あらすじ
勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教には追いかけられ……。不幸のどん底にいた相澤真琴(あいざわまこと)は、葉崎(はざき)市の海岸で溺死体(できしたい)に出合ってしまう。運良く古書店アゼリアの店番にありついた真琴だが、そこにも新たな死体が! 事件の陰には、葉崎市の名門・前田(まえだ)家にまつわる秘密があった……。笑いと驚きいっぱいのコージー・ミステリの大傑作!
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若竹七海に出会った作品。ジャケットが可愛いのに、出だしからあまりのスピードで不幸な女の子。若竹作品には不幸な女の子がたくさん出てくる。 海でバカヤローって叫んだら、死体が転がってきた。そこから紅子さんに出会って、臨時店員になるまでも無理がなく、不幸に磨きをかけて葉崎市の面々と出会い、事件の中枢に巻き込まれていくところもテンポが早くて読みやすい。事件はごっつりしているのに楽しいって思うくらい。だからといってさらっとはしていなくて読み応えは十分。解決編も、秘密の真相も、疑問が全部解消されるところも、全部すき。
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この事件、もし太平洋戦争前後に起きていたら、横溝正史だなあ、と思いました。この登場人物の絡み方。家柄とか血筋とか。
ということは、いろいろな凄惨な事件も葉埼で起こるとこう言う雰囲気になるのかな、なるのだろうな、と思った次第。
実にサービスたっぷりの一冊でした。
巻末のロマンス解説は、なんだか、この本の後日談を読むような得した気分。解説の妙も味わいました。
各章のタイトルもおまけ感がたっぷりで嬉しいものでした。
ゴシックロマンスの伏線、にんまりです。
それに限らず伏線の張り方と回収はこの作者ならではと言ってもよいくらいの見事な展開だと思います。
駒持警部も大変だなあ。いろんなバディとの捜査でも揺るがないところは素敵です。
さらりと読めるところが、この作品の面白さの中核と言えるかとも思いました。
満足しました。
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作中にも登場する『見つめる家』のエピグラフの変奏曲ともいうべきオチに思わず唸る。解説で池上冬樹さんも書いておられるが、物語の枝葉の部分、細かい部分が面白い。たとえば、満知子社長がいたときには目立たなかったオフィスのインテリアが、満知子がいなくなるとその存在を高らかに主張してくる場面(276)や古川恒子を見て五木原が貝殻を背負わぬやどかりを思い浮かべる場面(356)が殊のほか印象に残っている。
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「葉埼市シリーズ」第二弾。
各章に有名な映画をもじったタイトルがつけられていて、目次を見ただけで面白そうです。
勤め先が倒産、泊まったホテルが火事、怪しげな新興宗教に勧誘され、二階から飛び降りて左足首を捻挫したという不運続きの相澤真琴が、葉埼市の海岸で人間の死体を発見してしまう。
さらには〈古書アゼリア〉の店番をすることになり…。
ユーモア・ミステリーなので、物語は軽快に進んでいくのですが、終盤に近づくにつれ、葉埼市始まって以来の名家、前田家にまつわる凄まじい過去が明らかになっていきます。
シリーズものだけあって、前作で登場した「鬼頭堂」や、「黄金のスープ亭」や、その他の人物が、長い説明もなくチラッと出てくるところが心憎い。
真琴のアリバイを成立させるのに、ヴィラ・マグノリアに住んでいる塾講師までささやかに登場するところも見逃せませんでした。
金と権力に執着する前田家の争いに意表をつかれ、その反面で、中学時代の同級生や幼なじみや町のひとたちとのつながりが優しく人情味があって、この葉埼市シリーズにどんどんはまってしまいそうです。
Posted by ブクログ
〈葉崎市シリーズ〉第2弾。
第1弾である『ヴィラ・マグノリアの殺人』に出てくる〈鬼頭堂〉ではなく、〈アゼリア〉という古本屋をとりまく事件と、ロマンスと、お家騒動の話。
『ヴィラ・マグノリア』でも少し名前だけ登場した、葉崎の名士「前田家」の家系と資産にまつわる殺人。
外から来た、相澤真琴という不運が重なりすぎて葉崎にリフレッシュしに来た女性が、いざ海に向かって叫ぶと波間から男の死体が……。
という、真琴には悪いが少しコミカルな描写から物語ははじまる。
しかし、そこからは「前田家」の資産をめぐる骨肉の争い、さまざまな謀りや疑惑が噴出し、そのうち死体も増え、ますます複雑な事件となってくる。
私が今回一番好きだったキャラクターは、アゼリア店主の前田紅子だった。矍鑠とした威勢のいいおばあさんで、ロマンス小説をこよなく愛し、自分の店をロマンス小説専門店にしたほどだ。前田家の名前のついた、生年育英基金も立ち上げている、面倒見のよいひとなのである。
作品の序盤から好きだったけど、最後まで読んでもやっぱり好き。「とあること」(核心にふれるので詳細は省く)を思うと、とても切ない。
今回読んで分かったんだけど、固定で出てくる登場人物は駒持警部補だけなのね。ちらっと名前だけ登場とかはあったけど。知ってる名前が出てくると「おっ」って嬉しくなりますよね(笑)。
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やっちまった。ただ今、5月5日の午後12時。
〆切は明日朝1番なのに「未だ大丈夫」と思いながら、祝日の今日1日は、「つい」これを読み始めて一気読みしてしまった‥‥。どうすんだオレ。とりあえず、感想は置いてといて、徹夜覚悟で書き始めよう‥‥。
ーーーーーーーーーーーm(_ _)m
12時間後。
もはや、葉崎市の海岸に打ちあげられた溺死体、或いはアゼリア古書店で発見された撲殺死体の気分です。死んでしまえ!私。先月の教訓はどうなったんだ!いや、すみません。後もう少し‥‥。
ーーーーーーーーーーーーー\(^o^)/
20時間後。
いやあ、すみません。とりあえず終わりました。いや、終わらせましたとも!ところで本書の感想ですが、感想といってもサスペンスですからね、ネタは話せません。ともかく、ダメだダメだと思いながら、最後まで読ませるチカラは身ももって証明しました!だって、終わりに近づくほど面白くなるんだから仕方ない。しかも、ダブルどんでん返し。
葉崎シリーズ第2段。若竹七海を年に10冊は読もう計画継続中(昨年は未遂、今年も怪しい)。今回は前書でヴィラ・マグノリアの土地を所有していた前田一族をめぐるアレコレの作品でした(←何ことやらサッパリわからん)。クスリとはするコージーミステリだけど、若竹七海だから人の持つ「毒」も仕込まれています。
※話とは関係ないけど、巻末に古書店アゼリアの店主・前田紅子による「ロマンス小説注釈」がある。葉村晶シリーズで、古本屋店主・富山泰之のミステリ注釈が巻末にあるのと同じ体裁、ていうか、こちらが最初か。
※経緯は言えないけど、死体を発見した女・相澤真琴が棺に潜り込む場面がある。
「病院から死体を盗む映画、あったよね」
「滝田洋二郎監督、高木巧脚本のピンク映画。あれ、俺マジ好きだな」
というセリフが気になって、調べたら「タイム・アバンチュール絶頂5秒前(1986)」(田中こずえ、杉田かおり、若葉忍出演)が検索でヒットしたのだけど、肝心の病院云々の関係が一切わからない。同年2人は内田裕也も仲間に入れて「コミック雑誌なんかいらない!(1986)」という名作もモノにしている。とすると、このピンク映画、傑作か?
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私はイヤミスは避けて通るんですが
若竹さんは全然okです。
ですよね〜という納得感があります。
あと何回騙しにくる?
ページ的にまだまだでしょw
楽しかった〜
Posted by ブクログ
食事の最後に、これお店からのサービスですってもらったスイーツがすんごいおいしくて、いや、常連になるわ!って思う話。
死体で登場した秀春が、あの短いラストで血肉を備えた生臭い生きた人間としてどんと存在感を増す。すごいっすよ。
最近知った作者なので、未読がたくさんあるのがうれしい。もっと読みたい。
Posted by ブクログ
葉﨑市シリーズ二作目。
前作のヴィラ・マグノリアの土地所有者だった、
地元の名家前田家をめぐる殺人事件。
「コージータイム」というどこかで聞いた雑誌
(編集長が殺されたような…)を発行していた勤め先がつぶれ、
泊まったホテルが火事となり、新興宗教に追われ、海に叫ぶ女。
挙句の果てに死体を発見する。
その死体は前田家の行方不明だった「若殿」なのか。
前作より面白かった。
死体を担いだり、棺の中で寝てしまったりと、どたばた要素があったからか。
恋愛要素がはっきりしていたからか。
最後のドンデン返しが良かったからか。
パンプキンスープとか、前作のネタがちょこちょこ出て来たのも、
楽しかった。
ロマンス専門の古書店の店員になるきっかけ、
女店主との(部外者には)禅問答のような会話が面白かったし。
それと、小豆相場で大儲けするような叔母が一家にひとりほしい、
と刑事さんが言っていたが、それには賛成。
Posted by ブクログ
「葉崎市シリーズ」の2冊目。
今度は、前作でも当地の名家として紹介されていた前田家を巡る騒動の顛末。
海岸で発見された溺死体に行方不明になっている前田家の御曹司・秀春の可能性が浮上。
かつて秀春の失踪事件を担当した駒持警部補が過去のお家騒動をなぞりながら五木原巡査部長とともに捜査にあたる。
秀春を巡って、紅子に満知子に初穂に結衣にしのぶに麻衣、居並ぶ女性陣は皆、いわくあり。
とは言え、前田家の人々のみならず、葉崎FMのメンバー、東銀座商店街の面々、そしてトラブルに見舞われ続ける相澤真琴など登場人物は皆、なんとなく憎めない感じの人ばかりで、筋書きはとても面妖な話なのだが、それを感じさせない軽やかな語り口でどんどん読ます。
途中で挟まれるロマンス小説カルトクイズ(?)やプチ蘊蓄も嬉し。
方々に撒かれた伏線がきちんと回収された巧みな収束を改めて行きつ戻りつで確認するのもまた楽しいが、そこで単純には終わらない最後の10ページ。
今回もまた、警察の捜査では暴くことが出来ない腹の中の一物がごちられたラストに、本当によく練られているなぁと感心した。
Posted by ブクログ
葉崎シリーズ二作目。
あー面白かった!
葉崎の名家、前田家をめぐる事件の数々に、地元民みたいにのめりこんで一気読み。
駒持警部補、さすが鋭い。
真琴ちゃんの災難続きには気の毒だけど笑ってしまった。これから五木原巡査部長とうまくいくのかな。きっと紅子さんの口添えで幸せに暮らすのでしょう。
紅子さんのお店、探してみたくなった。
ロマンス小説も少しは読んでみようかしらん。
Posted by ブクログ
これぞ私の好きな気楽で楽しみいっぱいの本だよっていう読み物。
まず章立てのタイトルが、もう、知ってる映画のタイトルのもじりで「これがあれで、あれがこれで」と当てはめて楽しんだ。
そして古書店、しかもロマンス小説専門店が舞台ときた。出るは出るはロマンス小説の数々題名作者。
最初にデュ・モーリアの「レベッカ」が出てきて、おおお!これ何度読み返してもぞくぞくするね。これを出してくれるのは嬉しい!
コージーミステリ(恐ろしい事件が起こっても、それが解決すると再び平穏な、心地よい平凡な日常的な生活に戻っていけるという安心感に支えられたミステリー)とか、ゴシックロマン(若い娘が屋敷を手に入れる話)とか教えてくれるじゃないの。
なんとなんと古書店の店主前田紅子さんが老婦人。大いに感情移入しちまったね。(もうすっかり紅子さんの口調が乗り移って)
もうひとつおまけ、架空の土地「葉崎半島」「観音市」。どうしたって私のよく知っている神奈川県のあの半島、城ヶ島のある所ね。土地勘があるってもう架空じゃない。くすぐったくなる。だからなさそでありそうな事件と思え、幽霊だって出るうわさが本当にあるのだから現実味がありすぎ。
最後におまけ(本のほうの)で本文中に出てくるロマンス小説の解説がしてある丁寧さ。またまた食指をそそられるじゃないの。
本命のミステリが、どんでん返しが楽しかったのは言うまでも無い。
Posted by ブクログ
「葉崎市シリーズ」第2弾。
葉崎署駒持警部補の今回のバディは五木原巡査部長。このコンビもいいわ〜。
仕事を失い、やけくそで泊まった高級ホテルで火事に遭い、海に向かって「バカヤロー」と叫びに来た葉崎市の海岸で死体の第一発見者となった主人公・相澤真琴。その後も店番で入った古書店で泥棒に遭ったり、首を絞められて殺されそうになったりととことんツイてないところがどことなく葉村晶を彷彿とさせる。
その他の登場人物もなかなか個性的で、事件の展開はもちろんのこと、読み出したら止まらない。
タイトルにもなった「古書店アゼリア」がロマンス小説専門の店ということで、海外ロマンス特にゴシックロマンスのカルト的知識が満載。
巻末に置かれた古書店主・紅子によるロマンス小説解説は、葉村晶シリーズの富山店長のミステリ解説と同じ手法でこれまた面白い。
横溝正史ばりの旧家のドロドロをここまで軽く、スピード感あふれる展開で描けるのも若竹七海ならではで、このネタで3人も殺されてコージーミステリになるんだから大したもんだ。
ミステリとしては小さな伏線がしっかり効いて、終盤でそれが見事に回収されていく様は気持ちいい〜の一言。
ゴシックロマンス的なシーンもあったり、若竹ミステリは一筋縄ではいかないのは先刻承知だけど、最後の数ページの事件の真相部分、無垢が持つ残酷なまでの毒などやっぱり面白い。
葉崎市、次はどんな事件が待っているのか、楽しみです。
Posted by ブクログ
職場の同僚からお借りした、初めましての若竹さん。
面白かったです。
架空の葉崎市を舞台にしたミステリでした。
名門・前田家のあれこれは込み入っていて、この要素は横溝正史っぽいと思いましたが、読み心地はとても軽く明るかったです。
怪しい人もてんこ盛りで、やっぱり…の人もいましたが、無垢っぽい人が実は一番残酷なのかもな、と思いました。
そしてネタバレかもしれませんが、厳密な真相は闇に葬られたのですねこれ……。
古書店アゼリアの店主・紅子さんが好きでした。巻末のロマンス小説紹介も、ロマンス小説と言えどジャンルがさまざまで、未読のものは読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
倒産、火事、怪しげな新興宗教・・・次々と不幸に見舞われた相澤真琴は、葉埼市の海岸で溺死体に出くわす。運よく古書店アゼリアで働くことになったが、そこでも新たな死体が・・・笑いと驚きのコージーミステリー。
コージーミステリーだけど、探偵は相澤真琴じゃないような・・・
真琴を始め、魅力的なキャラがいっぱいです(^^♪
犯人が分かったあとにも驚きの事実が・・・すっかりやられちゃいました(^_^;)
他の葉埼シリーズも読んでみたいな。
Posted by ブクログ
4+
読書していて思わず吹き出してしまうことなど極まれにしかないのだが、これを読んでいて3度も吹いてしまった。その他ニヤニヤさせられること多数。終止軽快なテンポで読み進められるのはこの作者らしさか。流れもオチも納得の秀逸なユーモアミステリ。
Posted by ブクログ
葉崎シリーズ!マグノリアの面々も名前だけ登場!
不幸な女探偵葉村に負けず劣らず不幸な真琴がたどり着いた葉崎市の海岸で溺死体をみつける。
それは、葉先市の名門前田家の失踪した息子だった?
前田家のお家騒動に巻き込まれる真琴。最後は二転三転していく…
Posted by ブクログ
若竹七海の長篇ミステリ作品『古書店アゼリアの死体』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。
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勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教には追いかけられ……。
不幸のどん底にいた相澤真琴は、葉崎市の海岸で溺死体に出合ってしまう。
運良く古書店アゼリアの店番にありついた真琴だが、そこにも新たな死体が!
事件の陰には、葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密があった……。
笑いと驚きいっぱいのコージー・ミステリの大傑作!
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2000年(平成12年)に刊行された、架空の都市・神奈川県葉崎市を舞台とした葉崎市シリーズの第2作です。
■第1章 波とともに来りぬ
■第2章 古本屋は突然に
■第3章 忘れたよ面影
■第4章 騙しあい
■第5章 ある泥棒の詩
■第6章 逢うときはいつも死体
■第7章 昼下がりの殺人
■第8章 告げ口がいっぱい
■第9章 罠におちて
■第10章 探偵たちの街角
■第11章 犯人よこんにちは
■おまけ ~前田紅子のロマンス小説注釈~
■解説 池上冬樹
あらゆる不幸を立て続けに体験した相沢真琴は、全てを投げだし、葉崎市の海岸に辿り着いた……ところが、なんと身元不明の死体をみつけてしまう! 所持品から、その死体は葉崎の名門・前田家の失踪中の御曹司・前田秀春である可能性が浮かぶ、、、
しかし、秀春の失踪には、きな臭い背景が……そんなさなか、ロマンス小説専門の古書店アゼリアを経営する前田紅子と知り合った真琴は、紅子が入院する間、アゼリアの店番を頼まれたのだが……。
真琴は次なる死体と遭遇することに! 絶妙な語り口と濃厚なミステリの味付け! 芳醇なるコージー・ミステリの絶品、好評書下ろし第二弾。
不幸のどん底にいた相澤真琴が、葉崎市の海岸で溺死体に出会い、さらにロマンス小説専門の古書店アゼリアの店番になってから新たな死体に巻き込まれる……登場人物たちの明るいキャラクターと事件の謎解きがコミカルに描かれており、笑いと驚きいっぱいの作品でしたね、、、
事件の背景となるのは葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密……真琴が古書店で働きながら、事件の謎を解き明かしていく展開に引き込まれましたね。
前作と同様に、事件が解決した と思われた後に描かれる最後のどんでん返しも面白かったです……が、これどういうこと!? と一部理解できない部分があったので不完全燃焼気味で読み終えてしまったところが、ちょっと残念でしたー 読解力不足かな……。
Posted by ブクログ
〈再登録〉作品のシチュエーションや会話に重点を置いたコージーミステリ。地元の資産家一族や、ロマンス小説専門古書店アザレアを経営する前田紅子など、登場人物がクセ強めでユニーク。謎解き部分が弱いかなとも思いますが、こういう雰囲気重視のミステリも悪くはないのでは。
Posted by ブクログ
コージー・ミステリのなんたるかをよくわからないまま読んだけど、なんとなく、なるほど殺人事件があるんだけど、こういうちょっとユーモアも交えた、あまり深刻でない、まるで大袈裟な舞台を観ているような感じ、とでもいうのだろうか。
それはそれでありな世界だとは思うけど、この物語に出てくる登場人物にはあまり魅力を感じなかった。
Posted by ブクログ
〇 評価
サプライズ ★★★☆☆
熱中度 ★★★☆☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター★★★☆☆
読後感 ★★☆☆☆
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★☆☆
複雑な人間関係と,数々の伏線がちりばめられた「若竹七海」らしい作品。殺人は2つ。海で見つかった謎の遺体と,前田真知子の殺人
この二つは連続殺人ではなく,別々の犯人がいる。「オホーツクに消ゆ」風にいうと,連鎖殺人である。これは葉崎シリーズの第1作,「ヴィラ・マグノリアの殺人」と同じ構成。というか,謎の死体が見つかり,その身元調査と犯人調査をしている中で,別の死体が見つかる…という構成そのものが同じである。
解説では,ヴィラ・マグノリアの殺人より,古書アゼリアの死体の方が完成度が高いとある。しかし,それほど差があると思えない。
400ぺ―ジにわたる,それなりに長い小説だが,死体は2つ(プラス10年以上前の殺人が1つ)しか出てこない。登場人物も多いが,視点がころころ変わる。また,それぞれの視点から,伏線がちりばめられている。よって,非常に要約がしにくい作品になっている。
トリックらしいトリックはない。マイケルカトウ=前田秀春は,前田しのぶに容疑を向けようと思って偽装をして自殺をしようとするが,たまたま出会ったかつての恋人,篠山麻衣達に自殺をほう助され,偽装工作が排除される。これにより,捜査が難航する。この,偶然あった他者の行為により,身元不明の死体についての謎が深まるという構成も,ヴィラ・マグノリアの殺人と同じである。
根底にあるのが,10年以上前の秀春の母,初穂という女性を工藤が殺害したという事実。こういった込み入った背景事情と,それを示す伏線の数々が,この作品の魅力。このプロット…というか小説の構成は,綾辻行人っぽい。いろいろな描写,一見関係なさそうな描写の中に,膨大な伏線がちりばめられている。
しのぶが男性とデートをしていたという千秋のセリフが,しのぶと秀春が会っていたことの伏線になっている。また,「犯行現場には,乳母車を押した女性を見たという目撃情報がある」といった警察のセリフが秀春と麻依親子が会っていたことの伏線となっている。こんなのがいっぱいつまっている。
秀春が紅子の子どもだったこと,麻依が秀治の自殺に関わっていたこと,そもそも死体が本当に秀春の死体だったこと,子供時代のしのぶが秀治を殺そうとしていたことなど,最後の最後でいろいろな真相が暴かれ,後で読み返すとこのあたりの伏線もちりばめられている。そういった意味では,本格ミステリ好き=ミステリマニア向けの作品といえる。
コージーミステリとしてのユーモアもあり,本格ミステリ好きのための伏線の数々もあって,マニアからは評判がよさそうな作品
しかし,個人的な感想としては普通。伏線をちりばめるための余計な描写が多すぎる印象がある。そのため,物語の本筋がつかみづらく,それほど驚けなかった。書き方によっては,もっとスリムにして,驚かす構成にもできたと思う。
若竹七海作品に出てくるキャラクターは嫌いではない。さっぱりしていて,悪役もそこまでどぎつくない。ただし,どの作品のヒロインも同じイメージなのが難点。物語の背景に漂う,底意地の悪さと読後感の微妙さ(特に紅子について)も若竹七海らしい。傑作とまではいえないが,それなりに楽しめる作品といえる。トータルは★3で。
謎の死体(マイケル・カトウ=前田秀春)殺害
篠山麻衣が犯人。秀春の自殺を助け,偽装工作を排除
前田紅子殺害
古川恒子が犯人
トリックなど
入り組んだ人間関係が動機を隠す。これといったトリックはなし
相澤真琴
不幸続きで,海に向かって「バカヤロー」というために波崎市に来た女性。死体を発見する。
渡部千秋
葉崎FMという地元ラジオ局で働く。
前田満知子
名家,前田家の女実業家。葉崎FMを開局
渡部勝
渡部千秋の父。喫茶店「ブラジル」のマスター
前田しのぶ
前田満知子の娘。女子大生
前田紅子
古書アゼリアを経営している。満知子の叔母
前田秀春
しのぶの従妹。失踪中
五木原充
巡査部長
駒持時久
警部補
前田(由良)初穂
元ホステス。秀春の母
篠山結依
前田家の分家
丸岡平輔
歯科医
工藤光一郎
葉崎Fのプロデューサー兼ディレクター
木ノ内幸也
葉崎FMのアルバイト社員
木ノ内光彦
幸也の兄。葬儀社の婿
荻原武一
構成作家
古川恒子
前田真知子の秘書
〇 メモ
勤め先の倒産,ホテルの火事,10円ハゲ,新興宗教からの勧誘…不幸続きの相澤真琴が海に向かって「バカヤロー」と叫ぶために葉崎市を訪れる。そこで,人間の死体を発見する。
発見された死体は前田真知子宛ての手紙を持っていた。真琴は,葉崎ロイヤルホテルに泊まることになる。
真琴は古書アゼリアを訪れる。真琴は,古書アゼリアで,紅子に見込まれる。紅子は,しばらく検査のため入院するという。そこで,第1回葉崎ロマンス祭りの開催のため,しばらく古書アゼリアを任せたいと依頼される。
警察では,発見された死体は,前田秀春のものであろうと確認された。
篠山麻依と渡部千秋は,前田秀春について話す。真琴は駐車場を借り,アゼリアで紅子と話す。
前田真知子は病院で,死体が秀春だと証言する。手紙は遺書だったというが,駒持警部補は真知子に渡す前にコピーを取っていた。内容が変わっていた。
警察の捜査。まずは,中華料理店〈福福〉で聞き込み。
千秋の視点。工藤が秀春について調査をしていたのは,死体の身元が分かる前だったことに気付く。。喫茶ブラジルでの関係者の話
捜査会議。秀春の死を自殺で片付けたい署長に,駒込と五木原は抵抗する。
古書アゼリアの店番をしていた真琴は,千秋達に泥棒と間違えられる。
駒込と五木原は捜査を続ける。工藤の雇った興信所の探偵を探り出す。
五木原は真琴の捜査をする。結果として,真琴は疑われ,紅子に会いに行く。紅子の病室には,千秋と木ノ内兄弟がいた。
紅子の頼みで4人は秀春の死体を紅子のもとに運ぼうとするが失敗する。
駒込は,真知子のもとに秀春宛ての手紙を出した人物が「マイケル・カトウ」という人物であることを突き止める。その後,古書アゼリアで,前田真知子の死体が見つかる。
真琴に尋問。真琴は,棺桶の中に入っていたというアリバイを主張するが,認められない。駒込達は,真知子殺害を紅子に伝える。
真知子殺しの捜査。秘書の古川恒子への聞き込みで,丸岡平輔と真知子が以前から知り合いだったことが分かる。
喫茶ブラジルで千秋達に聞き込み。真知子は信金の融資をかさに,商店街の経営にも口を出していた。そして
,警察は,中華料理店〈福福〉の店主から,離婚後の初穂を見掛けたという話が嘘であったと聞き出す。
警察は,丸岡医師から,かつて真知子と不倫関係にあり,最近は脅迫されていたことを聞き出す。しかし,死体は秀春の死体だったと言い切る。
紅子は死体を確認し,秀春ではないと言い切る。
千秋は真琴と話しをし,葉崎FMに戻り,真知子殺しの犯人が古川恒子であることに気付く。
千秋は,真知子が派手な赤いスーツからチャコールグレーのスーツに着替えていたことから,葉崎FMに来て,着替えていたということに気付く。そして,そのことを黙っていた古川恒子が嘘をついていると見抜いた。
古川恒子による動機の告白。恒子は,工藤に振られ,真知子に罵られたことから,発作的に真知子を殺害した。
その後,古書アゼリアで,真琴が泥棒に襲われる。巡回に来た五木原が泥棒を捕まえると,泥棒は工藤光一郎だった。
五木原,千秋達が喫茶ブラジルに集まる。工藤は,学生時代,古書アゼリアでアルバイトをしていた。
葉崎ロマンス祭り。会場で,駒込は紅子から話を聞く。マイケル・カトウは,ホテルの火事で婚約者に先立たれていた。自殺をしようとしていたが,自分を殺害した疑いを真知子に向けようとしていた。マイケル・カトウは,前田秀春だったのだ。
駒込と紅子の会話。工藤は,かつて,真知子に頼まれ初穂を誘惑し,離婚に追いやっていた。そのことがあったので,真知子は工藤を優遇していた。
工藤は初穂を殺害してしまい,真知子は隠蔽に協力した。紅子もそのことに気付いていた。秀春は,紅子の力でアメリカに送られ,マイケル・カトウとして生きることになる。
実は,秀春は紅子の子どもだったのだ。紅子は,かつて,日系三世のカトウと不倫をし,子供を産んだ。そして,英雄と初穂の子どもとして育てられた。
篠山麻依の回想。実は,前田秀春を殺害したのは麻依だった。かつて,麻依の母結依と英雄との再婚を阻止した秀春。その秀春から心ない言葉を聞き,自殺に見せかけて殺害した。
しのぶは秀春と会っていた。秀春は,自分をしのぶが殺したと見せ掛けようと思っていたが,麻依の行動がそれを阻止した。
エピローグは,前田家でのディナー。しのぶは,葉崎FMを屋敷で放送するように,千秋に言おうとしている。
Posted by ブクログ
次々と不幸な目にばかり遭ってしまう真琴は、辿り着いた葉崎市の海岸で溺死体の第一発見者になってしまう。
運良く古書店アゼリアの店番の職にありついた真琴だが、そこでも新たな死体が。
事件の陰には葉崎氏の名門・前田家にまつわる秘密があった…。
「ヴィラ・マグノリアの殺人」に続く、葉崎市を舞台にしたコージーミステリ。
前作で登場した人物が少し出てきますが、独立したお話なので前作を読んでいなくても問題ありません。
地方の資産家の親族同士の愛憎劇の上、トゥーマッチな登場人物たちがわんさか出てきて、ちょっとテレビの二時間サスペンスみたい…と思いきや、終盤のどんでん返しの見事さに感嘆させられました。
軽妙洒脱な会話と細かいエピソードの積み重ねが後で効いてきて、見事に最後に収束させる手腕が巧み。
前作よりも完成度が高く、伏線回収が綺麗です。
ブラックすぎる皮肉な結末が若竹さんらしくて、読んでてゾクゾクしました。
こういうゾッとする感じが大好きなので、若竹さんの本を読むのがやめられないんですよ~!
Posted by ブクログ
若竹さんの本は本屋さんになかなか無くて、いつも古本屋さんに行って見つけます。だからアゼリアの雰囲気とか真琴さんの編集での古本屋特集とか、読んでてワクワクします。若竹さんお得意のコージーミステリィ。とても面白かった!他のシリーズも目下探し中。
Posted by ブクログ
楽しく読めました。
コージー・ミステリの定義を池上冬樹さんの解説で取り上げています。「恐ろしい事件が起こっても、それが解決すると再び平穏な、心地よい平凡な日常的な生活に戻っていけるという安心感に支えられたミステリー」なんだそうで。まさに本書はコージー・ミステリ。
若竹氏の作品を読んでいつも思うのが、伏線の上手さ、面白いキャラの登場人物たちの上手さです。
本書でも古書店「アゼリア」のオーナーで大富豪でもあり、めちゃロマンス小説に詳しい紅子さんがいい味をだしています。
なんとなくキャロリン・G・ハートの作品を読んでいるような感じもしました。(意識しているのかもしれないのですが)。
すっかり紅子さんファンになりましたよん。また紅子さんが登場する小説が読みたいです。
Posted by ブクログ
照れくさくてロマンス小説に手が伸びないのが、少し読んでみたくなった。
SFの「たんぽぽ娘」とか。「レベッカ」とか。
本編は軽快に進むのに、所々に毒があって後味が 悪い。
でも現実的に考えると、後味の良い事件なんてないか。
誰が主人公なの?
登場人物の立位置がいまいちわかりずらいのでぐいぐい引き込まれていかない。本に関するうんちくもイマイチ。ビブリア古書堂の事件簿に比べるとだいぶ落ちるかなぁ。