大崎梢のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面倒なミステリ、本格と呼ばれるような込み入ったトリックが好きなら、この本に収められている5つの短編のテーマはそう難しいものではない。それよりも後になって思い当たったり、事件の解決後に隠されていた真実が胸を打つものだったりする。女性らしい文章が優しく気持良かった
沙羅の実
今ではサラといっても沙羅双樹と間違える人がないくらい知られるようになった。夏椿というれっきとした名前があっても、なぜかサラと言う音の響きが白い花に似合って、殆どの人がサラの木、サラの花と呼ぶ。
その実にまつわる話。
不動産の営業マンが話を詰めにきた。もう既に気心も知れて親しくなっていたところに、父親が帰ってきた。雑談中に、父親が昔勤めた学校に彼が居たことに気がつく、父親は担任ではなかったがその時起きた事件を思い出す。
そして父親は彼を散歩に誘い、心にわだかまっていた話をする。その事件に関係した彼は、今まで大きな心の荷を背負ってきたのではないか、と父は話す。そしてストラップの先についていた、荷物の塊のような椿の実を預かる。
父が気づく切っ掛けになった真実は、椿の実とともに彼の手を離れた。
誰も気づかないかも知れない隠れたある奇遇とともに。
君の歌
卒業式が済んだ後、余り親しくなかった同じクラスの高崎から声がかかった。彼は駅までの道々、昔の思い出話を始める。それは今のモテ男からは思いも寄らない打ち開け話だった。なかなかいい結末。
雪の糸
スマックのカウンターを挟んで、別れるという得意客の二人の話を聞いているパートの女性、その話の中に紛れ込んだ桜と、降っていた花びらのような雪のはなし。そこから、ある事件の陰が見えてくる。美しい背景に溶け込んだ一人の男の姿が、ほっとした結末に描かれている。
おとなりの
ひらがなの題名のようにほのぼのとした話。
同じ分譲地内で殺人事件が起こった、泥棒の居直り殺人だったが、運よく通りかかった老人の証言で犯人が捕まった。
だがその時刻に息子が通りかかって、警察の尋問を受けた。だがお隣の奥さんが、息子のアリバイを証言してくれて疑いが晴れた。
風で学校を休んでいた息子がなぜ事件のあった時刻にその家の側の坂道を降りてきたのか。となりの引きこもりがちの奥さんはその時間にたまたま息子を見かけたのか。父親は何か釈然としない気分でいた。
目撃者の老人は、同じ時刻によたよたと同じコースを歩くのが日課だったが、思いがけない特技を持っていた。となりの奥さんは、専業主婦希望で家事に優れ、引っ越してきて言葉を交わすようになった母親がその社交ぶりで自治会に連れ出し、何くれとない細やかな付き合いをしていた。彼女の話は実に信憑性の高いもので、息子に聞いてみると、事件の時間に外に出た深いわけがあった。
転お隣は今転勤で空き家になっているが、近々帰ってくるという。
近隣の付き合い方なども含めていい話だった。
野バラの庭へ
鎌倉の別荘に住む老婦人から自分史のようなものを書いて欲しいと依頼が来た。
イベント企画会社の社員が担当になって話を聞きに行く。
旧市街の高級別荘地帯で、少し奥まったところの広い土地に、緑に囲まれた家があった。
話を聞きに行くうちに、昔、兄の許婚がガーデンパーティーの準備が出来ていた時、二階の部屋から消えてしまった、そのほ行方が知れていない、そのいきさつがいまだに謎とされている。
だが最近解ったところがあってそれも書いてほしいという。
老婦人がこどものころ、二階から手を振っていた直後、どうして消えてしまったのか。家中を探しても痕跡がなく、庭師が男と出て行くのを見たと言うが、その後の消息も知れなかった。
作者が一番力を入れて書いたようで、インタビューに通う女性記者とともに、結末が気にかかる。
鎌倉の由緒ある別荘といい、建物の構造といい、少女マンガのようなところが少し物足りない、ストーリーもありきたりで、残念な気がした。
「沙羅の実」にまつわる話も新味はないが、よく読まないと最後の種明かしが解りづらい。そこが面白い。
「おとなり」も面白かった。 -
Posted by ブクログ
大手出版社に入社した二年目の女の子が、
けっこうえげつない記事で知られる
「週刊誌部門」に配属された....というお話。
初年度にいたフリーペーパーとは全く環境が違い、
刑事ばりの張り込みやら突撃インタビューやら、
心と体がすり減る毎日に放り込まれる。
ジェットコースターのような日々に揉まれつつ、
悩み、考え、成長していく主人公。
「興味本位で人のプライバシーにずけずけ立ち入り、
隠しておきたいものを白日の下にさらして
恥ずかしいと思わんのか」みたいな罵倒も受け、
そもそもの「雑誌の存在意義」みたいなことから
悩む主人公。
それでも、この場所で、自分でできることを模索し、
悩みながらも少しずつ前に進んでいく内に、
周りの信頼も徐々に得ていく様が見て取れる。
最後の「大ネタ」の展開が、ややバタバタしてるか。
後半急に「ページ数が足りなくなった」印象(^ ^;
あと、主人公を取り巻く会社の同僚や先輩が、
みな「いい人過ぎ」な印象(^ ^;
そこちょっとリアリティなさ過ぎな(^ ^;
現実はもっとドロドロしてるはず...(^ ^;
その辺が惜しくて☆一個マイナス(^ ^; -
Posted by ブクログ
ネタバレ*村山由佳、坂井希久子、千早茜、大崎梢、額賀澪、阿川佐和子、嶋津輝、森絵都―当代きっての人気女性作家8人が「女ともだち」をテーマに豪華競作!「彼女」は敵か味方か…微妙であやうい女性同士の関係を、小説の名手たちが描きだす逸品ぞろいの短編小説集。コワくてせつなくて愛しい物語の世界をぜひご堪能ください*
前半は女同士の執着や束縛が続くありがちな展開でしたが、後半は力量のある作家さんの本領発揮で、一味違う物語を堪能しました。
特に気に入ったのは、森絵都さんの「獣の夜」。最初はハラハラしたものの、パプリカで大笑い出来る、いつでもあの頃に戻っていける、これこそが女の友情の真骨頂ですね。でも、これはひと歳取らないとわからないかも。型に嵌らず反旗を翻す二人がカッコよくて、痛快な物語。