【感想・ネタバレ】御子柴くんと遠距離バディのレビュー

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ネタバレ

御子柴刑事の第二弾。

なぜこんなに御子柴刑事に、そのバディの竹花刑事に、
感情移入してしまうんだろう。
著者の腕、と言ってしまえばそれまでだが、

御子柴刑事の場合、長野県警から出向して三年近く、
誰だかわからない上司からの無茶ぶりも
だいぶ流せるようになってきた、と思ったら、
年末の捜査に駆り出され、あげくの果てに刺されてしまったからか。

竹花刑事の場合、御子柴刑事が長野に戻されたあと、
刑事としても連絡係としても使えない後任がきて、
振り回されたからか。

芋づる式に犯人を捕まえてしまう「御子柴くんの災難」とか、
女装した御子柴刑事と竹花刑事が東京ですれちがった「火の国から来た男」とか、
とにかく面白かった。
突然「葉村晶」の名前が出てきたりしたし。
ちなみに府中の伊勢丹はすでにない。

感情移入してしまうのは、二人ともけなげに頑張っているからかな。
不遇の時も、前向きに、自分なりに。

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2022年06月09日

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シリーズ第二弾。軽妙でユーモラスで、ちょっとブラックなミステリ短編集。有能なのになぜか不幸な御子柴くんの活躍が楽しいです。そして各地の銘菓が登場するのもいろいろ美味しそうで、気になりました。
お気に入りは「御子柴くんの災難」。のっけからこれはあまりに酷い! 次々お手柄を上げていくのに褒めてもらえず、しかもこの扱い! 葉村晶ばりの災難には絶句するしかありませんでした。でもなぜか笑えちゃうんだよなあ……。まあ、さすがに主役だからここでは死なないだろうし(笑)。
「火の国から来た男」も面白かった。それぞれの事件が意外な点から繋がっていくのが実に見事。そして笑いの要素もありながら、ラストのぞくりとさせられる部分もまた印象的でした。

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2018年04月15日

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ネタバレ

 実は、本作はシリーズ第2作に当たるのだが、先に読んでしまった。御子柴くんとは、葉村晶シリーズに登場したキャラクターらしい。思い出せないのだが、彼は葉村晶と同じく、トラブルを吸い寄せてしまう体質なのであった。

 御子柴くんに簡単に触れておく。東京出身だが長野県警に入る。ところが、警視庁に出向になり、長野県警との捜査上の橋渡し、要するに雑用を押し付けられていた。そんな中、警視庁の竹花とは相棒として親しくしていたのだが…。

 最初の「御子柴君の災難」から、事態は急転。なぜか御子柴くんが次々と事件を解決してしまう、いかにも若竹作品っぽいドタバタ展開に苦笑していると、最後の最後に、おいおいおいおい! しかも、中途半端に終わるかっ!

 …まあとにかく、散々な目に遭った御子柴くん。その後の顛末は読んでみてください。彼の波乱万丈の警察官人生は、まだまだ続く。

 「杏の国に来た男」。地方らしいのんびりした事件(のんびりしていないが)のはずが、なぜか凶悪事件に関係し…。「火の国から来た男」。暴かれたのは、巨大な事件の構図かエリートの密やかな楽しみか。結末が何ともビターで…。

 「御子柴くんと春の訪れ」。謎の空き巣事件を追い、真相が明らかになってみると…。無事に春が訪れるだろうか。「被害者を探しに来た男」。飽くなき女の探究心と、忘れ去られていた男、ですか。人生の悲哀の対比とでも言うべきか。

 「遠距離バディ」。近年、現実にも問題になっている、ブラック飲食店。凶器があるものだったため、調べてみると、出るわ出るわ…。ここまで根深い実例があっても、驚かないこのご時世。若竹ファンとしては、最後まで苦笑いであった。

 事件が事件を呼び、連鎖反応でさらなる事件を呼ぶ。短編にこれでもかと詰め込んだ、葉村明シリーズそのものの展開。読み応えは各編とも長編級。ファンにはもちろん、若竹作品を知らない読者にもお薦めしたい。若竹七海の真骨頂だ。

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2018年01月23日

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前作から3年が過ぎた。長野県警から警視庁のパイプ役として捜査共助課に出向させられた御子柴くん。小林警部補も半年前に定年退職した事だし、いよいよ一人前になったと、私が思った途端に彼は凶刃に襲われる。著者はよっぽど主人公を痛い目に遭わせるのが好きらしい。何故彼がそんな目に遭ったのか。その伏線を張って広げて解きほぐしたのが第一話で、なおかつこの文庫本の「遠距離バディ」の始まりになる。いやあ、このさりげない犯人の悪意が若竹七海の特徴で、「でもやっぱり御子柴くんのように誠実に生きる方が、多分寝覚は良いよね」と思わせてくれる。

刑事の仕事っていうのは、仮説を立てて、足を運んで立証しようとして、それが潰れて、そこから生まれた事実からさらに仮説を立てて、更に潰れて、って言う繰り返しなんだな、ということもよくわかる。

この文庫本発刊から更に3年が経った。新しい相棒の竹花刑事とのドラマがまた刊行されてもおかしくはない。一つお願いするなら、このコロナ騒ぎで、詐欺から始まる殺人事件を一つ解決して刊行してくれないかな。

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2020年04月21日

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冒頭から大怪我ではらはらしたけどそれが原因で長野に帰った御子柴君と東京にいるままの相棒の竹花君がそれぞれの地で起きる事件を解決していく6つの短編集。無関係と思われる小さないざこざが後で全部繋がっていくので読み返し必須。あー、そうだったと何回思ったか。東京と長野で協力する機会なんて…と思っていたらまたうまく繋がるんだこれ。しかし皆、甘味好き過ぎる!見事に賄賂になっていてにやり。

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2019年03月13日

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ネタバレ

御子柴くんの続編。あとがきで作者本人も書いてたけど、御子柴くんがますますつらい目にあっててびっくり。しょっぱなから御子柴くんが死にそうな目に合ってるし、長野県警の閑職につくことになってるし。でも小林先輩がいなくても、御子柴くんだけで立派に解決できるようになってて素晴らしい。バディの竹花君もいい人だ。こういう仕事ができる人なら楽しいだろうな、と今仕事への意欲が落ちている私は思う。

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2019年01月13日

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御子柴くんが冒頭でとんでもないことになりますが、そのかいあって、長野県警に戻ります。体調や体力が復活するごとに色んな事件に出会います。
根っからの事件引き寄せ体質なんですね〜。
飄々とした話の流れがなかなか面白い。

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2018年09月21日

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ネタバレ

御子柴将(みこしばすすむ)シリーズ、第二弾。
いきなり最初の一編から、作者は御子柴くんに何をするのーーーーーー!!と悲鳴を上げたくなる。
前作では、土産物取次係のようにこき使われる御子柴くんがコミカルだったが、芸風変わったの?!という感じで始まる。

長野に戻った御子柴くんと、警視庁共助課で頑張る、竹花一樹(たけはなかずき)、それぞれの頑張りと、糸電話のような遠いつながり…いや、運命の赤い糸か。
前作では、御子柴くんの“遠距離バディ”は、先輩であり恩人でもある小林さんのような印象で、竹花君のことはそんなに印象に残っていないのだけれど。

今回、非常に複雑に絡み合った糸で事件と事件がつながり、芋づる式あり、急展開あり、転がる石のようなスピード感だ。
繋がるんだろうとは思ったけれど、そことそこでそう来るか!!という感心と面白さ。
火の国と春の訪れは、「犯人そこっ?!」という驚きが。

『御子柴くんの災難』
御用納めを待ち望む御子柴くんを次々と襲う、仕事と災難。

『杏の里に来た男』
たかがきのこ、されどきのこ。
一見、小さいと思われる事象をおろそかにしてはいけない。

『火の国から来た男』
でかくて重い熊が意外なところに出現。

『御子柴くんと春の訪れ』
タイトルから、勝手な想像をして誤解してしまいました。

『被害者を捜しにきた男』
警察医の大屋先生の「かわいそうにな」が印象的。

『遠距離バディ』
離れたところで頑張る、御子柴くんと竹花くん。
繋がっている。

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2018年08月04日

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痛快。爽快。テンポよく事件が連鎖して解決していく。遠距離バディとはよくいったもので、あちらとこちらを結んで呼応しあって、離れていても繋がって。
知ってる地域もたくさん出てきて、甘味も美味しそうで、お腹も空いてくる!

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2018年07月27日

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御子柴がひどい目にあって驚く。バディの竹花と勤務地は離れても事件がいろいろ繋がっていて、相変わらずあれよあれよといううちに関係者が増え犯罪の発覚も増え犯人も見つかる。誰が誰だかわからなくなりつつもテンポが良いので読んでいると楽しい。

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2018年07月01日

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ネタバレ

いつの間にか続編が出ていました。御子柴くん、エライ目に遭ってしまってびっくりです。ゾンビにみたいになっていたけど竹花くんとのバディがいい感じ。やっぱり仕事人間は仕事していると元気になっていくのかしら、と思ってしまいます。甘味が付き物ですが、流行の「スイーツ」ではなくて「銘菓」的なものがとても美味しそうに描かれているのが魅力的。登場人物が私には多すぎて、事件も伏線や関連性が多すぎて整理しながら読むので時間がかかりました。ラノベ風味でコミカルな合いの手も入るのに、事件はとても複雑でした。

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2018年05月30日

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長野、東京、さらに他の地方都市で発生した事件が複雑に絡んで、

最後には…。警視庁捜査共助課から長野に戻った御子柴くん、

でも、根っこは相変わらず刑事です。


犯人が名乗り出たり、あるいは犯人を突き止めたりで、
刑事として「持って」いそうなのに、ツイていないように見えるのは、女探偵、葉山シリーズと同じ匂いがする。

これでもか、これでもかと不幸や災難が連鎖し、
悪態をつきながら(これは葉山の場合。御子柴くんは
つきません)事件の渦中に飛び込んでいく。

えらい、えらいと肩を叩きたくなる。

長野県警から警視庁の捜査共助課に出向し、
がんばっている御子柴くんシリーズの第二弾。

年末の仕事納めの前に、事件のあれやこれやを押し付けられ、相棒の竹花と走り回る。

一つ片付いたと思ったらまた一つ。
なかなか、仕事をおさめられない。
貧乏くじを引くタイプっているのね。

で、最後の最後で大きな不幸に見舞われてしまう。

と、これが第一話。

一話で大きなケガを負った御子柴くんは長野に戻され、
長野県警千曲川署の地域生活安全情報センターのセンター長という役職につくことに。

都内、長野、あるいは熊本と、あちこちで発生していた事件が、御子柴は長野で、竹花が東京で動くにつれ、
徐々に繋がりが明らかになり、集束し、一挙解決となる。

数カ所で事件が発生するので、当然、登場人物も増えて、
読んでいるうちに、こいつって誰だっけ、なんて、
ときどき迷子になることもあるけど、ああ~、こうなっていたのね、と、ジグソーパズルの仕上がった感を味わえる。

竹花がメインキャラで活躍し、御子柴くんが脇役になるストーリーもあるが、決して物足りなさを感じない。

ところで、御子柴くんのバディといったら、
てっきり小林警部補のことかと楽しみにしていたら、
いつのまにか、退職していたのネ。

ちょっと、それが、残念。

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2018年05月27日

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ネタバレ

読み終わった今は、面白かったと思える。なのに読むのにものすごく時間がかかり、盛りだくさんな内容がかなり理解出来ずに何度もページを戻りつつ確認しなければならなかったのは、年をとって知的に低下しているせいなのか、異動などに伴う疲れが脳みそにも影響しているせいなのか…
それにしても、作者もあとがきに書いていましたが主人公を酷い目に合わせるの好きですよね。気の毒なほどです。

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2018年04月19日

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御子柴くんシリーズ第二作。
いきなりの受難で異動。『遠距離』って、御子柴くんが『遠距離』になるということだった。
新バディの竹花くんと御子柴くん、それぞれが様々な制約の中で捜査している事件が最後に上手く繋がるのが気持ち良い。
文章はソフトなのにちょくちょく毒を入れてくるのも若竹さんらしい。
それにしてもあとがきにある通り、若竹さんはお気に入りのキャラを窮地に陥れるのが好きなのか?
御子柴くんシリーズはまだ続くのか?

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2018年04月14日

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御子柴くんと竹花刑事、わずかに甘味を添えた短編集。全体的にまるで美味しいコーヒーのような深い味わい。凝縮されているせいか展開が早く、一気読みおすすめ。あっちの話がこっちにつながったり、ところどころにあるユーモアあり、うまく描いてるけれど、葉村シリーズの方が好きかな。御子柴くんとかキャラがどうも薄い感じ。あとは、パン好きな私としては、上田のルヴァン! パンは間違いなく美味しいが、杏子ジャムとクリームチーズでこの世で一番うまいと思うとのことで、今度行った時にトライだ。相性がいいのは間違いないでしょうが。そんなことでもちろん楽しめた一冊でした。

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2018年04月07日

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御子柴君はスイーツからちょっと離れて、葉村晶みたいな受難キャラになったようだ。前作の結構ビターな味わいは意外だったけど、慣れたのか、今回はさほどの苦さは感じなかった。横柄な上司の出番が減ったのも良い感じ。短篇一作一作が凝っていて、しっかり楽しめる。まだまだ続きが読みたいです。

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2018年04月04日

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前作と御子柴くんのキャラが変わったような気がする。ひどい目にあってかわいそうだったけど,面白かった。

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2018年01月22日

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ちょ、御子柴君!
不憫すぎる。しかも、被害者なのに、その扱い。
事件は、色んな事が色んなふうにつながっていってちょっと頭が混乱したりもしたけど、あのラストに安心した。
がんばれ、御子柴くん。

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2018年01月09日

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前作がなかなかにおもしろかったのでこちらの続編も。
で、なんか思ってたのと違ったな。。。これはこれで悪くはないんだけど、御子柴くんのとぼけた味わいがかなり減ってる・・・というか、出番事態が激減。どちらかというと前作の小林警部補のように長野から事件を解決していっているような。。。そして主人公はほぼ竹花くんに交代?
甘味も前作ほど焦点当ててるわけでも・・と思ったけど、まあタイトル通りなんだよな。これはもうこういうものとして楽しむのが吉。

ただ、警察の面々のコメディさと事件の後味の悪さというか悲惨さが結構ギャップありますね・・・

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2024年03月07日

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コージーミステリーの表紙で中身は刑事が主人公の警察小説。
次々に起きる事件を御子柴刑事とバディの竹花刑事が解決していきます。
それぞれの地域の警察署の縄張りというか面子というか仁義というかが
色々大変そう。現実もそうなのかな。
関係を和ませる地元の銘菓の数々が美味しそうで食べたくなります。

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2024年01月26日

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若竹七海さんの「御子柴くん」シリーズ2冊目。短編集。
といっても、私は1冊目を読んでないのですが。

御子柴くんと言えば、「プレゼント」(こちらも短編集。あの葉村晶のデビュー作)に小林刑事の相棒として登場していた。
私はプレゼントのなかで小林刑事の話が結構好きで、それを読んだ時に「御子柴くんシリーズもあるのか、これも面白そうだ」と期待してたことを思い出した。
しかし、本作のあとがきによれば、作者はあれ以来小林警部補のことは忘れ去っていたらしい…。なんと。

「プレゼント」で刑事だった小林さんは定年退職していて、若手っぽかった御子柴くんはベテランな感じになってる。時の流れよ…。
御子柴くんの現在の「相棒」は、残念ながら小林ではなく、「竹花」という警視庁の刑事だ。

葉村晶シリーズもそうなんだけど、若竹先生の短編は要素多すぎで、短編に現れる要素の量じゃないよね?
登場人物多すぎて誰だっけ?と何度もなるし。
頑張って読んで、読んだときは「なるほどー、ほほぅ」と満足するんだけど、何故かすぐに内容忘れてしまう。
長編なら、そんなことならないんだけどな。
御子柴くんは、長野県の警察官でありながら、捜査協力?のために警視庁に出向している。
でも、本作第一話である被害にあい、長野県警察に送り返される。
長野にいる御子柴と、東京警視庁管内で事件を捜査する竹花。二人の追う時間がリンクしていく、という手法は面白かった。でもどのお話も、解決はかなりバタバタだったな。
御子柴を「長野」と呼ぶ警視庁の玉森が甘いもの好きで、センスのいいお土産を要求するキャラなんだけど、長野名産杏のお菓子が何度か作中に出てきた。杏なぁ、杏酒を飲むくらいしか縁がない果物だ。アプリコットのことだよね。きっと美味しいんだろうな。

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2023年09月03日

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裏表紙の作品紹介に書かれている、『スイーツ&ビターなミステリー』の意味が分からない。

まあ、スイーツに関しては、地方から出向している刑事を題材にしたシリーズということもあり、各地の名産品を美味しそうに紹介していることなのであろうが、問題はビターの方である。

これ、ビターなの?
私からしたら、既にビターを思い切り通り越して、どこかが破綻している、シャレにならないようなイメージなのだが・・若竹さんの中では、比較的、毒が無いと言われている、このシリーズでこう思っているのだから、私にはやはり合わないのだろうか?

ただ、視点を変えれば、これくらいで、あたふたしなさんな、ということなのかもしれず、そう思うと、人生の崖っ縁はまだまだ先にあって、いくらでも立ち直れるといった所には、何があっても生きていける希望を与えてくれたような心強さもありましたけどね。

いや、それにしてもですよ、若竹さん。
悪い癖で、愛する我が子をつい、また千尋の谷に突き落としてしまったと仰いますけど、その突き落とし方に容赦がなさすぎるんですよね(笑)
もう最初の話の衝撃的な始まり方と、真相もあんな救いの無い感じが合わさって、「犯人、怖っ!」と思いましたし、下手したら、死んじゃいますから。

思えば、前巻の『御子柴くんの甘味と捜査』の最後の話から、既に違う雰囲気があったのだろうな。
だって、それまでは小林警部補の安楽椅子探偵で統一されていた展開だったのが、それだけ終わり方が違っていて、そして、この二作目でいきなり御子柴くんの危機が訪れたと思ったら、今度は、探偵役の小林警部補が定年を迎えて、一切、警察と関わらなくなったし、「一体、この後の話はどうなんの?」と心配してしまうのも、やむを得ないところでしょう。

ところが、その後は、まあいなけりゃいないで何とかなるんだといった展開で、敢えて、ごちゃごちゃとややこしくする、若竹さんの事件のわちゃわちゃ感も加わった末に、終わり方は大体、いろんな人達がてんやわんやに絡まったり、真相を暴いたと思ったら、警察を嘲笑うような更に悲劇的な幕引きになったりと、そんな一筋縄ではいかない感じが妙にリアルですし、若竹さんの場合、悲劇が本当に文字通りの悲劇なので(特に「火の国から来た男」)、フィクションとは思いつつも、何だか現代社会の闇の部分を紹介するドキュメントにも思えてきてならないのです。

かといって、それでは気分の悪い話なのかというと、そういうわけでもなく、今作に関してはタイトルにもある通り、『バディ』が一つのテーマとなっており、特に、前作では割とそつなくこなす軽いイメージのあった、御子柴くんのバディ「竹花一樹」の、彼への真摯な思いを知ることが出来たのが印象的で、とある話での彼の『それでも久しぶりに聞く声は、涙が出るほど懐かしかった』や、『助けてくれよ。オレの相方を』には、私も思わず、もらい泣きしそうになるくらい嬉しかった。

また、御子柴くんがああいうことになったので、その間、竹花がコンビを組む、各地のバディ達はどこかユーモラスで、「火の国から来た男」の、『太陽にほえろ!』世代の、ざっくばらんで諦めない燃える男、熊本県警の「隈部雄亮」や、「被害者を捜しにきた男」の、「破局」や「動向」といった、一般的に使われない言葉を笑いのツボにされるが、見た目も実際に怒らせても怖い、沼津港署捜査課所属の「二宮徳範」に、「遠距離バディ」の、長身で拳にタコがあるが、話し方は舌足らずな、世田谷芦花署刑事課の「三村綾」と、これまた一筋縄ではいかない個性たちが、ビターすぎる物語の味わいに、また独特なブレンドとして溶け合っています。

もちろん御子柴くんにとっても、バディは健在で、それは、たとえ彼があのような状況になったのだとしても、その決して忘れることの出来ない優しさと実直さをもった、彼の素晴らしい人柄があるからこそ、竹花も、モヤシの「玉森剛」も、未だに彼を気にかけているのだろうし、それを踏まえて、タイトルの『遠距離バディ』という言葉を見ると、改めて、感慨深いものもあり、確かに事件の内容はとても暗くやるせないものであっても、彼らの存在が、それらを上手く中和してくれるような、そんな明るさもちゃんと含ませているところが、若竹さんらしさといえば、そうなのかもしれず・・・要するに、若竹さんって、とても不思議で面白い作家さんですよね、ということです。

ただ、それと他の作品を読むかどうかは別ですけどね(笑)
御子柴くんの続編なら読んでみようかな。
なんて書いといて、しれっと「葉村晶」シリーズを、読むかも知れませんが。そういえば、「御子柴くんの災難」で、名前だけ出てきたな。

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2023年05月22日

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ネタバレ

第2弾は、御子柴くんが大変なことになって長野に帰らされ、小林警部補は定年退職してしまい、御子柴くんの元相方が大変な苦労を負わされる…
本当に、本当に腐った奴ばかり出てくるけど、それを補って余りある事件の面白さと複雑さ。わからなさが読む手を止めてくれない。
上の奴がふんぞり返って大金もらってるのに、下は駆けずり回って気使って、こんなしか貰えないのかって一般社会のあるあるがそのまま。
たまに嫌なやつをぎゃふんと言わせられると嬉しくなる自分は相当性格が悪い。
ポップなのに読み応えがあって、最後は次につながっているようで、楽しみ。

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2022年11月27日

Posted by ブクログ

若竹さんの短編だから、サクッとかなと思いきや、やはりの力量で!どれもちゃんと凝っている。
そして若竹さんらしい「バッサリ感」が随所に出ていて良著。
軽やかに残酷、な印象。

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2018年12月28日

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さくさく読めておもしろいですが、前作と比べて、話が東京だったり長野だったりで混乱して自分の中で事件の整理がつかなくなってました。小林警部補もそんな年取った人だと思ってなかったです。意外でした。

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2018年12月02日

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長野県警から警視庁へ出向中の御子柴刑事。概ね平穏な生活を送っていたものの、暮れも押し詰まってから次々と事件が発生。さらには凶刃に襲われて!相棒の竹花刑事は異変を察知し、御子柴のもとにかけつけるが……。

御子柴くんシリーズ2冊目。相変わらず酷い目に遭わされる若竹主人公。事件も伏線も詰め込まれているのでぼんやり読んでいると見落とし必至なので丁寧に読まないと辛い。御子柴くんこんなに優秀だったんだっけ?捜査自体はすいすいいくのでストレスは少なく、楽しく読んだ。しかし内容的にはわりと重い&苦い&後味悪いでそれはそれで大変良き。

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2018年11月19日

Posted by ブクログ

例えば病院の待合室とか、入場を待つ行列の中にいるときなどには、本書のように、いつ、どこから読んでも楽しめる本があると本当に助かります。
おなじみ御子柴くんが、いきなりたいへんな状況になっていたのには、驚き、心配させられましたが。

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2018年05月16日

Posted by ブクログ

皆さん高評価ですね、、、

私はどうもこの作家さんが苦手なようです。読み終わるのに珍しく二週間近くかかってしまった。
まずは短編というところが駄目な理由の1つ。

登場人物と事件が短編の中に多過ぎて覚えきれない。

この作家さんに高評価つけてる方は頭の良い方なのだろうなと思います(*^^*)

全部を覚えていられたら、最後に畳み掛けるように解決していく様は圧巻だろうなぁ。。。

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2018年04月24日

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【収録作品】御子柴くんの災難/杏の里に来た男/火の国から来た男/御子柴くんと春の訪れ/被害者を捜しにきた男/遠距離バディ

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2018年02月07日

Posted by ブクログ

シリーズ2作目にして御子柴くんなんてことに!!
安楽椅子探偵的だった小林さんはさっさと引退しちゃうし。
1作目とがらりと変わってましたが、
事件をとことん追う御子柴・竹花は健在!
読んでてスッキリします。
続きもあるといいな。

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2018年02月06日

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