若竹七海のレビュー一覧
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長野県警から、上野の警視庁捜査共助課へ出向中の御子柴将(みこしば すすむ)くん推定30代前半。
共助課というのは、他県と東京がらみの事件(意外に多い)の捜査がうまくいくよう、お国から遣わされた橋渡し役、時代小説好きの同僚は「江戸お留守居役」と言うが、全くその通りだ。
接待と贈答用菓子の使いどころが上手くないと務まらない。
…というか、ちゃんとした警察ものミステリなんですが、恐るべき甘党の捜査一課主任の玉森や、長野県警にいる、御子柴の元相棒であり上司であった小林警部補など、個性的キャラとの絡みが実にコミカル。
でも、御子柴くんの立場を考えるとちょっと同情、そして、おいしそうな銘菓の類が出てくるた -
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長野、東京、さらに他の地方都市で発生した事件が複雑に絡んで、
最後には…。警視庁捜査共助課から長野に戻った御子柴くん、
でも、根っこは相変わらず刑事です。
犯人が名乗り出たり、あるいは犯人を突き止めたりで、
刑事として「持って」いそうなのに、ツイていないように見えるのは、女探偵、葉山シリーズと同じ匂いがする。
これでもか、これでもかと不幸や災難が連鎖し、
悪態をつきながら(これは葉山の場合。御子柴くんは
つきません)事件の渦中に飛び込んでいく。
えらい、えらいと肩を叩きたくなる。
長野県警から警視庁の捜査共助課に出向し、
がんばっている御子柴くんシリーズの第二弾。
年末の仕事納 -
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元警官の大道寺圭は、退職後に犯罪者のまぬけなエピソードをつづった本「死んでも治らない」を発表した。
ところが、それがきっかけでまぬけな犯罪者たちにつきまとわれることになり・・・。
現在作家の大道寺圭の活躍を描いた5つの独立した短編の間に、彼が刑事として最後に関わった事件の記録が差しはさまれ、2つのパートが交互に綴られていくという構成になっています。
ラストまで読むとこの2つのパートが密接なつながりを持つことが明らかになり、施された趣向にハッとさせられます。
軽いコミカルなタッチや三枚目で憎めない大道寺のキャラのおかげでのんきな気持ちで読み進めていくと、人間の底知れぬ「悪」との遭遇にギョッと -
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御子柴くんと竹花刑事、わずかに甘味を添えた短編集。全体的にまるで美味しいコーヒーのような深い味わい。凝縮されているせいか展開が早く、一気読みおすすめ。あっちの話がこっちにつながったり、ところどころにあるユーモアあり、うまく描いてるけれど、葉村シリーズの方が好きかな。御子柴くんとかキャラがどうも薄い感じ。あとは、パン好きな私としては、上田のルヴァン! パンは間違いなく美味しいが、杏子ジャムとクリームチーズでこの世で一番うまいと思うとのことで、今度行った時にトライだ。相性がいいのは間違いないでしょうが。そんなことでもちろん楽しめた一冊でした。
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久しぶりの再読。
『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役。小林警部補と組んでいた時とは違い、警視庁と長野県警とを繋ぐ政治的な役割を担わされていて、そのためにあちこちからスイーツを手配させられて、本来の捜査以外のお仕事に振り回されている。
それでも毎回登場するスイーツは美味しそう。
最終的には元上司の小林警部補が探偵役となって御子柴君に真相を指南。小林警部補らしく謙虚にさりげなくではあるけれど、それで真相が明かされるのだからやっぱり小林警部補って名探偵。
元々は小林警部補を主役をする作品を依頼されたそうだが、若い御子柴くんを主役にしてくれたおかげで彼のキャラクターも明らかになったし、これはこれ -
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ネタバレ『御子柴くんと遠距離バディ』の前作に当たる、シリーズ第1作である。第2作を先に読んだために、インパクトはやや弱いかもしれない。しかし、彼はやっぱり葉村晶と同じく、トラブルを吸い寄せ、頼まれると断れないのであった。
東京出身にして、長野県警に入ったが、警視庁に出向中の御子柴くん。「甘味と捜査」だけに、全5編のタイトルに甘味が入っているが、事件そのものにはあまり関係ない。しかも、御子柴くん自身はほとんど味わえないという…。
「哀愁のくるみ餅事件」。上田市で見つかった盗難車から発見された、死体の素性とは。支障がない程度に書くと、家族って難しいねえ。血が繋がっているからこそ、難しい。正直、気 -
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ネタバレ短編集。あとがきによれば、「暗い越流」が日本推理作家協会賞を獲ったのをきかっけに単行本になったらしいい。
以下あらすじ
「蠅男」…女探偵葉村晶シリーズ。人里離れた別荘。もとは霊能者が建てた。屋敷に来た人が、気分が悪くなったり、頭痛がしたりするらしい。
「暗い越流」…死刑判決になった男に宛てられたファンレター。差出人は、男の実家の隣に住んでいた女子高生だった。しかも、彼女は5年前から失踪しているという。一見、葉村晶タイプの雑誌リサーチャーが、弁護士と組んで事件を調べているのかと思った、最後の2ページでびっくりして、前の部分を読み返してしまった。
「幸せの家」
「狂酔」…教会の地下にシスターたちを -
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再読。
まずタイトルが良い。チャンドラー作品に出てくる有名な言葉『警官にさよならを言う方法はまだみつかっていない』から来ているのだが、『さよならの方法』でも『さよならの手法』でもなく『さよならの手口』としたところに葉村晶シリーズらしさを感じる。
親が子に、子が親に、夫が妻に、妻が夫に、友達が友達に、過去の傷に…様々な『さよならの手口』が出てくるが、いずれも最悪な形で晶に突き付けてくる。
女性でありながらこれほど痛め付けられ傷を負うという設定の探偵も珍しいが、彼女はそこを諦めつつも受け入れ探偵としてやり遂げていく。
だが結末はあまりにもハード。晶自身が振り返るように、彼女は誠実に働いたが、何 -
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最初と最後の作品が、葉村晶のもの。
中の三編はノンシリーズだけど、この並びがまた一つのトリックになっている。
葉村晶のシリーズは全て、家族のあり方が事件のベースにあるのだが、この短編集もまたそうなっている。
だから読後苦い物が残されてしまうのはしょうがないが、なぜか葉村晶が事件に巻き込まれると「しょうがないなあ」と苦笑い程度には薄まったりするのは、短編だからなのかもしれない。
何しろ「悪いうさぎ」の読後感ったら、苦いなんてものじゃなかったから。
親が子どもを支配する連鎖が何とも重苦しくて見苦しい表題作。
読んでいて一番つらかった。
幸せになっていいはずの未来を断ち切られても、子どもは文句を