伊与原新のレビュー一覧
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『宙わたる教室』の続編
あの東新宿高校定時制の科学部が、メンバーも新たに蘇る!
今回の科学部もなかなか個性的な面々が揃う。
消滅していた科学部を立ち上げる所からのスタートはなかなかハードルが高く、一筋縄では行かない。
そして前作メンバーとの合流や、東新宿高校定時制の抱える問題、顧問の藤竹先生が音信不通になった理由など、様々な要素を抱えながら、メンバーは大会の先にあるアメリカ行きを目指す。
『宙わたる教室』が類稀な感動作だったので、前作超えは難しいだろうなぁと思いながら読んだが、予想を超えて何度も目頭が熱くなってしまった。
やっぱり若い力の結集にはパワーが溢れている。
科学の分野にもSDGsを盛り込んだり、教育現場における定時制高校の存在意義など、多角的な切り口も勉強になった。
未読の方は、ぜひ前作『宙わたる教室』から読んでほしい。一度しかない青春をしっかり味わえるので、ワクワクしながら、大人も童心になってパワーを貰える。
爽やかな読後感も心地よかった。
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とてもとてもよかった。
途中の藤原先生が渦の研究をしていた…のあたりでやっと史実がベースになっていることに気づいた。なるほど、藤原の効果の藤原先生か。
あの時代に学業を志す強さ、葛藤、40歳を超えての不安や寂しさと責任、単身送り出された異国での絶望は想像し難い。平成の、男女が同じように学ぶことが当たり前の時代に生まれた自分自身は、本気で学べたかと言われると自信がない。いろんな選択肢があったからこそ、隣の芝生が青く見えて、行ったり来たり。その中途半端さが自分なんだと、受け入れつつも、何かに本気で向き合うことの美しさと儚さを味わいたいと改めて思った。 -
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宙わたる教室の続編
超進学校に通っていた飯星佐那が東新宿高校定時制に転校し、かつてあった科学部を復活させるところから話は始まる。
今回は藤竹先生のような強力に引っ張っていってくれる先生はいないが、サポートしながら
見守る協力的な副校長、初めはまるでやる気のなかった担任も佐那達に引っ張られていく。
病の為に学校に行き続けられなかった理、
中国人として日本で除外され、居場所のなかった宇辰、
いじめで不登校だった翔太、勉強に興味のなかったみちる、一人一人が持っている可能性がピースとなってはまっていく。
前作の科学部所属のOB.OG達の協力を得ながら、
ハイブリッド・ロケットの開発をする。
残念ながら、いつも通り科学的知識がない事と想像力がない為、ロケットの概要がよくわからないのが残念(私のせいだけど)
定時制科学部の熱量がその周りの人を巻き込んで、新しい世界へと広がり、一人一人の人生に希望と未来を繋げていくのは前作と同じで、このシリーズは好きだ。
前作で岳人の人生に希望が見えた形で終わっていたが、なかなか一筋縄ではいかないことも現実なのかもしれない。
しかし、後輩達の熱量によって彼も未来へと歩き出したことは嬉しいことだった。
藤竹先生がもう少し出て来て欲しかったが、彼にも新しい目標があることがわかって、安心した。
今回の生徒達がこれからどのような道を歩むのか、先輩達はどうなるのか?
藤竹先生は今後どうなるのか?
まだまだ先が知りたいと思う。
続編も期待したい。
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75歳女性の読書友達の方から孫に読んでほしい本と言って紹介されて読んだ。
科学は一部のエリートだけのものではなく、ただ純粋に知を追求して学ぶことの魅力に気付いた人すべてに開かれているべきだという藤竹先生の静かだが揺るぎない信念に触れて何度も涙ぐみそうになった。
そこには年齢も性別も境遇も関係なく、ただ知りたい、学びたいという意欲を大歓迎する、上から目線ではなく一緒になって学ぼうとする、そんな先生に出逢えたこの定時制の学生は嬉しかっただろうなと思う。
本当はもっと学びたかった、学校に行きたかった、そん ないろんな思いを抱えてきた定時制の学生の一人一人のエピソードが涙ぐましい。集団就職のおじいちゃんが妻の代わりといって学び直す話は泣けた。
ある仮説を立て、それに向けて地味な検証作業を繰り返し、そこから生まれる結果から何が導き出せるのかを考察していき、そして自分なりの結論を導き出す。
自然科学の検証作業はある意味日常でも同じことが言えるのかもしれない。どんなに思った結果が出ない時でも我々は真摯に下へ下へと根を生やし続けることだ。それは地味な作業ではあるが楽しいと思える探求心やワクワクがあれば続けられる。もしかしたら大輪の花を咲かせるかもしれないと信じて。
藤竹先生の言う、自動では答えは出せません、何度もやみくもにいじくりまわして書いたり図を描いたりして、そうしてるうちに自分の思い通りに操る事ができる、という言葉に、ああわかった!っていう感動ってこうゆう事だよなと思いだした。
世の中で流行っている親ガチャという言葉はある意味で正しいが、しかしそれが全てではない。それぞれが抱えている様々な悩みやしがらみのある複雑な背景があっても、それでも藤竹先生のような信頼できる大人の導きで大きく人生が変わることだってありうるんだから。
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18 自動的には分からない。手を動かすんです。何度も何度も書く。やみくもにでも式をいじくりまわす。いろんな図をしつこく描いてみる。そうしているうちにわかったという瞬間が来ます。必ず。
38 ディスレクシア:文字情報のデコーディングが苦手なだけで情報の中身はちゃんと理解できる。つまり知能に問題はない。」失ったのは何年だろう?本当なら失わなくても良かった年月だ。
103 私たちは死にたくて手首を切っているんじゃない。消えて無くなりたいほどの辛さから解放されたくてリストカットに頼るのだ。切れば何とかその日はやり遂げる。腕の傷は一日一日どうにか生き延びてきたという足跡のようなものだ。
115 オポチュニティの轍。実際はNASAのオペレーターが取らせたものだろう。でもオポチュニティが長い首を振り返り自らの医師でシャッターを切ったようにしか思えなかった。それはこの子が異星の原野をたった一人で何年も旅してきた証。声明を感じさせるものが何一つない絶対的な孤独の中を懸命に生き延びてきた足跡。
193 火星のランパート・クレーターを実験室で再現するっていうのが科学部の記念すべき最初の研究テーマ。アンディ・ウィアーの「火星の人」
198 心の平穏を保てない荒んだ家などいたいはずがない。学校に行ったら行ったでなんで僕がこんなところにという学歴コンプレックスに襲われる。居場所を失いつつあった要を救ってくれたのが情報オリンピックだった
209 今って通信制の高校とかもいっぱいあるじゃないですか。なんでわざわざ定時制を選ぶんですかね? 単純に気てえからじゃねえの?学校にいい思い出なんか一個もなくても引きこもっていた時期があったとしてもさ、学校に行きたいって気持ちはきっとゼロにはなんねーんだよ。
213 重力可変装置、落ちる箱の中が火星重力になってる間にクレーターを作る。
217 最難関と言われる大学や医学部に毎年何十人も合格者を出すような高校がこの世には存在する、そんな世界がある事自体この4人は知らないかもしれない。学会に集まるのはそういう高校ですよと言っても4人はただぽかんとしているだけかもしれない。何の興味もわかないだろう。でももし誰かが実験のヒントを与えて呉れようものなら途端に目を輝かせるだろう。そこにはきっと自分の優秀さをしょうめいしたいというくだらない欲求はみじんもない。無性に羨ましくなった。
221 やっかいな実験程やる価値がある。
226 定時制高校に科学部を作りどんなことが起きるのかを何が生み出されるのかを観察する。あくまで自らの探求心を満たしたいがためのものだ。部員たちをモルモット扱いしていると言われたら首肯せざるを得ない。場合によってはただでさえ挫折の多い彼らの人生に余計な傷を負わせるだけになってしまいかねない。そのことを知りながら実験を続けている自分は冷酷な人間なのだろう。
227 進んで科学部に入ってくることは絶対ないような生徒に会えて声を掛ける。常識の枠の外に埋もれているアイデアを掘り起こしてくれるとしたら優等生よりむしろそうゆう生徒ではないかと考えた。真に価値ある問いはしばしば無知の中に生じる。
メンバーに多様性を与える事。均質な遺伝子をもつ生物集団が環境変化や感染症の流行で容易く全滅するようにメンバーが同じような能力しか持たないと困難を突破するすべを見出せずに立ち往生することが多い
俺はバカじゃねえ、怠けてたわけでもねえという嗚咽する彼を見た時に彼の中に誰よりも激しい「知」への渇望を垣間見た気がした。
237 特筆すべきはその優れた観察眼の方かもしれない。クレーターの周囲に広がる奇妙な地形に目を留めこれは何だろうと感じる力。なぜこうなっているんだろうと不思議に思う力。世界の細部に目を凝らす眼差しの熱さはセンスオブワンダー、自然の神秘に目を見張る感性と直結している。そしてそれは科学にとって何よりも大切なことだ。
242 疲れちゃったネ、お茶にしない・マハブランカ作ってきたから。こういうところもまたアンジェラの世間知が発揮されている。複数の人間がまとまって仕事をしていくには何が必要か、頭ではなく心と体が理解しているのだ。差し入れはもちろん彼女の大きな笑い声や能天気な発言、お節介や涙までもがチームの潤滑油となっている。彼女以外の三人しか部屋におらずどこかぎこちない空気が流れている時でも彼女が入ってきた途端に空気が一変する。
269 この国ではいつまでも化学はエリートと優等生のものだけなのだろうか。化学とは無縁に生きていた人たちが研究のインスピレーションを得るなど無理な話なのだろうか?
もしこの科学部が先生の実験なんだとしたら・・先生の仮説は何ですか?何か検証したくて実験したかったんじゃないですか?
「どんな人間でもその気にさえなれば、必ず何かを生み出せる。それが私の仮説です」
だったらそんなの実験じゃないです。観察する相手のことを信じてやる実験なんてないです。
この科学部があんたの実験かどうかだなんてどうでもいい。俺はただ俺たちの実験を続けたい。
275 彼らを見ているうちに大学院時代の恩師の言葉を思い出した。実験てのはね、想定外の結果が出てからが本番だよ。個々人がそれぞれに成長し互いの関係性おあらゆる意味で濃く深くしている。そのことが研究結果に影響している。その度合いは藤竹の想像をはるかに超えていた。そして周囲の変化、要や木内、マイまでもが科学部に関わってくれるとは予想だにしなかった。彼らが吹かせる風もまた部と部員たちの進む方向を変えていく。
そもそもなぜ彼らはコミットするのか?もしかしたら極めて個人的なはずのその気になるという現象は何らかの機序で回りに伝播するのかもしれない。
303 人生こそ自動的には分からない。自分の将来を一本道のように見通せる人はいません。誰しもがいるのはいつも窓のない部屋で目の前には扉がいくつもある。とにかくそれを一つ選んで開けてみるとまたそこには小さな部屋で扉が並んでいる。人生はその連続でしかない。
308 藤竹がたばこの煙を使って教室に青空を作った夜。あれから一年がたったなんて信じられない。学ぶことを知り本当の仲間というものを知り自分の中にあるいろんな感情を知ったこの日々をこの先決して忘れることはないだろう。
322 天文学みたいなスケールの世界に身を置いていると数百年とかもっと長い時間軸で物をみるしお金にならなくても平気だし何の役に立つの?という質問など傍から考えてもみないのが普通になる
損得関係なく面白いからやる、楽しいから知ろうとするとする姿が魅力的です。常に「信頼できる大人」の気配があるのが素晴らしい
顧問を務める先生が生徒のため、と上からではなく自分が好きで天文学をやっていてその姿に感化された子供たちが同じように楽しんでいるのが印象的でした。
率先して自分が夢中になる姿を見せる大人って子供にとっては大事な存在ですよ。 -
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伊予原さんの小説を読むのは直木賞の「藍を継ぐ海」の続いて二作目。
面白かったぁ。定時制を舞台に人間模様を描くドラマや小説は色々あるし、さまざまな背景を持つ人間が集まってくるのでドラマにしやすい。ただこの舞台に火星の研究を持ってくるとは。突拍子もないミッションを縦軸にドラマが展開され最後は大団円。火星実験は完全な創作かと思いきやこれがなんと実話を元にしたストーリー!驚きました。
いろんな心に残るフレーズが散りばめてますが、「オポチュニティの轍」に出てきた火星探索機オポチュニティの話が好きで何度もそのくだりを読み返しました。
最後の巻末の辻村深月さんとの対談も面白かった。この小説の執筆エピソードの他に「藍を継ぐ海」の解説やエピソードを語ってくれたのは嬉しかった。満足度の高い一冊。 -
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ネタバレ高校最後の夏、みんなで作った巨大なオオルリの空き缶タペストリー。天文学者になった彗子(スイ子)が地元・秦野に帰ってきたのをきっかけに、45歳になったメンバーが再び集まる。
彼女が始めようとしていたのは、手作りの天文台づくり。「そんなの無理でしょう」と思いながらも、それぞれの理由を胸に秘めて手伝う同級生たち。
特に刺さったのが「四十五歳定年制」という考え方。若い頃に思い描いていた未来の自分と、今の自分。そのギャップに気づかないふりをして、なんとなくやり過ごしてしまう感覚に、すごく共感した。誰かと比べたり、周りの評価に影響されたりして、しあわせの基準も少しずつ変わっていってしまう。
一度区切りをつけてリスタートする、というのも悪くないのかもしれないなと思った。
終盤は涙腺がゆるみっぱなし。何歳になっても、夢を語っていい。そんな希望を、そっと渡してもらったような読後感だった。 -
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岩手の農芸高校を舞台に、宮沢賢治の世界観と自らのルーツを探っていく一夏を描いた作品です。
物語は、東京から転校生がやってきたところから回り出す。主人公は小さい頃から花巻の伝統芸能である鹿踊りに熱を入れてきた高校二年生の壮多。この夏も八月に行われる全国高校総合文化祭への出場を目指して練習に取り組んでいる最中だった。そんなところにやってきた転校生の深澤は、壮多から見れば妙に鼻につく男で、幼馴染の七夏には近付けたくない。そう思っているのに、イギリス海岸へ深澤を案内することになったところから事態は動き始め、そこで出会った先輩と深澤、七夏は地学部を立ち上げることに。怪我で鹿踊り部の練習に参加できなくなった壮多も深澤の動きを警戒するために地学部に参加することにするのだが、しばらく様子がおかしかった七夏がある日を境に姿を消してしまう。原因が深澤にあるのではないかと疑う壮多だが――。
読み終わって、私まで岩手から三陸を旅したような気分になりました。私は、宮沢賢治の作品をそこまで多くは知りません。有名な『銀河鉄道の夜』、『よだかの星』、小学校の教科書に載っていてやけに印象に残っているクラムボンの『やまなし』くらいはすぐに思い浮かびますが、それ以外の作品やイーハトーヴについて、あまり深く考えたり触れたりはしてきませんでした。けれど、この作品を読めば、宮沢賢治に興味を持たざるを得ません。そして岩手にそんな宮沢賢治のゆかりの地がそんなにもたくさんあるのだということも、初めて知りました。宮沢賢治の作品についても、宮沢賢治本人についても、そして地学のことについても…大変勉強になりました。
地学や天文学というのは、本当に果てしない、遥か彼方と今を繋ぐ学問なんだなと改めて感じるとともに、宮沢賢治は物語を通してその架け橋をかけてきた人なのだなとも思いました。宮沢賢治と岩手、イーハトーヴの考察に出てきた地名、どれもにわくわくとしながら読むことができました。
夏の地学部の巡見旅行、これだけの長期間の遠征旅行ともいう計画を学校の部活動で認めてくれるとは、凄い話だなと思いましたが、それだけの期間をかける価値がある活動だったのだろうと読みながら感じました。どこを、どんなルートで進んでいったのか想像しながら読むのは楽しかったです。最後、全員無事に帰って来れて本当によかった。彼らがいつか、今回辿り着けなかった場所に再び立つ日のことを想像すると、そこでどんな話をするのだろうと思ったりします。
一人ひとりの青春と、『銀河鉄道の夜』と、若さとエネルギーが凝縮された素晴らしく透明度の高い物語だったように感じました。
またゆっくり読み返したいです。