伊与原新のレビュー一覧
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伊与原新さんの作品は昨年初めて読み、本作『藍を継ぐ海』が『月まで三キロ』『八月の銀の雪』『宙わたる教室』に次いで四冊目となりました。
2026年に入ってからは、これでまだ三冊目です。
昨年のレビューでは「読むペースが落ちたのは初孫が生まれた影響」と書きましたが、今の時期は単純に“雪かき”が原因です。今日はすでに三度雪かきをしました。12月は例年に比べて降雪量が少なかったものの、1月に入ってからは毎日のように降り続いています。もう雪のない場所へ移住したいと思うほどです。
『藍を継ぐ海』は、第172回直木賞を受賞した作品で、五つの短編から構成されています。表題作は、徳島県のウミガメの産卵地 -
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ちょうど一年前、2回前の第172回直木賞受賞作品。初めて読む作家さん。短篇五篇。
いづれもよかったが、一番は、「星隕つ、駅逓」。
北海道の田舎でまもなく廃業となる特定郵便局に痕跡を残すのみとなった野知内(アイヌ語のノチウナイ[星の川]が転じて、ノチナイ、さらに転じて、ヤチナイ)という地名を世に残すべく、特定郵便局長の娘が、隕石騒動の中作戦を練る。その作戦は、結局実を結ぶことはないのだが、父は娘の頑張りの甲斐あって、張りのある生活を手に入れる。人のために頑張っていると、得てして想定とは少し違う形で報われることがある。
他の4篇も、登場人物は皆他人に優しい人たちで、読んでいて心が洗われるようだ -
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科学者猿橋勝子の一生に魅了された。
これほど、情熱を傾け探求し続けるとは、並大抵ではないし、その真摯な姿勢ゆえに師に出会い、また友や理解者と巡り会うことになったのだろう。女性が学問をすることを許さない親も多い時代に、勝子の応援者となった家族の愛情も感じられ、スクリプスでのフォルサムとの一騎打ちには、勝子の科学者としての矜持をみた。
科学の発展は、人にとってはいい面ばかりではない。だからこそ、多くの人に関心や興味を持ってほしいし、その正しさを見極める力をつけてほしい。そう言われている気がした。
まず、手始めに、この本を読んで、日常に溢れる科学に気づいてほしいと思います。
(最後に余談、、、著者が -
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学生時代に戻りたいと思う時は頻繁にある。あの時の悩み事なんて、今考えれば重大な問題ではなく可愛らしい悩みだったなぁと笑える友達や関係者がいるから幸せな社会人生活を送れていると思うようにする。
それでもあの時は必死だったんだ。中学とか高校のあの時は長く感じる3年間は。勉強もそれなりにやった。部活も全力で遂行した。イベントも悔いに残らないように取り組んだ。あの時の一つ一つの選択肢は全て正解だったよと自分を褒めてあげたい。
今はどうでしょう。社会人生活10年目に突入しようとしている。学校卒業のような区切りはない。あったとしても定年?それまで毎年同じように季節を過ごしていくのかな?でもいつでも始め -
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久志、修、千佳、和也、彗子、そして恵介の高校時代から続く関係性は眩しく感じた。
高校時代の鮮やかな青春の記憶と、その時の仲間数人が近くにいながらも再び取り戻すことは出来ない時間。
私はまだ高校を卒業してから7年程度しか経っていないけれど、もう戻れない時間を思い出して少し苦しくなってしまった。
皆が再び集まって作り上げる「天文台」や、高校時代のタペストリーや天文台でもモチーフとなる「オオルリ」、今や引きこもってしまっている和也と仲間との繋がりである「FMラジオ」など、それぞれの要素が何だか儚げで胸を締め付けられる感じがした。
天文台を作り上げていく描写は正直あまり文章からイメージが湧きにくく -
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大地震の「前兆すべり」の研究をしていた行田準平。大学院は修了したものの研究者としての就職に行き詰まっていた。
恩師の推薦もあり不本意ながら地震研究所の広報アウトリーチ室の専任助教に就任したのだが翌年、東日本大震災が起きた。
鳴り止まない電話。市民からの苦情、罵倒。内部からの吊し上げ……。
疲れ切っていた準平は ある報道番組のTVカメラの前で とうとう広報担当として言ってはいけない台詞を言ってしまう。
そして震災の一年半後 彼は地震研究所を辞した──。
震災から三年。塾の講師のバイトで食いつないでいた準平は 業界の“プリンス”と呼ばれていた地球物理学の研究者 武智から新しいプロジェクトに誘わ -
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のっぴきならない人生から何とか脱却しようと奮闘し、色々な形で試行錯誤を試みながら必死に足掻き続ける人たち。
この短編集は、そんな悩みをもつ彼らを、まさに月の光のように静かに、しかし優しく包み込む。
その時、彼らの深刻な悩みは、仄かな希望へと穏やかに昇華を遂げていく。
そういった素敵な過程をいくつも見ることができ、貴重な読書体験ができたと、僕も胸を張って言えそうだ。
この独特の光明の隠し味は科学的テーマだ。
僕もそうなのだが、科学にはどこか理知的で冷たい部分があると思う方も多いだろう。
だがこの短編集では、それはそのような冷却剤としては機能していない。
それどころか、その知識は人びとの心