若竹七海のレビュー一覧
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ネタバレ職を転々とする中で何故か事件を引き寄せる葉村晶と、娘の自転車が主な移動手段という一見ほがらかな風体の中に鋭さを隠し持つ小林警部補の連作短編集。
『ぼくのミステリな日常』を読んで宮部みゆき氏に似てるかなと思ったけれど、続けて読むとやはり違うかなという印象。
でも、くせのない真っ直ぐな文体は読み易くて、読むのが遅い自分でもさくさく読める。
序盤はそれぞれ独立した主人公達の物語だが、最終章で待ってましたとばかりに交錯する。
なんと言っても葉村パートが面白過ぎる。
20年以上前の作品にして、女性主人公で面の皮が厚過ぎる言動、怪しい状況・ありきたりの展開に対する冷めた皮肉交じりの一刀両断っぷり。
それでいて姉達との歪んだ確執を抱え込んでいたり、ふとした瞬間に見せる繊細さのギャップ。
事件の究明やフーダニット、ホワイダニットもさることながら、やはりこの人物の生き様を読むのが楽しい。
正直、小林パートなんて、なんかぼんやりしていて要らないんじゃあとも思ったけれど、最終的には緩急という意味でも、最後のまとめという意味でもあるべくしてあるものなのかなとも思った。
続編もこの2人で展開していくのだろうか。 -
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海辺の街にある〈ヴィラ・葉埼マグノリア〉という、全部で十軒からなる建売住宅の空き家になった三号棟で、死体が発見される。
外からは鍵がかかっていて、被害者の顔は完全につぶされていた。
登場人物がやたらに多くて、どの人物も個性が強く、みんながそれぞれの秘密を抱えていて裏がありそうで、誰もが犯人のように思えてくる。
ヴィラの住人に加えて、警部補と巡査部長の名コンビの掛け合いと、粘り強い聞き込み捜査も面白く見事なものだった。
そして、死体の身元もわからないまま、第二の殺人が起きて…。
ユーモアたっぷりのミステリーで、怖がりの私でも楽しく読むことができました。
見事な推理、住人たちの生活も落ち着いて何とかスッキリ片付いたと思っていたら、結末が二転三転としていって、まるで洒落た映画を観ていたような気分です。
葉埼シリーズ、他の作品も読んでみたいです。 -
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ネタバレ葉村晶シリーズの長編。
探偵の仕事として高齢女性を尾行していた晶は、ターゲットのトラブル現場に遭遇して怪我を負ってしまう。
それがきっかけで、青沼家と近づき、なぜか青沼のアパートに暮らすことになる。
青沼ヒロトから「自分が交通事故にあったとき、父となぜあの場所にいたのか調べてほしい」と頼まれる。また、事故死したヒロトの父の遺品整理も頼まれる。
遺品整理を翌日に控えた日の夜、アパートは火事により全焼、晶は助かるが、火元になった部屋にいたヒロトは死んでしまう・・・。
壮絶すぎませんか?!
ヒロトとの生前の約束を果たそうとする晶に、様々な人間が関わってきて、次々と問題がおき、事件はふくれあがっていく。
晶は、ヒロトが頼んだことの結論にたどり着くことができたけど、もしヒロトが死んでおらず、真実を知ったら、ヒロトは生きながら苦しんだことだろう。
タイトル「錆びた滑車」とは、星の王子さまの一節から。
すべての星が錆びた滑車のついた井戸になり、飲み水をそそいでくれる・・・。
ラストで晶も、空の星を見上げる。
冬の冷たい風に吹かれても、ミツエとヒロトを失ったことに対する、悲しみと悔しさの涙を乾かすことはできない。
星が晶に注いだ「飲み水」は、夢のような時間の回想から現実に引き戻されたことによる涙だったのか…。
葉村晶シリーズは、ちょこちょこ星の王子さまモチーフが出てくる。今作では、「狐とバオバブ」という料理店。ミツエの遺体を見た晶が、体は抜け殻と思ったこと・・・。
事件のすべてが解決した後、晶は、ヒロトとミツエと過ごした数日間のことを、「魔法のような時間」、「時として人生に訪れる素晴らしい時間」と振り返る。
これはまさに「大切なものは目に見えない」という、星の王子さまの格言に繋がる気がした。
晶ってすごく優しいし、だからこそ、事件の幕引きでは晶がかわいそうに思った。
今作のラストでは、晶が暮らしていたシェアハウス「スタインベック荘」からも退去し、心を寄せた青沼家は死に、一緒に過ごした場所もなくなった。
晶の孤独が、私の心にも染みた。 -
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東京郊外のだいぶ外れに位置する辛夷ヶ丘(こぶしがおか)。高度経済成長期には栄えたであろうこの街も、住民の高齢化によって嘗ての活気は失われた。そんなのどかな地域だから凶悪事件など起こるはずもなく警察は隙…かと思えばそうでもなく、生活安全課の捜査員、身長178cmの大女、砂井三琴は大忙し!
窃盗、放火、強盗、詐欺…事件は一件落着に終わるものの事件の陰で事件にならない犯罪がくすぶっている。
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若竹さんの真髄コージーミステリーにかなりダークな皮肉を込めて、それでいてドライな作品群。ぼんやり読んでるだけだと裏側の事件を思わず見落としてしまう。一話読み終わってから少しでも違和感が感じられたら、もう一度サッと読んでみてください。あああ、そういう事か!と、納得できます。
しかし、こんなにも犯罪者が沢山いる街が実際にあったら…絶対に住みたくない!でも、ないとも言い切れない…(笑) -
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ネタバレ今までの葉村晶シリーズは短編をいくつか詰め込んでいて、その中の1タイトルを本のタイトルとして持ってきてる感じ。
悪いうさぎはなんと、短編をいくつかではなく、葉村晶シリーズでは初の長編。1冊が1物語になっている。
父親が居なくなった娘を葉村晶に依頼して探し出すという内容だが、それ以外にも色んな事件が起き、それが最終的に繋がり解決していくのが面白いしすごい。
この話は関係ないだろう。と思っていた脇役の話も最終的にはメインの事件に関わることもある。(関わらないことも逆にある)
事件の真相も、えーーーーー!!!!となる展開。これは短編・長編関わらず読めない展開。長編だと辻褄が合わなくなるかと思いきや、詳細を書いた上で綺麗に伏線回収かつ面白い展開で終わらせるから本当にすごい。
また読みたいな。 -
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猫島に行きたいっっ!!!!
事件はさておいて、私は本書を読んでいるあいだ、猫島での暮らしについての妄想が止まらなかった。
人間より、猫の数が多いという猫島。
それぞれ何だか凝っていたり、そうでなかったりする名前がつけられている、種々とりどりな猫たち(島の猫なので飼い主は島の人たち)。
現実にも、例えば江ノ島には島猫がいたりするけれど(そしてたぶん猫島のモデルは江ノ島っぽいのだけれど)もっと暮らしやすそうなイメージが、猫島にはある。
絶海の孤島ではないけれど、まあ半島ではなくきっちりと(?)島であるこの猫島で、「騒動」は起こる……。
前置きもとい妄想が長くなってしまったけれど、葉先シリーズの第4弾である。
新しいキャラクターとして、島の人々以外では二村喜美子警部補や七瀬くんという派出所の巡査、そしてマスコット猫のDCなどが加わり、相変わらずの駒持警部とともににぎやかだ。
コージーミステリなので、トリックどーん!とかではないけれど、リアリティもありファンタジーもある、解説の柴田よしきさんが言う通り、「心休まるミステリ」だった。猫もいるし。
折しも初夏で、俄然海に行きたいな。 -
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〈葉崎市シリーズ〉第2弾。
第1弾である『ヴィラ・マグノリアの殺人』に出てくる〈鬼頭堂〉ではなく、〈アゼリア〉という古本屋をとりまく事件と、ロマンスと、お家騒動の話。
『ヴィラ・マグノリア』でも少し名前だけ登場した、葉崎の名士「前田家」の家系と資産にまつわる殺人。
外から来た、相澤真琴という不運が重なりすぎて葉崎にリフレッシュしに来た女性が、いざ海に向かって叫ぶと波間から男の死体が……。
という、真琴には悪いが少しコミカルな描写から物語ははじまる。
しかし、そこからは「前田家」の資産をめぐる骨肉の争い、さまざまな謀りや疑惑が噴出し、そのうち死体も増え、ますます複雑な事件となってくる。
私が今回一番好きだったキャラクターは、アゼリア店主の前田紅子だった。矍鑠とした威勢のいいおばあさんで、ロマンス小説をこよなく愛し、自分の店をロマンス小説専門店にしたほどだ。前田家の名前のついた、生年育英基金も立ち上げている、面倒見のよいひとなのである。
作品の序盤から好きだったけど、最後まで読んでもやっぱり好き。「とあること」(核心にふれるので詳細は省く)を思うと、とても切ない。
今回読んで分かったんだけど、固定で出てくる登場人物は駒持警部補だけなのね。ちらっと名前だけ登場とかはあったけど。知ってる名前が出てくると「おっ」って嬉しくなりますよね(笑)。 -
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若竹七海〈葉先市シリーズ〉第一作。
今までコージーミステリというものはあまり意識して読んでこなかったけれど、イメージにあった「お茶とお菓子を食べながら謎解き談義」というものとは全然違っていて(どこでそんなイメージを得たのかは定かではないが)殺人は起こるしけっこうドロドロとした人間関係の中で事件は進むしで、とても面白かった。
因みに、コージーミステリの特徴(wikiからの引用)。
“特徴としては
探偵役が警察官、私立探偵などの職業的捜査官ではなく素人であること
容疑者が極めて狭い範囲のコミュニティに属している
暴力表現を極力排除していること
などがあげられる。”
とのことである。なるほどね。
文体というかお話としては、同じ若竹七海の大人気シリーズ〈葉村晶〉よりもコミカルな表現が多く、登場人物は多いもののキャラが立っていて覚えやすく、読みやすい。
詳しくは書かないけれど葉村シリーズ読者にも嬉しい部分があって、サービス満点、という感じ。
シリーズ読み進めようと思います。 -
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やっちまった。ただ今、5月5日の午後12時。
〆切は明日朝1番なのに「未だ大丈夫」と思いながら、祝日の今日1日は、「つい」これを読み始めて一気読みしてしまった‥‥。どうすんだオレ。とりあえず、感想は置いてといて、徹夜覚悟で書き始めよう‥‥。
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12時間後。
もはや、葉崎市の海岸に打ちあげられた溺死体、或いはアゼリア古書店で発見された撲殺死体の気分です。死んでしまえ!私。先月の教訓はどうなったんだ!いや、すみません。後もう少し‥‥。
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20時間後。
いやあ、すみません。とりあえず終わりました。いや、終わらせましたとも!ところで本書の感想ですが、感想といってもサスペンスですからね、ネタは話せません。ともかく、ダメだダメだと思いながら、最後まで読ませるチカラは身ももって証明しました!だって、終わりに近づくほど面白くなるんだから仕方ない。しかも、ダブルどんでん返し。
葉崎シリーズ第2段。若竹七海を年に10冊は読もう計画継続中(昨年は未遂、今年も怪しい)。今回は前書でヴィラ・マグノリアの土地を所有していた前田一族をめぐるアレコレの作品でした(←何ことやらサッパリわからん)。クスリとはするコージーミステリだけど、若竹七海だから人の持つ「毒」も仕込まれています。
※話とは関係ないけど、巻末に古書店アゼリアの店主・前田紅子による「ロマンス小説注釈」がある。葉村晶シリーズで、古本屋店主・富山泰之のミステリ注釈が巻末にあるのと同じ体裁、ていうか、こちらが最初か。
※経緯は言えないけど、死体を発見した女・相澤真琴が棺に潜り込む場面がある。
「病院から死体を盗む映画、あったよね」
「滝田洋二郎監督、高木巧脚本のピンク映画。あれ、俺マジ好きだな」
というセリフが気になって、調べたら「タイム・アバンチュール絶頂5秒前(1986)」(田中こずえ、杉田かおり、若葉忍出演)が検索でヒットしたのだけど、肝心の病院云々の関係が一切わからない。同年2人は内田裕也も仲間に入れて「コミック雑誌なんかいらない!(1986)」という名作もモノにしている。とすると、このピンク映画、傑作か?