伊与原新のレビュー一覧
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物語のスタートからゴールまで、後半は区間快速の如し。始めと終わりで加速度が全く違う作品だった。凄く良く考えられた作品で、最後まで、そうだったのか、とか、ここでそれが重なる訳やね、などと思いながら読んだ。
最後振り返って思うこととして、いい構成だが登場人物一人一人を描写するエピソードが不足か。はじめまどろっこしく感じる一因かもしれない。たまたま私にハマらなかっただけかもしれないが、中年の登場人物なりにあと1〜2割魅力が増えると、ぐっと物語が締まって印象も良くなるかもなー、と思った。
45歳の私にはドンピシャな、人生の後半に向けた自分探しと不安、人生の意味について考えた作品だった。そして無性に星を見たくなった。 -
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高校の地学部といえば、伊与原氏の鉄板ネタか。今回は宮沢賢治へのオマージュと言うべき作品だった。素人の集まりからの地学部と言いながら、天文、地学、土木などの専門的な話がてんこ盛りになるのはお決まりコース。それを宮沢賢治と花巻というお話のベースがあるから、もうついていくのもやっとだけど、これが楽しかった。
銀河鉄道の夜も一応は読んだことがあるはず。しかしこんな奥深いストーリーがあったとは。また何バージョンもあったのではという説、この辺りはミステリー作家の心をくすぐるようなネタだったのかもしれない。
ラストに解き明かされる謎の数々。深澤が持っていたノート、銀河鉄道の夜の別稿、姿を消した七夏の行方。純粋な推理小説ということでもないから、謎解きの楽しみみたいなことは不要。高校生たちの話はまたその先に続いていくでいい。
花巻、盛岡、小岩井、鱒沢。名前は知っていても行ったことがあるのは出張での盛岡くらい。地学部の巡検のようなことは無理にしても、夢を追いかけるような旅はしてみたくなった。 -
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【物語の向こうにも、宇宙のような果てしない世界が広がっている。】
最近私のなかで秘かに
マイブームとなっている伊与原新さん。
本作も見事に科学と文学が融合していて、とても面白い化学反応を起こした物語だった。
物語は定時制高校に通う年齢も育った環境も違う、今の感覚でいうと「多様性」に溢れた生徒たちが通っている。
みんな今のままじゃいけない、何かを変えたい、掴みたいと藻掻いている。
そんな生徒たちにとって、藤竹先生はまさに人生のターニングポイント。
学生のときに、こんな人たらしのような先生に出会えていたら、もっと理科を好きになってたかも。
藤竹先生の語る「火星の青い夕焼け」
「火星のクレーター」「オポチュニティの轍」
もう気になってしまい画像をポチりまくり。
どの写真も映画のワンシーンみたいに綺麗で幻想的な世界に大興奮!
何を隠そう私も岳人と同じように幼い頃、図鑑が好きで良くにらめっこしてワクワクしていた口だ。
理数系ダメダメな私であったが、この本を読んでいるうちは、まるで自分が定時制高校の科学部の一員にでもなったかのような錯覚に陥り、忘れていた「学ぶ楽しさ」をすっかり追体験させられてしまったのだ。
作中での「オポチュニティの轍」は、どこか「孤独でかわいそう!」という感じだが、私はちょっと違う。あいつはあいつで、まだ誰も見たことのない世界を一番乗りで見物できて、案外ノリノリで冒険を楽しんでいたんじゃないだろうか、と。科学部員の岳人たちのように……。
ふと、読書も学ぶことが多いからやめられないのかもしれないと思った。
物語も宇宙のような果てしない世界が広がっているから。
「私の中では君たちが最優秀賞」
藤竹先生あなたもね!
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2024年下半期の、直木賞受賞作品。
ウミガメに関する話だと知って興味を持ち、Audibleで聴くことにしました。
5つの短編小説で、構成されています。
表題作は、中学生の女の子が主人公。
徳島県の海辺の町で育った彼女は、砂浜に産み付けられたアカウミガメの卵を掘り返し、自分で孵化させようとします。
その時に外国人と思われる男性と出会ってしまった彼女は、痕跡を十分消すことなく、慌ててその場を立ち去ります。
そのおかげで、地元で保護活動をしている人たちが、産卵場所の異変に気付いて・・・という始まり。
長年続けられてきた、ウミガメの保護活動。
それに反して、浜に戻って来る個体数も、産卵される卵の数も減少の一途をたどり、近年では産卵が無い年も多くなっています。
いっぽう、年の離れた姉が家を出て、祖父と二人で暮らしている彼女。
「田舎に取り残されてしまった」という彼女の思いが、大海原に出た後に長い年月を経て、生まれた浜に戻ってくる、ウミガメの生涯と重ね合わせて描かれています。
5作品それぞれのテーマは、焼き物、オオカミ、原爆、隕石、そしてウミガメ。
実話が元になっている話もあるようですが、いずれも興味深く読ませていただきました。
5作品に共通しているのが、離島や山村など、都市部ではない土地が舞台になっている点。
そしてそれぞれの登場人物が、自らの悩みと向き合う姿が描かれている点でも共通しています。
過去にいた人物、過去に起こった出来事があって、今の状況がある、現在の自分がいる。
過去と現在、自分とのつながりに気づけるか、気づけたとしてそれを、どう受け止めるのか。
ストーリーを楽しめて、考えさせてももらえる。
さすが、大きな賞を受賞した作品だなと、感じました。
この作家さんが他に、どのような作品を発表しているのか気になったので、探して読んでいきたいと思います。
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Posted by ブクログ
夢化けの島、狼犬ダイアリー、祈りの破片、星隕つ駅逓、藍を継ぐ海の5編からなる短編集。
この人の作品は美しいと思う。それは単なる情景描写だけでなく、主要な登場人物の心情、行為行動が美しいと感じられるからだと思う。そしてそれは、登場人物たちの育ち、生き様から生じる寂しさや悲しさが優しさとなり、背景などと相まって美しい心情、行為になるのではないだろうか。
とにかく、この5編に描かれている情景は美しく、悲しい。そしてこの5編の主人公も回りの人たちも寂しく優しい。と感じた。
特に「藍を継ぐ海」は壮大な風景を想像させ、ウミガメの壮絶な生き様は主人公のこれからの人生を連想させてくれる。本当に美しい小説だと思った。