伊与原新のレビュー一覧
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大地震の「前兆すべり」の研究をしていた行田準平。大学院は修了したものの研究者としての就職に行き詰まっていた。
恩師の推薦もあり不本意ながら地震研究所の広報アウトリーチ室の専任助教に就任したのだが翌年、東日本大震災が起きた。
鳴り止まない電話。市民からの苦情、罵倒。内部からの吊し上げ……。
疲れ切っていた準平は ある報道番組のTVカメラの前で とうとう広報担当として言ってはいけない台詞を言ってしまう。
そして震災の一年半後 彼は地震研究所を辞した──。
震災から三年。塾の講師のバイトで食いつないでいた準平は 業界の“プリンス”と呼ばれていた地球物理学の研究者 武智から新しいプロジェクトに誘われる。その内容は “津波のリアルタイム監視システムの構築” だった。
武智のもとに集まった有能だが “和” からはみ出した異端児たち。
果たしてプロジェクトは成果をあげることができるのか──。
東日本大震災を研究者の側からの視点で描いているのが新鮮だった。
“和” を重んじるが故に “やれること” をやれないなんてバカげている。勘違いも甚だしい。
その点 異端児たちのフットワークの軽さはどうだ。
最初は向いている方向がバラバラに思えた彼らが終盤 同じ方向を向いている。そして 彼らだけではなく あの震災を見てきた 様々な立場の人たちも同じ方向を向いていた。
未来につながっていく清々しいラストだった。
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伊与原新、短編集。
就職活動がうまくいかない大学生・堀川。ひとり娘・果穂を育てるシングルマザー。元劇団員の派遣社員・正樹…
生きることに辛さを抱えた人達。
ひととのつながりから、考え方を変え、ちょっと前向きになっていく。
堀川くんなんて、段ボールロボットの話を動画付きで、面接ですればいいのに。グエンの言うように。
正樹もレモン農家、継ぐんだろうな。
それぞれの話に繋がりはなく、どの話にも科学の話が違和感なく、盛り込まれている…
どの科学の話もわかりやすくて、話を邪魔していない…
短編って、物足りなさを感じるので、苦手だったが、伊与原新の短編はいい。
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伊与原新さんのハートウォーミングストーリーですね。短編集です。
生活に疲れ、生きる事の難しさを抱えている登場人物の出逢いと人間模様を、科学を交差させて描く再生のドラマです。
伊与原新さんは、科学を思考する人達に、科学を描くことの可能性を、この本でも証明されています。
曰く「科学者にはロマンチストが多い」と言われますが、まさに科学は謎解きと奥の深い人間模様がありますね。
目次
八月の銀の雪
海へ還る日
アルノーと檸檬
玻璃を拾う
十万年の西風
表紙装画と表題が違いますね。装画は「海へ還る日」を表しています。
「月まで三キロ」から伊与原新さんの作風は、人間模様を主題に置かれるようになりました。それまでの「ミステリーに疲れた」と言われたようです。
伊与原新さんの文章は、心に沁みますし、何と言っても科学の魅力を醸し出して描かれますから、独特の文学があります。謎解きも、顔を覗かせるストーリーもあり、飽かずに愉しく読み進めます。
これからが楽しみですね(=゚ω゚=) -
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伊与原新さんの小説は好きなのですが、こちらは私がこれまで読んできた物と少し雰囲気が違って新鮮でした。
天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生が依頼された数々の謎を解き明かしていくストーリーなのですが、蝶子のキャラクターがぶっ飛んでいて笑えました。こんな気象予報士さんをテレビに出したらダメでしょ〜て思うけど小説の中では面白い。
探偵右田夏生との力関係も一目瞭然。
伊与原さんは、毎回科学の事を分かりやすく書いてくださるのですが、今回の気象に関してはちょっと難しかったです。それでもテンポ良く謎を解き明かしていくストーリー展開は楽しめました。また未読の本を見つけたら読んでみたいと思います。
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伊与原さんの作品を読むと自分の日々の世界からは離れているものの、人との関わりの不思議さを感じることができてホットします。
この作品は、仮想「国立科学博物館」が舞台になっているのは明らかで、あの場所の入ることができない場所に、どのようなものが収められているのか、そこで働き、日々研究にいそしむ人たちがどんな日々を過ごしているのかを体験できるのが何より楽しい作品です。
全部で6話からなり、一話ごとに完結するので、連作かと思いますが、最終話を読むと、すべてはここへ向かっていたのだと気づきます。
博物館の人たちって何やっているんだろう!?と不思議に思っている方に特にお勧めです。 -
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伊与原新さんの学園青春ドラマですね。
宮沢賢治のオマージュ作品でもあります。
もちろん、伊与原新さんですから、科学も絡んで物語を面白くしてくれています。
宮沢賢治が教鞭をとった花巻農学校を前身とする「岩手県立花巻農業高等学校」をモデルとする「花巻農芸高校」が舞台になります。ですから、随所に宮沢賢治の話が盛り込まれて物語は構成されています。
二年生の壮多と七夏の教室に深澤北斗が転校してくる。そして、ひょんな事から宮沢賢治の作品のイギリス海岸のモデルになった場所を案内することになった。
目的地に行くと、三年生の三井寺と出会った。三井寺は化石の発掘をしていたのだが、実は地学部という部活を立ち上げようと部員を募集中だったのだ。
さらに、深澤はその事を知っていてイギリス海岸を七夏と壮多をさそってやって来たようだ。
話の流れで、七夏と壮多も地学部に入部することになる。同時に今年赴任してきた国語の教師の芳本が顧問になってくれる事になり、その芳本先生のクラスの一年生の川端文緒が入部することになる。
文緒は宮沢賢治の研究もしていて、文芸部を作りたかったのだか、人数が揃わず断念していた。
こうして、部を立ち上げる人数が揃って地学部の活動が始まる。
夏休みを利用して宮沢賢治のイーハトーブが何処にあるか探索をすることになる。
だが、どうした訳か、七夏が突然姿を消す。
どうやら、深澤が関係しているようだが、その謎を解くためにも、壮多は、深澤と三井寺と三人で自転車でイーハトーブ探索の旅にでる。
宮沢賢治の作品が次々に出てきて、登場人物達が、作品の中に出てくる場所や物語を考察するのが愉快ですね。
なんといっても、終盤に深澤の転校とイーハトーブ探索の目的と秘話が明かされる。それは、七夏失踪の謎解きと結び付いていくのが、感動を呼びます。
伊与原新さんの作品の傾向が、この作品から変わってきているのを感じられます。
「月まで三キロ」にみられる、人情味あふれる人間模様を科学を絡めて描き出す手法ですね。
ますます面白くなる伊与原新さんにワクワクです♪ -
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就活、家族、故郷…。向かうべき先や帰るべき場所を失ったとき、自分は戸惑い、立ち尽くしてしまうかも知れない。それでも、自分以外の他者と触れ合うことで、自分を形作る輪郭とその奥深くに眠る「核」を呼び起こし、再び前に踏み出すことができる。
伊与原さんの作品は、そんな変化の激しい時代への科学がもたらす処方箋と言えるでしょう。
どんな状況にあっても、前に踏み出す原動力は「自然の摂理を明らかにしたい」という好奇心。
10億年も前から地球の中心に積もる、鉄の雪。自分の中にも芯があるとしたら、そこにも何か降り積もっているだろうか。少しずつでも、芯は大きくなっているだろうか。
行先に迷ったとき、自らに問いかけたい一節です。 -
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伊与原新さんの科学エンターテイメントユーモアミステリーですね。
池ノ端環は、ひょんなことから『国立自然史博物館』に職を得て、1ヶ月。まだ自分の職場をよく理解しているとは言えない。
環の所属は、植物研究部の「多様性解析グループ」だ。だが環は、学生時代を含め、植物そのものを使って研究した経験がない。
そもそも環は生物学を専攻していない。出身は理学部の情報科学科で、持ち合わせている知識は数学とプログラミングに偏っている。
国立自然史博物館の植物研究部でDNAバーコーディングの技術開発チームを立ち上げることになり、計算機科学の専門家を一名募集があり、運良く採用された。コンピューターオタクで片付け魔の環の博物館勤務が始まる。
そんな環が、「旧標本収蔵庫」別名「赤煉瓦」の標本整理を依頼される。
その「赤煉瓦」には、変人博物学者の箕作類、別名「ファントム」がなぜか住み着いている。
出会った瞬間から、箕作に『「どんなものも絶対に捨ててはならない」ーーこれは博物館の第一原則だ』と言われてしまう。
そんな環と箕作が、なぜか協力して博物館で起きる謎を解明していく事に……………?
contents
呪いのルビーと鉱物少年
ベリドンナの沈黙
送りオオカミと剥製師
マラケシュから来た化石売り
死神に愛された甲虫
異人類たちの子守唄
伊与原新さんの科学知識も凄いですが、博物学まで及ぶとは脱帽しました。そもそも科学の分野は広いですから、テーマは限りないですが、専門分野以外の取材は大変かな?
調べて整理分類するのは、お得意でしょうが、それを滑らかな文章にしてミステリーを組み立てるのは、伊与原新さんの素晴らしい筆力ですね。
まして、ユーモアと温かな人間模様が必ず底辺にありますから、読んで楽しく知的好奇心もくすぐられるが魅力です。
(この作品は、メメさんの本棚登録で興味を惹かれました。メメさん、ますます伊与原新さんにのめり込みました。ありがとうございます♪) -
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伊与原新さんの科学サスペンスミステリーですね。
実はこのミステリーは、江戸川乱歩賞に投稿して、惜しくも受賞を逃した作品を加筆訂正して、デビュー前から温めていた作品との事です。ですから、伊与原新さんの科学ミステリーの『原点』の作品ですね。
「帝都工科大学アストロバイオロジー研究センター」のセンター長の笠見教授が、実験室で死亡した。
どうやら有毒ガスを吸った為と思われるが、死因に不審な点がみられる。同時に同センターが、研究中の火星の隕石に「FFP(捏造・改ざん・盗用)」の疑いが有るとメールが、科学雑誌社と大学の関係者に送られてきていた?
帝都工科大学の大学本部の研究公正委員会が開かれて、真相解明の予備調査委員会を立ち上げることになる。そして、その委員長に天才科学者の百地教授が任命される。補助として、火星の隕石の取材をしていて、笠見教授の遺体を発見した科学雑誌『プリズム』の記者の小日向が加わることになるが…………?
素敵に面白いミステリーです。
百地教授のユニークさが、硬質な物語をユーモアを込めて和らげてくれるのが良いですね。探偵は、この百地教授、ワトスン役が小日向記者。
「火星の隕石が涙滴型磁鉄鉱、すなわち生物の痕跡があると認められる」というコンセプトで、地球の生命誕生のロマンが語られて、それがミステリーのキーワードになっています。
伊与原新さんの登場人物は、個性がしっかりしていて、物語をそれぞれもり立てるので、飽きがこないですね。それに、別の次元の科学的興味を引き当てるので、好奇心をくすぐられます。
とにかく、読み出すと止まらなくなるのが嬉しくなるのが、伊与原新さんです。
他の作品が気になって仕方がなくなる愉しい作家さんです(=゚ω゚=)
(メメさん、『ルカの方舟』夢中で読んでしまいました。これは、ますます病みつきになりますね。次に読む本が楽しみです♪) -
Posted by ブクログ
ネタバレ夏も終わるけど、25年ナツイチなので読んでみたり。
伊与原先生の本は初めてだけど、ポップな表紙とは裏腹に博物館的な知識の語り方が良かったなー。
環と箕作のスタンスの違いは、分類学と博物学のそれだと思っていて。
前者は分類付けし整理することに意味がある。いわゆる体系化だな。あるモノがある場所に置いてある(ある生物がある名前である)ことには理由がいる。
後者は集めてこの場所に止めることに意味がある。今の私達の基準ではゴミになるものかもしれなくても、捨てずに意味付けをされるまで待ち展示すること。
デコボココンビに見えるけど、意外と似た者同士な二人だったりするのだな。
と、ところでその…、環さんと箕作さんってお付き合いをされていたり…?(光のカプ厨) -
Posted by ブクログ
以前『月まで3キロ』を読んで、傷ついた登場人物たちが、揺るぎない科学の事実と知識に触れて、少し立ち直るエピソードに感動したことを思い出し、今年の夏が終わるタイミングで購入した。
各編で登場する科学の知識がとても素敵な表現で紹介されている。“銀の雪”とか、“ガラスを纏った細胞”とか。それぞれの分野に詳しい登場人物が、出会った人に分かり易い言葉で語る場面も好きである。科学の知識にちょっぴり触れて、自分の身の上に照らし合わせて小さな発見をし、勇気を得てまた歩き出す。大げさなことではなく、「地に足の着いた」人生を歩むことも大事で尊く感じた。有名人でも成功者でもなく、普通の人達に、静かにエールを送ってくださる5編である。