伊与原新のレビュー一覧
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人生うまく回る時期もあれば、何かのきっかけでつまづいて暗転してしまうこともある。そんなときに一筋の光を見つけて前向きに進んで行けるよう、そっと背中を押してくれるような短編集だと感じました。
どの物語も地学や天文学の要素が織り込まれていて、特に表題作『月まで三キロ』の中で地球と月の関係を親子関係に例える表現が印象的です。
全部で7編ある物語の中では、ミステリアスな女性「プレアさん」と父娘の交流を描いた『エイリアンの食堂』が特にお気に入り。
壮大な宇宙の歴史と亡き母(妻)の存在を「水素」という科学的なもので結びつけるクライマックスに、不思議なあたたかさを感じて胸がジーンとしました。 -
Posted by ブクログ
月まで3キロ、星六花、アンモナイトの探し方、天王寺、エイリアンの食堂、山を刻む 以上6つの短編からなる物語。
月まで3キロでは、元地学教師のタクシードライバーと仕事も家族ともうまく行かなくなった自殺志願者のやりとり
星六花は、気象庁で働く男性と三十代後半の女性の叶わぬ恋のお話
アンモナイトの探し方は、元博物館の館長と母の実家に訪れた小学生とのお話
天王寺ハイエイタスは、叔父である元プロのブルース・ギタリストと京大卒で地球温暖化の研究をする兄とかまぼこ屋さんを継ぐ流れに乗った弟のお話
エイリアンの食堂は、素粒子の研究で高エネルギー加速器研究機構で働く女性研究員と、食堂を営む男性とその娘のお話
山 -
Posted by ブクログ
青春の一コマ
誰もが持っている思い出
それは大きなことばかりでなく
ほんの些細なことかもしれない
主人公たちの心の中に燻っているものが
また、動き出す物語
45歳という、なんとも中途半端な年齢
生活に疲れ、すべてがうまくいかない
ただ惰性で流されているのかもしれない日々
あるきっかけから何かが変化した
やり残したことがあった
聞きたいことがあった
今なら、今だからできることがある
一念発起というほどのことでもなく
なんとなくできることをしてみる
気持ちがスッキリと晴れやかになる
そんな、素敵な、心が軽くなる
読書体験となった
「45歳になった今の自分たちは『星食』のときを生きているような -
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無さそうだけど有りそうな、有りそうだけど無さそうな博物館の裏庭を散策したような気分になれる不思議な物語。数々の事件を通して、環が箕作の有能なパートナーに成長を遂げるどころが面白かった。
個々の事件の中では、藍を継ぐ海の中でも取り上げていた、ニホンオオカミについての話と、異人類たちの子守唄が特に好きです。前者は、ニホンオオカミの特徴としての送りオオカミと狼犬の話題が再び(あくまでも読んだ順です。)取り上げられています。もしかしたら伊与原さんの、箕作先生たちに任せるなんてもったいない、自身のライフワークにしようなんて考えているのかな。また異人類たちの子守唄は、デニソワ人という初めて聞く人類の先祖が -
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初めましての作家さんですが、ブグログ内では高評価の作品が多いようですね。
まずは学園(!?)ものから。
舞台は岩手県
登場人物は花巻農芸高校、地学部の生徒たち
彼らが宮沢賢治のゆかりの地(主に銀河鉄道の夜)を自転車で巡る旅に出る。
その様子が描かれる中で、高校生ならではの心の揺れがとても良く伝わってきた。
とにかく宮沢賢治の事が物凄く詳しく書かれていて、詳しく知らない私としては、そこは少しだらけて読んでしまったような。(申し訳ない)
でも、地学部の鉱物採取のところはちょっぴり興味を持って読めました。
いずれにしても、この2つのことに関しての情報量が多くて、とても良く調べられて書かれているの