あらすじ
「雨は、なぜ降るのだろう」。少女時代に雨の原理に素朴な疑問を抱いて、戦前、女性が理系の教育を受ける機会に恵まれない時代から、科学の道を志した猿橋勝子。戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、後年、核実験の抑止に影響を与える研究成果をあげた。その生涯にわたる科学への情熱をよみがえらせる長篇小説。
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すばらしい物語。高市さんにも読んでほしい。
ガラスの天井というのはこれだ。
戦争、社会、男性社会など様々な逆行に晒されながらも、生き抜く生き様。また、その時々の主人公を助ける周囲の人が素晴らしい。程度は違えどまだまだ現代にも残る問題はある。歴史は繋がり続いている。
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宙わたる教室、藍を継ぐ海の直木賞作家の作品。
最初は小説家と思っていたが、
猿橋勝子さん、
実在の人物、地球科学者。
1920-2007
杉並の馬橋で研究をし、
ビキニ環礁、福竜丸の放射性物質を分析し、
平塚頼てうの推薦で世界会議で講演し、
物質の危険性、水爆実験の愚かさを訴え、
ついにはアメリカに水爆実験中止を決断させる。
何事も正攻法でこだわる一女性の勝利だ。
そういう女性科学者がいたことを知らなかった。
活躍する女性科学者に猿橋賞が贈られているという。
先駆け。
それをわかりやすく丁寧に描いている小説。
私事だが
研究所が杉並区の馬橋きょうだいのお名前が勝子と英一
なんか親近感がわく。
序章
第一章 翠雨の頃 すいう
第二章 霧氷の頃 むひょう
第三章 飄風の頃 ひょうふう
第四章 虹橋の頃 こうきょう
終章
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久しぶりに小説を読んだ。
読んでて怖くなった。
戦前から戦後へと
原爆、水爆実験という現実に
果敢に、地道に、けれどぶれることなく
挑む科学者の姿勢に心から尊敬の念を持った。
そして彼らを取り巻く戦前の社会情勢は
まさに、今と同じなのである。
ただ単に素晴らしい女性科学者賛辞では
終わってはいけないと思った。
私たちに
科学とは
歴史とは
何を学んで行動するべきか教えてくれた。
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戦前から化学研究に情熱を注ぎ、世界に名を知られてからも、女性科学者たちのために、道を切り拓き続け、猿渡賞を創設された猿渡勝子さんの生涯を初めて知った。
女性というだけで蔑視される時代に、さらに日本人という蔑みを受けつつも、ただやるべきことを丁寧に決して手を抜くことなくやり続けて、日本の科学の力を示し、認めさせた猿橋勝子さんの生き方は、多くの後進科学者に勇気を与えてきたのだ。長い時間をかけての地道な研究の先に、偉大な成果が生まれる。でも知られないままの偉人がたくさんいるのだろうと思わずにはいられない作品だった。
紫陽花の表紙が美しい。
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研究者である著者でしか書けないであろう(言い過ぎ)、研究に向かう科学者たちの思考や姿勢が反映された描写は、同じ理系の者として深く理解できた。(工学部の森さんも同様のテイストを醸し出しているので、唯一無二とは言えないのが残念だが)。猿橋賞の名前だけは知っていたが、その設立に結びつく猿橋さんの話にはぐいぐい引き込まれた。
特に印象に残ったのは、「(前略)核兵器とそれのもたらす災害について、誰よりよく理解しているのは我々科学者であり、科学者には等しくそれを全人類に伝える義務があります。科学者のもっと尊い職務は今や、人類の幸福と平和に貢献する事であり、科学を人間の殺戮と文明の破壊につかわせないことなのです」の文章。右や左関係なく、核兵器の使用がどの様な結果になるのか、科学に携わる者はこの発言を胸に刻み、伝えていかなければいけないと思う(自戒も含めて)。「宙わたる教室」もそうだが、中高生には読んでもらいたい一冊である。
余談だが、本文中に山下奉文(マレーの虎)が出てきたり、参考文献にビキニの海は忘れない(幡多高校生ゼミナール)が出てきたりと、高知県が絡んできてるのも個人的にうれしかった。
この本を読んで、幡多ゼミの活躍に興味を持ってくれる人が出てくると、うれしいなぁ。
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猿橋賞で知られる猿橋勝子さんの、真っ直ぐな生き方を描く。
とても面白かった。
1人の人生を通して、戦争、敗戦、核を巡る世界の動きが浮かび上がる。女性活躍が議論されるいま、示唆するところは多い。
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猿橋勝子さんのことを、この本を読んで初めて知った。
戦前・戦中・戦後を科学者として力強く駆け抜けていった、このような日本人女性がいたことに、大変誇らしく思った。
中高生の時にこの本を読んでいれば、私の生きる目標になっていたんだろうな。
伊予原新さんが実験や科学についての記述も大変勉強になった。
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女性科学者に与えられる「猿橋賞」は知っていた。しかし、猿橋勝子さんの業績等はよく知らなかった。
1920年生まれで、第六高等女学校を経て、帝国女子理学専門学校(現東邦大学理学部)の第1期生として入学した。在学中より中央気象台(現気象庁)研究部の三宅泰雄氏の指導を受け、卒業はそこに就職した。もともと彼女は物理が専門だったのだが、三宅に師事後は地球化学を専門とするようになった。
戦後の1954年のビキニ水爆実験による「死の灰」による大気・海洋汚染の研究以後、三宅と大気及び海洋の放射能汚染の調査研究を行った。その研究成果は部分的核実験禁止条約成立に繋がることになる。
東京大学から女性初の化学での博士号を授与。日本学術会議の女性会員第1号など、女性科学者のパイオニアとして活躍した。そして本書は、彼女の生涯にわたる科学に対しての情熱を描いている。ただし、本書は史実に基づいた「小説」、フィクションである。できれば朝ドラで取り上げてほしいと思った。
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猿橋勝子さん、日本女子科学者の先駆者。戦中、戦後、科学の分野、いや女性へのステレオタイプをぶち破ってくれた。今でも女性の地位が確立したとは言えないが。研究とは、後継を育成する、持続可能な科学の発展。アメリカに渡り、道場破りごとくの実験検証。猿橋賞、猿橋女史の魂が続いている。
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猿橋勝子って誰。戦時下から昭和後期男尊女卑の時代。キュリー夫人にあこがれ、中央気象台研究部で三宅泰雄教授の指導の下、一人の科学者として自分に何ができるのか、純粋に科学と向き合いそして後進の行く末を案ずる。原爆投下と終戦。終戦から約10年後ビキニ環礁での水爆実験。黒い雨、死の灰。多分に書かれていること以外にもかなりの障害があったと思われるが、猿橋勝子と言う人物を知れてよかった。フィクションとあったが限りなくノンフイクションに近い物語。そのうち、映像作品になっても不思議ではないと思うし、是非とも観てみたい。
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猿橋賞(優れた女性科学者に与えられる賞)の猿橋勝子博士(1920〜2007)の半生を描いた物語。
女性である、日本人であるというハンディにもめげず、地道な研究を重ねて、日本で、そして世界で、科学者としての信頼を勝ち得ていった猿橋。ただただ尊敬する。
1954年の第五福竜丸が被爆した際の研究に続き、原水爆実験による放射能汚染について研究。「核兵器とそれのもたらす災害について、科学者には全人類に伝える義務がある。科学者の職務は、科学を人間の殺戮と文明の破壊に使わせないこと」オッペンハイマーの孫弟子の東大の先生も出てくる。
戦争について、「これからの世界に必要なものは、社会を形づくる共通の言語。それは、英語という意味ではなく、自由、人権、民主主義、そして何より科学という言葉。これらの言葉を社会の礎にしていることを互いに認め合ってさえいれば、戦争など起きないのではないか」
科学!yes, science!global warming is not a hoax!どこかの大統領に言って聞かせたい
Posted by ブクログ
伊与原さんの小説にハマりつつあり、読む機会を得て、一気に読み切りました。
猿橋賞は知っていて、受賞者が女性であることも知っていて。
ですが、それだけ。
だから、この本の帯を見て、
ああ!猿橋賞の猿橋さん、、、。
と声に出してしまいました。
猿橋さんはどんな人なのか、を、伊与原さんが書くとどうなるのか知りたくて読み始めました。
かなり専門的な科学・化学用語や理系チックな用語が
数多く登場しますので、読み進みづらいこともありました。ですが、用語が理解出来なくても、猿橋さんのことは十分に理解できるし、あの時代(昭和初期から戦前、戦後、、、)に生きた女性たちの恐ろしく強い精神力や行動力があったからこそ、今の私たちは、生きやすい。
タイトルに「雨」があり、各章には天気にまつわる言葉があり、なぜかな?と思えば、なるほど、、、。猿橋さんのこの道に進むことになったきっかけが「雨」。
このあたりのタイトルの付け方もさすが伊与原さん!!
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伊与原さんの科学(今回は化学)を基にした物語はやはり面白い。科学的な情報や知識に人間ドラマが組み合わさると、ある種の化学反応が起こるのだと感じた。勝子さんの人生との向き合い方に、自分の生き方を改めて考える機会をもらえた。
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猿橋勝子さんの生涯を軸にフィクションも混じえながら書き起こされた物語。
戦前から戦後の渦中に第一線にいたからこそ、この物語を通して時代特有の影を感じる。(男女差別、戦争、欧米との摩擦)
どんな時も真っ直ぐに、真面目に科学と向き合う姿勢に心打たれる。
前に進むことを三宅先生や周囲の人達が後押ししてくれたからこそ、彼女もただひたすらに目の前の事象や自らの役割に向き合えたと感じる。
後世も科学が人を幸福にするためだけに利用されることを願って止まない。
Posted by ブクログ
科学者猿橋勝子の一生に魅了された。
これほど、情熱を傾け探求し続けるとは、並大抵ではないし、その真摯な姿勢ゆえに師に出会い、また友や理解者と巡り会うことになったのだろう。女性が学問をすることを許さない親も多い時代に、勝子の応援者となった家族の愛情も感じられ、スクリプスでのフォルサムとの一騎打ちには、勝子の科学者としての矜持をみた。
科学の発展は、人にとってはいい面ばかりではない。だからこそ、多くの人に関心や興味を持ってほしいし、その正しさを見極める力をつけてほしい。そう言われている気がした。
まず、手始めに、この本を読んで、日常に溢れる科学に気づいてほしいと思います。
(最後に余談、、、著者が、バリバリ理系の人とは知らずに、直木賞作家ということで選んだ本だったのですが、参考文献の多さにびっくりしました)
Posted by ブクログ
推理小説に比べれば続きが気になる、というものではないが、読んで良かった。
恥ずかしながらDr.猿橋のことは初めて知った。理系を選び、研究者になったが、ここまでストイックに向き合ったかというと自分が恥ずかしくなる。
しかも女性研究者の権利を日本に、世界に示した方なんて。恩恵を今受けているのだ、とひしひしと感じる。今は研究者では無い仕事をしているが、勝子さんのように、コツコツ前を見て生きていきたいと思った。
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日本のそれも女性の科学者で、放射能について研究していた人がいたこと知らなかった。平塚らいちょうと接点があって、国際会議で登壇してるなんて!科学者はどういう立場であるべきか、考えさせられた。
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実在する女性科学者の先駆、猿橋勝子さんの生涯を描いた作品。
あとがきに記されていたように、本作は一部架空の出来事や人物が含まれるフィクションらしい。
けれど、実在する事案を扱った物語は、巻末の膨大な参考文献からも、ノンフィクションのように錯覚してしまった。
日本が戦争モードに突入していく時代。
女性が高学歴であることが疎まれ、学問を志すことが叶わなかった当時、好きな学問で社会的地位を得て自立することの重要性を悟り、その道を貫いた猿橋勝子という女性。
猿橋勝子さんの生い立ちから、科学への信念、科学者としての誇りや責任、女性の生き方にいたるまで、本当に学びが多い作品だった。
理系分野なので苦手意識をもつ方も多いと思うが、伊与原新さんの丁寧な筆致は、平易な言葉を選んで描かれているのでとても分かりやすい。
ご本人は勿論のこと、猿橋さんの師である三宅氏、同僚の奈良岡の存在も大きく、立場や境遇は違っても、志を同じくする同志の大切さを実感した。
特に、奈良岡が猿橋さんに向けた手紙の中で「面倒くささ」について触れた一文がとても素敵だった。
以下、抜粋
『あなたの一番近くで被害を、もとい、ご指導を受けてきた私が保証しますが、あなたの面倒くささは、世界に通用します。面倒くささはすなわち、真面目さであり、粘り強さであり、正しさです。どうか自倍を持ってください。』
私の身近にも、愛すべき面倒くさい人がいる。
面倒くささは、懸命に生きている証だと思う。
その良さを、身近で被害を受けながら笑、理解できる人であり続けたいと思った。
作中で、少し気になったのが、時の流れるスピードにムラがあり、読み進めながらそれに気付かなければならない点。
生涯を描く作品なので、区切りや章、あるいはエピソード毎に、年代などの表記があると、もっと内容がスムーズに理解しやすいような気がした。
Posted by ブクログ
科学小説が多い伊与原新作品 4冊目
今回は実在の女性科学者 猿橋勝子(さるはしかつこ)の史実ベースのフィクション小説
まだ女性が「若くして嫁ぐことこそ女の幸せ」と言われていた大正時代。
マリー・キュリーに憧れて科学を学ぶため 親を説き伏せ、できたばかりの日本初の女性のための理系専門学校に入学する。
そして 出逢った生涯の師 三宅泰雄
地球化学分野の先駆者で、中央気象台で大気の電場を研究している科学者だ
そこで 何も知らない学生の勝子に一から研究の基礎を教え 科学者へと導いていく
戦時中の科学者の想いとは違う 軍との関わり、そして 原爆・・・・
小さい頃 (雨は何だろう?)と考えた 勝子が放射能の雨に挑んでいく
東大の大学院で地球惑星科学を専攻していた科学者 伊与原らしい切り口で 事細かに勝子の研究の様子を綴っていく。
本物だけに 難しい専門用語がいっぱいでついていけないのだが、それを上回る勝子の研究へのエネルギーが感じられて、文章を追う目がもどかしく思うほどだ。
そして 勝子を応援する周囲の人々が暖かい。
うん これはお盆の特別番組 2時間枠ドラマでやるべきだな
ただ学生時代 化学や物理で頭を悩ませた方には ちょっとトラウマになるレベルのお話しかもね。
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伊与原新作品らしさを残した、偉人伝的フィクション小説
猿橋勝子という人物の存在を初めて知った
リケジョなんて言葉が出来るずっと前から女性の科学者はいたし、彼女達が積み上げて紡ぎ続けてきたからこその今がある
そしてその意志はやっぱり繋がっているのだと思う
真摯に研究に向き合ってきた一人の女性の一生を垣間見られた一冊でした
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未だ女性活躍の場が殆ど与えられ無かった時代に研究者として確固たる地位を築いた女性の生涯が、更に現代まで脈々と受け継がれている事が分かる。ただ、研究内容の専門性に寄り過ぎた為、やや人物伝として薄かった印象。
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伝記物。猿橋勝子さん、海洋放射線の検出、研究を評価された人…名前には何となく覚えがあったような…でも途中までは伝記とは気付かずに読んでいた。
勝子は真っ直ぐにただ真っ直ぐに「やるべきこと」を成し遂げた、感じ。伊与原さんの書く人は、いつも「フラット」な気がする。フォルサム博士との「分析対決」がちょっと駆け足過ぎなのと、もう少し勝子の日常を描いていたら…伝記なので仕方ないかな。
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“猿橋賞”
毎年 自然科学分野で優れた業績をあげた女性研究者に贈られる賞。
ニュースで“猿橋賞”のことを聞くたびに 受賞された女性研究者の方をすごいと思い、女性として誇らしく思っていました。
しかし 肝心の“猿橋勝子”のことは まったく知りませんでした。
伊与原新の「翠雨の人」に “猿橋勝子”が描かれていることを知って 手にとりました。
大正9年生まれの猿橋にとって 理科系の大学に入り、気象研究所で地球化学の研究をすることだけでも その頃の女性にとっては 未知の道を歩む、開拓することだったろう。
理科系の著者によって 猿橋女史が 日本学術会議の初の女性会員になり “猿橋賞”を設立するまでの生涯が 科学的に数値を駆使して描かれている。
しかし 「猿橋賞のようなわかりやすい“メダル”でも首に掛けていない限り、今も女性研究者はなかなか正当に評価されない」と 最後に学芸員の言葉で語られているのが、悲しいし、今の現状かな。
Posted by ブクログ
女性科学者の先駆け、猿橋勝子の生涯について。
恥ずかしながら、私は日本の第一線で活躍する女性科学者を表彰する「猿橋賞」すら知りませんでした。
勝子は大正九年生まれ。当時の女性は家庭を支える事が当たり前で、学問、特に理系の分野では女性の活躍が難しい上、戦前、戦後の日本人の研究者の立場は世界的にも低い。
そんな中、真摯に科学と向き合い、アメリカの水爆実験による放射能汚染の実態究明に取組む姿に胸を打たれます。
また、戦争の悲惨さや、水爆実験による放射能汚染等、詳しく説明されていて、今の人類の幸福と平和は先人達の功績のおかげなんだと改めて感じさせていただきました。