宮城谷昌光のレビュー一覧
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最終巻は小説全体のクライマックス。
武田信玄上洛時における菅沼氏による野田城籠城戦。
寡兵でもって武田の大軍を一月釘付けにしたその攻防は、作者がもっとも描きたかった場面だろう。
読み応えがあった。
その場面以前にも、武田方が侵攻してくる場面は読んでるこちらも息が詰まるようなドキドキ感を持った。
歴史上、信玄の上洛時のエピソードは家康の三方原の敗戦とか、
城攻め時の信玄狙撃疑惑とかは知っていたけれど、
それがこの野田城のことで、しかも一月にわたる攻防があったことは、今回初めて知った。
こういう新しい発見があるのが歴史小説のいいところだと思う。
シリーズ六巻の前半は菅沼定則が、後半は定盈が主人 -
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シリーズも五巻目。今巻は、桶狭間から今川氏衰亡まで。
桶狭間の戦いは遠景として描かれていて、その過程を菅沼氏から描いているところがある意味新鮮。
今まで今川氏に付いていた菅沼氏や東三河の諸豪族が松平に付くことになる過程が丹念に描かれている。
妻を殺され、城を奪われ、恩ある西郷氏を殺され。
そういう苦難の時を経て同じく雌伏の時を経た家康に従って今川打倒の兵を遠州に進める場面が今巻のハイライト。
今まで抑えに抑えていたモノが解放されていく感じがいい。
さて、今川氏がつぶれて、今度は武田との対決になるんだろう。
最終巻はあの有名な武田氏の上洛なんだろうな。
クライマックスに期待する。 -
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後の徳川家康の人質強奪事件から始まって、家康の父松平広忠の暗殺、今川宰相雪斎による三河の攻略と、巻の前半は完全に松平の話だった。
主人公はどこに?(笑)
巻の後半、ようやく菅沼一族の話になって、やおら、面白くなった。
やっぱり、主人公は違うな。
たぶんその違いは、菅沼氏を描く時には、作者の創作が大きく加えられているだろう部分にあると思う。
やっぱり、そこが物語としての面白さだと思う。
でも、一度の合戦で惣領定村と二人の弟が戦死したり、菅沼一族間での合戦があったりと、菅沼氏にも戦国の悲劇がやはり起こってしまった。
でも、三代目新八郎の登場で、いよいよ物語は盛り上がりを見せそうな気配。
信長、 -
Posted by ブクログ
第三巻は、後の徳川家康が生まれるところから数年間の三河の情勢
松平本家は内憂外患の中にある。
内では一門に争いがあり、外には織田信秀に攻められ、重臣を次々失っていく。
ある意味、よくこれで松平本家はつぶれなかったなあと思う。
一つには岡崎城を守り抜いたこと、もう一つには織田にしても今川にしてもまだ三河を本気で取りに来ていなかった幸運があったのだろう。
それにしても、主人公としての菅沼氏には合戦もなく平和な中にあり、今ひとつ、物語の中に入り込むのが難しい。
要するに他家(松平家)の争いを外から見ているような疎外感がある。
そろそろ菅沼氏の活躍を期待したい。