伊与原新のレビュー一覧
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ネタバレ猿橋賞はなんとなく聞いたことはあったけれど、こんな偉業を成した女性だったとは知らなかった。
よく女性初と言われ、その女性がもてはやされる傾向がある。特に日本においては。それだけ日本が昔から男尊女卑の傾向が強いからだ。
現代でもそうなのに、戦前から戦後にかけての混沌とした時代に男性に混じって理系の最先端を行き、科学の力を信じ分析を続ける女性がいたとは驚いた。
雨を降らす天を一人飽かずに見上げ、その不思議さに胸を震わせていた少女が成し遂げた偉業。
「何よりも大事なのは、どんな状況にあっても、科学の火を絶やさずにいること」
放射能汚染を科学的に解明する勝子のひたむきな姿勢に感服するばかり。そしてこ -
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伊与原さんの作品を読むと自分の日々の世界からは離れているものの、人との関わりの不思議さを感じることができてホットします。
この作品は、仮想「国立科学博物館」が舞台になっているのは明らかで、あの場所の入ることができない場所に、どのようなものが収められているのか、そこで働き、日々研究にいそしむ人たちがどんな日々を過ごしているのかを体験できるのが何より楽しい作品です。
全部で6話からなり、一話ごとに完結するので、連作かと思いますが、最終話を読むと、すべてはここへ向かっていたのだと気づきます。
博物館の人たちって何やっているんだろう!?と不思議に思っている方に特にお勧めです。 -
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Anyone who stops learning is old,whether at twenty or eighty.Anyone who keeps learning stays young. ヘンリー・フォード
定時制高校の世代間トラブルが起こった時にこの言葉を引用しているシーンが、どんな説得よりも実感があってすごく心打たれました!
無知は恥ではなくて自由な発想と可能性
人間関係の多様性は予期せぬ良い効果をもたらす
実話を元に書かれているということに感銘を受けました。凝り固まっていた考え方を解きほぐしてくれ、科学の楽しさを教えてくれる本でした。
職場の会長がブログでおすす -
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伊与原新さんの学園青春ドラマですね。
宮沢賢治のオマージュ作品でもあります。
もちろん、伊与原新さんですから、科学も絡んで物語を面白くしてくれています。
宮沢賢治が教鞭をとった花巻農学校を前身とする「岩手県立花巻農業高等学校」をモデルとする「花巻農芸高校」が舞台になります。ですから、随所に宮沢賢治の話が盛り込まれて物語は構成されています。
二年生の壮多と七夏の教室に深澤北斗が転校してくる。そして、ひょんな事から宮沢賢治の作品のイギリス海岸のモデルになった場所を案内することになった。
目的地に行くと、三年生の三井寺と出会った。三井寺は化石の発掘をしていたのだが、実は地学部という部活を立ち -
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『月まで三キロ』、伊与原信、短編集。
6つプラスアルファの短編。
何らかの悩みを抱えた主人公たちが最後には前向きに新たな道へ。そこに理科的な要素が入れ込まれている。
堅苦しくなく、サラッと読める。
どういう話なのか,どの話も先が読めない。
『月まで三キロ』 死に場所を探す男とタクシー運転手。『月に一番近い場所があるんですよ』と話して、男を連れて行く運転手。
道中、『月』にまつわる話をする運転手。
何者⁇
そんな過去があったなんて…
父と子、お互いの想いが。
運転手は、息子を想い、ここに来るんだと。
『月』という地名があるなんて。
『この夏の星を見る』の続編?かと。が、辻村深月だと… 最近 -
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戦前から戦後にかけて、女性でありながら科学者として生きた猿橋勝子さん。
戦争がいかに愚かなものか、そして広島、長崎に投下された原爆。
その後の核実験による第五福竜丸の被害。それによる海洋、大気汚染がどれだけの被害を生んだかを猿橋やその上司三宅先生によって明らかにされる。
内容は科学的実験などの表現も多く、読み辛いかもしれないが、核実験が何をもたらすのか淡々と科学の観点から述べている。
後半はその結果に対し、批判的なアメリカ側から
検定方法を通して猿橋とフォルサムが対決。
どちらに軍配が上がるか。
ドキドキしながら、読み続けた。
アメリカ側との実験条件も悪い不利な戦いの中でも毅然と自分を信じ -
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齋藤孝『成熟力』の中で、人生の折り返し地点としたのは、45歳だったでしょうか。
45歳となった高校の同級生たちの今が、とても現実的に描かれています。
そして、45歳はまだ成熟していないようです。
ただ、新しい自分へと行動するならば、チャンスの時期かもしれない。
そんな年齢感覚が、この小説のなかにも確かに流れている。
地球惑星科学の研究者であった著者の知識は、
小型望遠鏡を使った天体観測の描写に確かな現実感を与えている。
夏の夜空を見上げるシーンには、他の作品同様に理系の緻密さと文学的情感が自然に溶け合う。
高校時代の「空き缶アート」は、作者自身の思い出がもとになっているという。
だからこそ