あらすじ
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。(対談・逢坂剛)
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Posted by ブクログ
文章に惹きつけられるものがあってどんどん読み進められました
山を刻むでは母親が主人公で、家庭内での役割や夫と子供への思いが綴られていて、その立場に立ったことがなかったので読めて良かったです。
抑えていた自分を解放しながらそれを家族にも見せつけていきたい、みたいな結末になっていてよかったです
Posted by ブクログ
納得感のある、綺麗すぎず後味もよい話が多くストレスがなかった。自然科学を愛する者たちとの交わりが鋭いけれどもどこかとぼけた感じで楽しかった。
Posted by ブクログ
やっぱ表題作がいちばんいいね。
「知ってました?」て連呼するのなんかジワる。
標識の場所行きたい
行くよ。
・月まで三キロ
人生いろいろあった(父親と不仲、起業したが失敗。子供できないまま離婚され借金7000万抱えて実家に出戻り。母が急死。そのまま父親が認知症を発症。父親は自分(息子)のこともわからない。下の世話もするしなくてはならない。)40代の男が、自殺の下見に樹海まで行こうとタクシーに乗る。しかし、タクシー運転手に連れて行かれたのは浜松市天竜区月に向かう途中の『月 Tsuki 3km』と書かれた道路の案内標識のところだった。
月は大昔はもっと地球に近くて、回転も速かった。だから、月のいろんな面が見えたし、大きくみえた。タクシー運転手は元高校教師で天文学が好き。月は子育て似ているという。月と子供は似てる。タクシーの運転手の息子は高校受験当日に飛び降り自殺した。自分も死んでしまおうと思ったとき『月まで三キロ』の看板を見つけた。満月の夜。月が息子だと思った。月に1番近いこの場所で息子に「お前にどうしてやればよかった?」と問い続ける。主人公は認知症の父親の介護に疲れ、老人ホームに預けてきた。その老人ホームは月より近い。(月は三十八万キロ離れてる。)父親に話を聞きに行こう。自分に本当はなにを伝えたかった?自分を愛していたか?
・星六花
雪の結晶の名前。
アラフォーの主人公女は紹介で気象関係の仕事をしている人と知り合い好きになる。しかし、彼は性的対象が男だった。雪の予報を当てるために雪の結晶の写真を一緒に観察する。
・アンモナイトの探し方
中学受験に悩む小学生が両親の故郷で化石を採掘してるひとに出会う。
わかるための鍵はわからないことの中にある。まずは何がわからないかを知らなければならない。わかるとわからないをきちんと分ける。
小学生は本当は自分の志望校によって両親が離婚することに悩んでいた。住む場所で親権とか。
・天王寺ハイエイタス
ハイエイスタは中断みたいな意味。
主人公、豆腐屋の三代目次男、健。父親の兄、哲治が元プロのギタリスト。今はプータロー。その哲治が主人公の兄、優にお金をたかっていたのを見たと聞く。優は秀才でつくばの国立環境研究所で働いてる。古気候の研究所。哲治にお金を渡そうとしていたのは本当。哲治は優の大学院進学時、レアなギターを売ってお金150万をつくってくれた。(親は豆腐やの経営がピンチ、祖母が倒れた)両親には成績がよかったから入学金と授業料は免除になったと言った。
哲治は結婚して娘がいて、やり直したいと音楽を捨てた。しかし、女性問題から奥さんは拒否。娘が大きくなって音楽の道に進むようになり、哲治が自分のために音楽を捨てたと思うようになる。それがつらい。「もうギターをひく気はないのか」聞いてほしいと優のところにきた。お金はギターを買うように30万渡そうとしていた。しかし突き返された。
はじめて哲治のギターを聞く。すごい演奏うまい。
哲治の娘への答え。娘のことは大切。
人生に後悔はつきもの。それでいい。そのためにブルースがある。優には優の、健には健の、ミカ(娘)にはミカのブルースがある。お父ちゃんは機嫌よくお父ちゃんのブルースをやってるから気にするな。
・エイリアンの食堂
母親を亡くした女の子。父親は食堂をやってる。その食堂に通うつくば研究所の女性との交流。すべてが素粒子?水素?みたいな話。女の子は母親の存在をいつも感じていた。父親は妻の死を嘆いていた。
・山を刻む
専業主婦がシュミだった登山と写真を再開させる。
家族に主婦やってあたりまえに扱われて、家族をすてるのかな?っておもったら、山登りで火山学者と学生に会い、山小屋を買う(経営する)決心をする。娘や息子、夫が山小屋にきてくれる想像をする。「山っていいでしょ」と言いたい。
学生は医者の家系だけど、落ちこぼれ。
院生で火山学者の手伝いをしている。先生は自分のやっていることが世界一おもしろいって本気で思ってるから、一緒に仕事をすれば、将来やって良かった、面白いと思える確率が高い。「仕事なんてつらいもんだ。」という医者の父親のもとで働いても面白いわけない。
・特別掌編 新参者の富士
富士山だって日本アルプスの山々の中では新参者。日本海が開いて日本列島の原型ができたのは1500万年前、日本アルプスの山々が隆起を始めたのが2、300万年前、富士山が生まれ始めたのは1万数千年間前。
来年30になる主人公は鬱で静岡に帰ってきたけど、人生まだまだ、人生100年時代、30なんて新参者と励まされる。
第8回静岡書店大賞受賞記念掌編(しょうへん)を文庫化に際し収録。
掌編っていうのは短編より短い小説
最後に逢坂剛との対談がある。
この本はミステリーらしい。
Posted by ブクログ
理系的知識が文学と融合した短編集。根っからの文系の私には苦手意識の塊の様な理系の要素が物語に深みを与えていて、縁遠かったもののはずなのに身近に感じました。雪の結晶を観察する「星六花」が特に好きです。消えていった淡い恋心と儚い雪の結晶の美しさが重なって少し切ない想いが残りました。学生時代にこの作品と出会っていれば、理系科目にもっと興味を持てていたのかなぁ…。