伊与原新のレビュー一覧
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伊予原さんの作品を読むのは3冊目。良いペースで読み始めたものの、途中から「これはいつもの『優秀だけど不遇な科学者の冷静だけど思い切った行動に、周囲のもやもやとした感情を抱えた人たちが影響され、やがて喪失から回復し、一歩前に踏み出す物語』というやつか?」と、やや食傷気味に。
と思ったら、最後は胸が熱くなっていっぱいになった。謎がかっていた伏線の回収も見事で本当にやられた。
おそらく自分は、本作のような「理屈とか将来のためとか損得ではなく、目の前にある物事に一生懸命取り組む」というもの全てに感動してしまうのだと思うが、本作はそれに加えて「その姿を必ず誰かが見ていてくれている」という要素が加わっていて、ますます心を動かされた。
伊予原作品、まだまだ読んでみたい。
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Posted by ブクログ
本作は以前からタイトルだけは知っていたが、読んだことはなく。
ネトフリで、NHKドラマを見かけて、観てみたら、ものすごく面白くて感動した。
これは、原作も読んでみたい!と、手に取ったのがこの本。
原作とドラマは、少し違っていたが、やはり感動する小説だった。
自分は、家庭の事情で合格をしたのに大学に行かれなかった。
代わりに、働きながら大学の通信教育部で大卒資格をとった。
昼間の普通の大学生には「通信教育部なんて」と、馬鹿にされながらスクーリングに通ったなー。
この本を読みながら、そんな昔のことを思い出した。
通信教育部にも、さまざまな年齢の方がいた。
この定時制のように。
学ぶことはいつでもできるし、学ぶことは楽しい。
小説の中の彼らは、この経験を轍にして、いろいろな未来を見ることができる。
なんだか、羨ましくなってしまった。
あとがきで、モデルとなった学校があるのを知り、指導をしていた3人の先生に拍手をしたくなった。
モデルの方々は、小説のようなタイプではなかったかもしれない。
けれど、学生たちの未来を大きく開いたのは一緒だろう。
良い小説だったなー。。 -
Posted by ブクログ
様々な背景と事情の中で定時制高校に通う人たちが、教師の導きで科学部の一員となり、教室で「火星のクレーター」を再現する実験にぶつかっていく物語。
とてもいいお話だった。
昔々、高校生の頃、私が通っていた学校にも定時制の課程があり、2年生の時には同じ教室を使っていた。
ある朝、黒板に「ちゃんと掃除をするように!」みたいなことが書いてあり、ほとんど掃除のようなことをしていなかった私たちは教室がきれいだったのは定時制の人たちが掃除していたお陰だったことに気づかされ、それからはしっかり掃除をして帰るようになったのだった。
そこから私たち全日制と定時制の人たちとの黒板を介した交流が始まって……みたいな佳い話にはならなかったのだが(ならんかったんかい!?)、まあ、純で素直な高校生だった時代のお話。
物語の中で、ペンケースを盗られたと思い込んだ全日制の女子が黒板に暴言を書いたり同じ席の昼夜の生徒間で机の中にメモを入れてやり取りをする場面を読んで、そんな昔を思い出した。
なので、古き時代に生きた私の感覚だと、定時制と言えば、何らかの事情で進学せずに働いている人が学びに飢えて通ってくるというイメージだったのだが、この本を読めば、『授業中のリスカなんてありふれてるし、暴行事件も多い』とか『虐待を受けていたり、育児放棄に近い状態で育ったりした子どもたちが毎年何人も入ってくる』など書いてあって、世の中が変わったことを今更ながらに知った。
そんな高校の4人の生徒、なにをやっても負のスパイラルから抜け出せない不良の岳人、夫と二人で料理店を切り盛りするフィリピン人のアンジェラ、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける佳純、かつて中学を出てすぐに集団就職で上京してきた長嶺。
章ごとにそれぞれが定時制に通ってくる背景が知れていく。高校に通えず働くしかなかった長嶺とその妻の学び直しの話にグッとくる。
生徒たちの身上と科学知識が溶け合って進む話は山あり谷あり、分かり易い展開だしちょっときれいすぎる感じもするが、ぶつかり合いながらも少しづつ前に進んでいく姿にはとても好感。最後の学会でのプレゼンの場面にはじんわりと感動が広がる。
作者さんのあとがきを読んで実話を下敷きにした話だということに驚いたが、『定時制の一年次というのは毎年、混乱のうちに終わってしまう』と言われるような環境でも、人間の可能性を信じて仕掛けた教師の方々を素晴らしいと思った。
本筋とはあまり関係ないのだが、、、第一話には、またしてもディスレクシアが登場。今年読んだ本だけでも3例目。こういうことを通してこの障害に対する理解が広がり、努力していないと決めつけられる人が少しでも少なくなると良いなと思った。
オポチュニティの轍、なかなか味わい深い絵面。 -
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猿橋賞、の猿橋勝子さんの物語。
賞の名は聞いたことがあるけれど、猿橋勝子さんのフルネームも人生も何も知らなかった。読み終えた今、何故今まで何も知らなかったのかと不思議になるほど偉大なことを成し遂げた化学者である。
ただ目の前の仕事に苦労を厭わずひたむきに取り組む姿は、ある意味、世界の中のひとつの歯車のようだなと思う。一人で完結しない生き方で、世界全体を一歩進めるために生きてらっしゃったのだなと。いや、ただの歯車として働くうちに、一歩を進めていたということか。地道に集めたデータで立ち向かっていく姿に心から感動する。
他方、科学は公平かといえば、主義によって絶対的な結果がねじ曲げられることもあるのかもしれない。勝子の受けた困難さから、今の超不穏な世の中で、あり得る現実に恐ろしくなりもした。
ぶわっと泣いてしまったところ。
単身アメリカで奮闘する勝子への手紙で、部下の奈良岡が語る言葉、「……あなたの面倒くささは、世界に通用します。面倒くささはすなわち、真面目さであり、粘り強さであり、正しさです。……」
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伊与原新さんの猿橋勝子さんの評伝小説ですね。
評伝としたのは、フィクションでありながら、猿橋勝子博士の史実に基づいて書かれているからです。
何より、日本の女性科学者として、初の博士となり、「日本婦人科学者の会」の創立者の一人として、女性科学者の地位と育成に尽力された足跡を描かれた素晴らしい小説です。
題名で、気象予報士の話だと思っていましたが、そうではなく、気象庁の初の女性研究員となり、師匠の三宅泰雄と共に、放射能の環境への影響の研究で世界的に認められ、気象庁の初の女性職員になり、数々の功績を残された日本の誇る女性科学者の物語でした。
伊与原新さんの、読み易い軽妙でいて、真実を伝えて行こうとされる努力を汲み取る事が、読みながら感動へと導かれました。
地球科学の先駆者として、三宅泰雄教授と猿橋勝子博士を宣揚された功績は大きいと思います。
もちろん、伊与原新さんも地球科学の博士ですから、この小説は、伊与原新さんでなければ書け無かったと推察します。
次作がますます、期待に膨らみます(=^・^=) -
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地震・津波に屈しない科学者たちの熱い思い
東日本大震災をきっかけに「津波監視システム」の運用の実現するために動き出す物語。
東日本大震災が来る予知ができなかった悔しさ。
その思いが遠ざかる(ある種の諦め)上層部のもどかしさが、物語には滲み出ていた印象があった。
準平が天木にいった「津波から人々を守るために、やれることがある」は非常に刺さった箇所。
地震は予知はできないから諦めるのではなく、「事前に防ぐ」事はできる。
数多ある地震のデータベースは、地層・断層から見えてくること、そして歴史を辿れば周期ごとが見えてくる。
地震は未知であり、地震が引き金とある津波だって未知。そんな未知なるものから逃げるのではなく
武智、準平、汐理、照井、李、そして瀬島だけでなく、いろんな人たちと協力しあいながら、私たちのために津波監視システムの運用までを常に戦う想像するとなると
彼らの思いが胸を高鳴らせ熱くさせる。ここまでやり抜こうとするのは科学者の鑑だと思うのです。
ご存知の通り、日本は地震に見舞われていることが多い。
巨大地震がいつきてもおかしくない中、私たちも地震への備えを怠らず
そしてシステムを作り上げた彼らにも敬意を払いつつ、過ごしていけたらと。