伊与原新のレビュー一覧
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『波はしぶきを上げることもなく、突堤の左右に広がる岩場を静かに洗っている。洗濯板のように削られたその地層を見ながら、池上が言った。「こんな風に、柔らかい層が浸食を受けてひだ状になってるのが、竜串のポイント」「確かに、このあたり全部、砂泥互層[タービダイト]だね」』―『第四章 海の魔法』
時差のある場所との行き来に本を読む。前回はボール・オースターの分厚い一冊で持ち運びに難儀した。それを踏まえて今回は文庫本を持参。久しぶりに伊予原新の小説を読む。行きの便で読み終わりそうな気配がしたので半分辺りで止めておく。案の定、帰りの便ではあっという間に読み終えてしまう。予備の一冊は預け入れのスーツケース -
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太陽の黒点フレアが強まり、電波を使う機器が時々使用できなくなる日が多くなった世界。新宿でふと見上げると、空にはオーロラがかかっていた。地磁気が弱まってきていたのである。地球の地磁気がゼロになっていく世界で、宇宙天気を専門とするサイエンスライター浅田柊の周りでは、妊婦達が姿を消していった…。
背表紙タイトル買い。これは絶対にSF読みはスルーできないタイトルである。そして、中身もなかなかに濃い。
地球物理学を専門としていたという作者の専門をいかんなく発揮した一冊である。地磁気が無くなっていくという、普段当たり前のものがなくなり、それに伴うパニックとパニックに乗じた混乱。ちょうど2011年の福島 -
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『いい信念は合理的だから、手強い。ダメな信念は非合理的だから、やっぱり手強い』―『Phase Ⅱ 白と黒』
地磁気の逆転について学んだのは何時の頃だったか。当時の高校地学で学んだ記憶はないが、学部移行して入った学科に古地磁気を研究している助教授が居たのでやはり大学に入ってからか。少々古臭い話だが、その先生の所属していた講座はプレートテクトニクスを認めないことで有名だった学派の流れを汲む教室であったのだが、その中で古地磁気の研究をするというのは異質であっただろう。学部生向けの論文購読を担当していたその先生は、当時は目新しかった隕石衝突による中生代から新生代への移行(あるいはKT境界問題)につい -
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破天荒な気象予報士菜村蝶子と幼馴染の冴えない探偵右田夏生がひも解くミステリー。蝶子の人物造形が無茶苦茶面白い。大学院を出て、民間の気象予報会社に勤める蝶子は、いやいやながらテレビ放送のお天気お姉さんになる。ところが、ぶっきらぼうで歯に衣を着せない喋りぶりや、最後のバタフライ効果張りのとんでもない御神託などで、視聴者の人気が大爆発。そのままのつんけんした乗りで夏生に言いたい放題。夏生が持ち込む5つの謎を二人で解いていくのだが、気象のことが謎を解く手掛かりになるのだ。最後の「標本木の恋人」はなかなか感動的だ。いいねえ。ソメイヨシノは、コマツオトメとオオシマザクラの交配によって生まれたという可能性が
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理系大学院生の女性が留学のための資金を貯めるため、理系かぶれの小学生の女の子の家庭教師をするお話し
連作短編理系ミステリと言うことで、ガリレオシリーズっぽいものを感じる
最後のお話しが一番いい
それまでにちょっと感じていた違和感が読み進めていくうちに晴れていく感じ
伏線と気付かない程のささやかな違和感が序盤からあって
「あ~、こーゆーキャラなんだね」と解釈していたけど、実は理由があったという構造はとても大好きだ
この本は元々「プチ・プロフェスール」という題名の単行本を文庫化する際に改題したもののよう
よりによって何で「リケジョ!」なんて俗な題にしたのかね?
全部読んだら断然「プチ・プロフェ -
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伊与原さんの小説にハマりつつあり、読む機会を得て、一気に読み切りました。
猿橋賞は知っていて、受賞者が女性であることも知っていて。
ですが、それだけ。
だから、この本の帯を見て、
ああ!猿橋賞の猿橋さん、、、。
と声に出してしまいました。
猿橋さんはどんな人なのか、を、伊与原さんが書くとどうなるのか知りたくて読み始めました。
かなり専門的な科学・化学用語や理系チックな用語が
数多く登場しますので、読み進みづらいこともありました。ですが、用語が理解出来なくても、猿橋さんのことは十分に理解できるし、あの時代(昭和初期から戦前、戦後、、、)に生きた女性たちの恐ろしく強い精神力や行動力があったからこそ