伊与原新のレビュー一覧
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一部に架空の人物・出来事が含まれているとは言え、ほぼノンフィクションの作品。
世界大戦前後の話なので、湯川秀樹・仁科芳雄といった有名どころも登場する。
猿橋勝子さんが生きた時代背景や、人となりがよく描かれている。
「翠雨」とは新緑の季節、初夏から梅雨にかけて降る雨で、強く降る雨ではなく、大地や葉を優しく濡らす、しっとりとした雨のこと。
夏の季語としても使われる言葉だそうだ。
自分の周りには空気しかなくて、その空気は空まで続いている。
空気しかないはずの空から雨という水が落ちてくる。
このことが不思議で空を見つめてしまう。
猿橋勝子さんは、こういう人だから「翠雨の人」
B29による空襲が民 -
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思いがけず良い本に出会った。主人公たちが抱える静かな絶望、人との出会いによって少しずつ見えてくる希望が美しかった。
どれも面白かったけど、3作目の伝書鳩のお話は、今まで全く知らなかった鳩の習性に目から鱗でした。鳩は「磁場が見える」なんて。私と同じ街中にいる鳩がそんなSFみたいな世界の中で生きているなんて、なんだか不思議。
2作目の「クジラたちは人間が想像できないような内向きの精神世界や知性を発達させてるのかもしれない」というのにもときめいた。
私が悩んだりしてるのは所詮「人間界」の中の常識基準で、もっともっと世界は広いし、奥深いと思うと、なんだかスッとする思い。
解説にて、「本作は科学とそ -
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ネタバレタイトルに惹かれて購入!!
やはり今回も傑作だった…
登場人物みんなが人生の迷い人で、そんな彼らの迷いを科学の魔法がそっと手助けし、照らしてくれる。
『月まで3キロ』
仕事も結婚生活も破綻し、自殺場所を探す男性。そんな男性が出会ったのは、ちょっと変わったタクシー運転手。彼は「月に1番近い場所」まで男性を連れていってくれるそうだが…そこで判明する運転手の壮絶な過去と「月に1番近い場所」の意味を知ったとき、鳥肌が立った。
『星六花』
四十路目前で食事会することになった富田。そこで出会った奥平は気象庁に勤務し、天気に詳しい。そんな彼が主催する「首都圏雪結晶プロジェクト」に参加し接するうちに富田は -
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オーディブルで聴きました。しっとりしみじみ良かった。宙わたる教室もすごく良かったけれど、どういう実験をしているのか、ドラマで見るまでイメージできなかったけれど、今回はついていけました。
どのお話も、なんとなく取っ掛かりにくい状況で、そんなに魅力的でもなさそうな人物から始まるのだけれど、途中からぐっと引き込まれました。表現がきれいで、取材(研究?)の裏付けがしっかりしている感じがして全部いいお話で読後感もさわやか。
狼犬のお話は、河崎秋子氏のともぐいに出てくるわんこもお利口だったなと思い出した。カメのお話も砂月がけなげで良かった。やはり動物が絡むとほっこりする。(ハッピーエンドがマストだけれ