伊与原新のレビュー一覧
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花巻農芸高校という、宮沢賢治が教えた学校をモデルにした物語。深澤という転校生はなぜ花巻に来たのか、主人公壮太の幼なじみ、七夏を知っているのか、地学部に入って何がしたいのか。
高校生にしては宮沢賢治や地学に知識がありすぎる三井寺や文緒という脇役に助けられながら謎解きが始まる。七夏はどこかに行ってしまい、壮太は怪我で鹿踊りのレギュラーからハズれ、才能ある他の部員の存在に怯える。自分には鹿踊りしかないのか、花巻に残るという選択肢しかないのか。そんな中、イーハトーブとはどこか、銀河鉄道の夜の舞台はどこか、地学部3人の巡見の旅が始まる。
個人的には三井寺部長が、伊与原作品での舞台回し役である博学オタ -
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第二回目伊与原さんブームということで、こちらの本。短編集で、人生に迷える人+行きすがりの理系(の特定の分野に詳しい人)という設定がもはや安定。まだ初期の本を読んでいないが、後書きでの逢坂さんとの対談を読むと当初は理系知識の謎解きトリックミステリー派だったということで、まあそれはネタ作りに疲れそうだなあと思ったので、この程度の軽いトリックが読んでいる側にも負担がなくてありがたい。
一番よかったのはエイリアン食堂(だったか)で、読者からに反応もよいとのことに納得。つくばで食堂を営む父娘のもとに訪れる、非正規雇用?の学者さん。彼女が持っているルーペ(それを持っている限り自分の立ち位置を確認できる) -
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日本女性科学者の草分け的存在・猿橋勝子さんの
伝記を読んでいるような気分。
戦争が日常と隣り合わせで描かれていて、改めて「平和」や「科学」というものに考えや思いを巡らせる読書でもありました。
アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」の分析など、女性が科学の世界で生きることが難しい時代に、放射能汚染の研究をされていた猿橋さん。
今の暮らしがあるのは、こうして様々な分野で活躍する科学者がいてこそなんだろうな……。
疑問を解き明かしたり、暮らしを豊かにするはずの科学技術が、誰かを苦しめるために使われるなんて悲しいし愚行としか言いようがない。
今も当たり前の日常に歓喜する人々の描写には、ハッとさ -
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ドラマが好評だったと聞いて読んでみました。
理系の頭をもたない私には想像しにくい記述もありましたが、面白かった。
そしてそれがただのフィクションではなく、本当にあった話をフィクションに仕立てたとありびっくりしました。
定時制高校に通う様々な年代、環境の生徒たちが起こした奇跡の物語。
定時制の勉強でさえ落ちこぼれていた彼らが日本物理学会で認められたこと。
宇宙開発にまで貢献する事になったこと。
一人の教師、一人一人の学生では起こし得なかった奇跡はどんな科学変化で生まれたのか?
勉強とは何か、学ぶとは何か、本質的なことを考えさせられました。 -
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一部に架空の人物・出来事が含まれているとは言え、ほぼノンフィクションの作品。
世界大戦前後の話なので、湯川秀樹・仁科芳雄といった有名どころも登場する。
猿橋勝子さんが生きた時代背景や、人となりがよく描かれている。
「翠雨」とは新緑の季節、初夏から梅雨にかけて降る雨で、強く降る雨ではなく、大地や葉を優しく濡らす、しっとりとした雨のこと。
夏の季語としても使われる言葉だそうだ。
自分の周りには空気しかなくて、その空気は空まで続いている。
空気しかないはずの空から雨という水が落ちてくる。
このことが不思議で空を見つめてしまう。
猿橋勝子さんは、こういう人だから「翠雨の人」
B29による空襲が民 -
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思いがけず良い本に出会った。主人公たちが抱える静かな絶望、人との出会いによって少しずつ見えてくる希望が美しかった。
どれも面白かったけど、3作目の伝書鳩のお話は、今まで全く知らなかった鳩の習性に目から鱗でした。鳩は「磁場が見える」なんて。私と同じ街中にいる鳩がそんなSFみたいな世界の中で生きているなんて、なんだか不思議。
2作目の「クジラたちは人間が想像できないような内向きの精神世界や知性を発達させてるのかもしれない」というのにもときめいた。
私が悩んだりしてるのは所詮「人間界」の中の常識基準で、もっともっと世界は広いし、奥深いと思うと、なんだかスッとする思い。
解説にて、「本作は科学とそ