伊与原新のレビュー一覧
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ネタバレ謎の設定が弱いのだけども、キャラが生き生きしていて序盤は引き込まれるように読んだ。
が、中盤以降、ちょっと弛んでいる感じで辛い。
また、ミステリ、謎の要素が少し薄く、知りたいという面では訴求力になっていない。
2010年の時点で衰退した日本を想定して書いているのだけど、日本が先進国の地位から転落しているにもかかわらず、日本の国籍、パスポートが価値をもっていたり、未来の設定にザラツキを感じた。3等国になったらななったで、もっと徹底的に惨めな日本国を書いて欲しかった。
ひとりの人間の中にもうひとつの人格を作るというアイデアはSFではよくあるもので、電子技術、バイオ科学などで説明できる設定を作ることが可能であったがそこまではしていない。ここに、自分が書く場合の可能性の余地があるなぁと思った。
2010年の横溝正史ミステリ大賞なのだけども、選考者の意見の中では「悪人がいない」という意見が印象に残った。 -
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気象が謎の解決のキーになる日常の謎もの
金欠探偵の右田と気象予報士の蝶子は子供の頃の同級生
職業は探偵だけど、謎の探偵役は気象予報士の方
ってか、子供の頃のエピソード要るか?
不機嫌キャラの気象予報士ってのは面白い
不本意ながらテレビに出させられているらしい
そんでもって、風場吹けば桶屋が儲かるかのように一見意味不明な予言をする「蝶子のバタフライ効果」
リアルにそんな気象予報士がいたら面白そう
依頼が少ない故に依頼を断らないというか断れない探偵
依頼者の事情を含めて引き受けるというのもなかなかよい
だからこそ変な依頼で裏の事情があるんだけどね
キーホルダーを拾ってくれた人を探して欲しいとか
50年以上前の火災の原因は落雷だったのか確認したいとか
運び屋をしろとか
盗まれたバイオリンを探して欲しいとか
花見の場所取りをして欲しいとか
落雷の件に関しては実に人情的でよい
バイオリンの依頼は明らかに本人が関与してるのがあからさまなんだけど、友達が云々というのがミスリードになって引っかかって惑わされる
桜に関してはソメイヨシノはオオシマザクラとコマツオトメの交配とかって書かれてあるけど
遺伝子解析の結果、実際はコマツオトメはエドヒガンの近縁というだけなのがわかってるからこれはウソですね
でもまぁソメイヨシに似てて開花が早いというのは正しいのでストーリー的には問題ないんだけどね
個人的に、春は過ごしやすくて好きなんだけど、人によってはかえって気鬱になるというのもなんとなくわかる
「春って――希望の押し売りみたいだから」という作中の言葉が将にそれかな
あと、気象予報士のプライドと言うか、職業倫理はちゃんと守らなきゃダメでしょ
ある意味で人の行動を左右してしまうんだからさー
「天気は、誰もえこひいきしない」という言葉は結構好き
天気がどうだっていいってのも、石原良純が「そんなに天気知りたい?」って言ってるのに通じるものがあるな
雨のときは雨をそのまま愉しめばいいんだよな~ と「日々是好日」を読んでから思えるようになったからか雨がそんなに嫌ではないからなぁ -
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宮内さん目当てで購入し、やっぱり「空蜘蛛」が一番好みだったし、この短さの中で、物語と人物描写のみならず細かな部分(音楽や服装等々)も「抜かりなし」で満足。
影響されて、しばらくパッサカリアばかり聴いてしまった。
アンソロジーゆえ、他4人の、今まで読んだことがないラノベ系作家さんの作品に触れられたことも良かった。失礼ながら、どなたも存じ上げなかったし、好みはあるものの、購入して損はなかった。(アンソロジー集は、半分以上の作品を気に入らないと、失敗したと思う)
他作品では、椹野さんの軽めの探偵ものが特に気に入った。舞台がイギリスなのも好み。貴族探偵エドワードシリーズを読みたくなった。 -
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人生の転機を乗り越えていくタイミングを切り取った短編集。
就職氷河期やリーマンショックが大きく影響した主人公が出てきて、同世代の自分として変な共感をしてしまった。
少し前に30ちょっと前くらいの営業さんと話していたら、リーマンショックは学生だったからよく知らないと言われて、衝撃を受けたのを覚えている。あのときは………大変だった………。
人生には、自分でどうにかできることと、どうにもできないことが混ざっていて、頑張ってきたことが、どうにもならないことで無に帰されたりもする。
それこそ少し上の世代の女性は、今とは比べ物にならないほど制約が多くて、いろいろ諦めた人もたくさんいるはず。時代だったから、というのはときに有効なエクスキューズだけれども、それだけですべてを納得できない人もいるだろう。
それでも、なにかを機に前を向けることはあるというのを描いている。最後の話は、自分のこれからを考えるときにちょっと救いになった気がする。
私の座右の銘は「運も実力のうち」で、どうにもならないことも降ってくる、それでも、希望を捨てずに済むように実力をつけるよう努力するしかない、という意味も込めている。
改めてこれを胸に刻む。 -
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猿橋勝子さんという方の伝記風味の小説。
読みやすかったのだけど、そこまで起伏があるわけではないので、小説として考えるとイマイチ好みではなかった。
本人の努力も重要だけど、彼女を取り巻く環境はだいぶ恵まれていて、何かを成し遂げるには運も必要なのだと思った。
理解のある両親、男女平等と考える上司など。
本当に色々な人が尽力してくれていたことがわかる本だった。
最初の方で、吉岡彌生の言った言葉に勝子が失望する場面があるが、どうしてそこまでと思ってしまった。その後の人生のほうが理不尽なことを言われる機会なんていくらでもありそうだけど。
奈良岡のキャラはともわかりやすくて良かった。 -
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高校3年の文化祭
空き缶を集めてオオルリの飛ぶ
巨大なタペストリーを作った。
町の薬局を継いだ久志の大切な思い出。
あのとき、普段は輪に入らない
孤高の存在だったのに
力を貸してくれた彗子が戻ってきた。
それも、この町に
天文台を作りたいという夢を持って。
かつての仲間たちは協力を申し出るが…。
そりゃあ、それぞれいろいろあるわけですよ。
町に残ったものも、出戻ったものも。
けど、まだ何かできるんじゃないかって
その気持ちが少しずつ行動になっていく。
久志目線だけじゃなく
教師になってお疲れ気味の千佳目線からも
ここに“集まれない”仲間のことが語られる。
そういった人間ドラマもよかったけど
天文台を作るにはどうするかという部分
土地探しとか、機材探しとかね…
そこもとても興味深かったです! -
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表題作「藍を継ぐ海」の他、「夢化ねこ島」「狼犬ダイアリー」「祈りの破片」「星隕つ駅逓」の四作品を収録。
いずれも短編ながらも、地方都市の有り様をよく表現して、科学的な知識を含ませて品性かつ抑制の効いた文章という印象を抱いた。
高揚感は少なめでこれが直木賞かと思わせるも、何処か静寂を感じさせ、ゆっくりと読みたいところの作品である。
表題作もいいが、「星隕つ駅逓」も北海道、アイヌ、宇宙との繋がり、産まれてくる生命、老いて行く親などなどそれぞれがいい平衡を保っており、遠軽隕石一つから、着想を得て作り上げたのかと勝手に解釈すれば、ますますに興味深い。