あらすじ
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。(対談・逢坂剛)
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納得感のある、綺麗すぎず後味もよい話が多くストレスがなかった。自然科学を愛する者たちとの交わりが鋭いけれどもどこかとぼけた感じで楽しかった。
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月とか星とか宇宙のお話が好きなので私にはとってもピッタリでした!科学の話になると途端に難しくなりますが、とっても読みやすかったです。
じわじわ心があったかくなって、前を向けそうなお話が多くて、ベッドサイド本にぴったりです。
ミステリー作家さんなのを知らなくて、確かに所々ミステリーぽさがあったのはそのわけか!と思いました。
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名作というのは長くても最初のページを読み終えるまでには分かるもの。
この作品はそれよりも早く、きっと三行読み終えるまでには名作と確信したと思う。
六編の短編はそれぞれ毛色が異なっているにも関わらず、その全てに深く感情を預けることができたように思う。
こんなに没入できる作品は、そう多くはない。
タイトル作の「月まで三キロ」は言わずもがな素晴らしい短編。
それと同じくらい「エイリアンの食堂」も素晴らしかった。
科学が苦手、馴染みがない人にでも楽しめる作品であることは間違いないし、おすすめの作品は?と聞かれたら、迷わずすすめられる作品。
「月まで三キロ」の標識があるのは浜松市。
必ず行こうと思った。
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理系のバックボーンなのに優しい文体で、面白いけど穏やかな作品集だった。 特にエイリアンの食道は全てが好みの小説だった。分かると分からないをきちんとわけるという言い回しはとても感銘を受けた。
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久しぶりに読んだ短編集
一つ一つの物語がほっこりしつつも、登場人物の新しいステージへの扉を開くような、希望に満ち満ちていくような素敵な締めくくりでとても気持ちよく読めました!楽しいひとときをありがとうございました♪
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まさにタイトルの通り、主人公に静かに寄り添う月のような存在が各話に出てくる。
専門的な話も全く難しく感じずに、心にスッと入ってくる素晴らしい文体でした。
寝る前に1話ずつ読み進めていきたい。
もう一度読みたい素晴らしい作品でした。
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第二回目伊与原さんブームということで、こちらの本。短編集で、人生に迷える人+行きすがりの理系(の特定の分野に詳しい人)という設定がもはや安定。まだ初期の本を読んでいないが、後書きでの逢坂さんとの対談を読むと当初は理系知識の謎解きトリックミステリー派だったということで、まあそれはネタ作りに疲れそうだなあと思ったので、この程度の軽いトリックが読んでいる側にも負担がなくてありがたい。
一番よかったのはエイリアン食堂(だったか)で、読者からの反応もよいとのことに納得。つくばで食堂を営む父娘のもとに訪れる、非正規雇用?の学者さん。彼女が持っているルーペ(それを持っている限り自分の立ち位置を確認できる)とか、自己を戒めるために「ないものねだり」と言ってしまった彼女が、その言葉が少女を傷つけたのではとちゃんと戻ってきてくれるところとか。不眠症の女の子と父という設定は、現実であればそんな個々人で子育てを背負って追い込まれる社会っていやだなあと思うのだが、根無草の女性との出会いで女の子にも、自分の居場所というか生きていくための指針のようなものが得られるのではないかという淡い期待を持たせてもらえてよかった。
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理系と人情。
どこか傷を負った人たちが、日常の中で科学的な出会いを経て、前向きに歩き出す話。
短編6編に、おまけと対談。
正直、表題作はあまり好きな話ではなかった。次の星六花で少しいいなと思い、あとの4編はとても好きな話だった。
どれも、負った傷が癒えるわけではないけど、何気ないことから前を向く力を得ていく過程は、どこかほっとする。
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科学をテーマにした短編集だが、難しい説明は少なくとても読みやすかった。作者が理系出身ということもあり、科学的な話も自然に物語の中に溶け込んでいて、すんなりと理解できて読み進めやすかった。
どの話も人生につまずいた人や迷いを抱えた人が登場し、科学や自然との出会いをきっかけに少しだけ前を向く姿が描かれている。
特に「エイリアンの食堂」が一番好きだった。宇宙という遠い存在と、食堂という身近で温かい場所が結びついているところが面白く、人と人とのつながりの大切さを感じられる話だった。
最後の「対話」でも描かれているように、伏線や会話の運び方などにミステリ作家らしさを感じる文章で、短編ながら読者に考えさせる余白があるところも良かった。
Posted by ブクログ
どの短編も、未来が劇的に変わるような、今抱えている問題が解決するような結末ではない。それにもかかわらず、なんだか少しだけ未来に希望を持てる、この先も大丈夫かもしれないと思えるようなストーリーで好ましかった。
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面白かった。巻末に書いてあったが、ミステリー?日常の分岐点のストーリーを書いてある感じですが、どこに着地するのか期待を持って読み進めてしまう。ふわっとした余韻が楽しめます。よかったです。「アンモナイトの探し方」が1番好きでしたかね。
Posted by ブクログ
6編からなる短編集
〈月まで三キロ〉
表題作。人生に絶望し、死に場所を求めて
青木ヶ原に向かおうとタクシーを拾う主人公。
タクシー運転手は彼を、月に一番近い場所へと
案内する。
運転手は二度と息子には会えない。だが、自分の
父親はまだ生きている、すべてを失ったわけでは
ない。いきなりじわじわとくる話だった。
悲しいけれど、月がとても綺麗だ
〈星六花〉
後輩の美彩と、知人の紹介で男性二人と
食事会に行った、主人公の千里。
そこで気になる男性と出会う。
気象庁東京管区気象台 気象防災部 技術課
技術専門官という肩書きを持つ男性、奥平潤
彼にときめく千里だが、彼には秘密があった。
二人には、生涯の友人となって欲しい。
〈アンモナイトの探し方〉
小学生6年生の朋樹は、夏休みに母の故郷である
富美別(架空の街)にひとりで滞在している。
そこで化石を採取していた気難しい老人、
戸川さんと出会う。アンモナイト探しの場面は、
自分も一緒に化石を探しているような気持ちに
なってワクワクした。
〈天王寺ハイエイタス〉
「ハイエイタス」とは「中断」を意味する言葉。
舞台は大阪。主人公の父親に度々金をせびりにくるような元ギタリストだった伯父。そんな伯父が
実は、自分の夢の象徴でもあった高価なギターを
売却し、主人公の家族を救っていたこと
を知る‥人情味のある話でとても良かった
〈エイリアンの食堂〉
小さな食堂を営む父娘と、常連客である
素粒子研究員の女性を描いた物語。
「水素は海になり、雲になり、生き物の体もつくりながら、地球を巡っている。あなたもわたしも、
138億年前の水素でできている。だから、わたしたちはみんな宇宙人」
138億年前の水素の話が壮大で素敵。
〈山を刻む〉
自分を後回しにして生きてきた主婦が、
自分の足で人生を歩み始める姿に感動。
最後に彼女が下した決断に驚くが
頑張れ!と応援したくなる。
月の公転や岩石の種類、素粒子など、
科学的な要素が出てくるが、知識がなくても
大丈夫。科学が全ての悩みを解決できるわけではないけれど、科学の要素がこの物語に違和感なく入り込み、ままならない人生を送る登場人物たちの
心にそっと寄り添う。
読書仲間さんに勧められて読んだ本。
どの話も心に残り、とても良かったので、
私もこの本を誰かに勧めたい。
あと、特別掌編〈新参者の富士〉と
著者と逢坂剛氏の対談も収録されている
Posted by ブクログ
受験生、リストラ(だったかな?)、専業主婦など…の人たちが壁にぶち当たり、絶望してる中で天文学や火山学などの博識な人と出会い、未来に希望をもつ。そんな短編集。名言が多すぎてたくさんメモをしてしまった。
特に感心したのは、、
体のほとんどが水素でできていて、それを循環してるから、過去から未来のみんなや、惑星にいるだろう生命体も私たちの兄妹みたいなもの
こういう考え方が好きだなぁと思った。
Posted by ブクログ
伊与原新さんの短編は近作の「藍を継ぐ海」の方を先に読んでいた。巻末の対談のご本人の言葉によると、普通の小説を書くことを勧められて書いたのが、表題作の「月まで三キロ」とのこと。日常的に触れることはあまりない専門的な知識が、物語のオマケではなく、ストーリーに無理なく融合されているのが、伊与原作品の特徴であり、強みだと思うのだが、それは初めからだったということのようだ。説明が分からなくて読み飛ばすようなこともなく(分からないことはあるのだけれど飛ばさない)、うるさく感じることなく読めるのはすごいと思う。
今作では月、雪、アンモナイトの化石、海底の堆積物、素粒子物理学、火山の石が取り上げられる。雪の儚い美しさと形にならない恋愛のイメージが重なる「星六花」 不良オヤジの実はカッコ良い過去が明かされる「天王寺ハイエイタス」 火山の石を拾う師弟コンビとの出会いから、山岳写真に夢中だった自分を思い出し、まさかの決心を固める(予想外でかなりびっくり)「山を刻む」 そして人生を捨てようとする男にタクシー運転手が語りかける表題作「月まで3キロ 」 鮮やかな月のイメージが強く印象に残る。月まで三キロ、きっと著者ご自身がこの標識を目にして、え?と思ったことがきっかけなのだろうな。
自然がテーマとなっているからか読後感は清涼でとても気持ちが良い。
Posted by ブクログ
理系的知識が文学と融合した短編集。根っからの文系の私には苦手意識の塊の様な理系の要素が物語に深みを与えていて、縁遠かったもののはずなのに身近に感じました。雪の結晶を観察する「星六花」が特に好きです。消えていった淡い恋心と儚い雪の結晶の美しさが重なって少し切ない想いが残りました。学生時代にこの作品と出会っていれば、理系科目にもっと興味を持てていたのかなぁ…。
Posted by ブクログ
とても面白かった
巻末の対談でも話されてましたがとても読みやすい
シチュエーションや設定は言い方がちょっとあれだけど、あるあるな感じ
ただちょっとしたミステリー要素あったり、ん?てなる展開があったりで5編中5編全部とても良かった
個人的には「星六花」が好き
あとタイトルが秀逸
Posted by ブクログ
短編小説
自然、科学に魅せられた人たちによって、主人公達の心が動いていく
自然の年輪が人を魅了し、その人がまた人を魅了する
個人的には山の話が好きでした。
内容が良かっただけに短編だと物足りなさを感じてしまった
Posted by ブクログ
科学や地学が好きな人、ブラタモリが好きな人もいいかも。
物語を読みながら知らなかった知識に出会えてお得な気持ちになれる。
月まで三キロってタイトルが人まず人を惹きつけるセンス。
物語自体は、読みやすい。軽過ぎない。重くもない。色んな意味でちょうど良い。
Posted by ブクログ
まさに「科学の世界と人間ドラマを融合させた」「他にない小説」です。
月や雪などがテーマですが、ただロマンチックなだけではなく、人生を彩るエッセンスとして科学が散りばめられていて物語に深みがありました。
ハラハラさせる導入でミステリー的なひねりがあり、最後は心が温かくなる…今までにない本に出会えて良かったです。
Posted by ブクログ
のっぴきならない人生から何とか脱却しようと奮闘し、色々な形で試行錯誤を試みながら必死に足掻き続ける人たち。
この短編集は、そんな悩みをもつ彼らを、まさに月の光のように静かに、しかし優しく包み込む。
その時、彼らの深刻な悩みは、仄かな希望へと穏やかに昇華を遂げていく。
そういった素敵な過程をいくつも見ることができ、貴重な読書体験ができたと、僕も胸を張って言えそうだ。
この独特の光明の隠し味は科学的テーマだ。
僕もそうなのだが、科学にはどこか理知的で冷たい部分があると思う方も多いだろう。
だがこの短編集では、それはそのような冷却剤としては機能していない。
それどころか、その知識は人びとの心に温もりを与え、彼らの互いの繋がりを強固にする万能薬として作用している。
著者の伊与原さんの豊かな感性に裏打ちされた手腕が見え隠れするところだ。
短編のひとつ、『天王寺ハイエイタス』の中にこういうセリフがあるのだ。
「僕は研究者のわりに、ロマンチストやねん」
これはこの人物の端的な内面描写であるとともに、著者の伊与原さんのきわめて明晰な自己紹介でもあるように、僕には感じられた。
その気質が根底にあるがゆえに、伊与原さんの科学的知識は、決して冷たくならない。寒い冬でも決して熱を失わないカイロのように、ほんのりと優しい温かみを帯びている。
科学をこのように扱える作家さんは、稀有ではないだろうか。
ここから先はネタバレが入る可能性があるため、これからこの作品を読みたい方は注意してほしい。
どの作品も、胸のあたりが熱くなる余韻を長く感じさせてくれたが、個人的に最も響いたのは先ほども書いた『天王寺ハイエイタス』だろう。
僕が関西人であることも関係しているだろうけれど、大阪南部のあのキビキビとした、しかし根底に人情味の溢れる語り口は、どこか懐かしいものを感じさせてくれた。
アロハシャツと色の薄いサングラスを身に纏う、ワイルドで自由奔放な、いかにもステレオタイプの大阪的な哲おっちゃん。
元プロのブルース・ギタリストだが、今は何もしていない。
だが彼の内には、そんな今の外見では推し量れない熱いものが燃えていたのだった。
研究者を目指そうとしていた頃の、主人公の兄(優)との核心的な秘密が明らかになってから、再び何気なく姿を現した哲おっちゃん。
そのとき彼は文字通り哲学者めいた魅力と威光とをもって、僕の眼前にも迫ってきたのだった。
漆黒の海開ける大阪港の元、むなしい街灯を映し出した水面の前に腰掛けながら、哀愁の漂うブルースを、虚空に向けて演奏する哲おっちゃんの後ろ姿。皆さんも想像してほしい。
ただただ、カッコいいと思わないだろうか。
今でこそ何もしていないものの、哲おっちゃんは、研究者となった優の直感通り、『ハイエイタス』、つまり今後の飛翔のための準備期間にあるのではないだろうか。
そして彼は、今後高く高く飛翔を成し遂げるに違いない。そう確信させる強い彼らの絆を、僕は言葉の端々から感じとることができた。
Posted by ブクログ
親子って地球と月の関係に似てるじゃないですか。そう言って語り始めたタクシー運転手さんの身の上話に涙が溢れた。親子って離れられないのに実は何も見えてなかったりする。「月まで三キロ」ほか5編。
Posted by ブクログ
『エイリアンの食堂』、『山を刻む』がよかった。
自分も学生の頃、岩石採取の為に山に向かった。下りてくると1ミリくらいはまた行ってもいいかな、みたいな感覚はどこか懐かしく感じた。
『アンモナイトの探し方』の「わかるはわける」というのも素敵な考え方だなと思わされた。
Posted by ブクログ
筆者の専門性を活かした、目新しい作品。物語のストーリー性、登場人物の感情の機微を描くうまさを犇々と感じながら、地学の専門性を活かすアイデンティティが乗っかっており新鮮味も感じた。扱っている題材は小さな、日常の切れ端であるが、地学というスケールの大きい断片を入れ込むことで何やら壮大な話を前にしているように錯覚した。
Posted by ブクログ
かなり前に読んでたのを読み直したもの。表題作がかなり良い。我が子を自殺で亡くした父親のお話。いつからか、家族の話を読むと、親の立場で読んで、親の気持ちに共感するようになっていた。ずっと子どもでいたいと思っていたし、今でもそう思っているけれど、やっぱりもう私は大人なんだろうなあ。
Posted by ブクログ
どの作品も共通して、少し前向きな気持ちになれるのがいい。それぞれ悩みや辛い過去を抱えてるけど、科学の広い世界からみればそんなのちっぽけに思える。