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凶悪な死刑囚に届いたファンレター。差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は5年前に失踪していた!(表題作)女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり……。(「蠅男」)先の読めない展開と思いがけない結末――短編ミステリの精華を味わえる全5編を収録。表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。
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Posted by ブクログ
『祖父の家に置きっぱなしになった母の遺骨を回収して欲しい』ただ遺骨を取りに行くだけで三十万という高額の依頼が、探偵である葉村晶のもとに持ち掛けられた。犯罪ではない、とはいうが、奇妙な依頼の詳しい内容を聞いていくと、すでに亡くなっている祖父の名前は左修二郎。有名な心霊研究家だった祖父の家には、心霊現象...続きを読むに遭ったという話もあるそうだ――「蠅男」 「この手紙を磯崎保様にお渡しください」と届いたファンレター。犯罪事件を中心に調査しているライターの〈私〉は、磯崎保の担当弁護士から、このファンレターの人物を調べて欲しい、と頼まれる。磯崎保は死刑囚。五人を死に追いやり、弁護士さえも極刑やむなしと語る残忍な大事件を起こした死刑囚に手紙を送ってきた人物とはいったい何者なのか――「暗い越流」 ということで本作は全五編。「道楽者の金庫」だけすこし柔らかな印象を受けますが、基本的には、かなり強めの苦み(苦みをこえて、毒にも近しい)を持った作品が並んでいます。淡々とした文章で綴られ、どの作品も切れ味は鋭い。大変好みの作品集でした。先も読めず、語り手や登場人物に寄りかかることをよしとしない容赦のない展開も魅力的です。五十ページほどのきゅっと引き締まった短編が好きなひとが、ジャンル関係なく読んで欲しいな、と思う一冊でした。
若竹さんのミステリー4冊目になります。葉村晶シリーズも4冊目です。 5つの短編が入っていて、葉村ものは2編です。 ふたつは主人公も犯人と同じような境遇であることが最後わかるのです。一つは、独白のものですが、最後の一行で、「ところで」という感じで、全く違う嫌な感じを残して終わります。 葉村さんのは、最...続きを読む初と最後の短編です。両方で、病院にやっかいになるくらいのケガをして、「不運な」探偵の面目躍如でしょうか。話の中にいろいろな伏線があり、面白かったです。 やはり、若竹さんミステリーは、短編の方が好きかなと思ってます。
以前、単行本で読んだ。 やっぱ面白い! 単行本を読んだ時は「幸せの家」が印象に残ったようだが(以前の感想による)、今回はやはり葉村晶ものが良かった。 最終話「道楽者の金庫」、ここからマーダー・ベアー・ブックショップとの縁が始まっていた。葉村晶、やはりキレッキレだ。満身創痍だけど。 巻末の、近藤史恵さ...続きを読むんの解説も良かった。 「船上にて」「海神の晩餐」「名探偵は密航中」「火天風神」読んでみたい。
今回も葉村晶がこけしに襲われたり、不幸すぎる…… でも、それが毎回楽しみだったりするのです…… 全編、安定感半端ない面白さだった。 酔狂のラストには久しぶりにびびったですよ。
今はまっている羽村昌シリーズと思って読んだが、実際はうち2編のみだった。 他の短編も面白かったが、やはり女探偵が「MURDER BEAR BOOKSHOP」につながる遍歴をたどれたのが良かった。
葉村晶シリーズの新刊が出ると言うことで、読み損なっていた短編集を紐解いた。私、「世界一不運な探偵」である彼女のファンなんです。 葉村晶37歳。今回も冒頭から、幽霊が出そうな廃屋の地下室の前で突き落とされて、ぶよぶよとした死体の上に尻餅をつくという不運に見舞われている。 依頼人のお祖父さんの骨壷をち...続きを読むょっと取りに行くだけ、という簡単な仕事だったのに。 「蠅男」(2009年4月発表) 「暗い越流」(2012年12月発表) 日本推理作家協会賞短編部門受賞 どうやら「私」は、雑誌編集者らしい。この1人称の呟きには既視感がある。いつこの「私」の名前が明らかになるのか、葉村晶となるのか、彼女は探偵になる前はたくさんの職業を転々としたはずだから、これは随分と過去の話かしら、相変わらず、淡々としながら鋭い推理を出すよね、と思っていたら、帯をよく読むと葉村晶シリーズは「蝿男」と「道楽者の金庫」だけと書いていた。と気がついたときには、「私」は男だったと分かり…。 「幸せの家」(2013年12月発表) いつものように、最後の1頁で物語が暗く反転。 「狂酔」書き下ろし さすがです。衝撃の最後の一行、予想していなかった。 「道楽者の金庫」書き下ろし 葉村晶シリーズ。50部限定の手作り冊子の設定だけを受け継いで、富山泰之店主の古書店の店員になった顛末を描く。おそらく2013年。このとき晶は40歳過ぎだという。だとしたら、「錆びた滑車」よりも前日譚! 福島へ行けば「除染」という言葉も出現する。晶はあくまでも同時代のミューズなのだ。新作が楽しみです。
若竹七海のミステリ短篇集『暗い越流』を読みました。 若竹七海の作品は、昨年の6月に読んだ『古書店アゼリアの死体』以来ですね。 -----story------------- 凶悪な死刑囚に届いたファンレター。 差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた!(表題作) 女探偵...続きを読むの葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり……。(「蠅男」) 先の読めない展開と思いがけない結末――短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。 表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。 ----------------------- 2014年(平成26年)に刊行された短篇集……『蝿男』と『道楽者の金庫』の2篇は葉村晶シリーズの作品です。 ■蝿男 ■暗い越流 ■幸せの家 ■狂酔 ■道楽者の金庫 ■単行本あとがき ■解説 近藤史恵 5年前、通りかかった犬に吠えられ飼い主と口論になった末に逆上し車で暴走、死者5名、重軽傷者23名という事件を引き起こした最低の死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた……その差出人・山本優子の素性を調べるよう依頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に失踪し、行方が知れないことをつきとめる、、、 優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家が目と鼻の先であることに気づいた……折しも超大型台風の上陸が迫っていた…(「暗い越流」)。 第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞作『暗い越流』を収録……短篇ミステリの醍醐味と、著者らしいビターな読み味を堪能できる傑作集!! 葉村晶シリーズ2篇にショッキングでダークなオチが用意されたノンシリーズ3篇を挟んだ構成でした。 イチバン印象に残ったのは……ひとりの男性の自己紹介から始まり、そこから一人称で少しずつ情報が開示され、過去の状況、現在の状況、そしてこれから何が起こるのかが徐々に判明する展開の『狂酔』、、、 教会らしき建物に立て籠り、人質らしきシスターらしき人物に話し続けている中で、読み手は時間を遡り恐るべき事件を知る……その中である事件に隠されたゾッとする事実が判明する結末、ママは戻りたいところに戻れたんでしょうねー 最後の1行が強烈な印象を残す作品でした。 その他では、、、 死刑囚にファンレターが届き、ある編集者が死刑囚の弁護士から差出人についての調査を依頼されるという展開の序盤からぐいぐい惹き込まれ、思いがけない結末まで一気に連れていかれ、叙述トリックに心地良く騙されてしまった『暗い越流』、 ある生活雑誌の編集長が行方不明になり、部下の編集者が編集長の行方を捜す……丁寧な暮らしを提唱する生活雑誌の裏にひそむ闇を描き、日々の暮らしの中でのうんざりさや、重要さ、欺瞞のバランスが絶妙に混ざり合っている『幸せの家』、 この2篇は、似たような印象……事件が解決した後に起きることの方が衝撃的で、いやーな、暗い感じの結末が印象的でした。 葉村晶シリーズの2篇は安定の面白さ、、、 本宮波留という女性から亡くなった祖父の家に置きっぱなしの母親の骨壷を取ってきてほしいと依頼され、群馬の伊香保温泉の奥にある建っている崩れかけた洋館に行った葉村晶がトラブルに巻き込まれながらも真相を明らかにする『蝿男』、 こけし収集家で資産家だった後宇多啓介が亡くなり、遺品整理業者と一緒に残された本の選別を任された葉村晶が、貴重品を入れた金庫を開く手がかりのこけしがあるという福島のにある故人の別荘まで探しに行くことを依頼されトラブルに巻き込まれながらも真相を明らかにする『道楽者の金庫』、 似たような展開でしたが……葉村晶が、相も変わらず災難に巻き込まれ、タフで不運な女探偵ぶりを発揮していて愉しめました。 スッキリしなくて後味の悪い結末なんだけど、それが面白いんですよねー 若竹七海らしい巧くて毒のある作風の5篇を愉しめました。
葉村晶シリーズを読み進める中で、この本も読みました。 この本だけ表紙が違うなぁと思ったら、これだけ出版社が違うのですね。 この本は光文社、その他の葉村晶シリーズは文藝春秋。 あとがきによれは、表題作である「暗い越流」が、文学賞を受賞したものらしい。 暗い越流は、死刑囚に届いた1通のファンレターが...続きを読む発端になり、雑誌記者が差出人を探す…という話。 暗い越流は葉村晶シリーズではなく、葉村晶が登場するのは「蝿男」と「道楽者の金庫」だけだ。 しかしノンシリーズも含めて、全てワクワク、ゾワゾワするおもしろい短編ミステリーだった。 短編であることがむしろ心地よいと思った。 道楽者の金庫では「こけし」が謎解きに一役買っている。 東北の田舎出身の私は、子どもの時から実家にも親戚の家にも必ずこけしがあった。こけしって、不気味だけど、身近な存在でもある。 だから、晶が子ども時代に「こけしは子どものおもちゃみたいなもん」と親戚に言われ、実際にこけしで遊んでいたら「こけしであそぶな!」と怒られたことは笑ってしまった。 最初に本を手に取ってパラパラめくったときに、こけしの絵が現れたときも、思わず笑ってしまった。なにこれ!早く読みたい!と思ったよ。 間取り図面とかが載ってることはあるけど こけしって。 そんなところからも、ワクワクして読めて、私は楽しかったです。 お話自体は、どれもザラっとした気持ちになる終わり方なんだけど、こけしの登場で途端にユーモラスになったのだ。私だけかな。 なぜこけしにしたんだろう。こけしじゃなくて陶器とか花瓶などの瀬戸物でも良いよね。 そのあたりに、作者のお茶目さ、遊び心を感じたんだけど、考えすぎかな。
短編集。全部葉村晶ものかと思って読んだら、あれれ?となり、よく見たら三編は葉村ものでなく、それでも不気味なイヤミスでした。葉村もの二作目で、やっとあの古本屋が登場します!
表題作の浮かび上がった事件と、そこから繋がってしまった悪意のどん詰まり感にゾワゾワする。 最後の頁の怖さは「幸せの家」「狂酔」も、それぞれ自分の想像力でダメージを受ける。 人の、感情は、蔑ろにしてはいけない。 「蝿男」「道楽者の金庫」は葉村晶シリーズ。 他三編と同じくゾワゾワするような怖さもあるけど...続きを読む、葉村の不運エピソードが毎度ながら痛そう・キツそう極まって、事件の惨さが中和されてる(気がする)。『悪いうさぎ』でのトラウマ・トラブルもまだ残ってた。ハードボイルドじゃなくてハードモード。
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