伊与原新のレビュー一覧
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ネタバレ夏も終わるけど、25年ナツイチなので読んでみたり。
伊与原先生の本は初めてだけど、ポップな表紙とは裏腹に博物館的な知識の語り方が良かったなー。
環と箕作のスタンスの違いは、分類学と博物学のそれだと思っていて。
前者は分類付けし整理することに意味がある。いわゆる体系化だな。あるモノがある場所に置いてある(ある生物がある名前である)ことには理由がいる。
後者は集めてこの場所に止めることに意味がある。今の私達の基準ではゴミになるものかもしれなくても、捨てずに意味付けをされるまで待ち展示すること。
デコボココンビに見えるけど、意外と似た者同士な二人だったりするのだな。
と、ところでその…、環さんと -
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以前『月まで3キロ』を読んで、傷ついた登場人物たちが、揺るぎない科学の事実と知識に触れて、少し立ち直るエピソードに感動したことを思い出し、今年の夏が終わるタイミングで購入した。
各編で登場する科学の知識がとても素敵な表現で紹介されている。“銀の雪”とか、“ガラスを纏った細胞”とか。それぞれの分野に詳しい登場人物が、出会った人に分かり易い言葉で語る場面も好きである。科学の知識にちょっぴり触れて、自分の身の上に照らし合わせて小さな発見をし、勇気を得てまた歩き出す。大げさなことではなく、「地に足の着いた」人生を歩むことも大事で尊く感じた。有名人でも成功者でもなく、普通の人達に、静かにエールを送ってく -
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ネタバレなんやいうたら血液型で話題振ってくるヤツが嫌い、朝から星占いやってる民放テレビが嫌い、黄色い財布もってるヤツなんか敬遠する。でも乳歯が抜けたら「ネズミの歯になぁれ」と放り投げるし、流れ星見たら「金くれ金くれ金くれ」と唱えるし、トイレとか耳の裏とか綺麗にしてたら人生エエことが起こりそうな気がする…。
エセ科学で年寄りや無学なヤツ相手に暴利むさぼる連中の考え方はキラいやけど、かといって科学的論理的じゃないからと冷たく切って捨てる言動のヤツとも仲良くしたくない(スポック氏を除く)
そういう矛盾した一面を持っている人々は、この本を読んで楽しめると思う。ただ主人公格の登場人物があまり魅力的じゃないね -
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18歳の夏に一緒になってひとつのことをやり遂げた仲間たちと、45歳の夏にもう一度集まって天文台作りに挑む、大人の青春物語という感じ。かつての仲間の1人だった恵介の過去の謎がミステリ要素として上手く織り込まれているのも面白かった。
18歳でもそれぞれに悩みや葛藤を抱えているのは勿論だけど、大人になっても自分と比べて友人が羨ましく見えたり、未来への希望を失ったり、色々あるよねぇ..と久志や千佳に共感したり。でも自分で何も行動はせずに家族や今いる環境を言い訳にするのは違うよね。千佳の「この夏を28年前と比べる必要などない。」というセリフが印象的だった。 -
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この夏愉しんできた伊与原新さんの作品も、7冊目になりました。(もう秋ですね、暑いですが汗)
今回は今まで読んできた中でも、また一味違った味わいがありました。
長編作品では化学ミステリの要素があるものや、短編集では人間味ある温かな作品を読んできましたが、今作では過去、現在、そして未来へと続いていくような、温かなヒューマンドラマになっていました。一気読みでした。
登場する主な人物は、高校三年生の夏に文化祭で出展する作品を一緒に作った仲間六人です。作品は空き缶で作った“オオルリ”のタペストリー、青春の思い出ですね。
そこから皆大人(45歳)になり、それぞれ人生に悩みを抱えながら折り返し地点を過ぎ -
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伊与原新さんの日常の謎、お天気ミステリーですね。
エンターテイメントユーモアミステリーでもあり。
探偵の右田夏生が小学生の頃、転校生の菜村蝶子に出会った。
蝶子は、変わり者で、天気に関心を持っている。
蝶子は言う。
「お天気って、面白い」
「天気予報は嫌いだったんじゃないんか」と夏生。
「面白いのは、雲とか風とか雨のこと。
天気予報は、どうでもいい」
「お天気は、誰もえこひいきしない」
そして、夏生は何でも引き受ける探偵になり、蝶子は気象予報士になり、「ウェザーコム」という気象情報会社に就職した。
「右田探偵事務所」に持ち込まれる仕事に行き詰まると、夏生は蝶子に助け -
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伊与原新さんの科学小説!
独特の世界観に魅せられて、同作家さんは5作品目
今回は、東日本大地震の教訓をもとに、津波監視システムを実現させるというプロジェクト。
業界のはみ出し者たちが集まり、一つ一つの難題を地道に解決していく様子が描かれている。
海と生きていく人間にとって、津波から命を守るというのは避けて通れない道だろう。
とりわけ四方八方を海に囲まれた日本人にとって、その意義はとてつもなく大きい。
予測出来る津波によって、未来の尊い命が奪われることのない世界に・・・
本作を刊行されるにあたり、伊与原さんが参考にされた巻末の多くの参考文献にも、作者からの切実なメッセージが込められている作 -
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数学とプログラミングが専門分野の主人公環が、博物館に勤め始めるところから物語が始まる。
変わり者のファントムこと博物学者箕作との凸凹コンビが、博物館で起こるちょっとしたミステリーを解決していくのだが、それぞれの話に鉱物、植物、動物、化石、昆虫、地学、人類学とこれでもかと色んな知識を得られる物語が多いこと。参考文献をみ作家の勉強度合いが伝わり文庫本のこの薄さの割には情報量がうまく詰め込まれていて、nhk特集をポップなキャラクターを交えて読んでいる気分になりました。
特に最後の異人類たちの子守唄は、短いが壮大な話で、もちろんフィクション部分はあるが人類の起源のデニソワ人なる種が存在し、他種を受け入 -
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面白かった〜!
3.11の日、私は東京の職場であの地震を体験し、その日からずっとテレビで流れる津波の被害を目にして、その時は大丈夫だと思っていたけど数年後に見た映画インターステラーの津波のシーンで、信じられないほどドキドキして涙が止まらなくなった。全然大丈夫じゃなくて、心には津波への恐怖が植え付けられていたんだよね。
だからやはり、地震が起きたら津波の心配をするし、津波で亡くなる人や行方不明になる人が出ないように願ってやまないし、津波警報が出た時にも結果小さな波しか来なかったとしても文句言ったりしたらダメだよなと思う。
この話はフィクションとのことだけど、きっと日本の科学に携わる人たちは今日も -
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短編小説が五編おさまっています。
特に印象に残ったのは、「アルノーと檸檬」
広島県の瀬戸内の島で主人公の正樹は生まれた。家はレモン農家。気難しい父親とは合わず、役者を目指して高校を卒業後に上京した。
今は不動産管理会社の契約社員。
築三十六年の三階建てのアパート「ニューメゾン塚田」は建て替えのため、年内に全戸の立ち退きの必要があった。正樹は立ち退きを説得をする為に、三〇三号室の加藤寿美江の部屋をを訪ねた。立ち退きの話のほかに下の階の住人から苦情も出ていた。
下の階の住人から洗濯物に鳥の糞が落ちてきて困る、寿美江が鳥を飼っているのではないかという連絡があったからだ。
実際に訪ねてみると寿美