あらすじ
【注意】この本には、「信じたくない」真実が含まれています。東京大学大学院出身の著者が放つ、私たちの身近に蔓延る「汚染された科学」に迫るサイエンス・サスペンス! あなたは真実を知る覚悟はありますか?
「ニセ科学」――それは、根拠のないでたらめな科学用語をちりばめた、科学を装う「まがいもの」。大学院生の圭は、新進気鋭の生物学者・宇賀神と共に、ニセ科学批判の急先鋒である蓮見教授の元を訪ねる。そこで告げられたのは、宇賀神のライバルであり、想い人でもあった女性研究者の美冬に関する信じ難い事実だった。神秘の深海パワーで飲むだけでがんが治る、「万能深海酵母群」。「VEDY」と名付けられたニセ科学商品の開発に手を貸し、行方をくらませたのだ。
ニセ科学を扱うことは、研究者にとって「死」に等しい。なぜ彼女は悪魔の研究に手を染めたのか? 圭は宇賀神に命じられ、美冬の消息を追うが……。 すべての真相が明らかになったとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける――。
新田次郎文学賞受賞作『月まで三キロ』の著者が放つ、われわれの身近に蔓延する「汚染された科学」に迫るサイエンス・サスペンスミステリー。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「ニセ科学への道は善意で舗装されている」と言われているように、最初は悪意のある人がつくったものでも、それを善と信じる人々が熱狂して広めてしまう。
善意や正義を盾にして人を攻撃する人も、この理論によるもの。
Posted by ブクログ
なんやいうたら血液型で話題振ってくるヤツが嫌い、朝から星占いやってる民放テレビが嫌い、黄色い財布もってるヤツなんか敬遠する。でも乳歯が抜けたら「ネズミの歯になぁれ」と放り投げるし、流れ星見たら「金くれ金くれ金くれ」と唱えるし、トイレとか耳の裏とか綺麗にしてたら人生エエことが起こりそうな気がする…。
エセ科学で年寄りや無学なヤツ相手に暴利むさぼる連中の考え方はキラいやけど、かといって科学的論理的じゃないからと冷たく切って捨てる言動のヤツとも仲良くしたくない(スポック氏を除く)
そういう矛盾した一面を持っている人々は、この本を読んで楽しめると思う。ただ主人公格の登場人物があまり魅力的じゃないねんなぁ、科学知性の塊的キャラのはずが宇賀神は賢そうに見えないし、町村に至ってはワトソン役とコメディリリーフ役を必死でこなしている姿が、しんどどそうなだけで「それやったらコンビニでバイトした方がラクやで」って言いたくなる。
タイトルにも無理感があるし、全体的にアラっぽい。今の伊代原さんなら、もう少しなんとかするんだろうけども、まだ成長途上って感じの作品。
思い返せば、ニセ科学を疑うような言葉がちらほら見られる昨今。それに入り込む前に一度立ち止まって、自分なりに納得してから始めよう…と思わせてもらった小説。
安易に信じるのは、今日のラッキーカラーやラッキーアイテムくらいにしておこう。
Posted by ブクログ
こちらも面白くて、帰省中に一気読みした。科学とニセ科学の描き方がこれ以上なく上手に描かれていてプロットも良かった。ただ、宇賀神のスタンスと町村の日和見の酷さは、小説の面白さを減じていて勿体ない。
Posted by ブクログ
科学はこの世のすべての人間に等しく同じものを見せる、と言う宇賀神。
どれだけ教育を受けようとも、
ほとんどの人間は、自分の見たいものしか見ず、
信じたいことしか信じないだろう。
そうでもしなければ、この世はあまりに生きづらい、という圭。
ある意味、ニセ科学、擬似科学というものは、
人間の宿命が生み出すものなのかもしれない。
宇賀神と圭のコンビ、続編が読みたいです。
Posted by ブクログ
擬似科学に手を染め失踪した桜井美冬を追う宇賀神准教授と圭…明らかになる真相…詐欺まがいの擬似科学を売り物にするVEDY研究所の鍵山と宇賀神准教授の論争が良かったです。夢と詐欺の境界はどこなのか考えさせられました。
Posted by ブクログ
ニセ科学と呼ばれるものは世の中に溢れているし、自分が信じているものもあるだろう。科学的根拠に基づいたものをと思っても、結局は自分が信じたいものを信じている。
被災者の一縷の望みをも食い物にするような手法は許せないが、人は昔から非科学的なものに拠り所を求めてきた。
「科学は人のよりどころはならない、科学は人を幸せにするための営みではないのだから。ただ、科学はこの世のすべての人間に等しく同じものを見せる」
科学者であっても、真摯に真実と向き合うのは難しいかもしれない。感情や解釈が介在して、導き出される結論にも色が付く。ではどのように向き合えばいいのだろう。一般の人々にしたら情報を選別するだけで一苦労だ。
Posted by ブクログ
ニセ科学に対する、静かな怒りを感じさせる。もちろん、大上段に振りかぶって、正義の怒りをたぎらせたところで、共感は得られないし、そもそも間違っているという、冷静な認識もあるようだ。だからこそ正義の味方どころか、善人とさえ言えない科学者が探偵役なんだろう。とは言え、探偵役はクソ野郎すぎるが。
Posted by ブクログ
コンタミが物語の核と思い込んでいたが、そういう意味付けのタイトルではなかった。疑似科学批判批判派なる集団も存在することなど、普段意識しないトピックに自分はどちら寄りなのか考えながら読んだ。大筋のストーリーがコンパクトだったので、もう少し起伏に富んだ展開でも良かったように思う。各章の冒頭に挟まれる手記を書いた人物はもちろん、そんな優しい結論に落ち着くのかとまるで予想外だった。苦手と敬遠してきた科学の世界に、どんどん興味が湧いてきている。
Posted by ブクログ
博士号を取ることも、論文が学術誌(サイト)に掲載されることも、学会で発表することも、その気になればどうにでもなるってことがよくわかる。コロナ禍で散々目にしましたが、素人がその信頼性を判断するのは難しいのでそれっぽい事触れを鵜呑みにしちゃダメですね。
Posted by ブクログ
タイトルを見て、あーあれね、とピンと来る人は生命科学に知見のある方でしょう。
実験の話ではなく、世の中に蔓延る”疑似科学”のメタファーとして使っているようです。
ミステリータッチの謎解きといえば謎解き風で、主人公の二人のうち大学院生と准教授もキャラが立っているし、准教授の心のライバルであり、憧れ・理想の女性であるヒロインも、設定や背景が深堀されており、生命科学系の研究に関係している方でも充分リアリティを感じるのではないでしょうか。
疑似科学やウソ・デマにたいして科学者サイドが目くじら立てても、手を変え品を変え、世間に絶えず湧き出てくる理由が人の不安や善意につけこんで商売する輩がいるのと、それを信じたいという感情を持つ人がいるから、というのは本当にそう思います。まあ、個人的にはマスコミも悪いと思うが、マスコミの科学リテラシーの低さもそうだし、世間も分かりやすく単純さなものを特に好む性質があるかもしれません。
科学は100%や0%を言い切ることはしないため、ズバリ言わないところに歯がゆさを感じて、結果騙されていることを知らない、逆に信じていることにケチをつけられて怒る人も多いのでしょう。主人公の大学院生に合コンで仲良くなった女子大生が言っていた台詞「あたしは楽しいかどうかが大事なの!せっかく人が楽しんでいるのに、疑似科学だのインチキだの、と言われるのは、気分が悪いの。(中略)好きでやっていることだから、もしそれに意味なんかなかったとして、誰かのせいにしないんだから」が、”私は理系じゃないから”という人の気持ちがよく表れていると思いました。
本書では、個人だけではなく、怪しいVEDYと名付けられた深海酵母を川に投げ込んで水質を浄化する、という運動がむしろ環境破壊を促進しているというネタもあり、実害が出てしまうケースは個人の問題で収まらないだけでなく、人の善意に付け込んで公共の被害を出すという、すぐには解決できないであろう話もあり考えさせられました。
が、上記のVEDY関係の会社が制裁されることもなく、挿話的に挟み込まれた、主人公のラボに所属している4年生の女子学生が、なんどもコンタミ事件を起こして、ラボ中のシャーレをダメにしてしまうというネタも、准教授の雑用係である大学院生の主人公がなさけなく原状復帰して終わるだけで、解決することもなく、なんか伏線が回収しきれずに終わってしまった、というのが読直後の感想でした。
その他、主人公のラボにテレビ取材が来て、学生さんが「終電や徹夜は当たり前です」みたいなセリフも、”ブラック・ラボ”的だしどうなんだと。実際あるのかもしれないど、企業のラボでは残業規制が厳しく許されませんよ、本当に、と突っ込みたくなるところも、ままあり★は3つか3.5くらいかな。