大沢在昌のレビュー一覧
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ネタバレ天使シリーズ「天使の牙」の続編。
脳移植により、別人の体を持つ、神崎アスカは麻薬取締官と成る。
一方、アスカの脳移植を行ったポーランド人のコワルスキー博士は、アメリカで脳移植の実験をしていたが、アメリカでは脳移植が許されないため、ロシアに移った。
ロシアで、脳移植を行い、アスカに次ぐ二人目の脳移植を成功させた。
ロシアで脳移植された人物は殺し屋だった過去を持つ「狼(ヴォールク)」と呼ばれる男だった。
ヴォールクは、自分と同じ脳移植者のアスカの存在を知り、並々ならぬ興味を抱く。
チェチェン人、中国人、ロシア人、などがアスカの前に立ちはだかる。
上巻は620ページ、下巻は593ページと、「天使の牙」よりも大幅なボリューム増だが、緊迫する物語の展開に、上巻は一気に読み終わってしまった。
下巻も一気読みになるか? -
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「狼花」新宿鮫シリーズ第9弾。
前作にも出てきた仙田が今回の主軸。
今作品が今までの新宿鮫シリーズの中で最高に面白かった。
「泥棒市場」という盗品売買を専門にしたマーケットを持つ仙田が遂にそのベールを脱ぐ。
関西一大広域暴力団「稜知会」がその市場に麻薬を持ち込み、市場を乗っ取る計画を立てていた。その稜知会の構成員石崎とそのマーケットで仙田の下で鍵を握っている中国人女性•明蘭を巡っての仙田•石崎•明蘭の三角関係が実に深みのある愛に感じた。
一方、元公安の諜報員だった経歴を持つ仙田は鮫島の同期であるキャリアの香田が稜知会と手を組んでいることを知る。
同時期に鮫島も香田の不穏な動向に鼻を利かせていた。
ここが今作品の一番面白い所で、香田は香田で在日外国人達に国内でこれ以上のさぼらせない為に必要悪として稜知会との接近を図っていた。香田の思惑もよく分かりあまり触れられていなかったが家族も在日外国人のせいで被害にあっていた。その為自分の警察官人生をかけての一大プロジェクトとして取り組んでいる大きな覚悟でもあった。鮫島と香田の見ている未来が一緒のものなだけになんとも言えない歯痒さを感じてしまう。
終盤の鮫島、香田、仙田、石崎の四つ巴の攻防には完全に引き込まれてしまった。奇しくも鮫島の手によって放たれた銃弾により仙田が命を落とすのだが、この4人プラス居合わせていた明蘭も含めて誰が命を落としても不思議では無い最高の緊迫感があった。誰しもの運命の別れ道と感じられる程だった。
今回の作品は警察内部にも深く踏み込んでおり最高の展開だった。
このシリーズ、読み進めて行く度に面白さが違うのだが前作を越えてくる内容に舌を巻かされる。
次は「絆回廊」、とても人気の高い作品。とても楽しみにしている。 -
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ネタバレメモ
ミステリー「江戸川乱歩賞」「日本ホラー小説大賞」
時代小説「松本清張賞」
毎日10〜20枚は書く
会話で主人公の性格(キャラクター)を立てていく。
視点の乱れを無くす(一人称の場合)
(例)〇〇は真っ赤になって怒った
〇〇は真っ赤になって怒って見えた(正解)
主人公説明
✕私はまた頬を染めた→頬が熱くなった
自分の表情をわざわざ「何々してみせる」とは言わない
✕不機嫌そうに眉根を寄せてみせると→◯不機嫌に言った。
主人公の年齢に見合った視点で書く。
夢、漫画、小説、芝居でも何でも感動した事はメモ帳に書いておく。
楽しい体験よりも悲しいこと、腹が立つこと、惨めなことの方が良い。
惨めな人の周囲をどんどん黒く塗りつぶす方が読者には惨めさが伝わる。
人間観察は人間描写に役立つ。
嫌な人間=自分を嫌な人間とはおもっていない。
最初から嫌な人を書こうとしない
嫌な人に見えなかった人間がだんだん嫌な奴に見えてくる。ならざるを得ない感じにする。読者にじわじわ嫌な感じが広がっていく。
面白い小説=キャラクターとストーリーが上手く繋がっている。
ストーリーを支えるのはキャラクター
重複は避ける(文字)。
第三回
【強いキャラクターの作り方】
数字や固有名詞に頼らずその人物を描写する
できるだけ具体像を思い浮かべる
具体像=雰囲気
その人物のイメージを明確に喚起させるような言葉を探す
有名人を思い浮かべるのは◯だが実際の実名は使わない。
主役のキャラではなく、ヒロインと敵役の造形に重きを置く。
(例)どんな魅力的なヒロインを出すか、どんな印象の悪い悪役を登場させるか
彼らがその物語に登場する理由は?
この場面に登場する人間にはそこにいる理由があることを踏まえて配置する。
→この理由は必ずしも物語に出てくる必要はない。
より具体的にリアルに人物設定をする
個性を持っているか
キャラクター表を作って、一人ひとりの登場人物について思いついたことをどんどんメモする。
ストーリーの進行によってキャラクターに変化を生じさせる。ストーリーが登場人物を変化させてゆく。この変化に読者は感情移入する。
例えば恋愛小説だと出会いから始まってしまうとパターンだなと思ってしまう。
失恋から始めるのも良い。物語をどこから始めるのかは作者の自由。
意外性を持った人物
悪人が実は善人という方が物語に深みを与え、読者にも濃い印象を残す。
視線の先を見るとその人が何をかんがえているのかが分かる。
靴、ネクタイを観察する→から考えられる事は?
激しい感情に襲われた時、その人物はどんなリアクションをするのか。
主人公の行動が変わる時はどんなときか
理論は一貫性を持つべき
登場シーンの少ない人間ほどインパクトは必要
全てのキャラクターの厚みが増えるほどストーリーを支える部分がどっしりと大きくなる
回想シーンは会話にする!
うまく合いの手を入れてくれる相手を作る
相手「なにか心にひっかかっていることがあるんじゃない?」
主人公「実は…」
もう一つの方法「会話」→地の文(補足)→「会話」
物の見え方は作者と同じではない。
年齢、性別ではなくてものの考え方、よって立つ所、思想、個性、そこから決める。
職業=特技
なんの役にも立たないと思っていた特技ご思わぬところで生きてくる。
特技を活かす場面を作ってやる。
ミステリー=基礎知識
何かを失い何かを得る
カタルシスはキャラクターとストーリーあってこそ
物語の長さとストーリーには重要な関係がある
例:長編は平坦に山があっても読者は納得しない
短編でその書き方はオッケイ
八〇枚(原稿)まずは六〇枚のストーリーを作る
「本格推理」名探偵は変化しない
→キャラの変化よりもトリック
「ハールドボイルド」は主人公は変化する
取材で大切な事はものすごく細かい部分と幹の部分を聞く
どんでん返しの成功=伏線が大事。早い段階で伏線を貼っておくこと。
小さな伏線を四分の一の段階に一本でも張っておく。伏線強化の為に真ん中あたりにもう一本張る。
伏線が足りなければあとから足しても良い。
【第四話】会話の秘密
ある程度は実際の会話に近い会話をしつつ、実際の会話並みの無駄なやり取りはのぞく。
会話は一度自分で読んでみる。
キャラの造形と合わせてふさわしい話し方、口調を考える。
ミステリー:物語前半犯人を隠す
物語八割終了犯人を分らせる会話
隠す会話→沈黙
「…」ではなく沈黙や答えないことを表現するような地の文
登場人物を必要以上に饒舌にしない
話をそらすのも良い
「隠す会話」のトリック
登場人物全員が主人公の協力者ではない
会話を一度で終わらせないように工夫する
→物語はどんどん複雑化し、話を前に進めてくれる。
例:XをAに渡してYを得る
会話の口調が変化すると二人の人間関係の深まりを表現できる。
例:敬語→タメ口
言葉を変えなければ人物の感情、背景、人間関係の障害になるものを伏線として使える。
人物ごとに喋りそうなセリフをどんどん書き出していく。やがて「この場面でこの人だったらこれしか言わない」という決定的なセリフが必ず出てくる。
具体的で個性的なキャラクターを作れる。
キャラを対比させる
例:熱血漢とですますで話す冷静な人
男女を逆転して組み合わせたり年齢を思いっきり変えてみても良い。
「隠す会話」2種類
①黙っていたり話をそらしたりする
②作者が物語をひっくり返す
会話はなりきることが大切。
ヤクザでもやらざるを得ない組織の論理や立場があり、家族や恋人がいて飯を食ったり、子どもと遊んだりしている。
その人物の私生活、人生を想像し、細部までとことん考える。
その人物に知りようのない情報を書いてはだめ。
【第五回】プロットの作り方
こういう小説を面白いと思うはずたと信じて書く。
「変化を読ませる」
ハラハラドキドキさせる。
「謎を解き明かす」
変化を読ませていって最後に謎が解ける。
「謎」というものをどんなふうに物語に置いていくかが、プロット作りの大きな鍵になる。
「自分の書く謎」をはっきりと明確にする。
「自分が書く作品の形に対する確信を持つ」
→どこに戻ればよいかはっきりと自覚できる。
「通過点を決める」→起承転結の四か所でもかまわない。
決めた通過点を真っ直ぐ進む小説は面白くない。
「承」から「転」をいかにダレずに読ませるか。
全く別人の視点から始まっても良い。
プロローグとエピローグをくっつけても良い。
新しい登場人物を出したら古い人物を整理する
登場人物を増やしすぎない。増えた分は整理する。
【第六回】小説には「トゲ」が必要だ
武器を持って続ける
最初から最後まで他人事で終わる小説にする。
だから何?
あり得ない状況を作って主人公を追い込む
描写にメリハリを
その小説で一番大切なのは何なのか
(背景ではなく入れ物)
「天,地,人,動,植」
何枚かに一回は山場を作る。 -
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新宿鮫シリーズの第4弾。現在12作品刊行されているシリーズのため調べながら人気の高い作品をピックアップして飛ばしながら順を追って読んでいく事に。
今回の作品は第110回直木賞受賞作品。
この読み方もわからない造語のようなタイトルが何を意味しているのか?わからないまま読み進めた。
アイスキャンディという安価な錠剤タイプの覚醒剤が新宿及び繁華街の若者を中心に出廻っており、販売元や製造元等の密売ルートを主人公鮫島が追うという物語。終盤恋人の晶の拉致監禁も絡み刑事としてのみならず愛する者を守ろうとする男としての鮫島の執念も読みとれる作品だった。
この作品が面白いのが製造販売を指示する卸元の頭脳が某県の政財界を牛耳る有力財閥家の一族の男という点。一人間としてかなり寂しい影を落とす人物なのだが、彼の密売戦略プラン、弟への指示、ヤクザとの駆け引き、その攻防はスピード感があり手に汗握る展開でかなり面白かった。
物語は簡潔で面白かったがやはりこのタイトルが意味深で考えさせられる。
薬でダメになっていく人間を「無間人形」と表しているようにも感じられる。
またどこか冷めていた「何もかもを汚したかった」と言った昇をそう比喩しているのかもしれない。
だけど自分はこの単語単語の「無」「間」「人」「形」の一文字一文字が本作のテーマである「愛」に付随するように感じられ、作者が単語に見えるように繋ぎ合わせた造語なのでは?と感じた。調べてみたがこのタイトルの意味に対して作者は特にインタビュー等で触れておらず分からなかった。後でレビューを見て他の方々がどの様な解釈をしているか?楽しんで読んでみたい。
「新宿鮫」シリーズ、今作品も含め初期作はやはり時代を強く感じさせられ今読むと違和感を多く感じてしまう。それは同時に長く続くシリーズ物の醍醐味なのかもしれないとも感じている。
次はちょっと飛ばして第8弾「風化水脈」を。この先も楽しんで読んでいきたい。
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大沢在昌さんの代表作「新宿鮫」シリーズの第1作品目。数十年前に一度読んだ記憶があるが忘れてしまっているため再読。なにか長年続いているシリーズ物を読みたいと思い、黒川博行さんの「疫病神」シリーズと迷った挙げ句「新宿鮫」を選択。
主人公は新宿署の鮫島警部。元々はキャリアだったが内部抗争に巻き込まれ単独捜査を主とする一匹狼に。30年前から続くシリーズ物の処女作なので時代背景は相当古い。連絡手段として主に公衆電話を使う等、今の若い方が読むと相当の違和感があるだろう。
内容はそこまで凄く面白い訳でもなく、雑な言い方をすればありきたりの物語なのだが、人物描写力は素晴らしく鮫島の人間らしさがとても印象的だった。主だった大概のハードボイルド小説の主人公は人間らしい生々しい感情を露にはしないものだが「新宿鮫」では結構な頻度で感情をありのままに出している。泣いたり笑ったりの生身の鮫島に凄く好感が持てた。
シリーズの処女作の為、今の段階では何ともいえない感想を抱いており勝手に期待度を上げすぎてしまったのかもしれないとも思っている。
今の段階では評価が難しい。評価の高い第二弾「毒猿」、直木賞受賞作「無間人形」迄はとりあえず読んでみてみようと思う。 -
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長編ハードボイルド小説、ボディガード・キリシリーズ第3弾。新聞のいちおしミステリーとして紹介されていたので読んでみました。
読み始める前は528ページのボリュームに躊躇しましたが、テンポよく進むストーリー展開に引き込まれ、思いの外スイスイ読めました。
キリは古武術の達人で、業界でも有名な超腕利きのボディガードなのに、冒頭でいきなり地上げ屋に雇われた殺し屋に拉致られたり、警護していた紅火を攫われたり、おいおい… と思ったけど、その後は流石の活躍だった。
中盤で官能小説ばりのラブシーンがあるんだけど、あれはR指定だな〜笑
面白かったので、シリーズの他作品も読んでみよう。 -
ネタバレ 購入済み
33年振りの…。
大学生の頃には、何度も読み返して、NHKでドラマ化された時には『鮫島は舘さんじゃない!!』って怒ったり、この小説が切っ掛けで《新宿御苑》が大好きに成ったり、想い出深い作品です。
鮫島と云う刑事(警部)は《恐れ知らずの一匹狼》かの様に思われがちですが、決して強面のタフガイだからではなく、強い使命感と正義感を持った《信念の刑事》なんです。
だから、台湾の“海兵隊”上がりの殺し屋や刑事には敵わなくても《信念》の部分で共鳴しあえる。そして皆、互いの信念を貫き通す為にぶつかり合うんです。台湾マフィアが傍若無人に新宿中を暴れ回るストーリーですが、彼がそこに立ちはだかる事によって、事件は解決します。
哀しい物語ではあるけれど、新宿という土地の物語でもあるんですよね、『新宿鮫』の魅力は。
今作と『無間人形』は群を抜いて素晴らしい作品です。 -
購入済み
常に走り続ける『発想』に脱帽。
2024年3月読了。
もう何年振りだろう…、『新宿鮫』の刊行ペースが遅くなってきた頃から徐々に遠ざかっていて(待ってる方もイライラするんですよw!)、本当に久方振りの大沢作品でした。
相変わらず《常に新しいトレンドや先端技術、犯罪傾向》等を採り入れていて、読む度に感心していたのですが、まだまだその力は衰えていない様で、本作と次の『爆身』を一晩で一気読みしちゃいました。
《有り得ない》事を『有り得るかも…』と思わせるこの筆力!!! 『鮫』に酔い痴れていた頃と全く変わらなくて本当に楽しいひと時を過ごせました。
ただ、このシリーズは独特の《軽やかさ》が有って、その点では読後の印象はちょっと薄いかな…。でも、これどけのサービス精神で何十年と書き続けている大沢センセイには頭が下がります。
肝心の『鮫』の方も、宜しくお願いしますね!!