設に乗り込んだ際に、医師たちは「関係者以外は出ていけ」と言わないのだ。「中にいる人が危ない」と言われると協力する。実際に謎の実験が行われていたとしても、末端の手を下している人たちは善良で、患者の命が優先であるという描き方が出来ている作品はなかなかないと思う。
もちろん小松左京に比べると足りていないところもあり、地磁気以外の部分、例えば遺伝学や発生学の部分であるとか、厚労省や文科省の内部の組織のこと、雑誌編集部や研究室のことなど、地磁気や太陽フレアなどの部分に比べると、どうしてもふわっと曖昧な表記が多いため、リアリティがないのだな。
でもまあ、こういう作品が書ける小説家にはがんばってほしいので★5。 -
Posted by ブクログ
『いい信念は合理的だから、手強い。ダメな信念は非合理的だから、やっぱり手強い』―『Phase Ⅱ 白と黒』
地磁気の逆転について学んだのは何時の頃だったか。当時の高校地学で学んだ記憶はないが、学部移行して入った学科に古地磁気を研究している助教授が居たのでやはり大学に入ってからか。少々古臭い話だが、その先生の所属していた講座はプレートテクトニクスを認めないことで有名だった学派の流れを汲む教室であったのだが、その中で古地磁気の研究をするというのは異質であっただろう。学部生向けの論文購読を担当していたその先生は、当時は目新しかった隕石衝突による中生代から新生代への移行(あるいはKT境界問題)についての論文や温室効果ガスについての論文なども課題に出したりしていたのだが、結構思うところがありながら学生に接していたのかなと、「磁極反転」と聞くと今更ながらの思い出に耽ったりしてしまう。
南アメリカ大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸の形状に注目してウェゲナーが提唱した大陸移動説が、今現在理解されているようなプレートテクトニクスによる学説として認知されるようになった大きな切っ掛けは、大西洋の中央海嶺東西で確認された地磁気のパターンの対称性だ。それまでにハワイ諸島に連なる太平洋の天皇海山列の成因や大西洋中央海嶺上に位置するアイスランドでの火山列の観測などから大陸やそれを乗せたプレートが動いているとの推察は成立していたが、大西洋に広く観察される地磁気の縞模様が過去に記されたプレート移動の記録として認識され、プレートテクトニクスを時間軸にピン止めされた動きとして確立する決定打になった。その縞模様こそ過去に地球が経験した地磁気の反転の記録であると知ったのが学生の頃だった。
著者がそんな古地磁気の研究者であった為であろうが、双極性地球磁場反転に関する文章には真実味が宿る。例えば小松左京の「日本沈没」が似たような小説として思い浮かぶが、プレートテクトニクスが欧米では認知されているのに対して日本では未だ学説の統一的見解が示されていなかった状況で出版した「日本沈没」が、沈み込み帯というプレートテクトニクスで説明される日本周辺の地球科学的環境を使っていながら、やや非現実的な空想科学小説で来るべきディストピアを描いて見せたのに比べ、伊与原新の「磁極反転の日」は、時期の問題を除けば、非常に現実味のある設定で話が構成されている。それが現実味を帯びていることを知っている者には、空恐ろしい程の近未来小説とも読めるけれど、地球が過去に何度も磁場の反転を経験していることを知らないものには単なる空想科学小説と読めてしまうのかも知れないと思うと、より一層寒気立つ思いがしてくる。
『科学者と一般人の間のディスコミュニケーションも、たいていそこから始まる。科学者にとって、科学はプロセスだ。どの段階であろうと、修正もあれば棄却もあり得る。でも、一般人にとって、科学は結論だ。しかもそれは、誤謬のない価値ある成果でなければならない。お互いがその違いに気づこうとしない限り、ディスコミュニケーションは続く』―『Phase Ⅳ 急転回』
思えば、気候変動に関してもかつての大陸移動説同様に、肯定するものも否定するものも、決定打となるような証拠を掴めていないのではないかという気がしてならない。もちろん、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次報告で示したように、最近の温暖化の拍車に人類の活動が与えた影響は無視できないだろう。しかし原始地球の大気から見れば一貫して二酸化炭素の分圧は下がり続けており、それに従って地球が寒冷な環境により長く晒されるようになってきたというのも既に様々な証拠から確認されている事実。小説の中でも語られるが、自分たちが学生の頃は、地球は氷河期に向かっている、とよく語られていた(正しくは、「氷期」に向かう、だが。大陸上に氷河が観察される今現在も260万年前から続く「第四紀氷河時代」であり、今は比較的温暖な「間氷期」に当たる)。二酸化炭素の濃度が気候変動に与える影響が大きく議論されるようになるまでは、太陽活動の変移や、地軸の傾きの揺らぎや公転軌道の変動などの周期を組み合わせたミランコビッチ周期によって氷期-間氷期の変遷を説明する説が一般的だったが、今盛んに行われている脱炭素を巡る議論をする人々の中にどれ位過去の中長期の変動を踏まえて議論をしている人がいるのだろうか、と老婆心ながら心配になる。ハブを駆除するためにマングースを放つというような、自然を完全に制御可能なものとして扱う人間の傲慢さが出なければよいと思うことしきり。小説の中で、時折登場人物に語らせる自然観や人間の思考の傾向に関する見方が、どうも元地球科学者としての著者の本音であるように感じてしまうのは穿った見方だろうか。
そんな個人的な思いに絡め取られ易い小説ではあるけれど、作家の代表作の短篇集に比べて大掛かりな設定、かつ幾つものエピソードが同時進行で共鳴しながら進んでいく運びは非常に刺激的。ちょっと学術用語(英語で言うところのjargon)が多くて一部の人には苦になるかもと思いつつ、それを乗り越えてこそのグローバルな環境変化に対する議論の在るべき姿じゃない、とも思う。