あらすじ
タフで不運な女探偵・葉村晶史上、最悪最低の事件が幕を開ける!
晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重症を負い、記憶を失ったミツエの孫・ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する――。
解説・戸川安宣
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
尾行していた老女・梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれ、成り行きでミツエの持つ古いアパートに移り住むことになった葉村晶。
ミツエの孫ヒロトは交通事故で重傷を負い、何故現場にいたかの記憶を失っていた。リハビリ中のヒロトに現場にいた理由の調査を請け負う晶。
『悪いうさぎ』の黒さが良かったけど、次の2作がちょっと物足りなくて読んでいなかったけど新作が出たので。
これは良い。とても面白く、葉村晶は不幸だし、黒いし好み。次も読んで新作へ。
Posted by ブクログ
旅のお共として。今回は長編。一気に読めて良かった。やっぱ長編の方が切ないし、葉村晶がもっとひどい目にあう気がする。ヒロトとミツエさんが死んだのはほんとに切ない。最初の出だしで、まさか葉村晶が結婚?!って思っちゃったよ。最初から親友という竜児は怪しかったのに、葉村が触れないから、ますます怪しくなった感はある。しかし息子の親友を殺そうとするなんて、母親もその父親も狂ってる。それで息子が救われると思うのか。
Posted by ブクログ
不運な女探偵・葉村晶シリーズ第六弾。
葉村晶ももう40代半ば。時の流れを感じる。
初っ端から早速血まみれになっている葉村、たくましい。でもいくらタフだといってもこんな生活をしていたら体がもたないよと心配してしまう。
「大丈夫、苦しいだけ。痛いだけ。最悪でも死ぬだけ。大丈夫。」なんて言っていて全然大丈夫じゃないシーンもあって本当に心配してしまった。
でもトラブルがあちらからやってきてしまうので葉村に選択権は無いのだった……。何気に良い人だし巻き込まれ率も高い。
火事でトラウマがまた一つ増えたのが今後響いてくるのかな。
今回は、まったく無関係に思えた人々がどんどん繋がっていくのが面白かった。人間は恐ろしい。かなり入り組んだ話だった。
葉村の足で集める情報も、鋭い推理もすごく好き。次も楽しみ。
ミステリ書店のイベントが魅力的で、読んでいるだけでワクワクしてくる。
Posted by ブクログ
尾行対象の喧嘩に巻き込まれ、いつの間にやら別のおばちゃんと暮らすことに。晶だともう何も驚かない。今回は琉宇さんに驚く。シェアハウスじゃなくなるのは寂しいけど、古本屋の店長好きじゃないから別のところにいてほしいけど、きっと吉祥寺に落ち着くのだろうなぁ ミツエもヒロトも死んじゃって、なんだかやるせない話だった。こんなにも自分のことしか考えられなくて、頭おかしい人って、でもいるんだよなって思う。片桐もそうだけど、市子も。 晶にはいつかみんなのことをぎゃふんと言わせてほしい。 早く新作が読みたい。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズの長編。
探偵の仕事として高齢女性を尾行していた晶は、ターゲットのトラブル現場に遭遇して怪我を負ってしまう。
それがきっかけで、青沼家と近づき、なぜか青沼のアパートに暮らすことになる。
青沼ヒロトから「自分が交通事故にあったとき、父となぜあの場所にいたのか調べてほしい」と頼まれる。また、事故死したヒロトの父の遺品整理も頼まれる。
遺品整理を翌日に控えた日の夜、アパートは火事により全焼、晶は助かるが、火元になった部屋にいたヒロトは死んでしまう・・・。
壮絶すぎませんか?!
ヒロトとの生前の約束を果たそうとする晶に、様々な人間が関わってきて、次々と問題がおき、事件はふくれあがっていく。
晶は、ヒロトが頼んだことの結論にたどり着くことができたけど、もしヒロトが死んでおらず、真実を知ったら、ヒロトは生きながら苦しんだことだろう。
タイトル「錆びた滑車」とは、星の王子さまの一節から。
すべての星が錆びた滑車のついた井戸になり、飲み水をそそいでくれる・・・。
ラストで晶も、空の星を見上げる。
冬の冷たい風に吹かれても、ミツエとヒロトを失ったことに対する、悲しみと悔しさの涙を乾かすことはできない。
星が晶に注いだ「飲み水」は、夢のような時間の回想から現実に引き戻されたことによる涙だったのか…。
葉村晶シリーズは、ちょこちょこ星の王子さまモチーフが出てくる。今作では、「狐とバオバブ」という料理店。ミツエの遺体を見た晶が、体は抜け殻と思ったこと・・・。
事件のすべてが解決した後、晶は、ヒロトとミツエと過ごした数日間のことを、「魔法のような時間」、「時として人生に訪れる素晴らしい時間」と振り返る。
これはまさに「大切なものは目に見えない」という、星の王子さまの格言に繋がる気がした。
晶ってすごく優しいし、だからこそ、事件の幕引きでは晶がかわいそうに思った。
今作のラストでは、晶が暮らしていたシェアハウス「スタインベック荘」からも退去し、心を寄せた青沼家は死に、一緒に過ごした場所もなくなった。
晶の孤独が、私の心にも染みた。
Posted by ブクログ
昨日読んだ「不穏な眠り」の前に出版された本だけど、順番間違えちゃった。
でも葉村晶の住所にこだわらなければ問題なし。(強弁)
長篇はやはり面白い。
畳みかけるように次々彼女を襲う不運。
だって、膝の悪い老女を尾行するというラクショーな仕事をしていて、どうして2階から降ってくる老女の下敷きになりますか?
途中から彼女の仕事はヒロトからの依頼である、交通事故の時、なぜ自分はその場所にいたのかを調ベていたのだけれど、火事に巻き込まれ、薬を盛られ、留置所に放り込まれ、包丁を向けられる。
それでなくても住む場所に事欠き、寝ようとすれば電話が鳴り、食事をとろうと思えばタイミングを逃し、支出は収入を上回る。
いやあ、お疲れさま。(笑)
このシリーズはとにかくどんな困難にも満身創痍で立ち向かう葉村晶の魅力にある。
何事もなかったかのようにやり過ごすのではなく、困難は確実に彼女の心身にダメージを与える。
事件のトラウマは彼女を苦しめ、加齢による、またはこのような生活のせいか体力の衰えも甚だしく、いいことなんてめったにないのに、へこたれたまま頑張る彼女の姿が気持ちいいのだ。
私も、ヘタレでもいいからできることを頑張ろうと思える。
ところで今、ドラマ化されているようだけど、私のイメージでは葉村晶はシシドカフカではない。
じゃあ誰かと言われると、すぐには思いつかないけれど。
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズでもかなり読みごたえのある話。でも冒頭で語られている通り、なんとも悲しい話だったか。
いつのまにやらNHKでドラマ化されちゃって、映像化される前に読まなくては!と思っていたが、この話は採用されなかったらしい?新しめだから?
運が悪いとかそういうことでもなく、ほんとに体も心もぼろぼろ。それでも葉村はやるよねと思わせる。
葉村と一緒に推理を巡らせるのだけど、これでもなかったかと進んでいく。
それにしてもほんとに休ませてもらえない葉村。ようやく眠れそうなのに、一時間おきにそれぞれ別の人から畳み掛ける電話など、読んでいる自分まで辛くなりそうになりながら、この書き方うまいなとちょっとだけ笑っていたりもした。
とても救いようのない感じの話だったけれど、葉村にはちゃんと居場所はあるというような終わりかたで、ちょっとだけほっとしたような?気もする。