伊与原新のレビュー一覧
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まだ自分は社会に出てすらいないので登場人物達の悩みに共感することはできなかったが、なんとなく想像はできる。きっとここまで続けてきた仕事に疑問を持ち始める段階というのがあるのだろう。45歳は人生の分岐点の一つなのかもしれないと思った。天文台ははじめはみんな同情から始まったもの。しかし、作業をするにつれて高校の時に感じていた必死さのようなものに気づき自分のために天文台を作るようになった。それによって抱えている悩みが解決するわけではないが、前に進むことはできているのではないかと思った。読後感がとても良くて、心が温まるような感じがした。45歳になったらまた読みたいなと思った。
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オーディブルで聴きました。岩手の人は皆、宮沢賢治のことを宮沢賢治先生と呼ぶのだろうか。そしてどれくらいの人が彼の作品をどれくらい読んでいるのか調査してほしい。他の県に比べてやたらと多そう。
「銀河鉄道の父」を読んでいたので、賢治先生をまるで聖人のように話す高校生に、あなたたち、賢治先生がどれだけしょうもない面を持っていたか(ほぼしょうもない面だらけ)知っていますか?と聞きたい。知ってます、その上で、いや、それだから先生が好きなのです、という人もたくさんいそう。
それはそれとして、このお話は、青春謳歌小説ど真ん中過ぎて、ちょっと引いてしまった。皆、それぞれに夢中になれるものを持っていて、いい -
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「月まで三キロ」「八月の銀の雪」、そして著者の名を広く知らしめた「宙わたる教室」。
伊与原新さんの直木賞受賞後第一作は、実在の科学者を描くという、伝記とフィクションを融合させた著者らしい作品です。
今年のノーベル生理学・医学賞を受賞された坂口志文氏。その妻である教子氏もまた研究者であり、今回の受賞研究も二人三脚で成し遂げられたと会見で語られていました。未だ女性研究者の立ち位置が厳しい現状に残念な思いを抱いていた私にとって、この作品は一筋の光のように感じられました。
猿橋勝子という女性科学者が、被爆国である日本人の立場から、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定に -
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6冊目の伊与原新さん。
戦前、女性が理系の教育を受ける機会に恵まれない時代に科学の道を志した猿橋勝子さん。私は存じ上げなかったのですが、実在の人物である猿橋さんの生涯を描いたフィクションです。
猿橋さんは戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、後年、核実験の抑止に影響を与える研究成果をあげたそうです。
この水爆実験で「死の灰」を浴びた漁船「第五福竜丸」って、現在東京夢の島に保存展示されているんですよね。実は私の亡くなった伯父が、この船の保存運動に関わっていたので、展示館がオープンした時(調べたら1976年でした!)と、数年前にも娘たちに平和につ -
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なんかバタバタしていて一冊読み終えるのにえらく時間が掛かってしまった。
宮沢賢治が教鞭をとった学校を思わす花巻農芸高校に通う2年生の壮多と幼馴染の同級生・七夏。ある日、東京から転校生の深澤がやってきたことで、これまでの日常が変わりだす。
以前から七夏のことを知っているような深澤、急に学校に来なくなった七夏、心配する壮多に不自然な対応をする七夏の母、話の途中から挟まれだした謎の日記、そうした曰くありげな展開に、壮多も深澤も参加することになった地学部の活動が絡まる。
ミステリーっぽい話に賢治ゆかりの地を巡る旅とは面白そうな題材だったが、私には少し消化不良。
ここに挙げられた「イーハトーブ」や「 -
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ネタバレテンポよく読み進めていける軽快な小説で、自然科学系の蘊蓄も読めて面白いと思う。ただ、環の設定があまりしっくり来ず、エリート正規研究員というよりはバイトにしか見えない描き方だったり、箕作の描き方がファンタジー的で、あまり感情移入ができない。
推理小説としても、「謎」の手がかりがあまり事前には描かれておらず、「精巧に組み立てられたパズルや手がかりを論理的に解きほぐして納得!」というものではなく、「描かれていなかった背景が謎解きの時に明らかになってくる」というものなので、推理小説としての謎解きの楽しさや爽快感はあまり得られない。なので楽しく軽快に読めるのは確かなのだが、あともう一歩という感じになって