伊与原新のレビュー一覧
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科学の知識と人間ドラマを融合させた作品集。
直球の人情ものなのだが、言葉の一つ一つが胸に沁みる。感情の交錯の描写が丁寧。
人生のままならなさを、科学的な視点から新しい世界が見えて状況が好転していくというパターンなのだが、これがとてもイイと思った。
劇的なパワーのある作品ではないのだが、人の親切が”沁みる”。個人的に好きなのは、最後の「山を刻む」。家族に奉仕しなくてはならない疲れ切った主婦が、自分の趣味であった山登りの途中、教授と学生とであって…という展開。今の状況をかえようと何かを決意した主婦と、その主婦を応援するかのような最後の教授の言葉に、なぜか涙が出た。
一期一会と言ってもいい出会いが何 -
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伊与原新さんの小説は好きなのですが、こちらは私がこれまで読んできた物と少し雰囲気が違って新鮮でした。
天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生が依頼された数々の謎を解き明かしていくストーリーなのですが、蝶子のキャラクターがぶっ飛んでいて笑えました。こんな気象予報士さんをテレビに出したらダメでしょ〜て思うけど小説の中では面白い。
探偵右田夏生との力関係も一目瞭然。
伊与原さんは、毎回科学の事を分かりやすく書いてくださるのですが、今回の気象に関してはちょっと難しかったです。それでもテンポ良く謎を解き明かしていくストーリー展開は楽しめました。また未読の本を見つけたら読ん -
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伊与原さんの作品を読むと自分の日々の世界からは離れているものの、人との関わりの不思議さを感じることができてホットします。
この作品は、仮想「国立科学博物館」が舞台になっているのは明らかで、あの場所の入ることができない場所に、どのようなものが収められているのか、そこで働き、日々研究にいそしむ人たちがどんな日々を過ごしているのかを体験できるのが何より楽しい作品です。
全部で6話からなり、一話ごとに完結するので、連作かと思いますが、最終話を読むと、すべてはここへ向かっていたのだと気づきます。
博物館の人たちって何やっているんだろう!?と不思議に思っている方に特にお勧めです。 -
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伊与原新さんの学園青春ドラマですね。
宮沢賢治のオマージュ作品でもあります。
もちろん、伊与原新さんですから、科学も絡んで物語を面白くしてくれています。
宮沢賢治が教鞭をとった花巻農学校を前身とする「岩手県立花巻農業高等学校」をモデルとする「花巻農芸高校」が舞台になります。ですから、随所に宮沢賢治の話が盛り込まれて物語は構成されています。
二年生の壮多と七夏の教室に深澤北斗が転校してくる。そして、ひょんな事から宮沢賢治の作品のイギリス海岸のモデルになった場所を案内することになった。
目的地に行くと、三年生の三井寺と出会った。三井寺は化石の発掘をしていたのだが、実は地学部という部活を立ち -
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齋藤孝『成熟力』の中で、人生の折り返し地点としたのは、45歳だったでしょうか。
45歳となった高校の同級生たちの今が、とても現実的に描かれています。
そして、45歳はまだ成熟していないようです。
ただ、新しい自分へと行動するならば、チャンスの時期かもしれない。
そんな年齢感覚が、この小説のなかにも確かに流れている。
地球惑星科学の研究者であった著者の知識は、
小型望遠鏡を使った天体観測の描写に確かな現実感を与えている。
夏の夜空を見上げるシーンには、他の作品同様に理系の緻密さと文学的情感が自然に溶け合う。
高校時代の「空き缶アート」は、作者自身の思い出がもとになっているという。
だからこそ -
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就活、家族、故郷…。向かうべき先や帰るべき場所を失ったとき、自分は戸惑い、立ち尽くしてしまうかも知れない。それでも、自分以外の他者と触れ合うことで、自分を形作る輪郭とその奥深くに眠る「核」を呼び起こし、再び前に踏み出すことができる。
伊与原さんの作品は、そんな変化の激しい時代への科学がもたらす処方箋と言えるでしょう。
どんな状況にあっても、前に踏み出す原動力は「自然の摂理を明らかにしたい」という好奇心。
10億年も前から地球の中心に積もる、鉄の雪。自分の中にも芯があるとしたら、そこにも何か降り積もっているだろうか。少しずつでも、芯は大きくなっているだろうか。
行先に迷ったとき、自らに問いかけた -
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伊与原新さんの科学エンターテイメントユーモアミステリーですね。
池ノ端環は、ひょんなことから『国立自然史博物館』に職を得て、1ヶ月。まだ自分の職場をよく理解しているとは言えない。
環の所属は、植物研究部の「多様性解析グループ」だ。だが環は、学生時代を含め、植物そのものを使って研究した経験がない。
そもそも環は生物学を専攻していない。出身は理学部の情報科学科で、持ち合わせている知識は数学とプログラミングに偏っている。
国立自然史博物館の植物研究部でDNAバーコーディングの技術開発チームを立ち上げることになり、計算機科学の専門家を一名募集があり、運良く採用された。コンピューターオタクで片付 -
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伊与原新さんの科学サスペンスミステリーですね。
実はこのミステリーは、江戸川乱歩賞に投稿して、惜しくも受賞を逃した作品を加筆訂正して、デビュー前から温めていた作品との事です。ですから、伊与原新さんの科学ミステリーの『原点』の作品ですね。
「帝都工科大学アストロバイオロジー研究センター」のセンター長の笠見教授が、実験室で死亡した。
どうやら有毒ガスを吸った為と思われるが、死因に不審な点がみられる。同時に同センターが、研究中の火星の隕石に「FFP(捏造・改ざん・盗用)」の疑いが有るとメールが、科学雑誌社と大学の関係者に送られてきていた?
帝都工科大学の大学本部の研究公正委員会が開かれて、 -
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ネタバレ夏も終わるけど、25年ナツイチなので読んでみたり。
伊与原先生の本は初めてだけど、ポップな表紙とは裏腹に博物館的な知識の語り方が良かったなー。
環と箕作のスタンスの違いは、分類学と博物学のそれだと思っていて。
前者は分類付けし整理することに意味がある。いわゆる体系化だな。あるモノがある場所に置いてある(ある生物がある名前である)ことには理由がいる。
後者は集めてこの場所に止めることに意味がある。今の私達の基準ではゴミになるものかもしれなくても、捨てずに意味付けをされるまで待ち展示すること。
デコボココンビに見えるけど、意外と似た者同士な二人だったりするのだな。
と、ところでその…、環さんと -
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以前『月まで3キロ』を読んで、傷ついた登場人物たちが、揺るぎない科学の事実と知識に触れて、少し立ち直るエピソードに感動したことを思い出し、今年の夏が終わるタイミングで購入した。
各編で登場する科学の知識がとても素敵な表現で紹介されている。“銀の雪”とか、“ガラスを纏った細胞”とか。それぞれの分野に詳しい登場人物が、出会った人に分かり易い言葉で語る場面も好きである。科学の知識にちょっぴり触れて、自分の身の上に照らし合わせて小さな発見をし、勇気を得てまた歩き出す。大げさなことではなく、「地に足の着いた」人生を歩むことも大事で尊く感じた。有名人でも成功者でもなく、普通の人達に、静かにエールを送ってく