伊与原新のレビュー一覧

  • 月まで三キロ(新潮文庫)

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    科学の知識と人間ドラマを融合させた作品集。
    直球の人情ものなのだが、言葉の一つ一つが胸に沁みる。感情の交錯の描写が丁寧。
    人生のままならなさを、科学的な視点から新しい世界が見えて状況が好転していくというパターンなのだが、これがとてもイイと思った。
    劇的なパワーのある作品ではないのだが、人の親切が”沁みる”。個人的に好きなのは、最後の「山を刻む」。家族に奉仕しなくてはならない疲れ切った主婦が、自分の趣味であった山登りの途中、教授と学生とであって…という展開。今の状況をかえようと何かを決意した主婦と、その主婦を応援するかのような最後の教授の言葉に、なぜか涙が出た。
    一期一会と言ってもいい出会いが何

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    2025年11月15日
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)

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    伊与原新さんのハートウォーミングストーリーですね。短編集です。
     生活に疲れ、生きる事の難しさを抱えている登場人物の出逢いと人間模様を、科学を交差させて描く再生のドラマです。
     伊与原新さんは、科学を思考する人達に、科学を描くことの可能性を、この本でも証明されています。
     曰く「科学者にはロマンチストが多い」と言われますが、まさに科学は謎解きと奥の深い人間模様がありますね。

          目次

       八月の銀の雪
       海へ還る日
       アルノーと檸檬
       玻璃を拾う
       十万年の西風
     
     表紙装画と表題が違いますね。装画は「海へ還る日」を表しています。
     「月まで三キロ」から伊与原新

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    2025年11月13日
  • 蝶が舞ったら、謎のち晴れ―気象予報士・蝶子の推理―(新潮文庫nex)

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    伊与原新さんの小説は好きなのですが、こちらは私がこれまで読んできた物と少し雰囲気が違って新鮮でした。

    天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生が依頼された数々の謎を解き明かしていくストーリーなのですが、蝶子のキャラクターがぶっ飛んでいて笑えました。こんな気象予報士さんをテレビに出したらダメでしょ〜て思うけど小説の中では面白い。

    探偵右田夏生との力関係も一目瞭然。

    伊与原さんは、毎回科学の事を分かりやすく書いてくださるのですが、今回の気象に関してはちょっと難しかったです。それでもテンポ良く謎を解き明かしていくストーリー展開は楽しめました。また未読の本を見つけたら読ん

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    2025年11月10日
  • 博物館のファントム 箕作博士の事件簿

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    伊与原さんの作品を読むと自分の日々の世界からは離れているものの、人との関わりの不思議さを感じることができてホットします。
    この作品は、仮想「国立科学博物館」が舞台になっているのは明らかで、あの場所の入ることができない場所に、どのようなものが収められているのか、そこで働き、日々研究にいそしむ人たちがどんな日々を過ごしているのかを体験できるのが何より楽しい作品です。
    全部で6話からなり、一話ごとに完結するので、連作かと思いますが、最終話を読むと、すべてはここへ向かっていたのだと気づきます。
    博物館の人たちって何やっているんだろう!?と不思議に思っている方に特にお勧めです。

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    2025年11月03日
  • 青ノ果テ―花巻農芸高校地学部の夏―(新潮文庫nex)

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    伊与原新さんの学園青春ドラマですね。
    宮沢賢治のオマージュ作品でもあります。
    もちろん、伊与原新さんですから、科学も絡んで物語を面白くしてくれています。
     宮沢賢治が教鞭をとった花巻農学校を前身とする「岩手県立花巻農業高等学校」をモデルとする「花巻農芸高校」が舞台になります。ですから、随所に宮沢賢治の話が盛り込まれて物語は構成されています。

     二年生の壮多と七夏の教室に深澤北斗が転校してくる。そして、ひょんな事から宮沢賢治の作品のイギリス海岸のモデルになった場所を案内することになった。
     目的地に行くと、三年生の三井寺と出会った。三井寺は化石の発掘をしていたのだが、実は地学部という部活を立ち

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    2025年11月01日
  • 青ノ果テ―花巻農芸高校地学部の夏―(新潮文庫nex)

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     花巻の高校生たちが立ち上げた地学部。
     主人公の江口壮多を含めたメンバーは夏休みを利用し宮沢賢治のイーハトーブを求めて巡検の旅に出る。
     訳ありの転校生深澤の悲しい過去や七夏の思い。
     「銀河鉄道の夜」になぞらえた深くて神秘的な作品だった。「銀河鉄道の夜」に異稿があるとは今まで知らずにいたので、ぜひ読んでみたい。
     日の入りから夜へ向かう空の青の深さの描写には心惹かれた。

     宮沢賢治をここまで惹きつけるような作品を描ける伊与原さんは、現代の宮沢賢治に匹敵するのではないだろうか。

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    2025年10月31日
  • オオルリ流星群

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    齋藤孝『成熟力』の中で、人生の折り返し地点としたのは、45歳だったでしょうか。
    45歳となった高校の同級生たちの今が、とても現実的に描かれています。
    そして、45歳はまだ成熟していないようです。
    ただ、新しい自分へと行動するならば、チャンスの時期かもしれない。
    そんな年齢感覚が、この小説のなかにも確かに流れている。

    地球惑星科学の研究者であった著者の知識は、
    小型望遠鏡を使った天体観測の描写に確かな現実感を与えている。
    夏の夜空を見上げるシーンには、他の作品同様に理系の緻密さと文学的情感が自然に溶け合う。

    高校時代の「空き缶アート」は、作者自身の思い出がもとになっているという。
    だからこそ

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    2025年10月30日
  • ブルーネス

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    伊与原作品で初の長編を読みました。
    短編小説の静かな世界と異なり、この作品は東日本大震災で何も出来ず、歯がゆさや悔しさを抱いた地震研究者たちが、立ち上がり新たな方法で地震に立ち向かう話で、思わず引き込まれました。

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    2025年10月20日
  • オオルリ流星群

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    タペストリーを作った、のような大きな出来事があるわけでもなく、部活も勉強も大して頑張っていなかったのに、なぜか学生時代の夏を毎年思い出す。
    青春時代は美化されるよな〜と思っていたけれど、青春だから思い出すのではなく、昔のことだから思い出すのだ。
    いつか今が十分な青い春であることをきっと思い出すんだろうな。

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    2025年10月15日
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)

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    就活、家族、故郷…。向かうべき先や帰るべき場所を失ったとき、自分は戸惑い、立ち尽くしてしまうかも知れない。それでも、自分以外の他者と触れ合うことで、自分を形作る輪郭とその奥深くに眠る「核」を呼び起こし、再び前に踏み出すことができる。
    伊与原さんの作品は、そんな変化の激しい時代への科学がもたらす処方箋と言えるでしょう。
    どんな状況にあっても、前に踏み出す原動力は「自然の摂理を明らかにしたい」という好奇心。
    10億年も前から地球の中心に積もる、鉄の雪。自分の中にも芯があるとしたら、そこにも何か降り積もっているだろうか。少しずつでも、芯は大きくなっているだろうか。
    行先に迷ったとき、自らに問いかけた

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    2025年10月12日
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)

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    伊与原新さんのお話は
    なぜか心に
    スーッと染みてくる
    少しずつ少しずつ
    五つの短編
    ひとつひとつに
    すぐそこに溢れている
    日常がある
    本当の人々の心がある

    迷子の伝書鳩と
    ふるさとのレモンの箱
    心が揺れ動く
    誰もが抱く人生の
    悔いと、これから

    さまざまな思いを
    掘り起こしてくれる
    愛の詰まった文章に
    また、してやられた!

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    2025年10月12日
  • 博物館のファントム 箕作博士の事件簿

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    伊与原新さんの科学エンターテイメントユーモアミステリーですね。
     池ノ端環は、ひょんなことから『国立自然史博物館』に職を得て、1ヶ月。まだ自分の職場をよく理解しているとは言えない。
     環の所属は、植物研究部の「多様性解析グループ」だ。だが環は、学生時代を含め、植物そのものを使って研究した経験がない。
     そもそも環は生物学を専攻していない。出身は理学部の情報科学科で、持ち合わせている知識は数学とプログラミングに偏っている。
     国立自然史博物館の植物研究部でDNAバーコーディングの技術開発チームを立ち上げることになり、計算機科学の専門家を一名募集があり、運良く採用された。コンピューターオタクで片付

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    2025年10月11日
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)

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    私たちの周りは科学で溢れている。でも、その詳細を気にしたこともなかった。伊与原氏の作品は科学に、宇宙に天候に興味を向けさせてくれるきっかけとなる。読み始めると止まらなく、そして優しい気持ちにさせてくれる。

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    2025年10月10日
  • ルカの方舟

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    伊与原新さんの科学サスペンスミステリーですね。
     実はこのミステリーは、江戸川乱歩賞に投稿して、惜しくも受賞を逃した作品を加筆訂正して、デビュー前から温めていた作品との事です。ですから、伊与原新さんの科学ミステリーの『原点』の作品ですね。

     「帝都工科大学アストロバイオロジー研究センター」のセンター長の笠見教授が、実験室で死亡した。
     どうやら有毒ガスを吸った為と思われるが、死因に不審な点がみられる。同時に同センターが、研究中の火星の隕石に「FFP(捏造・改ざん・盗用)」の疑いが有るとメールが、科学雑誌社と大学の関係者に送られてきていた?
     帝都工科大学の大学本部の研究公正委員会が開かれて、

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    2025年10月04日
  • オオルリ流星群

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    個人的にすごーーく好きだった。
    いろんな視点でいろんな話がすすむのはそこまで好きなわけではないんだけど、そのかたちだからこそ、それぞれの人の生き方とか価値観に触れられた気がする。みんなの気持ちが少しずつわかる気がしちゃうのも、ままならない現実もリアルにえがかれていたと思う。良い本読んだな〜って気持ちで本をとじられた。

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    2025年09月24日
  • 青ノ果テ―花巻農芸高校地学部の夏―(新潮文庫nex)

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    宮沢賢治の
    イーハトーヴは架空の理想郷に、郷里の岩手県をモチーフとしている

    更に銀河鉄道の夜をなぞるストーリー展開
    そして北上川(イギリス海岸)、岩手山や雫石駅など風景など重ね合わせるとより感情移入します。

    鹿踊り部の存在など、知る事、没入度が上がり
    日記とラストシーンは銀河鉄道の夜とリンクして感動の涙!

    岩手で宮沢賢治の聖地巡礼や鹿踊りを見たくなる
    是非読む前に銀河鉄道でを予習して下さい

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    2025年09月23日
  • 博物館のファントム 箕作博士の事件簿

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    ネタバレ

    夏も終わるけど、25年ナツイチなので読んでみたり。
    伊与原先生の本は初めてだけど、ポップな表紙とは裏腹に博物館的な知識の語り方が良かったなー。

    環と箕作のスタンスの違いは、分類学と博物学のそれだと思っていて。
    前者は分類付けし整理することに意味がある。いわゆる体系化だな。あるモノがある場所に置いてある(ある生物がある名前である)ことには理由がいる。
    後者は集めてこの場所に止めることに意味がある。今の私達の基準ではゴミになるものかもしれなくても、捨てずに意味付けをされるまで待ち展示すること。
    デコボココンビに見えるけど、意外と似た者同士な二人だったりするのだな。

    と、ところでその…、環さんと

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    2025年09月23日
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)

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    以前『月まで3キロ』を読んで、傷ついた登場人物たちが、揺るぎない科学の事実と知識に触れて、少し立ち直るエピソードに感動したことを思い出し、今年の夏が終わるタイミングで購入した。
    各編で登場する科学の知識がとても素敵な表現で紹介されている。“銀の雪”とか、“ガラスを纏った細胞”とか。それぞれの分野に詳しい登場人物が、出会った人に分かり易い言葉で語る場面も好きである。科学の知識にちょっぴり触れて、自分の身の上に照らし合わせて小さな発見をし、勇気を得てまた歩き出す。大げさなことではなく、「地に足の着いた」人生を歩むことも大事で尊く感じた。有名人でも成功者でもなく、普通の人達に、静かにエールを送ってく

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    2025年09月15日
  • 東大に名探偵はいない

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    東大出身の小説家6人によるアンソロジー。
    どれも短編でサクサク読めちゃうライトミステリー。
    どうやら、東大ならではのエピソードを盛り込んでくれって依頼されて書いたんだろう内容です。
    面白い。
    新川帆立さんのふざけ具合も楽しいし、
    伊与原新さんの地震予知の話も興味深く読めた。
    その2人以外は初読み作家さんでしたが、
    どれも良かった。
    特にラストの浅野皓生さんの弁護士から医者になった人の話は二転三転していて考えさせられた。

    アンソロジーは新しい作家さんとの出会いがあって良いですね〜

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    2025年09月14日
  • 博物館のファントム 箕作博士の事件簿

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    アカデミックな雰囲気が漂い、淡々としながらもどれも興味深い短編たちだった。
    続きがあるような終わり方だったので、早く読みたい。

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    2025年09月13日