あらすじ
タフで不運な女探偵・葉村晶史上、最悪最低の事件が幕を開ける!
晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重症を負い、記憶を失ったミツエの孫・ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する――。
解説・戸川安宣
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
やっぱり面白い。寝不足になる。
葉村晶が思った気づいた事、でも、書かれていない事。書かれていない事がクセになる。
伏線がたくさんある、というかほぼ伏線みたいな感覚になる。ちゃんと回収されていくのが気持ちいい。
Posted by ブクログ
葉村晶は探偵だが古本屋の店員でもあり、彼女の大活躍を辿る内容だが、登場人物が多彩で非常に楽しめた.まず青沼ミツエと孫のヒロト.ミツエの喧嘩に巻き込まれ、縁があってミツエ所有のアパートに住む葉村.元々岡部巴所有のシェアハウスでに佐々木瑠宇と住んでいた.ヒロトは父光貴と交通事故に遭い、父は死亡、ヒロトは重症でリハビリ中.光貴の残した本やレコードなどを処分することになり葉村が担当するが、ミツエの従妹牧村英恵が現れいちゃもんを付ける.処分を始めようとしたら、アパートが火事でヒロトは焼死.そこから話が展開する.当麻茂と郡司翔一の警官コンビ、病院経営の江島琢磨・茉莉花、飛島市子等々が登場するが、スカイランドでヒロトの同級生らが不審な動きをしており、葉村が出石武紀らを追及し、真相に迫る.光貴の元妻・李美はヒロトを置いて佐藤和仁とアメリカに奔走したことになっていたが、意外な事実が判明し、葉村の推理が冴えわたる.表題は謎めいているが、李美と葉村がスカイランドの観覧車で謎解きをする場面を象徴しているようだ.
本当に面白い、そして悲しい。
ユーモアやセンス、怒濤の展開。本当に裏切らない。葉村晶と出逢ってから自分も歳を重ねたなと感じる。また近いうちに会えますように。
Posted by ブクログ
尾行していた老女・梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれ、成り行きでミツエの持つ古いアパートに移り住むことになった葉村晶。
ミツエの孫ヒロトは交通事故で重傷を負い、何故現場にいたかの記憶を失っていた。リハビリ中のヒロトに現場にいた理由の調査を請け負う晶。
『悪いうさぎ』の黒さが良かったけど、次の2作がちょっと物足りなくて読んでいなかったけど新作が出たので。
これは良い。とても面白く、葉村晶は不幸だし、黒いし好み。次も読んで新作へ。
Posted by ブクログ
相変わらず巻き込まれる体質の葉村さんが、今回もいろんな人にいいように巻き込まれながらも意地と運と才能により、紆余曲折あり怪我だらけになりくじけそうになるところを踏ん張って、何とか真相にたどり着きます。
ほとんどツイてないことばかりですが、たまに掴み取る幸運によって前進してゆく姿に同情しつつも少しだけ憧れる不思議な魅力は、女性探偵として唯一無二の存在です。
ただ、今回の作品は長篇だけあってか少し人物相関図がややこしくて、読みながら少し戸惑いました。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズ長編。どうしてこうも葉村晶は不運と不幸を呼び寄せるのか。前半あまりにトラブルばかりの葉村に読み進むのがつらかったが、後半いろいろな伏線が回収されていき、葉村の不幸度には読むのが辛くなるけど、最後はなんとか落ち着いた。
Posted by ブクログ
主人公に魅力があるので今回も面白かった。
大どんでん返しではないけれど、なるほどそういう理由だったのかと納得はできる。
フィクションなので色々なご都合主義があるのは当たり前なのだが、警察署でのやり取りの中であり得ない部分があり、そこだけ違和感があったので、もう少し現実に即した方が良かった。
Posted by ブクログ
旅のお共として。今回は長編。一気に読めて良かった。やっぱ長編の方が切ないし、葉村晶がもっとひどい目にあう気がする。ヒロトとミツエさんが死んだのはほんとに切ない。最初の出だしで、まさか葉村晶が結婚?!って思っちゃったよ。最初から親友という竜児は怪しかったのに、葉村が触れないから、ますます怪しくなった感はある。しかし息子の親友を殺そうとするなんて、母親もその父親も狂ってる。それで息子が救われると思うのか。
Posted by ブクログ
不運な女探偵・葉村晶シリーズ第六弾。
葉村晶ももう40代半ば。時の流れを感じる。
初っ端から早速血まみれになっている葉村、たくましい。でもいくらタフだといってもこんな生活をしていたら体がもたないよと心配してしまう。
「大丈夫、苦しいだけ。痛いだけ。最悪でも死ぬだけ。大丈夫。」なんて言っていて全然大丈夫じゃないシーンもあって本当に心配してしまった。
でもトラブルがあちらからやってきてしまうので葉村に選択権は無いのだった……。何気に良い人だし巻き込まれ率も高い。
火事でトラウマがまた一つ増えたのが今後響いてくるのかな。
今回は、まったく無関係に思えた人々がどんどん繋がっていくのが面白かった。人間は恐ろしい。かなり入り組んだ話だった。
葉村の足で集める情報も、鋭い推理もすごく好き。次も楽しみ。
ミステリ書店のイベントが魅力的で、読んでいるだけでワクワクしてくる。
Posted by ブクログ
最初のちょっとした依頼がいつの間にか大事に。超不運なのは主人公だけじゃないのが珍しい(殺人起こるミステリに不運じゃない人の方が少ないけど)
謎が解けていくほど悲しくなる。
Posted by ブクログ
尾行対象の喧嘩に巻き込まれ、いつの間にやら別のおばちゃんと暮らすことに。晶だともう何も驚かない。今回は琉宇さんに驚く。シェアハウスじゃなくなるのは寂しいけど、古本屋の店長好きじゃないから別のところにいてほしいけど、きっと吉祥寺に落ち着くのだろうなぁ ミツエもヒロトも死んじゃって、なんだかやるせない話だった。こんなにも自分のことしか考えられなくて、頭おかしい人って、でもいるんだよなって思う。片桐もそうだけど、市子も。 晶にはいつかみんなのことをぎゃふんと言わせてほしい。 早く新作が読みたい。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズの長編。
探偵の仕事として高齢女性を尾行していた晶は、ターゲットのトラブル現場に遭遇して怪我を負ってしまう。
それがきっかけで、青沼家と近づき、なぜか青沼のアパートに暮らすことになる。
青沼ヒロトから「自分が交通事故にあったとき、父となぜあの場所にいたのか調べてほしい」と頼まれる。また、事故死したヒロトの父の遺品整理も頼まれる。
遺品整理を翌日に控えた日の夜、アパートは火事により全焼、晶は助かるが、火元になった部屋にいたヒロトは死んでしまう・・・。
壮絶すぎませんか?!
ヒロトとの生前の約束を果たそうとする晶に、様々な人間が関わってきて、次々と問題がおき、事件はふくれあがっていく。
晶は、ヒロトが頼んだことの結論にたどり着くことができたけど、もしヒロトが死んでおらず、真実を知ったら、ヒロトは生きながら苦しんだことだろう。
タイトル「錆びた滑車」とは、星の王子さまの一節から。
すべての星が錆びた滑車のついた井戸になり、飲み水をそそいでくれる・・・。
ラストで晶も、空の星を見上げる。
冬の冷たい風に吹かれても、ミツエとヒロトを失ったことに対する、悲しみと悔しさの涙を乾かすことはできない。
星が晶に注いだ「飲み水」は、夢のような時間の回想から現実に引き戻されたことによる涙だったのか…。
葉村晶シリーズは、ちょこちょこ星の王子さまモチーフが出てくる。今作では、「狐とバオバブ」という料理店。ミツエの遺体を見た晶が、体は抜け殻と思ったこと・・・。
事件のすべてが解決した後、晶は、ヒロトとミツエと過ごした数日間のことを、「魔法のような時間」、「時として人生に訪れる素晴らしい時間」と振り返る。
これはまさに「大切なものは目に見えない」という、星の王子さまの格言に繋がる気がした。
晶ってすごく優しいし、だからこそ、事件の幕引きでは晶がかわいそうに思った。
今作のラストでは、晶が暮らしていたシェアハウス「スタインベック荘」からも退去し、心を寄せた青沼家は死に、一緒に過ごした場所もなくなった。
晶の孤独が、私の心にも染みた。
Posted by ブクログ
葉村晶は長編の方が私は好き。
毎度のこと話が進むにつれ痛みつけられる葉村だが、今回は肉体よりも心の方が痛かったか(怪我も酷いけど)。
伏線もきっちりと回収されている。
冒頭の文で、今回はもしかして…と思ったが哀しい話だった。読み終わってから冒頭に戻って、タイトルの意味もわかった。
Posted by ブクログ
最近テレビドラマ化。見てみたい。読んでいて苦しくなるほど、災難に見舞われる女探偵。これだけ、つらくても、頑張れのは探偵という仕事が好きだからなんでしょうね。シリーズ終了の際にはぜひもう少しいい暮らしができることを望みます。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズ第5弾
長編がやっぱり好き
今回もしっかり不幸に愛される探偵だった
でも不幸な目に遭うのは身体だけにしてほしい
いやそれも可哀想ではあるのだがちゃんとタフだからなんとかなるし なんとかする
あんたもね、探偵
束の間とは言え 魔法のような時間を過ごした者には堪える
どんな経験をしても 心はタフになれない
Posted by ブクログ
今年初めに彼女(葉村晶)のことを知ってから、ずっと人生を追いかけてきた。そして現代に近づいてきた。2018年8月文庫書き下ろし。物語は、その冬の真っ最中に終わる。2017年秋には、東京オリンピックのことも知っていたし、40代中頃だと言っていた。物語の最後には、吉祥寺の知る人ぞ知るミステリ専門古書店の二階に探偵社を兼ねて住み着くことになった。いよいよ逢いにいけるかもしれない(←いや、ムリだけど)。
「世界で最も不運な探偵」という冠はそのままに、けれども今回の解説子はそのことには触れずに「古今東西の推理小説や、場合によっては映画に関する蘊蓄」を持つ「マニアックな探偵」として紹介している。ちょっと我が意を得たり。物語のキーマン、ヒロトの信頼を勝ち取るきっかけになった会話で、葉村晶は、昔読んだ本でタイトルを思い出さないヒロトに易々古本屋の棚から当該本を渡す。
「夏休みに金貸しが殺されて、緑色のズボンとパン屋が出てくるやつ。警部さんが食べる、焼きたてのクリームパンがうまそうだったんだよなあ」もちろん「罪と罰」じゃない。「カッレくんの冒険」(岩波少年文庫)である。葉村晶によると、「児童ミステリの基本中の基本」らしい。そうなのか?
それと、歳はとってもやはり彼女は自己肯定感が少なくて友だちに優しい。
「わたしが瑠宇さんを傷つけたわけではない。彼女も勝手に傷つき、しかも傷ついたのをわたしに知られて、さらに傷ついていた。何ひとつわたしのせいではなかったが、後味は悪かった」(102p)果たして葉村晶は瑠宇さんの恋のキューピットになれるのか?
それと、現代に近づいてスマホはどんどん高性能になってきたけど、葉村晶の詩的な呟きは健在である。
「引き戸の脇に日本酒メーカーのポスターが貼ってあったが、徳利を差し出している着物姿の女性は三十三回忌を過ぎた魂魄並みに消えかけていた」(188p)
「遊園地は祝祭の上に祝祭を重ね、非日常の上に非日常を乗せて、訪れる人々をめいっぱいもてなそうとしていた」(305p)
例によって、わたしは葉村晶の事件のことは一切語らない。ミステリ好きならば決して裏切らない、と保証しておこう。伏線回収好きな読者も十分満足できる。「錆びた滑車」の文句がまさか此処で出てくるとは!とは思った。タイトルさえ、伏線だったのか!
あと一冊しかない。次回を紐解くまで、いつまで我慢が持つのか。
Posted by ブクログ
これは今までで、もっとも悲劇的な内容でした
序盤に事件が起き、中盤は割と淡々と捜査が進み、終盤に何度も展開が転びます
探偵ものらしい小説になっていました
警察があまりにも間抜けとか、語りすぎる証言者など定番とも言える突っ込みどころも
今までの長編作品と比べると、うまく収束しているように感じます
言いたいことをぐっと耐える大人な主人公が魅力
Posted by ブクログ
ハムラアキラシリーズ。
長編。読みごたえあり。
二転三転していく展開。
それとは逆にストーリーと結末はもの悲しい。
人間のエゴなのだろうか。
葉村の年齢を重ねた姿に哀愁が漂う。
Posted by ブクログ
昨日読んだ「不穏な眠り」の前に出版された本だけど、順番間違えちゃった。
でも葉村晶の住所にこだわらなければ問題なし。(強弁)
長篇はやはり面白い。
畳みかけるように次々彼女を襲う不運。
だって、膝の悪い老女を尾行するというラクショーな仕事をしていて、どうして2階から降ってくる老女の下敷きになりますか?
途中から彼女の仕事はヒロトからの依頼である、交通事故の時、なぜ自分はその場所にいたのかを調ベていたのだけれど、火事に巻き込まれ、薬を盛られ、留置所に放り込まれ、包丁を向けられる。
それでなくても住む場所に事欠き、寝ようとすれば電話が鳴り、食事をとろうと思えばタイミングを逃し、支出は収入を上回る。
いやあ、お疲れさま。(笑)
このシリーズはとにかくどんな困難にも満身創痍で立ち向かう葉村晶の魅力にある。
何事もなかったかのようにやり過ごすのではなく、困難は確実に彼女の心身にダメージを与える。
事件のトラウマは彼女を苦しめ、加齢による、またはこのような生活のせいか体力の衰えも甚だしく、いいことなんてめったにないのに、へこたれたまま頑張る彼女の姿が気持ちいいのだ。
私も、ヘタレでもいいからできることを頑張ろうと思える。
ところで今、ドラマ化されているようだけど、私のイメージでは葉村晶はシシドカフカではない。
じゃあ誰かと言われると、すぐには思いつかないけれど。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズでもかなり読みごたえのある話。でも冒頭で語られている通り、なんとも悲しい話だったか。
いつのまにやらNHKでドラマ化されちゃって、映像化される前に読まなくては!と思っていたが、この話は採用されなかったらしい?新しめだから?
運が悪いとかそういうことでもなく、ほんとに体も心もぼろぼろ。それでも葉村はやるよねと思わせる。
葉村と一緒に推理を巡らせるのだけど、これでもなかったかと進んでいく。
それにしてもほんとに休ませてもらえない葉村。ようやく眠れそうなのに、一時間おきにそれぞれ別の人から畳み掛ける電話など、読んでいる自分まで辛くなりそうになりながら、この書き方うまいなとちょっとだけ笑っていたりもした。
とても救いようのない感じの話だったけれど、葉村にはちゃんと居場所はあるというような終わりかたで、ちょっとだけほっとしたような?気もする。
Posted by ブクログ
『このミステリーがすごい!2019年版』第3位受賞作品。仕事はできるが、不運すぎる女探偵・葉村 晶シリーズ第6弾❗️
『このミス』の上位作品ということで期待値も高くなって読み進めましたが、結果から言うと『さよならの手口』に比べると若干読み足りなさが残った作品でした❗️
シリーズ全体を通して、ストーリー展開はテンポも良く多少のユーモアもあって、本格ミステリーとはいかないまでも、そこそこの無骨なミステリーを求めている方には、オススメのシリーズです♫今回のミステリー紹介も殆ど読んだことがない作品ばかりでした❗️
Posted by ブクログ
相変わらず、事件が起こりそうにない所から、事件に巻き込まれる?事件の始まりは怪我から。
今回も尾行相手の転落に巻き込まれ、病院送りになる葉村。喧嘩相手と仲良くなり、高齢者運転事故に巻き込まれたその孫と交流していると、火事に巻き込まれ…
孫の人生を追って行くと、そこには麻薬が関わっていた⁈
Posted by ブクログ
硬い文体。読み始めるとハードボイルドものかなと思わされる。でも、主人公はおばさん。
だから、という不満も特にはないのだが。
途中から興に乗って最後まで一気に読んだのだけれど、正直、微妙な後味。
全般的に死人に口無し、っといった感じ。死者の話を探偵が語るだけ。一人語りなのかな?
ミステリとしては、物語が提示する謎に興味がわかないので、惹き込まれることもない。
物語に、読み手の気持ちを掴むようなフックを仕込めていない感じ。
Posted by ブクログ
シリーズの6作目。これまでの5作も全部読んでて、前作の「静かな炎天」を読んでから3年余りだが、昨年(2020年)の冬にシシド・カフカさん主演のNHKの連ドラを見たので、そのイメージしか出て来ない。ドラマの時は、こんなんだったっけって思いながら見てたんだけど、もうカフカさんのイメージしか出て来ないし、ピッタシやわ。恐ろしいなあ、目からの情報は ^_^
Posted by ブクログ
このミス2019年版3位。葉村晶シリーズ5作目くらい。独特の文体。主人公の探偵の頭が切れてクール。アクションシーンもこなすけど不器用っぽい。探偵の発言や探偵視点の地の文が、友達同士で軽口をたたくようなノリで楽しい。軽い雰囲気だけど、推理の展開が早く、推理内容の説明も少ないので、ほとんど展開についていけない。このミスでいつも評価高いんだけど、皆さんこれきちんと理解しながら読んでるんですかね。登場人物も誰が誰だか覚えられなくって、これ、自分の頭が老化してるからなのかが気になる。平易な文章でユーモアにあふれており、一見、ラノベのようなんだけど、実はストーリーが難解で時間かかる。多分、自分が読むのは4作目なんだけど、もう少し頭が回って展開についていければもっと面白いのかもという消化不良感がいつも残ってしまうのです。あと、ミステリーのうんちくが多いのもちょっとしんどい。
Posted by ブクログ
空が降ってきた、とは『愛の讃歌』を歌う時のセリフの一つだが、本作では人が降ってきた。
不幸中の幸いが、生死に関するような怪我を誰もしなかったということ。
青沼ミツエ、石和梅子。
このご婦人方が降ってきた人々。
ちょっとした調査のはずが、たくさんの人を巻き込み、葉村晶自身も巻き込まれ、心が痛む。
何より、青沼家の秘密が、心苦しくてたまらない。
めんどくさいことに巻き込まれつつも、微笑ましい、ほっとする、そんな暖かな情景は、炎に包まれた。
炎はあらゆるものを焼き尽くす。
何もかも。
大切な、ウサギの常夜灯も、なくなってしまった。(『悪いうさぎ』参照)
やりきれない思いを残す本シリーズだが、見事なのが、関係のない人を関係者にしてしまう手法。
あれもこれも伏線だったか、と思う。
あまりトリックを明かしてしまうと面白味がないので言えないのが残念だ。
読者がつなぎ合わせた点は全くの出鱈目だった、という「騙される技量を持っていると、本当に面白い。
だけど、今は人が死んでしまう話は苦しいな。
作り物だろうと。現実であれば、なおさら。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズ最新作。
老女の尾行を依頼された晶は、老女同士の喧嘩に巻き込まれいきなり大怪我をするという不運から始まる。
喧嘩相手の懐に入り込むことになってしまった晶は更にその家族の謎に魅せられのめり込むことになる。
相変わらず晶の周りには良く言えばマイペース、悪く言えば自分本位な人間ばかりがいる。
富山店長や桜井(こちらはたまには気を遣ってくれるが)は言うまでもなく、警察の当麻、大家の姪、成り行きで住むことになったアパートの持ち主ミツエ、その孫ヒロト、その周囲の人々…。
彼らの主張は端から見れば全くの身勝手で受け入れる必要はないのに、それを拒否すればどんな悪意が跳ね返ってくるかわからないだけに恐ろしい。
こんな人々に囲まれていたら精神がどうにかなりそうなものの、それでも自分を保ち自分がやるべきことを見失わない晶のタフさには感心しかない。
だが次々降りかかる不幸とお願いと悪意とでさすがの晶も推察力が翳っていたような。真犯人については俯瞰で見ていた読者の方が早く気付くだろう。
これほど頻繁に骨折していたら骨の形がおかしくなるのでは…などと素人ながら心配してしまう。
なんとか次の住居も確保出来たらしいのでその点は安心したが、経済的な安定からはまだまだほど遠いようだ。