伊与原新のレビュー一覧
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初めましての作家さん。
読み始め、肌感合わないかも?短編集で良かったな、、と思ったのが良い意味でハズレ、作家さんの熱量や新しい知識に触れるたびに引き込まれ、短編集だけど、総合的に一冊の作品となっていて素晴らしかった。
巻末の参考文献からもわかるように、とても綿密に描かれたもので、その探究心や努力に圧倒された。
作者の熱量で、実際にいろんな方の協力を得られ、より良い小説となったかと思うし、それがキャラクターにもよく現れてた。
本来は、感情を揺さぶられる小説が好きだけど、新しい知識として得られる小説も、やっぱり読んで良かったと思える一冊でした。 -
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雨にも色々な呼び名があります。
この本のタイトルの「翠雨」とは、どんな雨なんだろうと思い、調べてみました。新緑の季節に降る、木々の青葉を濡らす雨のことで、夏の季語でした。雨が葉の緑色を翡翠のように美しく見せる情景が思い浮かぶ言葉でした。
主人公の猿橋勝子は、大正九年生まれ。彼女は、雨はどこから降るのだろうと疑問をもつ子どもでした。家族の後押しと自分の納得できる場所を求めて、帝国女子理学専門学校へ行くことになりました。結果的にこの事が彼女の人生を決めたことになりました。
始めは気象研究所に派遣され、研究者として歩んだ彼女は、微量分析の達人と呼ばれ、第五福竜丸事件や原水爆実験による放射能汚染の -
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ネタバレ水爆実験による放射能汚染を科学的に実証した女性科学者、猿橋勝子さんの伝記ですね。伊与原さんらしく、実験のあれこれを端折ることなく克明に描いています。
男性に負けないような気概をもつ女性はたくさんいると思いますが、それと繊細な実験を行う技能を伴う人であったわけですね。日本側の数値がいかさまであると主張するアメリカに単身で対照実験に挑んだときの心境を考えると、あの時代にほんとうにご苦労だったことだろうと思います。毎朝海水を汲んで掘っ立て小屋の実験室で実験を行う姿は神々しさも感じます。
これは朝ドラでやるんじゃないですかね。楽しみです。 -
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伊与原新さんのハートウォーミングストーリーですね。
私設天文台をめぐる再生のドラマです。
県立秦野西高校の三年生の夏に、オオルリのタペストリーを空缶で作った仲間が、四十五歳で集結する。
きっかけは、国立天文台に勤務していたタペストリー仲間の山際慧子が、国立天文台を辞して秦野市に帰って来た事だ。友情を温めようと、同じくタペストリー仲間の伊東千佳と種村久志、勢多修の三人が慧子の歓迎会を開いた事から始まる。
慧子は国立天文台の正規の職員ではなく、嘱託職員だったのが契約が切れて退職したと言う。しかし、自分のやり残した研究の為に、手作りの天文台を建てる計画を実行したいと言う。
その話を聞いて、 -
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科学の知識と人間ドラマを融合させた作品集。
直球の人情ものなのだが、言葉の一つ一つが胸に沁みる。感情の交錯の描写が丁寧。
人生のままならなさを、科学的な視点から新しい世界が見えて状況が好転していくというパターンなのだが、これがとてもイイと思った。
劇的なパワーのある作品ではないのだが、人の親切が”沁みる”。個人的に好きなのは、最後の「山を刻む」。家族に奉仕しなくてはならない疲れ切った主婦が、自分の趣味であった山登りの途中、教授と学生とであって…という展開。今の状況をかえようと何かを決意した主婦と、その主婦を応援するかのような最後の教授の言葉に、なぜか涙が出た。
一期一会と言ってもいい出会いが何 -
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伊与原新さんの小説は好きなのですが、こちらは私がこれまで読んできた物と少し雰囲気が違って新鮮でした。
天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生が依頼された数々の謎を解き明かしていくストーリーなのですが、蝶子のキャラクターがぶっ飛んでいて笑えました。こんな気象予報士さんをテレビに出したらダメでしょ〜て思うけど小説の中では面白い。
探偵右田夏生との力関係も一目瞭然。
伊与原さんは、毎回科学の事を分かりやすく書いてくださるのですが、今回の気象に関してはちょっと難しかったです。それでもテンポ良く謎を解き明かしていくストーリー展開は楽しめました。また未読の本を見つけたら読ん