あらすじ
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。(対談・逢坂剛)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
想像以上によかったー。
こういうロマンティックな科学のお話好きだわ。
特に「星六花」と「エイリアンの食堂」と「山を刻む」がよかった。
どのお話にもある分野の科学者(詳しい人)が出てくるけど、皆んなとても素敵。
Posted by ブクログ
著者のインタビュー記事から興味を持ち手に取る。
科学的な知識を散りばめながら、優しい文体で短編が進んでいく。
読み始めたら止まらない。
各短編ごとに雪結晶や素粒子、化石など異なる内容が扱われるが、冗長な説明などない。
素晴らしい作品だった。
Posted by ブクログ
第二回目伊与原さんブームということで、こちらの本。短編集で、人生に迷える人+行きすがりの理系(の特定の分野に詳しい人)という設定がもはや安定。まだ初期の本を読んでいないが、後書きでの逢坂さんとの対談を読むと当初は理系知識の謎解きトリックミステリー派だったということで、まあそれはネタ作りに疲れそうだなあと思ったので、この程度の軽いトリックが読んでいる側にも負担がなくてありがたい。
一番よかったのはエイリアン食堂(だったか)で、読者からに反応もよいとのことに納得。つくばで食堂を営む父娘のもとに訪れる、非正規雇用?の学者さん。彼女が持っているルーペ(それを持っている限り自分の立ち位置を確認できる)とか、自己を戒めるために「ないものねだり」と言ってしまった彼女が、その言葉が少女を傷つけたのではとちゃんと戻ってきてくれるところとか。不眠症の女の子と父という設定は、現実であればそんな個々人で子育てを背負って追い込まれる社会っていやだなあと思うのだが、根無草の女性との出会いで女の子にも、自分の居場所というか生きていくための指針のようなものが得られるのではないかという淡い期待を持たせてもらえてよかった。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入!!
やはり今回も傑作だった…
登場人物みんなが人生の迷い人で、そんな彼らの迷いを科学の魔法がそっと手助けし、照らしてくれる。
『月まで3キロ』
仕事も結婚生活も破綻し、自殺場所を探す男性。そんな男性が出会ったのは、ちょっと変わったタクシー運転手。彼は「月に1番近い場所」まで男性を連れていってくれるそうだが…そこで判明する運転手の壮絶な過去と「月に1番近い場所」の意味を知ったとき、鳥肌が立った。
『星六花』
四十路目前で食事会することになった富田。そこで出会った奥平は気象庁に勤務し、天気に詳しい。そんな彼が主催する「首都圏雪結晶プロジェクト」に参加し接するうちに富田は彼に惹かれていく。そして彼に告白するも富田は振られてしまう。そこには秘められた彼の想いに胸が苦しくなった。
『アンモナイトの探し方』
朋樹は受験勉強の静養という目的で母の実家の北海道に来ていた。そんな彼が出会ったのは、ひとりでノジュールを叩き続ける戸川という老人だった。緻密なノジュールを当てられればそこに化石がある可能性があるらしく、戸川は黙々と崖を金づちで叩いていく。そんな戸川との出会いを通して、朋樹は自分のこれからについて真剣に向き合っていく。
『天王寺ハイエイタス』
父は真面目にかまぼこ屋を営み、兄はつくばの国立環境研究所で勤務するほどのエリート。ただ、伯父は元プロのギタリストだが、今はプー太郎。それでも伯父にはほとんど知られていないかっこいい一面があった。その真実と科学の融合に、とてもワクワクした作品。
『エイリアンの食堂』
いつも食堂に来てくれる変な女性。彼女はお馴染みのローテーションで定食を頼み、そして空に向かって何かを叫んだりする。そんな彼女のことを気になった私の娘は彼女に色々質問し、親睦を深めていくことに…彼女が話す宇宙の話、クォークの話とても好きだなぁ。
『山を刻む』
日光白根山を下山しながら、おかしな教授と学生に会った私。でもその教授の話にとても惹かれ、そんな彼にこき使われる学生にも好印象を持つ私。私は家族のことでギクシャクしており、その2人との出会いを通して、自分の人生の舵を自分でとる勇気をもらうことに!!最後に待ち構える、決意表明に胸打たれた作品。
『特別掌編 新参者の富士』
富士山に対して、引け目を感じている女性。しかし富士山の思わぬ情報をとある教授に教えてもらう。その話を聞いて、富士山を愛おしく思うようになった女性に思わずこちらまで笑みがこぼれてしまった。
特に好きな作品は『天王寺ハイエイタス』と『エイリアンの食堂』。
伊与原さんの紡ぐ科学はこんなにも優しい。
学校で習う科学もこんなに温かくて面白かったらいいのになぁ。
月を見上げるたびに、私はきっとこの作品と登場人物たちを思い出し、またがんばろうと勇気をもらえるだろう。
落ち込んでいる人にオススメしたい科学の魔法の温かさを感じられる1冊!
Posted by ブクログ
月や石や山などに共通する「時間」という性質を上手く人生の比喩として扱い、それらにまつわる様々な境遇の人間模様を短編ストーリー集として綴ってある。自分の中で大切にしてきたもの、目を背けてたもの、忘れてた熱いものを思い出させてくれた。
Posted by ブクログ
「宙わたる教室」を読み、著者の別の本も読みたくなって手に取った本。
結論としては、文句なく良かった。
6編の短い小説の中で、各々の登場人物は皆うまくいかない日常を抱え、行き詰まっている。その中で偶然に出会った人が教えてくれた科学の壮大さと、その人の良い意味での変わり者加減が、その日常に刺激を与え、視野を広げ、これでいいんだと安心させ、新しい一歩を踏み出させてくれる。
科学知識の押し付けがましさもなく、ごく自然。悲しみや心苦しさが溶けていくような感覚。著者の別の本を更に読みたくなった。
Posted by ブクログ
読み進めるたびに心の錆が少し取れるような感じがしました。科学についてはまったく詳しくないですが、ストーリーの中に自然に入っており引っかかるどころかスルスルと読めました。どのお話もよかったですが、「エイリアンの食堂」と「山を刻む」が特に好きです。
Posted by ブクログ
面白かった。化学をおりまぜながらままならない人生を書いた六篇の短編集。
その章ごとに小さな知識とかが書いてあってへぇといい勉強になった。私たぶんこういうの好き。特に好きだったのは表題作と山を刻むかな。どの章も全部が解決してる訳では無いんだけど少し前向きになれる終わり方してるから読んでて心地よかった。
他の作品も読みたいと思います。
Posted by ブクログ
本を読んでみよう。と思い立ち、初めて購入した作品。
最初の1冊がこれで良かった。この本のおかげで読書が続いている。
それぞれの短編が、過去に何かしらのトラブルや想いを抱えている登場人物たちを描いている。
非常に読後感が良く、心地良い1冊。
これは作家さんの個性であるが、科学的な視点からスパイスが加わっている。これを良しと取るか、煩わしいと取るかでも評価が分かれそうな作品。
綺麗な空気感を感じます。僕は非常に好きでした。
特に、月まで三キロ、アンモナイトの探し方、エイリアンの食堂 は刺さりました。
Posted by ブクログ
人生うまく回る時期もあれば、何かのきっかけでつまづいて暗転してしまうこともある。そんなときに一筋の光を見つけて前向きに進んで行けるよう、そっと背中を押してくれるような短編集だと感じました。
どの物語も地学や天文学の要素が織り込まれていて、特に表題作『月まで三キロ』の中で地球と月の関係を親子関係に例える表現が印象的です。
全部で7編ある物語の中では、ミステリアスな女性「プレアさん」と父娘の交流を描いた『エイリアンの食堂』が特にお気に入り。
壮大な宇宙の歴史と亡き母(妻)の存在を「水素」という科学的なもので結びつけるクライマックスに、不思議なあたたかさを感じて胸がジーンとしました。
Posted by ブクログ
家族の再生や、若者の気づきをテーマにした短編集。読みやすく、面白い。
著者は地球惑星科学の専門家とのことだが、地学や物理学の内容が、自然に物語に溶け込んでいる。
Posted by ブクログ
月まで3キロ、星六花、アンモナイトの探し方、天王寺、エイリアンの食堂、山を刻む 以上6つの短編からなる物語。
月まで3キロでは、元地学教師のタクシードライバーと仕事も家族ともうまく行かなくなった自殺志願者のやりとり
星六花は、気象庁で働く男性と三十代後半の女性の叶わぬ恋のお話
アンモナイトの探し方は、元博物館の館長と母の実家に訪れた小学生とのお話
天王寺ハイエイタスは、叔父である元プロのブルース・ギタリストと京大卒で地球温暖化の研究をする兄とかまぼこ屋さんを継ぐ流れに乗った弟のお話
エイリアンの食堂は、素粒子の研究で高エネルギー加速器研究機構で働く女性研究員と、食堂を営む男性とその娘のお話
山を刻むは、専業主婦として30年以上も、夫や子供、義理の親の面倒をみてきた女性と、日光白根山で出会った火山の研究をする大学講師とその助手である大学院生のお話
個人的には、エイリアンの食堂、月まで3キロ、山を刻むの順に面白かったです。
著者は、様々な科学の知識を物語に織り込み、人間模様を描いている。
エイリアンの食堂は、ちょっと涙を流しちゃいそうなシーンもあり、とてもよかったです。
月まで3キロのタイトルの意味もよく分かり、ぜひ行って見たいと思いました。
Posted by ブクログ
ちょっとマニアックな科学の小話的な要素があって、面白かった。火山学者のオジサンが素敵だった。何かを失ったヒトが、誰かと出会って、新しい何かを受け取る短編集。
Posted by ブクログ
傷ついた人達の再生の物語でした。
なかでもエイリアンの食堂が冷たい心に少し日差しが差したような心地よい小説でした。
エイリアンの食堂は、宇宙の話を通じて、母を失った少女の心に光が差す暖かい話でした。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作と比べると科学分が少なめですが、その分物語りの良いアクセントになっていて深みを感じられます。
短編ならではの想像力を喚起して物語りの世界が広がっていく感覚が読後の余韻として味わえて良いですね。
その中でも秀逸なのは「天王寺ハイエイタス」です。
エルモア・ジェームスからボトルネック奏法に内田勘太郎で最後はロバート・ジョンソンとは。
こんなところで、こんな素敵な音楽小説に出会えるとはびっくりです。
Posted by ブクログ
科学の知識と人間ドラマを融合させた作品集。
直球の人情ものなのだが、言葉の一つ一つが胸に沁みる。感情の交錯の描写が丁寧。
人生のままならなさを、科学的な視点から新しい世界が見えて状況が好転していくというパターンなのだが、これがとてもイイと思った。
劇的なパワーのある作品ではないのだが、人の親切が”沁みる”。個人的に好きなのは、最後の「山を刻む」。家族に奉仕しなくてはならない疲れ切った主婦が、自分の趣味であった山登りの途中、教授と学生とであって…という展開。今の状況をかえようと何かを決意した主婦と、その主婦を応援するかのような最後の教授の言葉に、なぜか涙が出た。
一期一会と言ってもいい出会いが何かを決意させて、その決意を家族以外の誰かが応援してくれる、そういう瞬間的な場面が素敵だと思った。
Posted by ブクログ
『月まで三キロ』、伊与原信、短編集。
6つプラスアルファの短編。
何らかの悩みを抱えた主人公たちが最後には前向きに新たな道へ。そこに理科的な要素が入れ込まれている。
堅苦しくなく、サラッと読める。
どういう話なのか,どの話も先が読めない。
『月まで三キロ』 死に場所を探す男とタクシー運転手。『月に一番近い場所があるんですよ』と話して、男を連れて行く運転手。
道中、『月』にまつわる話をする運転手。
何者⁇
そんな過去があったなんて…
父と子、お互いの想いが。
運転手は、息子を想い、ここに来るんだと。
『月』という地名があるなんて。
『この夏の星を見る』の続編?かと。が、辻村深月だと… 最近、読んだばかりだったので。
短編はあまり好きではなかった。短すぎて、物足りなさを感じてしまうので。
この6篇プラスαには、物足りなさは感じなかった。
どれも短い中に物語が収められていた。
考えさせられた、その先を。
この先、どうなるのか,と。
何か明るい未来が見えるようだった。
さすが直木賞作家。
Posted by ブクログ
難しい話かと思ったら、最終的には癒されるお話ばかりだった。
癒されるというか、解決には至らないけど、話の主人公が前を向けている印象。人間の7割は水分だから水素とか、クォークとか、人間も宇宙人とか、学びがたくさんあった。
優は優、健は建、ミカはミカで、ミカは漢字知らないからカタカナ表記なんだなあってのをすごくなんか重く感じた。
Posted by ブクログ
表紙に惹かれて買いました。科学についての話が節々にありましたが、友人や家族の暖かさも感じられる本で、とても温かい気持ちになりました。いつかまた読み直したいです!
Posted by ブクログ
分かるための鍵は常に、分からないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず何が分からないのかを知らなければならない。この謙虚さこそが科学の持つ爽やかさであり、人を突き動かす原動力になる。宇宙、地質、素粒子に魅せられた科学者たちが、凝り固まった心を心地よく揺さぶる温かな全六篇。科学の道に進んで良かったと思える一冊です。
Posted by ブクログ
この人のかくもの、好きだなぁと感じて2冊続けて読んでしまった
愛想のないあたたかさが全編をとおして流れていて、強烈なフレーズもないのに「この本は読んだ」とずっと覚えていられそうな…
Posted by ブクログ
短編集の本作
すべて読み終え、表題作の「月まで三キロ」を再読。
タクシー運転手の困ったような表情と、淡々とした語りの行く末に、初読の時も、再読したこの瞬間も胸にずしんと沈み込み、深く目を閉じる時間が必要でした。
運転手と同じように、答えを聞くことができないと分かっていても、繰り返し問いかけてしまいます。
文庫の最後に、逢坂剛さんとの対談が掲載されていて、逢坂さんが「月まで三キロ」の中で、とくに気に入った作品があると話しています。
私も同じ作品をいいなと思っていたので、共感できて嬉しかったです。
「エイリアンの食堂」 「山を刻む」 良かったです!
Posted by ブクログ
エイリアンの食堂、山をきざむ、がよかったかな。
どのお話もその人なりの苦しい時期に焦点をあてていて、でも科学の力だったり、人との出会いだったりで、苦しみが和らいでく様子に胸がスッとしました。
Posted by ブクログ
読みやすい短編集。
作者が地球惑星科学を専攻しているため、地学関係の内容が多く見受けられた。月や地球関連の話はスケールが大きく、幻想的な気分になった。
一番好きなお話は「エイリアンの食堂」です!
Posted by ブクログ
物理や化学なんて社会に出たら何の役にも立たないだろうに、なぜ学ばなければならないのだろう、と学生時代は思ったものだ
本書を読んで、気づかないだけで、自分の周りに当たり前のように科学が溢れていたことに気づかされた